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沖縄県国頭村/森の恵みを活かす新たな森林業・木育活動の推進~亜熱帯の森林資源活用による地域振興~

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年1月16日
長尾橋からの遠景の写真

長尾橋からの遠景


沖縄県国頭村

2986号(2017年1月16日)  国頭村長 宮城 久和


国頭村の概要

国頭村は、沖縄本島の最北端に位置し、県庁所在地の那覇市から車で2時間半ほどの距離にあります。村面積は19,482ha、沖縄県全体面積の約8.6%を占め、市町村合併が進んだ現在でも、県内市町村の中で5番目に大きい村です。  

村の中央部には、沖縄本島最高峰の与那覇岳(503m)を含め島の背骨を形成する山々が連なり、それらを水源とする多くの河川は、水が清らかで豊富な水量を有しており、沖縄本島の重要な水源の役割を担っています。また、東は太平洋、西は東シナ海に面しており、海岸沿いのわずかな平地に20の集落が点在しています。

村土の84%を占める山林は、「やんばる(山原)」と呼ばれ、世界の中でもこの地域にしかいない固有種のヤンバルクイナやノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなど貴重な国指定天然記念物が生息しています。生物多様性の豊かな森の多くは、平成28年9月15日に国内33か所目の「やんばる国立公園」に指定されたばかりです。来年には、この地域が「世界自然遺産」に登録されるよう、国、県と共に動き出しています。

森林業の取組

国頭村は、その豊かな森林資源を活かし、300年前の琉球王朝時代から首里城(那覇市:世界遺産)の建築材の供給や、当時、中国との交易で栄えていた重要な交易船の材料の供給地として位置付けられていました。

その後も、去った世界大戦で焼け野原となった沖縄本島中南部の戦後復興材をはじめ、家屋の建築材や燃料の薪炭材等の供給地として、村全体は栄えていました。

しかし、戦後のアメリカ統治の影響もあり、住宅様式は木造からコンクリートへ、人々の生活様式は薪や炭等の燃料から石油やガスへと変化し、さらには県外産スギ材等の移入材の流入により、近年では、国頭村木材の需要は低下してきていました。

そこで、木の持つ温もりや調湿効果などの効用を広く再認識してもらうとともに、森林の持つ多面的効用を最大限に活かす新たな森林施業「森林業」の創出を目指し、森の持つ癒し効果を活かした“森林セラピー”や森の動植物や人との繋がりを伝える“森林ツーリズム”、木炭やキノコ、木工製品等、森の恵みを活かした“特用林産物の生産”などの取組をはじめました。

そのような取組の1つとして、10年ほど前から、木材の需要を取り戻すことを目的として、村内の小学校全児童の机・イスを国頭産材に切り替えました。この机・イスは小学校の入学時に親子で組み立て、6年間持ち上がりで使用し、そして卒業時にその子ども達にプレゼントする取組を続けています。

小学校入学時に親子で組み立てる机・イスの写真

小学校入学時に親子で組み立てる机・イス

さらに、国頭村森林組合では、製材から発生する端材を利用して、木目が日本一鮮やかだと言われるリュウキュウ松の積木5,000ピースを制作し、県内の各種イベントに貸し出しする等国頭村産木材のPRに努めてきました。

「木育」との出会い

そんな中、平成24年2月に全国で国産木材利用の推進活動を展開している“東京おもちゃ美術館”多田館長と出会いました。そして、「木育(暮らしの中に木を取り戻す活動)」を知り、その伝達手段として “木製おもちゃ”が次のような点で適していると気付かされました。

  1. “おもちゃ”は、主に幼児が手に取り遊ぶ道具だが、幼いころから“木製おもちゃ”に触れていれば、木の良さが肌にしみつく。その経験が小学生になった時には木製の勉強机をほしがり、大人になった時には木製家具を選び、木の住宅に住みたくなるなど、「木づかい」を好む可能性が高くなる。
  1. 幼児は興味の向くまま動き回るため、常に両親や祖父母は目が離せないが、“木製おもちゃ”に夢中になり一人遊びができる様子をみて、改めて木の良さに気付く大人も増えている。
  1. “木製おもちゃ”は、幼児が遊ぶ道具のため比較的小さな材料で制作可能で、製材の際に発生する端材など使い道の限られていた木材の利用にも適しており、無駄なく資源を利用できる、自然に優しく高付加価値な製品である。

そこで、“木製おもちゃ”を足掛かりに、国頭村の最大の地域資源である森林及びそこで育まれてきた木材を活用し、地域で行われている林業を発信する拠点施設を平成25年11月に国頭村森林公園内に整備しました。この施設は、企画・設計・監修に“東京おもちゃ美術館”のバックアップを受け、東京の施設の姉妹館 “やんばる森のおもちゃ美術館”として誕生しました。

