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鳥取県若桜町/町づくり、夢を持てば未来がある

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年11月14日更新
𣇃米(つくよね)の棚田の写真

「日本の棚田百選」に認定された𣇃米(つくよね)の棚田


鳥取県若桜町

2980号(2016年11月14日)  若桜町長 小林 昌司


若桜町の概要

若桜町は、鳥取県の東南端に位置し、兵庫県と岡山県の県境に接しています。面積は約200㎢であり、95%は森林で、その4分の1は国有林です。また、中国地方では大山に次ぐ高峰氷ノ山(標高1,510m)があり、冬はスキーやスノーボード、夏は登山やキャンプ、トレイルラン、沢登り等、一年を通して賑やかです。近年は特に中・高齢者の登山者が多く訪れているのが目立ってきています。

木材産業の景気が良かった昭和30年代から40年代前半には、町内に製材工場が20社ほどあり、良質な杉材を生産して栄えてきました。特に吉川杉は、樹齢300年といわれていて皇居の豊明殿の天井板にも使われていることでも有名です。しかし、昭和40年頃から外材の輸入が始まり、国内の木材産業は低迷し、若桜町の木材産業も大きな打撃を受け、若者の就労する場がなくなっていきました。

昭和30年代には1万人程度だった人口は、近隣に就職先がないことが影響し、若者層を中心に県外に流出し人口減少が始まり、昭和45年には本町は過疎地域に指定されました。現在は人口が約3,400人、高齢化率は約44%で、30年先の日本の高齢化社会を先取りしている状況です。

「教育は地域の力」小中一貫校

人口減少問題については、以前より議会の方から、工場誘致を重点におくよう提案がありましたが、人材も乏しくなかなか思うように工場や企業の誘致をすることが出来ていませんでした。

結果として、特に若者の流出による子どもの数が極端に減少していました。就任当時は中学校が1校、小学校が2校ありましたが、児童数の減少に伴い小学校を1校に統合しました。当時は反対の意見もありましたが、何しろ児童が少ない訳ですから、むしろ統合は自然の流れでした。

小学校の耐震問題もありました。昭和30年代に建築した若桜小学校は、児童数800人規模で、鉄筋コンクリート造り3階建(一部4階)の校舎でした。同校の耐震工事をすると7~8億円かかる積算でした。一方、中学校は平成12年に移転改築した素晴らしい学校でした。

将来を見通した場合、小学校は多額の費用をかけて耐震改修をしても、児童数は減少する一方です。反対に中学校は新しい校舎でしたので、敷地内に校舎を増築することとし、生徒数の減少が見込まれたとしても、施設一体型の小中一貫校とする方針を打ち出しました。

しかしながら、小中一貫校の例は県内には1校しかなく、議会、教育委員会、保護者会、学校の教員等の了解等、開校までに4年もの歳月を要しました。

特別教室棟等、校舎の増改築工事を行い、町営バスの停留所も敷地内に新設したほか、翌年には給食センターも学校の敷地内に移転改築しました。何といっても一番苦労したのは、教員がどの様にカリキュラムを組んだ学校運営をするかということでした。しかし、4年前から国内の先進地を視察する等調査研究を重ね課題を解決し、ついには関係者の皆さんの苦労が実を結び、平成24年4月に施設一体型の小中一貫校「若桜学園」が誕生致しました。本当に教員や関係者の努力の賜であり、感極まるものがありました。

小中一貫校「若桜学園」の外観写真

小中一貫校「若桜学園」

現在、若桜学園では1年生から4年生まで、5年生から7年生まで、8年生から9年生までの3ブロックに分けた教育を行っております。

本年度で5年目になりますが、若桜学園の児童・生徒は素晴らしい生活環境の中で伸び伸びと学習に、運動に、文化活動に励んでいます。職員室は小、中の垣根をとり、中学校の教員も5、6年生の授業にも出ています。一昨年から英語教育強化地域拠点校としても頑張っているところです。

文部科学省の方針も、今後は小中一貫教育に重点を置いた指導がなされるようであり、私達の小中一貫教育校の方針は間違っていなかったと喜んでいるところです。

教育に活力が出てきたことで、町にも活力が出てまいりました。改めて、「教育は地域の力」ということを感じています。

小中一貫校若桜学園の運動会の様子の写真

小中一貫校若桜学園の運動会

保育料の無償化と子育て支援

昨年から人口減少対策として地方創生が始まりましたが、私は人口減少については就任当時から大きな問題として捉えていました。「5年先に困るのなら、今、対策を講じよう」というのが、私の方針です。

