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群馬県みなかみ町/利根川源流のまち 水と森林と人を育む みなかみユネスコエコパーク

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年6月3日

天神平天空のナイトクルージング(イメージ)

天神平天空のナイトクルージング(イメージ)


群馬県みなかみ町

3082号(2019年6月3日) みなかみ町長 鬼頭 春二


みなかみ町の概要

みなかみ町は、群馬県の最北端に位置し、谷川岳の雄大な自然に抱かれ清らかな水が脈々と流れる利根川源流の町です。東京から直線距離で約150km、関越自動車道で約1時間30分、JR上越新幹線で最短66分と首都圏からのアクセスに恵まれています。2005年10月、2町1村が合併して誕生した町で、面積は781.08㎢と群馬県の8分の1を占めています。

利根川の源流域として5つのダムがあり、東京をはじめとする首都圏の経済や生活を維持する大切な水源地域となっています。地域の標高は、300mから2000mにわたり、山間地としての特殊性があります。この様な地勢は地域における産業や生活に様々な制約を与えていますが、山岳、森林、高原、湖沼、河川、渓谷など変化に富んだスケールの大きい自然は、上信越高原国立公園に指定されているように、国内でも有数の観光資源であり、豊富な温泉とも相まって、観光地としても有名です。

みなかみ町全景

みなかみ町全景

ユネスコエコパーク登録

町ではこの素晴らしい自然を、最も大切な宝としてまもり、いかし、ひろめるため、人と自然が共生する持続可能な地域づくりに取り組んでいます。また、谷川岳のエコツーリズムの活動や林野庁・日本自然保護協会・地域住民の3者が協働し生物多様性の保全や活用を行う赤谷プロジェクトの活動など、地域主体の取組も進んでいます。

こうした自然環境と人間が共生しながらまちづくりに取り組む姿は、世界のモデルとなる地域としてユネスコに評価され、2017年6月「みなかみユネスコエコパーク」が誕生しました。

ユネスコエコパークは正式名を生物圏保存地域(BR:Biosphere Reserves)といい、ユネスコが1976年から始めたユネスコ人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画のプロジェクトの一つで、日本では親しみやすいように「ユネスコエコパーク」と呼ばれています。世界自然遺産が手つかずの自然を守ることを原則とするのに対し、ユネスコエコパークは自然と人間が共生する社会を実現することを目的とする取組です。現在、122カ国686カ所の地域がユネスコエコパークに登録されており、日本ではみなかみユネスコエコパークを含め9カ所の地域が登録されています。

みなかみユネスコエコパークの登録に伴い、町のブランド力やイメージの向上、自然環境保全など多様な効果が期待されますが、最も大切なことは、町に住む人々が改めて町の素晴らしさを認識し「みなかみ町に住んでいてよかった」と思うこと、そして町の自然をテーマに町民、事業者、官公庁がまちづくりのベクトルを合わせ、地域が元気になっていくことです。

ユネスコエコパーク(三つの機能・三つの地域)

ユネスコエコパーク(三つの機能・三つの地域)

人と自然が共生する取組

●赤谷プロジェクト

2003年11月に発足した「赤谷プロジェクト」は、町内新治地区を流れる赤谷川の上流域に広がる約1万haの国有林「赤谷の森」を舞台に、“生物多様性の復元”と“持続的な地域づくり”を進める取組です。地域住民で組織する「赤谷プロジェクト地域協議会」、日本全国で自然保護活動に取り組むNGO「公益財団法人日本自然保護協会」、舞台となる国有林を管理する「林野庁関東森林管理局」の3つのセクターの協働により進めています。

「赤谷の森」の現状を科学的に把握するために、森林生態系の豊かさを指標する野生動植物に注目しています。例えば、一つがいのイヌワシが上流域に行動圏をもち生息しています。大型猛禽類であるイヌワシは森林生態系の食物ピラミッドの頂点に位置する野生動物です。つまり、安定して子育てをしながら生息できるかどうかは、赤谷の森の豊かさ(=生物多様性の状況)にかかっています。

これまでに、小中学校を対象とした環境教育、観光業の方々と連携した赤谷の森のハイキングマップの作成、地元にある日本のカスタネット発祥の工場や製材工場と連携した「赤谷の森」の木材によるカスタネット製造など、赤谷の森の豊かさや魅力を伝え、森の恵みを持続的に資源利用することで、赤谷プロジェクトの先進的な取組が付加価値となるよう様々な地域産業に貢献する試みを行っています。

環境学習(赤谷プロジェクト)

環境学習(赤谷プロジェクト)

赤谷の森のイヌワシ

赤谷の森のイヌワシ


●谷川岳エコツーリズム

2008年12月に、エコツーリズム推進法の理念に則した基本方針のもとに谷川岳エコツーリズム推進協議会準備会がスタートし、谷川岳エコツーリズム推進協議会を経て2012年6月29日に全体構想が、全国で3番目に、国立公園内では初めて認定されました。

谷川岳エコツーリズムの基本方針としては、エコツーリズム推進法の“自然への配慮”“観光振興への寄与”“地域振興への寄与”“環境教育への活用”といった理念のもとで、自然環境のほか歴史や文化等を観光対象とし、その持続可能性を探り最大限にそれらを活用し、訪れた多くの人たちと交流を深め広げることで町の発展に寄与すること、すなわち「守る活かす交わる」を基本方針としています。