やんばる森のおもちゃ美術館の写真

やんばる森のおもちゃ美術館

「やんばる森のおもちゃ美術館」の取組内容

“やんばる森のおもちゃ美術館”は、やんばるの森の60%以上を占めると言われるスダジイを、室内入口のトンネルの壁材やフロアーの床材に至るまで幅広く使用しています。壁の棚には約40種、120個余りの厳選された木製グッドトイが展示され、そのすべてを手に取って遊べるようになっています。  

多田館長に「木目の美しさは日本一だ!」と言わしめたリュウキュウ松を卵型に加工し5,000個を敷き詰めた“ヤンバルクイナの卵プール”は、幼児が木の卵でいっぱいのプールの中に潜るなど自由に遊べるため、美術館の一番人気のおもちゃです。

ヤンバルクイナの卵プールの写真

ヤンバルクイナの卵プール

また、6角形をした6種類のやんばる産木材をマグネットで鉄製壁に貼り付け、木材の素材の色を活かして思い思いのデザインを描き出す“壁面パネル”は、お客さんによって日々張り替えられるため、毎日見るのが楽しみです。

さらに、今から約300年前の琉球王朝の三司官で、山林の管理方法をまとめたことから“沖縄の林業の父”と呼ばれた「蔡温(さいおん)」の時代に植えたといわれるリュウキュウ松は、特別に“蔡温松”と呼ばれ大切に保護されていますが、不運にも台風で倒れた直径2m近くの“蔡温松”を利用し、室内の3か所にモニュメントとして配置して、森づくりの大切さを今の時代に伝えています。

美術館内の写真

美術館内

出張イベントの写真

出張イベント

このように美術館のおもちゃには、木の温もりや香り、色合い、手触り、音などを感じとれるよう随所に工夫を凝らしていますが、多様な感性を持つ子ども達は、おもちゃ作家の意図を超えた遊びをしたり、違う種類のおもちゃを組み合わせて遊んだりと、見ていて飽きないし、その自由な発想には感心してしまいます。

また、児童の付き添いで来られる両親の多くは、一緒におもちゃで遊んだり、夢中で遊ぶお子さんの姿を微笑ましく眺めたりするなど、最近他の場所でよく見かける、携帯電話を操作しながらお子さんと過ごす光景を見る機会も少ないような気がします。

美術館に来場するお客さんの中には、高齢者の団体もいます。その中には、おもちゃで夢中になって遊ぶ人や、木に触れながら子どもの頃森の中で遊んだ話に花を咲かせるグループもおり、この施設の魅力と多様性を改めて感じています。

さらに美術館では、国頭村まで足を運ぶことが難しいお子さんのため、卵プール等のおもちゃセットを2tトラックに積み込んで、持ち運び出来る“移動おもちゃキャラバンセット”を用意しており、

年10回ほど県内の各種イベントや保育所・幼稚園などの幼児施設に出向き、国頭の森のPRや木育推進に努めています。特に、遠出の難しい、長期入院中の幼児や、養護施設の子ども達には非常に喜ばれています。

“おもちゃキャラバン”に参加した保護者からも「おもちゃ美術館があることは知っていたが、遠くて行けなかった。この様な機会があってうれしい!」との声が多く聞かれ、活動の励みになっています。

移動おもちゃキャラバンセットの写真

移動おもちゃキャラバンセット

森林業推進活動のこれから

おもちゃ美術館を整備し新たな木育活動を開始して約3年になるところですが、整備前と整備後の森林公園の有償来園者数を比較すると、整備後の来園者は、倍増の15,000人(平成27年度実績)にまで伸びており、公園施設の活用に大きく寄与しています。

おもちゃ美術館は、やんばる国頭村の森の豊かさや森と人との繋がり、木材の有用性を発信する拠点施設というだけでなく、村の観光施設の1つでもあり、自然フィールドを使っての体験が主要な本村の観光施設の中で、雨天時にも観光客の皆さまにご利用頂ける重要な場にもなっています。

しかし、おもちゃ美術館の名前は知っていても、国頭村へは遠くて足を運べない方々への動機づけや、実際に訪れたお客さまが持ち帰りたくなるお土産等の開発、一度来たお客さまをリピーターに繋げる「おもてなし」技術のスキルアップ、木育活動を担う人材の確保など、まだまだ課題は山積しています。

今後は、世界自然遺産への登録の声が上がるやんばる国頭村の地域資源を保全しつつ最大限に活用し、“森林業”の創出を図りながら、その拠点施設の魅力向上に努めていきたいと思っています。

沖縄においでの際は、是非、国頭村までお越しください。村鳥のヤンバルクイナと共にお待ちしています。