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山形県山辺町/地方創生『高品質で町づくり』~伝統繊維産業は地域経済の活力剤

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年9月11日
玉虫沼の写真

ため池百選の代表的扱いとなった幻想的な「玉虫沼」


山形県山辺町

3013号(2017年09月11日)  山辺町 産業課


山辺町の概要

山形県の形は、人が笑っている横顔に例えられます。笑顔時にできるエクボの場所が山辺町の位置です。

人口は、平成29年3月時点で14,635人。県都山形市を東隣にし、先に宮城県境の蔵王山と奥羽山脈を望むことができます。その懐にある扇状地に県都の市街地を眺められ、山形盆地の対面に位置し、西部には出羽丘陵があります。市町境に蔵王を源流とする一級河川須川が流れており、須川に向かって出羽丘陵地から傾斜地となって、そこに田園風景と人口集中地を兼ね備えて平野部を形成しています。

また、丘陵地には中山間地の集落があり、日本の棚田百選「大蕨(おおわらび)の棚田」、ため池百選の「玉虫沼」を代表する風光明媚な地で、里の名水やまがた百選に選ばれた湧水群のある地域が点在しています。

さらに、山辺町は四季が明確で、気候を活かした果物を始めとする農作物の生産も充実しており、近年の気候変動の中でも風水害は少なく穏やかな地域です。

大蕨の棚田の写真

収穫を待つ、杭掛け風景が特徴の「大蕨の棚田」

繊維産業のニットと緞通

本町は古くから絹織、木綿、蚊帳、藍染など繊維産業が拓けており、繊維の町として歩み続け、昭和になってから緞通やメリヤス(ニット)業が営まれ、産業として発展してきました。  

ニット業は、農業と共に基幹産業で栄え、特にサマーニット発祥の地として、商工業などへの波及もあり、町は繁栄を謳歌していました。昭和50年代を最盛期に法人・個人及び染色等の関連業を含め154事業所でしたが、平成26年には13事業所に激減しています。

一方の緞通業は町内に1社で、昭和10年に女性力を活かすため、中国技術者から手織絨毯の手解きを得て、段階的に手刺絨毯やマーセライズ工法(化学薬品洗濯による艶出し)という特殊技術開発と共に発展してきました。製品は皇室を始め、国内公共施設のビップルームなどの足元を色鮮やかにお迎えする逸品となっています。手織はオーダーメイドで日数が掛かり、手刺は短期間での作成が可能ですが、総合的に高価格帯の製品づくりの産業です。経済界に大きな影響を与えたリーマンショックと東日本大震災後には、生産数が激減する状況となりました。

高品質なものづくりを支える職人技の写真

高品質なものづくりを支える職人技(手織緞通)

繊維産業の様々な動きと現状

本町のニット業界の業態は、問屋やアパレル、百貨店等からの依頼による製品作成、いわゆる下請け専門で、最盛時には同製品の大量生産が主流でした。その頃から、気軽に地元で購入可能な販売店やブランドなど、自社発信の製品づくりを期待する声がありました。年が経ち、ニット業界だけでなく繊維業界全体で中国製等の海外製品との低価格競争が激化し、本町のニット関連事業所も廃業や倒産などに追い込まれる状態に至りました。山辺ニット同業会の資料では、会員数が平成3年の52社から平成28年現在では17社と減少しています。  

大量で安価な海外製品の台頭から生き残るため路線変更は既定となり、少数生産の高品質で高価格帯の生産へと変遷しています。現在操業している事業所は、それぞれに自社ブランドや自社発信のデザイン力を持ち、新たな強みを蓄え始めました。また、平成18年から町内でのニット産直の販売店も5社の連携で実施され、現在は4社でニット産地の町をアピールしています。

緞通は、ほぼ受注生産、オーダーメイドが主体で、高価格の路線経営を終始一貫しています。そして、前述した経済の変化を変革のチャンスと捉え、手織を始めとする高い技術を維持しながらホームユースの価格帯の手刺絨毯に新たな付加価値を与え、中心に据える業態に変更しています。一例として、県内出身者でフェラーリ等のデザインを手掛けている世界的工業デザイナーの奥山清行氏や国立競技場等の建築設計で有名な隈研吾氏とのコラボレーションを行うことに。それぞれのデザイナーによるラインを主に多売する戦略を追加して「山形緞通」という新たなブランドとして立ち上げています。その取組が認められ、平成27年にはグッドデザイン賞を受賞し、さらには、平成29年に運転となるJR東日本の「TRAIN SUIET四季島」の足元に敷き詰められ、低迷期を抜け出す力を持ち始めています。

牡丹の手織桜花図の手織

牡丹(左)と桜花図(右)の手織

『高品質で町づくり』を掲げる

地方創生を推進するに当たり、本町は、平成27年10月に『やまのべ人口問題・やまのべ総合戦略』を策定し、二つの大方針“子どもと育つ町”と“高品質で町づくり”を柱に展開することとしています。どの自治体も同戦略策定までには、短期間で住民アンケートの実施や代表者からなる委員会等による協議を行っていますが、地方創生の理念は、町の持つ強み、眠っている宝などを磨き上げることです。その認識を基本にした行程で、大方針等を含めて総合戦略は決定されています。当然、高品質のニット及び緞通の繊維産業は、町の強みや宝であることは織り込み済みとなっています。  

