ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取り組み > 山形県大蔵村/湯治の里 大蔵村肘折温泉郷の地域資源を活用した取組

山形県大蔵村/湯治の里 大蔵村肘折温泉郷の地域資源を活用した取組

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年5月13日

肘折温泉街・ひじおりの灯

肘折温泉街・ひじおりの灯


山形県大蔵村

3079号(2019年5月13日) 大蔵村長 加藤 正美


大蔵村の概要

大蔵村は山形県北部、最上地方の南部に位置し、総面積は211.59㎢で、その内の85%にあたる180㎢が山林という山あいの村です。

村の南方には、出羽三山信仰で栄えてきた霊峰月山と葉山がそびえ、そこからの流水を湛え、村の中心部である清水・合海地区の美しい田園地帯を山形県の母なる大河最上川がゆっくりと流れています。

村の交通の要である国道458号が村の中央部を南北に走り、それに沿って大小27の集落が点在し、1,084世帯、約3,300人が静かに暮らしています。村の基幹産業の一つである農業は、稲作を中心として営まれてきましたが、近年トマトの生産も盛んとなり、県内一の生産量を誇っています。

観光業の拠点である肘折温泉郷は月山や葉山のふもとに位置し、開湯1200有余年の歴史を誇り、古くは山岳信仰とともに栄えてきました。近年は、湯治場として栄え、今でも湯治場風情を色濃く残す温泉地となっています。肘折温泉は、豪雪地帯としても知られ、平年の積雪は3m以上に達し、ときには4mを超えることから、しばしば全国ニュースでも取り上げられる日本有数の豪雪地帯です。

温泉街から15分ほど北上したところにある、豊牧、沼の台、滝の沢、平林の4地区は「四ヶ村」と呼ばれ、地域にある約120haもの広大な棚田「四ヶ村の棚田」を一目見ようと、県内外から多くの人が来村しています。

過疎化や高齢化が進んでいますが、何よりも大蔵村には人々の営みの中から作り上げられてきた地域資源と後世に残したい農山村の風景があり、NPO法人「日本で最も美しい村」連合の立上げの村として活動を展開しています。

4mを超える雪壁

4mを超える雪壁

肘折温泉郷

開湯1200年以上の歴史を誇る「肘折温泉郷」は21軒の旅館が軒を連ねる、当村を代表する地域資源です。湯治場としての風情を今でも色濃く残すレトロな温泉地として、多くの方々から愛されています。

春から降雪期まで温泉街には朝市が立ち、旬の山菜や野菜、きのこ、惣菜などとともに、地元のお母さん方との会話を楽しみに訪れる方々も多く、温泉街の名物となっています。

観光スタイルの変化とともに、肘折温泉郷の観光客数は年々減少していますが、最近は、家族連れや若い方々、さらにインバウンドの推進により海外からの観光客も見られるようになりました。これまでのように、湯治場として長期滞在する方々は少なくなっておりますが、肘折温泉郷ではこうした現状を受け止めながら、古くからの伝統的な湯治を失くすことなく、多様なニーズに応えるため、湯治プランの他、旅籠のプランなどお客さまの要望に応じた宿泊ができるような工夫を続けています。

温泉街名物の朝市

温泉街名物の朝市

夜の温泉街活性化

肘折温泉は湯治場として栄え、早朝に朝市が立つなど、朝型の温泉地となっています。それに伴い商店も早朝から店を開き、夜の閉店が早い、いわば湯治客時間となっています。近年、短期滞在型の観光客が増えるにつれ、夜の温泉街が暗い、見るものがないと言った声が多く聞かれるようになりました。

そんな中、夜の温泉街を楽しむための取組として、肘折地区と東北芸術工科大学との連携による「ひじおりの灯」アートプロジェクトを開始し、昨年で12年目を迎えました。アーティストが肘折に滞在しながら取材を行い、肘折の歴史や風景、文化や生活の様子を八角形の灯籠に描きます。旅館や商店の軒に吊るされた灯籠が夜の温泉街を彩り、夏の風物詩として親しまれています。こうして描かれた作品も年々多くなっており、これらの作品をいつでも鑑賞できるような取組も必要と考えています。

豪雪の活用

日本有数の豪雪地帯である肘折温泉は、その雪を活用したイベントを数多く実施しています。高さ3mを超える雪壁に穴を掘り、ろうそくやキャンドルライトを灯す「肘折幻想雪回廊」や、降り積もった雪を掘り進み一番早く地面の土を掘り起こす競技である「地面だし競争World Cup in 肘折」、世界一の雪だるまとしてギネスブックに登録された巨大雪だるま「おおくら君」を制作し、花火大会や甘酒のふるまいなどを行う「おおくら雪ものがたり」など、豪雪を資源とした取組を数多く実施しています。

また、今年で4年目となる「ドカ雪・大雪割キャンペーン」は、大蔵村観光協会による豪雪を逆手に取った取組です。24時間降雪量に応じて、旅館の宿泊や商店での買物が割引になるほか、これまでの最高積雪深を更新した場合は、旅館での宿泊が1泊無料となります。昨年度、445cmの観測史上最高積雪深を記録し、1泊無料となったことで全国から大きな反響をいただきました。今年度以降も継続してサポートしていきたいと考えています。

