六戸町南部を流れる「奥入瀬川」
青森県六戸町
2953号(2016年3月14日) 六戸町長 吉田 豊
六戸町は、青森県上北郡の東南部、八戸市・三沢市・十和田市の三市を結ぶ三角形の中心に位置する人口約1万1千人の町です。町内どこからでも三市まで車で10分から30分で移動できる恵まれた立地環境のもと、近年は、三市のベッドタウンとして発展しています。青森県内では数少ない転入者が増加している町で、人口、総世帯数も微増傾向にあります。
目立った高地や山岳はなく、町の大部分を平野と台地が占め、十和田湖に源を発する奥入瀬川、姉沼川など、大地と豊かな水に恵まれています。気候的には、青森県内では比較的温暖で積雪も少ない一方、ヤマセの常襲地帯でもあります。
町では、こうした自然環境に対応した農業が基幹産業となっており、稲作のほか、特産地鶏シャモロックと黒毛和種牛の畜産、ニンニク、ゴボウ、ナガイモ、ニンジンなどの根菜を中心とする野菜作りが盛んで、中でも大玉にんにくの産地として全国で高い評価を得ています。
そうした優れた自然や立地環境など町の特性・資源を活かしながら、住みよい定住拠点づくりを目指しています。
特産地鶏を使った「シャモロック鍋」
六戸町特産野菜
特産品のほか六戸町の自然環境と特徴あるイベントを紹介します。
まず明治38年にヤマザクラを植樹し、大正時代に自然公園化した歴史ある舘野公園です。ヤマザクラやソメイヨシノが咲き誇る春はもちろん、ヘラブナ釣りやキャンプも楽しめ、冬には白鳥が飛来するなど季節を問わず、にぎわいをみせております。この時期は、サクラとともにカエデやカラマツ、イチョウが色づき、見事な紅葉が楽しめます。
六戸町のシンボル「舘野公園」
また六戸町の「町の木」は楓です。国道45号線の街路樹や、役場前広場の楓の木が、新緑から紅葉まで、季節ごとに町を彩っています。
六戸町役場前の楓
キャラクターとしては「メイプルくん」。楓をモチーフとし、未来への発展と躍動感を表現した愛くるしい姿が町のあちこちで見られます。
六戸町イメージキャラクター「メイプルくん」
青森県南から岩手県北にかけて分布する「戸」のつく地名があります。起源については2つの説があります。1つは、弘仁年間(八一〇年~八二四年)に、征夷大将軍・文室綿麻呂(ふんやのわたまろ)が蝦夷平定後、この地に残した守備兵の駐屯地の名に由来するという説であります。もう1つは、鎌倉時代に、南部氏始祖・南部光行が源頼朝より糖部五郡を賜った際、郡を九つの部(戸)に分け、一部(戸)ごとに7つの村と一つの牧場を置いたことに由来するというものです。
平成5年に岩手県一戸町、同二戸市、青森県三戸町、五戸町、六戸町、七戸町、八戸市、岩手県九戸村の首長が一堂に集まり、さまざまな話し合いを持つ「戸のサミット」が初めて開催され、翌年の第二回では、「戸の兄弟のまち」を宣言し、いろいろな分野で活発な交流を深めることを誓いました。
六戸町で毎年11月に行われている「メイプルタウンフェスタ」では、「戸のじまん市」として一戸から九戸までの各市町村の特産品が集合、多くの来場者でにぎわう町の名物行事となっています。
メイプルタウンフェスタの様子
農業を基幹産業とする六戸町ですが、恵まれた立地環境・交通アクセスを活かし工業の振興にも努めています。平成26年4月、町北部にある金矢工業団地に、新たに大型木材加工場の立地が決定しました。
青森県産の原木を使って単板積層材(LVL)という建築材料を作る工場で、昨年夏から本格生産を始めています。従業員は操業開始時に60人を地元雇用し、生産拡大の効果のほか、県産材の付加価値が高まることで県林業の活性化に寄与することも期待されています。
六戸町金矢工業団地に建設された大型木材加工場
平坦地が多く、年間日射量にも恵まれた六戸町では、近年、太陽光発電所の立地が相次いでいます。平成25年12月には東京の太陽光発電事業者による1,500kw級の発電所が稼働し、昨年10月時点で4発電所、計6,250kwが稼働しています。
また昨年7月、新たに別事業者が町内4カ所で合計2万3,500kwのメガソーラーの建設を計画しました。各施設は昨年の春に着工し、本年の夏の稼働を目指しています。
六戸町では、両事業所の施設のほか、企業・個人含め太陽光発電施設の導入が盛んで、現在すでにあちこちで太陽光パネルが並ぶ光景が見られます。
平成25年12月に竣工した「六戸町メガソーラー第1発電所」
六戸町は、八戸市・三沢市・十和田市に囲まれ、常に周辺地域との関係で歩んできた経緯があり、住民は買い物でも、勤め先という意味でも選択肢が多く自由度が高い恵まれた環境にあります。また、高い山も深い谷もないため自然災害がほとんどなく、県内では比較的積雪が少ないなど、地勢・気候条件からも「住みやすい町」と言えると思います。
これまで定住支援対策として「定住促進新築住宅建設補助金」「若者定住支援事業補助金」、子育て支援対策としては「中学生までの医療費助成」の各事業を実施した結果、微増ではありますが町の人口は増加傾向にあります。
増加の理由としては、そういった事業もあげられますが、転入されてきた新住民の皆さんが主導的にまちづくりに関わっており、地域住民をまきこんで自ら自主防災会を結成するほか、新規に夏祭りを開催するなど、自ら企画立案したものが実現できるという意識を持てることも増加の要因だと思います。
人口増加が進む「小松ケ丘地区」
六戸町は、地形的に丘陵地帯で、畑作に適しております。一方、ヤマセの常襲地帯でもありますので先人の農家の皆さんが、根菜を中心に厳しい気候に対応した栽培技術を確立し、それを引き継ぎながら野菜づくりが広がってきました。
現在は、需要も安定し、栽培農家の戸数は減少していても、この環境に対応したノウハウをしっかりつかんで頑張っている人は、専業農家で高い所得を得ています。また、そうした農家では後継者もおり、「行者菜」など新たな作物に挑む農家もおります。
そうした意欲ある農家や新たな取り組みを始める農家、新規就農者には、積極的に支援しており、基幹産業のさらなる振興に努めてまいりたいと思っております。
また農業に限らず近年は、若い人たちの地域づくりに対する関心が非常に高まっており、「住みやすさ」について自ら話し合い、自分たちで町の特性をつくっていこうという人たちが増えてきました。
全国的にも少子高齢化の進行や財政状況の硬直化など、われわれ地方自治体をとりまく環境は、年々厳しさを増していますが、そのような中、私たちの町は、合併ではなく単独で進化していくという道を選択しました。幸いに六戸町は、多くの地域資源と「ひと」に恵まれ、それらを特色や個性としてまちづくりに活かしてきました。
これからのまちづくりでは、六戸町の多くの皆さんにとりまして「住みよさが魅力・やすらぎと感動の定住拠点」として、すべての世代の方に「住んでよかった」と実感できるよう施策を実現していきたいと考えております。