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山梨県忍野村/富士山と湧水の織りなす風景を継承するために~未来への投資~

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年9月17日

山梨県忍野村

忍野八海より富士山を望む


山梨県忍野村

3054号(2018年9月17日) 忍野村長 天野 多喜雄


 

忍野村の概要

忍野村は、山梨県東南部の富士北麓に位置し、村の中心部には桂川・新名庄川が流れ、雄大な富士山を目の当たりに出来る、富士山に代表される風光明媚な景観と豊かな自然、豊富な地下水に恵まれた環境にあります。

村の面積は25.05平方キロメートルで、周囲を富士山、高座山、杓子山、石割山などの山々に囲まれた約3,900世帯の山村ですが、昭和44年以降、周辺地域の道路網が整備されたことに伴い都心からのアクセスが向上し、また富士山が世界文化遺産に登録されたことも相まって、忍野八海などに国内外から多くの観光客が訪れています。

この様な恵まれた条件を背景に、忍野村は昭和55年以降人口が増加傾向にあり、昭和55年には6,077人だった人口が平成7年には人口8,000人を超え、平成27年度には約9,300人に達し、平成30年5月末時点での人口は9,720人となり、今なお人口の増加は続いています。また、昨年度は高齢化率が18・29%と低く、合計特殊出生率は1.82%と県内でも高い数値を示しており、近年は製造業が盛んで大手企業の大規模な生産工場や研究拠点が立地し、村内にも中小規模の工場等の立地が加速している状況にあります。これに合わせて、村でも観光や農業、医療・福祉、子育てなど「住みやすい村づくり」のための施策や「世界で活躍する人材の育成」のための施策には特に力を注いでいるところです。

春の遠足

春の遠足

世界文化遺産“富士山”の構成資産となって~住民意識の変化~

平成25年6月22日に富士山が「世界文化遺産」に登録され、同時に静岡・山梨両県合わせて25の構成資産が選定されました。選定された構成資産のうち、忍野村では忍野八海を構成している8つの池すべてが指定されたことにより、選定前後では観光客数の増加が顕著にあらわれています。特に東南アジアからの観光客が急速に増加し、毎日約100台以上もの大型バスが周辺駐車場を埋めている状況にあります。しかしながら、観光客の増加に伴い、トイレの使用方法や個人敷地内への無断立入、構成資産である池へのコイン等の投げ入れ、車道での写真撮影など、生活習慣の違い等による外国人観光客のマナー違反が深刻な問題となっています。現在、諸問題解決のために行政と観光協会や地域住民等が協力し合って、問題解決に向けて一つ一つ取り組んでいるところです。

また、ボランティアや地域住民による定期的な草刈りやゴミ拾い等の美化活動、構成資産の保存活動への積極的参加、周辺環境にマッチした修景づくりなど自然の美しさを損なわないような景観保存に努めるなど、忍野八海の保全に努めようと住民意識にも変化が表れてきたものと感じています。  

忍野から流れる湧水を含む桂川の流れ

忍野から流れる湧水を含む桂川の流れ

湧水との共存~地下水への対応~

忍野村は役場がほぼ村の中心に位置し、役場より東側を内野地区、西側を忍草地区と呼びます。忍野八海が点在している忍草地区では湧水に恵まれ、古くは「忍野湖」とも言われた時代があります。その特徴として水位は高く、過去の地質調査等からN値が非常に小さい軟弱地盤であることが伺え、昔は湖底であったと思われる名残も見受けられます。また、東側にある内野地区では地区の大半が富士山噴火時の溶岩流で形成されているため、忍草地区とは異なり水位は低く、過去の地質調査からN値も非常に大きい値を示していることが分かり、堅固な地盤で構成されている地区であると考えられます。この様に両地区の特性が相反していることから、住宅や建築物、さらには土木構造物を建設する場合にはそれぞれの地区に適合した工法や方法を選択する必要があります。

本村では地下水の保全を重視し、平成28年度より地下水の流動方向や涵養域、貯水量などを把握するため、京都市内で地球環境問題の解決に向けた総合的な研究を行っている大学共同利用機関「総合地球環境学研究所」へ調査依頼をして、継続的に地下水との関わりを調べているところです。今後は、本調査結果に基づき地下水という大切な資源を保全しつつ、安心・安全な村民のための村づくりに取り組みたいと考えています。  

