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長野県高山村/『アンチエイジングに取り組む健康長寿の村』

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年10月10日
松川渓谷の写真

錦織りなす「松川渓谷」


長野県高山村

2976号(2016年10月10日)  高山村長 久保田 勝士


自然と共生する高山村

高山村は、長野県東北部に位置し、7割を占める上信越高原国立公園と85%の森林に恵まれ、国立公園内の急峻な松川渓谷美と3,000mの北アルプスを遥かに望む、扇状地に広がる人口7,300人程の農山村です。

松川渓谷には、名湯山田温泉等8つの温泉のほか、村営の温泉プールやデイサービスセンター等の社会福祉施設の入浴施設にも温泉を利用する等、豊富な温泉に恵まれています。

また、松川下流域の扇状地は高山産ブランドのりんご、ぶどうのほか、近年は、ワインぶどうの栽培が盛んな地域でもあります。

このような本村の豊かな自然を活かし、活力ある村づくりを目指す「高山村総合計画」に沿って、様々な施策を推進して参りました。

貴重な山里の原風景を未来に引き継ぐため、平成20年に「高山村景観条例」を制定し、平成22年には、失われたら二度と取り戻すことができない農山漁村の風景を未来に継承することを理念とした、 NPO法人「日本で最も美しい村」連合に加盟しました。

また、昭和55年に志賀高原ユネスコエコパーク(生存圏保存地域)に登録された上信越高原国立公園内の村の一部が、平成26年の区域の見直しにより全村登録されることとなり、より一層、環境の保全に努めています。

高血圧予防の減塩運動

長野県は平均寿命が男性も女性も全国一位となりましたが、本村もその長寿を支えている町村の一つです。

昭和30年頃の長野県は野沢菜漬け、保存食等の塩分摂取量が多く、脳血管疾患等による死亡率が高かったことから、県の進める減塩運動とともに食生活改善推進員や保健補導員の皆さんの協力のもと、積極的に減塩運動に取り組んで参りました。

1.食生活改善推進員の活躍

高山村では、昭和47年に発足した食生活改善推進協議会が、生活習慣病予防を目的とした食生活改善の普及啓発や安全・安心な地域食材を使った郷土食の伝承のほか、乳幼児期からの食育推進のために離乳食教室や子育てセミナー、保育園食育講座等を行ってきました。

2.保健補導員の活躍

昭和53年には保健補導員会を設立し、健康づくりサポーターとして、毎年、各地区で保健師や栄養士とともに健康づくり地区講習会を開催し、基本健診やがん検診の受診率向上や健康づくり等に努めています。

アンチエイジングの村づくり

近年、高齢化社会を迎え、誰もが健やかで暮らせる健康長寿の実現を願っています。

アンチエイジング研究でご活躍の白澤卓二先生(白澤抗加齢医学研究所長/元・順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授)によると、アンチエイジングを可能にする要因は、「食」、「運動」、「生きがい」の三つであるとご教示をいただき、毎年、アンチエイジング講演会を開催しています。

また、高山村では、住民の皆さんがいつまでも若々しく年齢を感じさせない、いわゆるアンチエイジングの村を目指し、平成22年に信州高山アンチエイジングの里スパ・ワインセンター(愛称・スパイン)を山田温泉に開設しました。

このスパインでは、地域食材を活かしたアンチエイジングジュースや足湯喫茶のサービス等で、ゆっくりくつろぎ、心を癒していただいています。

「スパイン」の足湯喫茶の様子の写真

「スパイン」の足湯喫茶

1.安全・安心な「食」

(1)環境保全型農業の推進

安全・安心な農作物を栽培する環境保全型農業を全国に先駆けて取り組み、昭和57年から、村内の家庭や事業所から出る生ごみ等を地力増進施設で有機堆肥化し、良質な堆肥は全て村内の農家に還元しています。

また、県が減農薬、減化学肥料に取り組む農家の担い手を認定するエコファーマーにおよそ300人の皆さんが認定される等、これまでの環境保全型農業の取り組みが評価され、平成17年には第10回環境保全型農業推進コンクールにおいて、農林水産大臣賞を受賞いたしました。

更に、ホタルの舞う無農薬による不耕起栽培やアイガモ農法による米づくりのほか、農薬のドリフト対策として、りんご、ぶどう等の農作物栽培地の団地化の推進等、環境保全型農業の推進に努めています。

地力増進施設の様子の写真

環境保全型農業を支える「地力増進施設」

(2)ポリフェノールを含む農作物栽培

健康に良いとされるポリフェノールを多く含んだりんご、ぶどうのほか、ワインぶどうの栽培に取り組んで10年になります。現在、40haの畑で栽培され、高山村のワインぶどうを原料に醸造されたワインは、本年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットの昼食会に提供される等、高い評価をいただいています。