本町では、総合戦略の下、平成28年度に“伝統繊維産業いきいき活躍プロジェクト”(以下「いきいき活躍PJ」という)を実施しています。

グッドデザイン賞受賞の山形緞通の作品の写真

グッドデザイン賞受賞の山形緞通の作品

個性的な取組

いきいき活躍PJは、官民共同で実施し、雇用の充実を図ることを主眼にした仕事づくり、他産業への波及と連携を目的に3本の柱を立てています。一つ目は、ブランド強化を目的に首都圏の展示会ではトップセールスでアピールし、地元等では認知度を高める足固めの展示会等を開催すること。二つ目は、海外進出やインバウンド対応を推進する企業の支援を行うこと。三つ目は、農産品等の高品質なものづくりと共に多産業への波及を図るためのPR情報誌等を作成することです。  

山形緞通及びやまのべニットの東京都内での展示商談会には、町長によるトップセールを実施しています。その際、町長は自身の顔を編んだセーターを着込んで陣頭に立ち、高品質の技術をアピールしています。「まるでプリントのようだ」との声が多く、話題性で地元のマスコミに取り上げられました。この年、山形県では“全国技能五輪2016”が開催され、当町も6職種の会場になり、併催事業の一つに緞通の手織り職人の実演と製品の展示やニットの展示即売を行いました。大盛況と共に全国に高品質な繊維産業を発信することができました。

海外進出は、パリ進出と台湾進出の事業所を公募して展示商談会への支援を実施しています。インバウンド対策は、山形緞通の産業観光施策として、パンフレットの英語版を共同作成しています。おりしも、伊勢志摩サミットにおいて、日本のものづくりブースに和モダン緞通を展示。その際には、海外の人々への披露を担うことができました。

また、繊維産業を核に農業、商業や他工業などの町内の高品質なものづくりを主体に、製造過程の情報と観光を冊子に取りまとめた情報誌『やまのべPride』を初めて製作。英語版も仕上げ、同時にデジタル情報誌として町HPにもアップしました。町への魅力や興味を感じてもらうツールとして、交流人口増加等に繋げたいと考えています。同冊子を有効に活用しつつ、今後、都市圏等で行われる各企業独自の展示商談会等で連携を組んで、高品質なものづくりの魅力を一体となって発信していきたいと考えています。

やまのべニットのトップセールスの写真

やまのべニットのトップセールス

自慢本『やまのべPride』の写真

ものづくりと観光等の情報満載な自慢本『やまのべPride』

『ニット産地の町』を町内上げてPR

前述したとおり、昭和40、50年代のニット産業で町経済は潤っていました。「あの時よ、再び」という気運を高めるために町の銀行団、商工会、ニット同業会、町の四者でプロジェクトチームを結成。「ニット産地の町」のアピールを目的に、新たなムーブメントを興そうと事業を展開することにしました。  

全国的なニットの日(2月10日)に合わせて2月末又は3月初旬にある第1回定例会での「ニット議会」の開催日を再検討し、さらに議会開催日に町内各地でニットに親しみ、着こなすことを拡げる日を制定することにしました。そこで、12月10日を“いつでもニットの日”と独自に設定することとしています。その前後には、ニット企業団体等の即売、関連イベントを企画実施し、町広報紙でPRするなど推進していくこととしています。“いつでもニットの日”を普及するために、県内にある東北芸術工科大学の学生にロゴデザインを作成いただき、発表時には、『いつでもニットセレクション』と称して、各社の新作等のニット製品を展示し町内外にアピールすることに成功しました。

この事業が、単年度のみの事業とならず、「ニット産地の町」を長くアピールし続けるために毎年実施することを四者で確認し、ロゴデザインの商標登録の手続きを始め、記念日制定を具体的に進めています。

ロゴデザインの活用方法には、ニット同業会や町内の組織からアイデアが出始めており、活用方法の検討が急務となっています。やまのべニットのアピールと共に地域ブランディングの促進強化を図っていきたいと考えています。

ニット議会の写真

“いつでもニットの日”で12月開催のニット議会

いつでもニットセレクションの写真

いつでもニットセレクション

今後の展開は

伝統の繊維産業を核に各種事業を展開しましたが、そこで知り得たことは、繊維産業が持つ色、柄、デザイン、技法などによる流行があり、繰り返しお客様に手に取っていただくためには、人の記憶に留められることが重要であるということです。忘れられないよう努力することが必要で、マスコミ等に取り上げてもらうこと、情報発信をし続けることの大切さを理解し、そのためには官民協働が重要であると考えます。これは、ブランディング作業にも通じ、今後も情報発信を継続的に実施すべきと考えています。  

また、この度のいきいき活躍PJで得たもう一つのことは、繊維産業の地元での販売、いわゆる産直は、集客力があることが実証されたことです。そこで今後は、山形緞通ややまのべニットの各社等が行う感謝祭等の販売会への来場者を飲食店や他店等に繋げ、拡げていくことが、『高品質で町づくり』の目指すべき方向といえます。そのためには、農産品を含めたものづくりを核に質の高い農商観連携を具体的に進め、より大きな輪に広げることが課題であると考えています。