忍野八海と新名庄川の水が流れ込む鐘山の滝

忍野八海と新名庄川の水が流れ込む鐘山の滝

忍野八海一の湧き水量を誇る湧池

忍野八海一の湧き水量を誇る湧池

村づくりの施策大綱~忍野村八念八策~そして未来へ

忍野村では、国の動向を踏まえ「第5次忍野村総合計画」を1年前倒しして、平成29年度より新たな総合計画をスタートさせるため、平成28年度に「第6次忍野村総合計画」を策定しました。計画策定に当たっては、平成27年度に策定した「忍野村地方創生総合戦略」で定めた忍野村の将来像を尊重し、村としての一貫した方向性を堅持することが望ましいとの結論のもと住民とともに考え、村にとって重要な施策を絞り込んだうえで、計画を推進していくこととしました。計画は基本構想と基本計画とに分類して、基本方針を4つの側面から組み立て、忍野八海の「八」にあやかり「忍野村八念八策」と題し策1~策8を定め、村づくりの施策大綱として整合性を図ることも重視しました。

基本方針の内容は、

①将来:みんなで未来を創る村 
②人材:いつまでもいきいき学べる村
③仕事:好奇心に応える村
④環境:富士の恵を守る村

の4テーマに絞り、施策大綱の内容としては、

①みんなで未来を創る村では、 
 策1 期待に応えられる行政の実現
 策2 暮らしやすくなる村づくり

②いつまでもいきいき学べる村では、 
 策3 世界で活躍する人材の育成
 策4 楽しく齢を重ねられる仕組みづくり

③好奇心に応える村では、 
 策5 知性を刺激する産業創造支援
 策6 集い楽しむ機会と魅力づくり

④富士の恵を守る村では、 
 策7 100年後も誇れる自然環境の継承
 策8 災害発生にうろたえない対策準備

の8つの策を定め、平成29年度より順次実施してきました。その様な中で、平成29年度の主要事業としては子育て支援の充実策として総務省の補助事業を活用し、「おしの子育て支援プラットフォーム推進事業」で母子健康手帳の付加サービスを図る目的で「母子健康情報サービス」というポータルサイトを構築しました。このサービスでは、子どもの出生前からの記録(エコー画像や写真等の保存が可能)や予防接種の状況、次回接種時期のお知らせ、産前産後の心配事相談や子どもの成長に合わせた相談などが可能で、さらには遠方で暮らしている祖父母と情報共有が出来るため、遠方にいながらでも孫の成長や様子、記録が確認できるといったメリットがあります。また、各施策では、策2の「暮らしやすくなる村づくり」で、通勤ラッシュ時の交通渋滞緩和を見据えた道路網の改善、住みやすい住宅づくりとして既存住宅へのリフォーム補助、定住化促進のため新築住宅への補助金支給などの推進を図り、策3の「世界で活躍する人材の育成」では、英語教育の拡充を図るために年少から小学2年生までを対象とした外国人講師等による英会話教室の開催、中学校ではスカイプを利用して海外校との国際交流授業(ディスカッション授業)などを実施してきました。

電子母子手帳の案内

電子母子手帳の案内

また、平成30年度事業として、昨年度に引き続き英会話教室やスカイプによる海外校との交流事業を実施し、さらに英語教育の一つの取組として小学校での放課後倶楽部に英語を取り入れた「遊び」や外国のお菓子作りなどの「体験」等を昨年度事業に追加し計画しているところです。なお、平成30年度の主要事業として、策3の「世界で活躍する人材の育成」では、IoT/IcTを活用した産業用ロボットのプログラミング教材の作成及びプログラミングの広域連携などを計画しているところです。

今後は、将来の忍野村を背負う子どもたちのことを考えて、「知恵を絞り、知識を活かし」、財源を「探し、稼ぎ」、効率の良い事業展開へと果敢に取り組んでいかなければならないと考えています。  

忍野中学校

忍野中学校

海外交流授業の風景

海外交流授業の風景