道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」
京都府南山城村
3088号(2019年7月29日) 南山城村 むらづくり推進課
南山城村は、深い緑の山々に囲まれ清らかな木津川が東西を流れる、「京都府唯一の村」です。面積は64.11㎢で、南北13.21km、東西9.52kmと東西南北に広く、面積の約7割が山林で占められています。京都府の最東端に位置し、東は三重県伊賀市、南は奈良県奈良市、北は滋賀県甲賀市に隣接し、古よりそれぞれ人・生活・文化の交流があります。中央を国道163号とJR関西本線が走っており、大阪・名古屋・京都市内から1時間30分程度で移動できることもあって、年々訪れる方々も多くなってきています。
産業では、山々に囲まれた傾斜地を活かした、村の特産品であるお茶が農業の主産業として栄えてきました。南山城村は、京都府では品質の優れた宇治茶の主産地として、京都府茶品評会においては煎茶の部で19年連続26回産地賞を受賞し、また関西茶品評会、全国茶品評会においても数多く受賞するなど、香りの高い良質な煎茶の産地として高く評価されています。
小さな村ではありますが、「南山城村の山なみ」をモチーフに「響」にこだわった故黒川紀章氏設計の文化会館「やまなみホール」が木津川沿いにあり、訪れる方々は木津川を臨みながら過ごす静かなひと時に、心を癒されています。大きな観光スポットは少ないのですが、日本遺産にも指定された文化的景観「宇治茶生産景観︱山なりの茶畑と山裾の農家」の美しさや全国的に珍しいアーチ動力式の高山ダム、京都府指定無形民俗文化財「田山花踊り」など、知る人ぞ知るスポットなどが多く、近年、地方への観光ブームも手伝って、ふらっと気軽に立ち寄れる南山城村は近畿圏のみならず全国からも多くの人が旅の途中に訪れています。
自然環境が豊かで交通網にも恵まれている南山城村であっても、全国的な少子高齢化、人口減少の波に逆らうことはできず、65歳未満の生産人口が減少しつつあります。
故黒川紀章氏設計の「やまなみホール」
南山城村の優秀な特産品であるお茶においても農家数の減少や、人口減少による地域コミュニティの維持など多くの課題が山積している中、村民の一人ひとりが「何かを」「何とかしなければ」という想いが重なり、さらには村民の想いが一つになり、想いを形にしていくという大きなうねりになってきました。
その結果、村民の皆さんが「誰が何をやりたいのか、担うのか」「誰が何をやっていくのか」「実際、担えるのか」など何回もワークショップを重ねて話し合い、「自分たちの期待や想いを形にかえてほしい」「自分たちがそれを担っていく」という強い意志のもと、道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」の創設に至ったところです。「京都府唯一の村」「南山城村の特産品のお茶」を特色として前面に出し、地域の農産物や、高品質の香り高い村のお茶、ワークショップに参加した村民が作る加工品など、数多く品揃えされています。
この施設は、目の前を国道163号が東西に走っていることからどこからでも訪れやすく、またロケーションとしては、茶畑が一望でき周りを山々が囲んでいるその様は、まさに道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」に相応しい風景といえます。
道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」グランドオープン時の賑わい
住民の想いが実現した道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」は、農林産物の生産・出荷や加工品の開発販売など、村民の皆さんの当初からの熱い想いをそのままに、運営に参加していただいています。村民の想いが村を動かし、官民協働で成し得たこの道の駅は、地域活性化重要拠点として、さらには南山城村を「もっと知りたい」「もっと訪れたい」と思える観光振興の拠点としても位置付けられています。
村民の皆さんの想いの詰まったこの道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」は、平成29年4月にオープンし、また前年に開通した国道163号北大河原バイパスは1日約10,000台の通行量があることから、年間のレジ通過者が約40万人と、村が当初考えていた以上に大盛況で、一気に「京都府唯一の村 南山城村」という名前を覚えていただくきっかけになりました。「お茶の京都」と銘打つだけあって、村のお茶は勿論のこと、村のお茶をふんだんに使った抹茶ロールや抹茶ソフトなど、お茶を使った数多くの商品が並び、訪れる方は飽きることなく楽しめます。
道の駅オープン時のポスター
知名度が上がれば、自然と村に興味を持つ方も多くなり、訪れた方やテレビを見た方からの、南山城村に住んでみたいという声も多くなってきました。道の駅がきっかけで、京都府唯一の村に惹かれて来てみたら、自然に囲まれた、ゆったりとした時間を過ごせたとのことです。
南山城村は、人口減少対策として移住定住事業に取り組み、空き家バンク制度の創設や移住定住推進員を置いて空き家の掘り起こしやマッチングをし、また民家を改修して移住交流スペース「やまんなか」を設置して移住された方と地域との交流を進めてきましたが、今や、移住したいと申し込む方が多く、空き家バンク登録件数が追いつかないほどの人気の村になってきています。
