水没することから「幻の橋」として知られるタウシュベツ川橋梁
北海道上士幌町
3043号(2018年6月18日)上士幌町長 竹中 貢
北海道十勝管内の北部に位置する上士幌町は、日本最大の国立公園「大雪山国立公園」の東山麓に広がる、畑作と酪農が中心の町です。面積の約4分の3を森林が占める緑に囲まれた土地で、年間を通して降水・降雪量が少なく、全国的にも有数な日照時間に恵まれています。
すべてに手間ひまをかけるまちづくりを意味する「スロータウン」を理念に、豊かな自然と資源を活用しながら、健康・観光・環境と、子育て・教育をコンセプトにしたまちづくりに力を注いでいます。
町内には、源泉かけ流しの「ぬかびら源泉郷」、日本最大の公共育成牧場「ナイタイ高原牧場」、丘陵地の地形を取り入れた「上士幌ゴルフ場」、北海道遺産に認定された「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」など、魅力あふれる観光資源に恵まれています。
町の最大のイベントとして、国内で初めて開催された熱気球競技大会である「北海道バルーンフェスティバル」があり、毎年多くの観光客の皆様が訪れています。
町の人口は、2018年4月末時点で5、000人。1955年の1万3、608人をピークに、2015年には4、886人まで減少しましたが、2016年に前年比31人増、2017年は71人増と増加しています。
その背景には、町が積極的に取り組んできた移住・定住対策や、子育て支援があります。
移住・定住対策では、2010年に設立したNPO法人「上士幌コンシェルジュ」を中心に、移住・定住体験プログラムの企画や移住体験用住宅の企画・紹介・管理、それらに関連した情報発信などを通じて、移住・定住支援を行っています。2017年度時点で、累計151人の方々が上士幌町に移住されています。
移住者同士のネットワークもとてもしっかりしており、毎月交流会を開催し、お互いに情報交換をしたり地域住民と触れ合っています。先輩移住者が新たに移住してきた方の相談役になっている環境は、移住を考えている方たちにとって心強いものです。
毎年8月に開催される北海道バルーンフェスティバル
子育て支援への取組としては、 2015年に認定こども園を新設し、さらに翌年4月より保育料を10年間完全無料としています。ほかにも、高校生までの医療費無料化や、中学生以下の子どもがいる家庭に対して住宅新築の費用を助成するなど、子育て世代が安心して暮らせる環境づくりを進めています。
これらの施策の財源となっているのが「ふるさと納税」です。町では、ふるさと納税導入当初から「子育て・少子化対策」を寄付金の使い道として掲げていましたが、2014年に「子育て少子化対策夢基金条例」を制定し、寄付金を積み立て、各種子育て施策に活用しています。平成28年度に全国から寄せられたふるさと納税寄付金は21億円を超えました。このように多くの御寄付が集まったのも、ひとえに多くの皆様にまちの取組をご理解いただいた賜物と感謝しています。
また近年は、子育て支援だけでなく、雇用面などの支援も進めています。例えば、2016年に役場内に開設した無料職業紹介所もその一つです。待遇や仕事内容だけでなく、企業の雰囲気や経営者の思い、そこで働く人たちの表情を伝えるために、求人サイトや情報冊子なども活用して情報を発信しています。
開設以降200件以上の相談があり、採用実績は20件を超えました。こうした取組を行うことで、地場産業・地域経済の活性化にもつなげていきたいと考えています。
認定こども園
全国で人口減少が加速していく中、東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかける「地方創生」の動きがさらに活発化しています。
地方創生とは、子育てや仕事に限らず、総合的にどのような町を築いていくかという地域づくりにも深く関わります。町では2015年に策定した「上士幌町人口ビジョン・総合戦略」において「上士幌版生涯活躍のまち」を重要政策とし、2016年度から取組を本格的にスタートさせました。
元気なシニア世代が希望して上士幌町に移り住み、地域住民と交流しながら健康で活動的に生活し、生涯活躍できる町を目指していきます。
2017年6月には、生涯学習・世代間交流の拠点施設として、生涯学習センター「わっか」がオープンし、学童保育所、子ども発達支援センター、高齢者生きがいセンターなどを統合しました。子どもから高齢者まで、気軽に立ち寄れる施設として活用されています。
さらに同年9月、まちづくり会社である「㈱生涯活躍のまち かみしほろ」を設立しました。
同社は、主に地域包括ケア充実事業、生涯学習の場創設事業、移住希望者募集事業を行っています。中高年齢者の方に働く場を提供するための人材センターや、まちなかで移住者などが起業にチャレンジするための拠点整備なども進めていきます。また、生涯学習の場を提供する「生涯活躍かみしほろ塾」を開校し、上士幌町でしかできない専門塾として地域活性化を図っていきます。
生涯学習センター「わっか」プレイルーム
今年度より開校する「生涯活躍かみしほろ塾」は、地域の特性を踏まえた様々な学習機会を設けて町内外から広く参加者を募り、知的・技術的に新しい体験を提供すると同時に、世代や地域・文化的背景を横断した人的交流を促進する場とします。
町内だけでなく、十勝管内の近隣市町村や道内、さらには首都圏を含む全国からお越しいただきたいと考えています。
ご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひともご参加いただけますと幸いです。ともに魅力ある地域づくり、まちづくりを推進していきましょう。
『生涯活躍かみしほろ塾』概要
主 催 上士幌町
後 援 北海道、北海道町村会
事務局 ㈱生涯活躍のまち かみしほろ
上士幌町企画財政課
参加対象 全国、年齢・性別問わず
開催期間
2018年7月開校、2019年2月修了
講座概要
総合講座、専門講座、かみしほろ起業塾(概要は別表 [PDFファイル/529KB]のとおり)
お問合せ ㈱生涯活躍のまち かみしほろ
お申込み先 http://kamishihoro-town.com/
上士幌町はこのほかにも、地方創生に向けた様々なチャレンジに取り組んでいます。
今年4月には、町の交通ネットワークの拠点となる「上士幌町交通ターミナル」がオープンしました。路線バスをはじめ、コミュニティバスやタクシーが集まるハブ拠点となることで、交通のさらなる利便性向上を図っていきます。
5月には観光地域商社(DMO)として「㈱karch(カーチ)」を設立。旅行・宿泊などの観光事業やバイオマス由来の電力小売事業などを手掛けていきます。2019年にはナイタイ高原牧場レストハウスが新たにオープン予定のほか、2020年には道の駅もオープンする予定となっています。観光を地域の新たな稼ぐ仕組みとし、雇用創出にもつなげていきたいと考えています。
「地方がどう元気になるか」――これはすべての自治体にとっての課題です。そのためには、様々な世代の方に住んでいただくことはもちろんですが、より魅力あふれるまちづくりをしっかりと進めていかなければなりません。
上士幌町は、地方は自分らしい豊かな生き方ができる場所であること、そして多くのチャレンジができる場所であるということを、これからも発信していきます。
ナイタイ高原牧場
道の駅完成予想図