ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 京都府京丹波町/地域資源活用による豊かなまちづくりへ

京都府京丹波町/地域資源活用による豊かなまちづくりへ

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年7月4日更新
丹波広域基幹林道から望む町の北西部の写真

丹波広域基幹林道から町の北西部を望む


京都府京丹波町

2965号(2016年7月4日)  京丹波町 企画政策課


京丹波町の概要

京丹波町は、平成17年10月11日に丹波町・瑞穂町・和知町の3町が合併し、誕生しました。

京都府のほぼ中央部にあたる丹波高原の由良川水系上流部に位置しています。丹波高原にあって、標高400mから900mの山々に囲まれ、南側の山地は分水嶺の一部を成しています。

面積303.09k㎡の農山村で、このうち約83%を森林が占め、この間を縫って耕地が広がり、集落が点在しています。古くから、都と丹後・山陰地方を結ぶ交通の要衝として栄え、JR山陰本線や3本の国道が町内を縦横に走っています。さらには、平成27年7月に念願であった京都縦貫自動車道が全線開通し、京阪神など大都市圏へ1時間台で移動できるなど、比較的交通環境に恵まれたまちです。

町の人口は15,203人(平成28年1月31日現在)、このうち65歳以上の高齢者が5,936人(高齢化率は39.04%)と、高齢化が進行しています。

主な産業は農林業で、丹波高原の気候・風土を生かして生産される「丹波ブランド」産品をはじめとした、質の高い農林産物が生産されています。また、府内有数の酪農地帯でもあり、古くは「京の都の食料庫」の役割を果たすなど、総合的な食の供給地となっています。

京丹波大黒本しめじの写真

「京のブランド産品」に認証された京丹波大黒本しめじ

さらに町内には、四季折々にその姿を美しく変える「琴滝」や、京都府内唯一の鍾乳洞「質志鐘乳洞」、丹波高原の雄峰「長老ヶ岳」などの景勝地があり、特に紅葉シーズンには多くの観光客が訪れます。また、歴史ある建造物や史跡も多く見られるほか、古くから受け継がれてきた民俗芸能の保存活動も盛んに行われています。

琴滝の写真

季節の移り変わりとともにさまざまな顔を見せる琴滝

「住民自治」と「地域資源活用」

京丹波町では、高齢化が急速に進む中で、町の活性化に向け、まちづくりの原点に「住民自治」を掲げ、平成20年3月に「住民自治組織によるまちづくり指針」を策定。役場内に「地域支援担当」を設置して、既存の集落の枠を超えた組織の活動支援を行ってきました。

現在では、八つの団体が組織され、それぞれの地域特性を生かした活動を展開しています。

しかしながら、地域活性化の取り組みが広がりを見せる一方、高齢化は進行し、人口減少は確実に進んでいます。このような中、町では国・府の戦略を踏まえ、平成27年11月に京丹波町創生戦略を策定しました。

その中では、まちの強みである「森林」「食」「子育て力」「地元力」を活かすことで、基本理念に掲げる「日本のふるさと。自給自足的循環社会●京丹波」の実現を目指すこととしています。

町民の安心と暮らしの豊かさの中に、穏やかでどこか懐かしさを感じられる「日本のふるさと『京丹波』」の実現。そのために、町では、強みの一つである「豊かな森林資源」を活用した取り組みを進めています。

木のぬくもりを多くの人へ

本町は、古くから農業とともに林業が盛んな地域でした。広大な森林は、木材のほかクリやキノコなどの産物など、この地に暮らす人たちに豊かな山の恵みをもたらしてきました。

しかし、木材価格の低迷などに起因して林業経営が極めて厳しくなったことや、生活様式の変化などによる森林への関心の希薄化などから、豊富な森林資源は、活用されることが少なくなりました。

これを受け京丹波町では、平成25年4月に、50年後・100年後を見据えた上での今後10年の指針として「京丹波町森づくり計画」を策定しました。

さらには、平成24年4月に西日本で初となる林業専門の大学校「京都府立林業大学校」が京丹波町本庄に開校。同校には全国から生徒が集まっており、卒業生は、地元京丹波森林組合をはじめ、全国各地で活躍しています。

府立林業大学校第一期生として入学した生徒たちの集合写真

府立林業大学校第一期生として入学した生徒たち。今では、全国で活躍しています

このほかにも、町では、森林資源の活用に向けたさまざまな取り組みを行っています。そのきっかけのひとつになったのは、全国でも先進地である北海道との友好交流協定の締結でした。

本町と下川町は、両町の持続的な発展を目指し、平成25年3月に協定を締結。現在まで職員の人事交流、両町の町民によるそれぞれのイベントなどへの参加など、交流を深めています。

町では、平成26年4月に森林資源をはじめ、地域内で活用できていない資源の活用を進めるため、地域資源活用推進室を設置しました。同室では、子どものころから木に触れる機会を増やすことで、将来に渡って豊かなくらし・社会・森づくりにつながる環境教育「木育」事業を平成26年度から実施。町内にある「わち山野草の森」などを会場に、木工クラフトや草木染めなどの体験活動を展開しています。