村内においてもワインぶどう農家の皆さんが中心となり、農業の6次産業化としてワイナリーの建設が進められる等、村内産ワインの振興によりアンチエイジングに貢献できるものと期待しています。

また、アンチエイジングに適したノンアレルゲンで米の約6倍のポリフェノールが含まれるソルガム(タカキビとも言う)に注目し、実は米飯に入れたり、菓子や味噌等、健康食品として研究開発に取り組んでいます。また茎や葉はエノキダケの菌床培地に、収穫後の廃培地は牛の飼料として再利用し、牛糞は地力増進施設で堆肥化して農地に還元する等、資源循環型農業にも取り組んでいます。

ワインぶどう畑の様子の写真

松川扇状地に広がるワインぶどう畑

(3)学校給食センターの整備

高山村には小中学校が一校ずつあり、児童生徒等の800食を職員が真心を込めて調理しています。

健康づくりには食育活動が大切であり、その拠点施設としても学校給食センターは大きな役割を果たしています。

高山産の米・キヌヒカリや野菜、果物、山菜のほか、村内酪農家の「信州高山村こだわり牛乳」等を用いた村内産食材の利用率は、平成27年度の調査では41.5%となっています。

本年8月10日には、老朽化した学校給食センターを移転新築し、食物アレルギーに対応する専用調理室や試食会、食育講座ができる専用室を設ける等、食育の拠点と位置付け、健康長寿の村づくりの一翼を担っています。

2.老化防止の「運動」

65歳以上の7割近くが就業する高山村の農業は、傾斜地の多い畑での農作業のため、自然と足腰を強くする運動にもなり、生涯現役の高齢者の方が沢山いらっしゃいます。

多くの村民の皆さんは、松川渓谷沿いに8つの温泉が連なる湯つづきの里の豊かな温泉に浸かり、高山村直営の「YOU游ランド」の温泉プールでは、インストラクターによる水中運動教室やウォーキング教室等に参加し、汗を流しています。

また、樹齢650年をはじめ数百年を超す、しだれ桜の古木が20本以上点在し、五大桜をめぐる桜トレッキングや松川渓谷の舞の道遊歩道の散策でマイナスイオンを浴び、冬は山田牧場の雪上スノーシュートレッキング等、四季折々の自然の中で運動に親しんでいます。

水中運動教室の様子の写真

「YOU游ランド」の温泉プールで水中運動教室

桜めぐりトレッキングの様子の写真

桜めぐりトレッキング

3.心を育む「生きがい」

錦織りなす松川渓谷の紅葉は日本の紅葉百選に選ばれています。急峻で10㎞に及ぶ松川渓谷の新緑、紅葉、雪景色とともに、落差30mの豪快な滝を裏側から見ることができるパワースポットの雷滝、落差180mの雄大な八滝等、四季を通して訪れる皆さんの心を癒し、元気づけてくれています。

また、山田温泉大湯広場の足湯やスパインの足湯喫茶ではアンチエイジングジュースを飲みながら談笑し、リフレッシュしていただいています。

長野県は公民館活動が盛んで、高山村も同様に生涯学習等、活発な分館活動を推進し、老化防止に努めています。

このように「食」、「運動」、「生きがい」といった要素が、豊かな自然と人とが共生する高山村の暮らしの中にたくさん詰まっています。

雷滝の写真

パワースポット「雷滝」

未来に輝く豊かな自然と健康長寿

近年、私たちの生活は限りある資源やエネルギーを大量に消費し、自然生態系や人の健康への影響、地球温暖化等、地球環境に大きな影響を与えています。

そこで、昨年12月に力は小さくとも、環境への負荷の少ない持続可能な社会の構築に協働して貢献していくことを理念とした「高山村地球にやさしい環境基本条例」を制定し、本年、アクションプランの策定に着手しました。

また、本年8月11日(山の日)には、名古屋大学が提唱する、EU(欧州連合)の「市長誓約」をモデルとした、気候エネルギー自治を推進する日本版「首長誓約」に誓約第2号として登録されました。

先人の皆さんが培ってきた自然環境や食を含めた風俗、文化を現在の私たちも大切にし、後世に引き継いでいくことが、健康長寿の村づくりに繋がっていくこととなります。

高山村は、本年、「未来に輝く豊かな自然と健康長寿」をキャッチフレーズに村制施行六十周年を迎えます。

この六十周年を契機になお一層、生涯現役で生きがいのもてる健康長寿の幸せな人生を送っていただける村づくりを村民の皆さんとともに取り組んで参りたいと思います。

「首長誓約」高山村誓約式に集う人々の写真

「首長誓約」高山村誓約式に集う