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広島県坂町/親から子へ、子から孫へと歴史・文化・地域を守っていくことのできるまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年12月21日更新
上空からの坂町の写真

上空より「海と山に囲まれた自然豊かな」坂町を臨む


広島県坂町

2944号(2015年12月21日)  坂町長 吉田 隆行


坂町の概要

坂町は、広島県の南西部、安芸郡の南に位置し、中四国地方の中心都市である広島市と隣接しています。 

人口は約1万3,200人で、高齢化率は28.9%です。 

町内にはJR呉線の駅が3つあり、広島呉道路や広島南道路などの幹線道路網も整備され、広島市や呉市の中心部まで、鉄道や車で約20分という交通利便性の高い町です。  

町域面積は15.69k㎡で、そのうち約50%が山林で占められており、町の周囲は約7.1㎞の海岸線及び山林で囲まれています。海・山といった恵まれた自然環境の中で、 生活圏がコンパクトに形成されており、緑豊かな山々と美しい広島湾の風景が広がっています。 

昭和40年代以降から行われてきた埋立て事業である広島東部流通団地建設事業や、広島港坂地区開発事業は、流通団地や学校、総合スーパー、郊外型商業施設、さらには宅地開発を促進し、 坂町を大きく発展させ、広島都市圏東部の新拠点として、期待を集めています。

三位一体の防災対策

坂町では、道路・河川・海岸整備などの三位一体の防災対策を実施し、安全・安心なまちづくりに取り組んでいます。

道路整備

国道31号とJR呉線により分断された新市街地と旧市街地を結ぶ県道坂小屋浦線は、現在、広島県により整備が進められています。  

均衡ある地域の発展、防災機能の向上、民生の安定など、将来のまちづくりに必要不可欠な道路であり、早期完成に向け、町においても、その整備推進に取り組んでいます。 

また、この県道を軸にアクセスする生活道路を段階的に整備し、ネットワーク化を図っています。 

海岸整備

坂町の沿岸部では、平成3年の台風19号、平成11年の台風18号、また、平成16年の台風18号の高波や高潮の越波により、多くの家屋が床上・床下浸水などの甚大な被害を受けてきました。 このような状況から、安全・安心なまちづくりのため、平成19年から県営事業として既設護岸の嵩上げと海岸に離岸堤4基(1基50m)の建設を進めており、本年度で完了する予定です。 

建設された3基の離岸堤の写真

建設された3基の離岸堤

町内全域で避難訓練を実施

近年、大規模災害が各地で発生しています。災害を事前に予測することは難しく、状況に応じて一人ひとりが判断することが大切です。そこで、坂町では、 平成23年から毎年、「大雨土砂災害」「地震・津波災害」を想定した避難訓練を実施しています。防災行政無線のサイレン音とともに、住民・防災関係機関等が一体となり、情報収集から避難まで、 実際の災害を想定し、実施しています。また、子どもの頃から防災教育を受けることで、大人になっても自ら判断し、率先して避難ができるようになるため、この訓練には、 町内の保育園・小中学校の子ども達も参加しています。

防災とスポーツ・文化活動の新しい拠点の誕生

平成26年9月に、防災とスポーツ・文化活動の新しい拠点として、Sunstar Hall(サンスターホール)が誕生しました。

この施設の命名権は、日用品メーカー「サンスター」の創業者が当町出身という縁でご購入いただいたものです。

  • 防災拠点:災害時には、備蓄倉庫も備わった地域住民の避難場所となります。本年度、国のニューディール基金を活用し、太陽光発電及び蓄電池を整備する予定としています。
  • 文化施設:コンサートなどを開催できるステージや1010席の電動式移動観覧席を備えています。
  • 体育施設:バレーボールの公式試合などを開催できるアリーナや200席の観戦席を備えています。

サンスターホールの写真

平成26年9月、防災とスポーツ・文化活動の新しい拠点「サンスターホール」が誕生

伝承文化

坂町には、秋祭りで奉納される曳船、頂載、屋台、獅子舞をはじめ、雅楽、亥の子神楽など、多くの伝統文化が、現在も町民の生活の中に息づいています。 

また、多くの神社・仏閣が各地域に点在し、それらは現在も、大切にそれぞれの地域の人々によって守られています。 

坂町では、約120年の歴史を持つ雅楽団体「坂雅正会」を坂町指定無形文化財に指定し、その活動を支援するなど、伝統文化の継承に努めています。  

坂雅正会の写真

坂町指定無形文化財に指定されている「坂雅正会」

子育てにやさしいまち

坂町は、可住地面積が少ないことから、若い世代の転出が課題となっていました。そこで、次世代を担う若者の定住促進を図るために、子育て支援住宅を整備しました。 この住宅は保育園・子育て支援センターを併設しています。保育園は、一時保育・延長保育を実施しており、働きながら子育てをしている世帯に大変喜ばれています。 

また、平成26年に子育て世代がふれあい、交流できるスペースとなることを目的として「きらり・さかなぎさ公園」を整備しました。ロープ遊具や全天候型遊具を備えており、 週末になるとたくさんの子どもたちの明るい笑い声があふれています。