また、子どもたちが木の温もりに触れながら遊べる施設として木の遊具などを設置した「木育ひろば」の開設、山林内の林地残材などを活用し、町内の介護福祉施設や児童福祉施設への熱供給を行う木質バイオマス熱供給システムの構築などを行っています。

さらには、「京丹波ぬく森のイス」贈呈事業のほか、薪ストーブ設置にかかる補助金の交付、町内に立地する京都府立須知高等学校の学校林「ウィードの森」を活用して「遊ぶ・食べる・学ぶ」ことを目的とした「森のぶるぶ」など、さまざまな取り組みを展開しています。

「日本のふるさと。」京丹波へ

京丹波町では、現在、バイオマス産業都市構想の策定に向け、活用可能な資源に関連する企業・団体の関係者、学識経験者などによる審議が行われています。この中では、家畜排せつ物、食品廃棄物などとともに木質バイオマスの活用についても議論が行われています。

京丹波町では、多くの人が木に触れ、先人が築いた木とともに暮らす豊かな生活を見直すことで、創生戦略でうたう「日本のふるさと。自給自足的循環社会●京丹波」が実現するものと考えています。

木と人のぬくもりを込めた「ぬく森のイス」

京丹波町では、町内産木材(ヒノキ)で作ったイス「京丹波ぬく森のイス」を、町内で誕生した赤ちゃんに贈る事業を行っています。このイスは、子どもの健やかな成長を願うとともに、イスを通して木の温もりを感じ、京丹波町の山や川など自然を愛し、ふるさとに愛着をもってもらえるような人に育ってほしいという思いを込めて製作しています。

ぬく森のイスの写真

子どもたちに贈られるぬく森のイス

平成28年2月に発行した広報紙掲載記事をもとに、今年度誕生した赤ちゃんに贈るイス作りの取り組みを紹介します。

原木の伐採

平成27年10月上旬、町内の山から、京丹波森林組合の職員が、イス製作の材料となるヒノキを伐採しました。職員らは、京丹波町の自然豊かな山で育った樹齢60年のヒノキをチェンソーで伐採していきました。

ヒノキを伐採する森林組合職員の様子の写真

ヒノキを伐採する森林組合職員

この作業は、約20mある大きな木を倒すので危険が伴います。職員は、万全の安全対策を行う中で、お互い連携しながら、木を慎重かつ大切に倒していました。

伐採に関わった同組合の職員は「京丹波町には、町面積の83%を森林が占める約25,000haの森林があります。これを利活用して暮らしを支える林業を活性化させることが大事です。地元で伐採した木を地元の人たちの手によって製材・加工し作り上げていく、『オール京丹波町』であることは意義のある取り組み」と話します。

木材の製材

伐採された木は、平成27年10月下旬、製材のため町内の製材会社へ搬入。一本一本、木の特徴を見極め、美しい面を出し、次の加工作業を行いやすいように職人の手で製材されました。同社の専務は、「この事業により、京丹波町の木が少しでも見直してもらえれば大変ありがたい。原木は長い期間をかけて成長したもので、決してきれいに整ったものばかりではない。わたしたちと同じように、京丹波町の水と空気で育ったので親しみを感じます。この京丹波町の木の感触を感じて成長してほしい」と話しています。

製材された木材は、折れにくく、たわみにくくするため、他の製材会社に引き継がれ乾燥が行われました。

ヒノキを製材している様子の写真

用途に合わせて製材されるヒノキ

製材品の加工

製材・乾燥された木は、加工のため、平成27年11月下旬に町内の木工職人の工房へ運ばれました。町内で無垢の木を使った家具などを作っている工房は、ぬく森のイスのデザインも担当しています。

加工作業は、工房の職人のほか、近隣市にある大学校で木工を学ぶ生徒がアシスタントとして加わり行われました。加工作業は、製材された材を一つひとつの木目や色味を見定め、最終的なイスの形を想定しながら、切出しや面取りなどの作業が行われます。工房の責任者は「イスは通常、広葉樹で作られるが、このぬく森のイスは針葉樹であるヒノキで作られています。ヒノキは柔らかく、あたたかい木の温もりを感じる素材だと思います。また赤ちゃんのイスなので、デザインも丸く優しい感じにしました。すべて町内で作られたイスはめったにない。赤ちゃんがこのイスと一緒に成長してくれたら、作っている立場としてとてもうれしい」と話しています。

学生に作業を説明する職人の様子の写真

学生に作業を説明する職人

仕上げはみんなの手で

森林組合や町内の企業・職人などの手で作り上げられた「ぬく森のイス」。最終工程である組み立てと焼き印・焼きペンでの子どもの名前と生年月日記入作業は、平成28年3月5日、木育事業の一環として実施しました。

作業には、取り組みを知った多くの人が参加し、子どもたちのためにイスを作り上げました。

本町では、今後も小さなころから木に触れる機会として「京丹波ぬく森のイス」を贈る事業を実施します。