道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」のオープン以来、交流人口が増加し、また道の駅を核とした産業再生や、道の駅を公共交通網ルートに加えた買い物弱者支援のための地域内循環型システムの構築、高齢者支援AIの検討など、生活支援プラットフォームづくりなどが評価され、平成29年度には国土交通省「ふるさとづくり大賞」をいただいたところです。
移住交流スペース「やまんなか」での移住者と地元の方との交流ライブ
高齢化が進む東西南北に広い村には、色々な情報を対話型で見える化する仕組みが重要と考え、「御用聞きAI」と銘打って、買い物難民対策や行政情報を伝える手段として活用できるか検討しています。現在は、防災行政無線、村内バス、三重県伊賀市と京都府笠置町・南山城村と圏域を超えた「伊賀・山城南定住自立圏」の取組として対話型で健康相談しながら、専門相談員につなぐ「救急・健康相談ダイヤル24」に接続できるよう取り組んでいます。
南山城村内にも幾つかの事業所がありますが、雇用という部分では生活圏である他市町へ行く方が多いのが実態でした。しかしながら地域活性化重要拠点である道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」ができたことで、村内は勿論のこと、またこれまでとは異なり村外からも雇用として入る方が増え、移住定住にもつながってきました。
南山城村はさらなる地域活性化を目指してきたところですが、道の駅ができたことによって、隣接地に「道の駅ホテル」が2020年秋オープン予定で建設されることになり、注目を集めています。雇用の拡大に期待するのは当然ですが、今年度から観光に特に力を入れていくという村の方針とマッチして、今後、村がつくる観光ソフトと併せ、通過点から着地点になる観光客や訪日客の増加に期待するとともに、消費拡大にも大きな期待を寄せています。
さらには、自然豊かな村にマッチした企業誘致を積極的に進め、菌床キノコ工場も建設される予定となっています。同じく雇用面にも期待をしていますが、村の農産物としての出荷という点にも期待しているところです。これらの企業誘致は雇用・観光・生産だけに留まらず、人口減少対策として、他所からの呼び込みの手段の一つとして、必ずや南山城村の活性化に寄与するものと考えています。
観光の振興という点では、地域の住民の方が体験型の観光を立ち上げ、村がサポートしていく形で取り組んでいくこととなっています。「人はどこから村へ来て、どこに行くのか」「村に来た人はどういったことを望んでいるのか」「どういったものに購買意欲がそそられるのか」などデータを集約化し、ニーズに合った新たな観光プラン・ソフトの開拓を行いながら情報発信をし、村の農林産物を活かした商品開発をさらに推し進め、観光消費を押し上げ、循環型産業施策として地元に還元できる仕組みをつくれるよう、総務省「地域IoT実装事業」を導入して、村のありたい観光の姿の実現を目指しています。
「三国峠」から南山城村が一望できます
宇治茶の生産景観の縦畝と横畝からなる茶畑と一体となっている民家
南山城村は、優秀な宇治茶の主産地としてのブランド力はありますが知名度は高くなく、近隣の三重県伊賀市・滋賀県甲賀市・奈良県奈良市が有名なため隠れた地域であったことは否めません。しかしながら道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」がオープンしたことを機に、「村を訪れる方」「村に興味をもたれる方」「村のファンになる方」が多く、さらには「道の駅ホテル」が建設されることも手伝って、「南山城村」の知名度も高くなりました。これから取り組んでいくIoTを活用した事業も、村の観光ルート・スポットやお茶をはじめとする地元特産品などを全国発信し、道の駅のみに留まらず村の埋もれた魅力を再構築し、通過型観光から滞在型観光になっていけるように、さらには地元にフィードバックできる循環型産業を目標に、観光振興を進めていくこととしています。
今、南山城村は全国から注目され、以前とは比較にならないほど村を訪れる方は多くなりました。自然豊かな山々に囲まれ、村の中央をゆったりと流れる木津川の水面、村を走ればそこに茶園がある長閑な風景に旅の途中に来られた人は魅せられるのか、人口減少の中にあって移住定住希望の方の問い合わせも年々増加しており、近畿圏のみならず全国から、長閑な田舎で、昔と変わらない隣近所が声を掛け合える南山城村に住みたいとの声に、将来への希望を感じています。
また優秀な宇治茶の主産地というブランドを基本として、道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」がオープンしたことにより、南山城村のお茶の知名度・魅力を一気に高めると同時に観光スポットとして脚光を浴び、「道の駅ホテル」の建設も予定され、どこに行っても「南山城村」と話すとうれしい反応があります。
南山城村は、人口も少なく少子高齢化が進んでいる小さな村ですが、一番の魅力は村民である「人」です。これまでの「静」から、村民自らがコトを起こし、モノをつくり、想いをつなげていくという、「動」の流れになってきています。これからもお茶や観光をはじめとするモノの魅力だけでなく、人と人とのふれ合いをもっと輝かせられる「魅力ある村づくり」に、村民の方々と一体になって取り組んでいきたいと考えています。
南山城村の中央をゆったりと「木津川」が流れています
木津川を横断している「恋路橋(潜没橋)」