きらり・さかなぎさ公園の写真

子育て世代がふれあい、交流できる「きらり・さかなぎさ公園」

観光・レクリエーションの振興

坂町では、平成22年8月に町制施行60周年を記念し、ウォーキングを通じて健康でたくましい「こころ」と「からだ」をつくり、 悠々(ゆうゆう)とした心豊かな生活を目指し、「悠々健康ウォーキングのまち」を宣言しました。町内に点在する歴史的・文化的資源を有機的につなぐウォーキングコースを町内全域に整備しており、 町内に3つあるJRの駅ともリンクしているため、町外の方もウオーキングを楽しみに坂町へ訪れています。このウォーキングコースを利用し、毎月1回産学官連携によるウォーキングイベントを開催しています。 

坂町悠々健康ウォーキング大会の写真

坂町悠々健康ウォーキング大会

また、平成24年から、毎年3月に「坂町悠々健康ウオーキング大会」を開催しており、町内外から1,200人前後の人が参加しています。コースは、坂町の緑豊かな自然や潮の香り、 島影の美しい広島港の風景を満喫できるように設定しています。2㎞のコースは、幼児から高齢者まで幅広い年齢層でウォーキングが楽しめる平坦なコース、5㎞のコースは、 町内の町並みや公園などを散策できます。そして、海・まち・山・空を望み、健康増進、自然体験、心のリフレッシュができる10㎞のタフな山間コースの3コースから選択してウオーキングを楽しむことができます。 歩いた後は、坂町の特産品である牡蠣を使用したカキ雑炊をふるまっており、美味しいと好評です。 

そして、今年で25回目を迎える「広島ベイマラソン大会」は、潮の香りを楽しみながら走れる海岸線のコースで、毎年1,500人を超えるランナーが、県内外から参加しており、 町を代表するイベントとなっています。  

坂町には、広島県が整備した全区間1,200mの西日本最大級の人工海浜である海水浴場、ベイサイドビーチ坂があります。広島市内から一番近い海水浴場で、駐車場も砂浜の目の前にあり、 海水浴だけではなく、ビーチバレーボール、ウインドサーフィンなどを楽しむ方もいらっしゃいます。屋外シャワー、更衣室も完備しており、快適なシーサイドリゾートを楽しむことができます。 

人工海浜「ベイサイドビーチ坂」の写真

西日本最大級の人工海浜「ベイサイドビーチ坂」

教育の充実

子どもから大人まで、町民一人ひとりが学ぶ意欲と生きがいをもった生活が実現できるよう教育施策に力を入れています。 

坂町では、「礼節」を重んじた教育を推進し、人と人とのつながりを大切にして、家庭・学校・地域が一体となって取り組むことができるよう努めています。 

学校教育においては、坂町の将来を担う子ども一人ひとりが大切な何かを成し遂げようとするために志を立て、強い精神力をもって努力し、 将来、「自立した社会人」として活躍できるような人づくりを目指しています。そのため「知・徳・体」の調和のとれた人間の育成に努め、9年間を見通した小中連携を展開しています。  

「知」の部分に関しては、毎年の学力テストの結果を受け、各校ごとに改善計画を立て、分析・授業改善等の取組みを行い、弱点の改善に努めています。また、テレビを見ない、 ゲームをしない期間を設けるなど、保護者の協力を呼びかけながら、学習時間の確保、内容の充実を図っています。 

こうした取組みを通して、応用力、活用力についても、一定の定着が見られ学力の向上が図られてきています。 

「徳」の部分に関しては、社会の秩序維持に必要とされる礼儀、節度などの失われつつある日本の古き良き礼節を重んじ、基本的な規範意識、美しいものや自然に感動する心、 公共心や他者を思いやる心などの道徳心の高揚に取り組んでいます。 

また、「体」の部分においては、体育専門の教諭をリーダーとし、町内全ての小学生の体力向上を図るとともに、教職員の指導力向上にも努めています。中学校では、部活動を支援するため、 必要に応じてコーチを配置し、生徒の体力・技能の向上を図り、活躍を支えています。 

町内唯一の中学校である坂中学校では、陸上競技部が男女ともに全国大会への出場を経験し、本年2月には、第29回福岡国際クロスカントリー大会中学駅伝男子の部において優勝するなど、 坂町の子どもたちは、「体」の部分についても力強く育まれています。 

坂中学校男子陸上競技部の写真

力強く、強い絆でタスキをつないだ「坂中学校男子陸上競技部」

おわりに

全国的に少子高齢化や人口減少が進展する中で、坂町においては、新市街地である平成ヶ浜地区で若者世代の定住により人口が増加しているものの、 その他の多くの地区では高齢化や人口減少が進んでおり、地域間の格差が生じています。 

町の課題である地域間格差を是正し、均衡ある地域の発展を図り、安全・安心に暮らせるまちにするため、三位一体の防災対策、歴史・文化の継承、子育てと教育環境の充実、そして、 地域資源を活用した賑わい創出に取り組み、「親から子へ、子から孫へと歴史・文化・地域を守っていくことができるまち」の実現を目指し、町民一人ひとりが誇りの持てるまちを創造していきたいと考えています。