全体構想の実現に向け、自然環境や生物多様性を適正に利活用するためのモニタリング調査、エコツアーカーニバルやスノーシューフェスティバルを開催して魅力の発信、車両の乗り入れ規制による歩行者の安全の確保及び特定外来生物に指定されている「オオハンゴンソウ」の除去活動による環境保全などを行っています。

エコツアー(スノーシューツアー)

エコツアー(スノーシューツアー)

一ノ倉沢電気バス

一ノ倉沢電気バス

自伐型林業による担い手の育成

町では、森林や林業に関わる人を増やし、森林資源の有効活用を促進することで環境を保全するため、山林所有者や地域住民が主体的に携わることができる「自伐型林業」を推進しています。大規模林業と比べて低コストで始められ、副業的な携わり方も可能であるため、誰もが参入しやすく継続性も高いとされています。山林の所有と管理の距離が近い(所有者の場合は一致)ため、山林を長期的に経営する意識が自ずと働くのも特徴です。

未経験者でも林業に取り組めるよう、町では2016年から毎年、チェーンソーの取扱や伐倒・造材、搬出や作業道の開設などの実践的な知識と技術を学べる本格的な自伐型林業研修を開催しています。これまでに約140名が参加し、50名を超える人達が森林や林業に関わる活動を始めています。受講者が新たな仲間を巻き込み、活動の輪がどんどん広がっている状況で、サラリーマンや自営業者、公務員など参画している人達の業種は様々です。町内で盛んなアウトドアスポーツのインストラクターのグループが仕事の閑散期の対策として活動を開始するなど、新たな雇用の創出にも期待が寄せられています。

自伐型林業研修

自伐型林業研修

森林資源の活用による環境保全

環境を保全するために伐り出された木材は、量的に多くありませんが細かな活用が可能で、官民が連携して様々な活用を試みています。これまでも、町内こども園で使う木のおもちゃに加工したり、民間事業者が既存の灯油ボイラーを薪ボイラーに転換して燃料の薪としたり、イベントなどで活用するなど、小さいながらも森林資源と経済の地域内循環が広がりつつあります。2018年12月には、国産材を使った家具の製造販売や建築を手掛けるオークヴィレッジ株式会社(岐阜県)と町が、林業の六次産業化と地域活性化に関する包括連携協定を締結しました。森林整備の過程で伐り出された広葉樹を活用し同社が製品づくりと販売を行うもので、良好な森林づくりと経済性を両立する持続的森林経営モデルの確立を目指しています。

さらに町では、森林や木との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育てる「木育」の推進にも力を入れていて、2016年7月に「ウッドスタート宣言」を行い、生まれてきた子どもに本町が発祥のカスタネットをプレゼントするとともに、東京おもちゃ美術館と連携して木育キャラバンを毎年開催しています。幼少の頃から木にふれることを通じて、木を身近に感じ、その魅力を知ってもらう取組を進めています。

木育・木のたまご

木育・木のたまご

これからのまちづくり

今年度は町にとって大きなイベントが開催されます。ひとつは群馬DC(ディスティネーション・キャンペーン)です。2020年4月から6月までの3ヶ月間、県内の市町村や観光関係者と全国のJR6社などが一体となって行う大型観光キャンペーンです。「心にググッとぐんま わくわく 体験 新発見」をテーマに、全国に誇る温泉や自然、歴史・文化遺産、グルメなどの魅力を発信します。プレDCの本年は谷川岳において、天空のナイトクルージングや早朝ヒーリングツアーを実施します。天神平ロープウェイでは夜間運行に合わせてデジタル掛け軸を投影します。

もうひとつは、「花と緑のぐんまづくり ふるさとキラキラフェスティバル」です。2008年に開催した「全国都市緑化ぐんまフェア」の理念を将来に引き継ぎ、8月31日から9月23日まで「ふるさとキラキラフェスティバル花と緑のぐんまづくり2019inみなかみ」を、メイン会場は道の駅「たくみの里」で、サテライト会場は同じく「水紀行館」「矢瀬親水公園」で開催します。テーマは「世界が見つめる 花と緑の水源のまち みなかみユネスコエコパーク」として、圃場ではそばの花、街並みも季節の花でいっぱいに飾ります。週末を中心に花と緑のコンテストなど盛りだくさんの楽しいイベントを行います。

みなかみユネスコエコパークが誕生して早いもので2年となりますが、ユネスコエコパークの登録はゴールではなくむしろスタートと考えています。従来からの歴史や文化、自然と共生する活動のほか、新たに小中学校及び高等学校の一部ではユネスコの理念である平和や国際的な連携を実践する学校としてユネスコスクールに加盟し、持続可能な開発のための教育(ESD)への取組が始まりました。今後も恵まれた自然環境を「まもる・いかす・ひろめる」取組を図りながら、ユネスコエコパークの理念に基づき、町の資源を活かした持続可能なまちづくりを進めていきます。

ふるさとキラキラフェスティバル

ふるさとキラキラフェスティバル