何故若者が県外や鳥取市の方に転出するのか。その理由は、住むところがない、勤めるところがないということです。しかし、今では道路事情もよくなり鳥取市までは40分で、鳥取市河原町の工業団地には25分から30分で通勤できるようになりました。

土曜日は休日という会社も増えています。そこで若桜町に住んでいただき、土、日曜日には空気のきれいなわが町で子育てできる仕組みを考えました。

鳥取県は平井知事のもと、子育て支援については全国一であると誇れるような取組を行っています。その一つとして、県と相談しながら、全国でも有名な私立「若桜幼稚園」と公立「若桜保育所」を統合し、認定こども園「わかさこども園」を平成25年4月に開園いたしました。これも園児数の減少に伴い町から統合するように働きかけたものです。

また、統合を機に「わかさこども園」の保育料を無償化にしました。0歳児から5歳児まで、本町に居住する園児については、保育料と給食費はゼロです。第1子から無償にするのは全国でも初めてであり、世間に注目されたところです。今では、全国でも若桜町の施策を取り入れて保育料を無償化する自治体も出てまいりました。更には、入園時に園児服、体操服も無償支給し、保護者の負担軽減につとめています。

また、園児たちの生活環境を良くしようと、園舎の前の小学校跡地を芝生にして、周囲370mはゴム舗装の運動コースにしました。園児たちは芝生の中で遊ぶことや運動コースを走ったり、歩いたりして体力づくりを行うこともできます。

わかさこども園の子どもたちの写真

わかさこども園の子どもたち

この4月にはこども園に併設して、子育て支援センター「遊びば」を建設致しました。毎日、お母さん方と幼児が遊びに訪れ、効果的な運営ができているとともに、住民の皆さまにも喜んでいただいています。

その他の子育て支援策として、①0才から高校生までの医療費助成、②妊娠期からの継続した子育て支援「ネウボラ」、③三世代が居住している場合の三世代居住支援交付金、④1才未満の乳児を家庭保育する場合に子育て応援給付金として月額3万円の支給、⑤出産祝金として第1子、 第2子は5万円、第3子目以降は10万円の支給、⑥若桜学園に入学する場合は入学祝金1万円、7年生に進級する場合は進級祝金1万円、一人親家庭入学祝金としては1万円の支給、更には、⑦若桜学園の児童、生徒の給食費の2分の1は公費負担、⑧高校生の通学補助として一人月額7,000円の支給、⑨わかさ氷ノ山スキー場のリフト券助成、町営の温水プールは春・夏・冬休み中は無料ーとしています。

私は基本的には乳幼児から義務教育終了時までは、無償という子育て支援策を目標にしています。

わかさ氷ノ山スキー場の様子の写真

良質なパウダースノーのわかさ氷ノ山スキー場

移住・定住相談センターを設置

移住・定住についても、重点的に取り組んでいます。まず、住宅対策として、空き家を個人で改修していただく場合は、200万円の補助を行っています。また、町が10年間借り受けて改修し、移住者に貸し付けも行っています。

他にもおためし住宅を2戸建設して、町内での生活を経験しながら移住を考えていただくこともしています。最大のヒットは若者住宅3DK(2戸)です。家賃は月額2万5千円ですが、18才未満の子ども一人につき5千円軽減しています。例えば、該当する子どもが3人いらっしゃれば家賃は1万円となります。大変ご好評いただいており、今年度も既に2棟発注しています。さらに、平屋の2DKを4戸建設しました。昨年から若桜学園の近くの公営住宅の建替を計画的に行い、昨年は4戸、本年度は8戸を計画しています。

また、役場近くに用地を確保しているところであり、住宅対策も着々と進んでいます。結果として、この一年間に30人の移住者があり、わかさこども園の園児も昨年の47名から今年は65名に増えました。町ではさらに住民の皆様と一体となって移住・定住を進めるため、若桜駅前に相談員3名を配置した移住・定住相談センターを設置しています。

移住・定住相談センターの様子の写真

移住・定住相談センター

若桜鉄道と連携した町づくり

若桜町は宿場町、城下町として栄えた町であり、国の史跡に指定された若桜鬼ヶ城や若桜宿には古い町並みが残っており、国の伝統的建造物群保存地区の選定をめざして文化庁の調査を行っています。若桜鉄道と連携してもう一度活力のある田舎の町を作ってみたいと思っています。

夢を持って取り組めば、若桜町には未来があると確信しています。