雪は観光資源になると同時に、首都圏や遠方地域のお客さまから敬遠される要因の一つになっていますが、大蔵村の除雪体制は、「日本で最も除雪完備の村」を標榜し、万全を期していますので、ぜひ豪雪期の大蔵村を体験していただきたいと思います。

肘折幻想雪回廊

肘折幻想雪回廊

おおくら雪ものがたり

おおくら雪ものがたり

地面だし競争

地面だし競争

二次交通

最寄りの駅であるJR新庄駅から肘折温泉までは、車で約50分となっています。これまで地域交通を担っていた路線バスが利用客の減少に伴い、平成29年で廃線となりました。これを受け、同年からは同じルートで村営のバスが運行しています。観光客の方が大蔵村へ移動する手段となっているのはもちろん、地元高校生の通学手段や年配の方の買物、通院の交通手段としても利用されています。運賃も多角的に考慮し、従来の路線バスの半額程度で、より利用しやすい金額に設定しています。

また、遠方から飛行機で観光に訪れる方が肘折温泉にアクセスしやすいように、山形空港と肘折温泉をつなぐ観光ライナーを運行しています。肘折温泉郷にある会社とタクシー会社が連携してこの事業を続けており、村がサポートしています。

四ヶ村の棚田

大蔵村の大きな地域資源の一つとして、「四ヶ村の棚田」があります。面積は全体で約120haあり、そのうちの12‌haが「日本の棚田百選」に選定されています。

棚田は、その保全・維持において、並々ならぬ労力が必要です。大蔵村は少子高齢化が進んでおり、後継者不足が深刻となっています。棚田で農作業を行う農家の方々も同様で、耕作放棄地などが増えていることも事実です。

美しい棚田を多くの方に知ってもらおうと始めた取組の一つに、「四ヶ村棚田ほたる火コンサート」があります。元々は地元の方々が楽しむために棚田にろうそくの火を灯す「ほたる火祭り」として始まったもので、現在は同時にコンサートを行い、ほたる火コンサートとして実施しています。広大な棚田にほたる火が灯りオカリナの音色が響きわたる、一年に一夜限りの光景を楽しみたいと多くの人が集うイベントへと成長し、今では村最大の観光イベントとなっています。

ペットボトルとろうそくで作る「ほたる火」の作成にあたっては、地元中学生がペットボトルの回収を村内に呼びかけ、住民と共同でペイントを施し、棚田へ1,200本設置するほか、当日は点火のお手伝い、アーティストと一緒にオカリナの演奏、棚田に関するパンフレットの作成及び来場者への配布を行うなど、さまざまな形でイベントへの協力を行っています。地元住民と子ども達のコミュニケーションの機会となっていると同時に、地元への関心を深める学習の場にもなっています。

また、四ヶ村の棚田では地元有志で組織される「棚田米生産販売組合」による棚田米の販売も行われています。四ヶ村の棚田米は葉山の雪解け水を水源とし、生活雑排水が一切入り込まない地域での生産であり、ロケーションの良さも相まってファンの数は年々増えています。組合による棚田米オーナー制度では、自分で作った米を持ち帰ることができるのはもちろん、田植え、稲刈りなどの体験が行われ、毎年、県内外から多数のオーナーの方々が集まっています。

一般の方も棚田米を購入することが可能で、首都圏への売り込みや観光イベントでのPRを通して、少しずつ注文数が増えている状況にあります。

大蔵村は、2020年の全国棚田サミット開催予定地となっており、全国から多くの参加者をお迎えするにあたり、地域の方々と協力しながら準備を進めているところです。

四ヶ村の棚田

四ヶ村の棚田

ほたる火コンサート

ほたる火コンサート

現状と今後の村づくりについて

大蔵村は少子高齢化が進んでおり、大学進学等をきっかけに若年層の村外への流出も少なくありません。これに伴い、温泉街や棚田のある地域だけでなく、村内全域で後継者不足や担い手不足が問題となっています。村では子育て支援住宅の整備や子育て支援医療制度による中学3年生までの医療費の無償化を行うことで、若者の住みやすい街づくりに力を入れてきました。ここ数年、子どもが増えるなどその効果も現れ始めています。

基幹産業である農業、観光業においても、儲かる産業を目指し、支援を行ってきた結果、Uターンする若者が増加しています。特に、農業では新規就農する方々が増加しており、そうした若手農業者が大蔵村農業後継者の会、通称「メンズ農業」を結成しました。お互いに農業について意見交換や相談をしながら真剣に取り組んでおり、村の将来を支える貴重な存在となっています。

これまで、数多くの事業や施策を展開し継続してまいりましたが、全国的な人口減少とともに、我々地方は過疎化に歯止めがかからない現状にあります。私どもは、小さな村だからこそできる村づくりを心掛け、「大蔵村に住んで良かった」、「住み続けたい」と思えるような、また、自分が生まれ育った村に誇りを持ち続けられるような村づくりのため、今後とも住民の方々との対話を大切にしながら、勇猛精進したいと考えています。