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佐賀県太良町/わが町の人口減少対策と有害鳥獣対策

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年12月14日
棚田(太良町中尾地区)の写真

清らかな水と豊かな大地に恵まれた棚田(太良町中尾地区)


佐賀県太良町

2943号(2015年12月14日)  太良町 農林水産課


太良町の概要

太良町は、人口9,456人(平成27年4月30日現在)、佐賀県最南端にあり、長崎県との県境に位置する中山間地域です。町の東側には、干潟が広がる有明海があり、 干満の差は6mにも及び『月の引力が見える町』が太良町のキャッチフレーズとなっています。また、町の西側には数々の伝説や民話などにも登場している、 太良町のシンボル的存在である標高996mの多良岳があります。 

町の産業は主として、第1次産業の農業です。主な農作物は中山間地域での果樹(みかん)、中山間地域から平坦地にかけての水稲、玉ねぎ、苺、花きなどです。また、 竹崎カニや竹崎牡蠣などの漁業も盛んで、町内には十数件の旅館と牡蠣焼き小屋があり、県内外から多くの観光客が訪れています。

町の人口減少対策

しかし、高齢化と人口減少はこの太良町でも確実に進んでおり、昨年の新聞報道によると「消滅可能性都市」となる可能性が佐賀県内で1番高い町とのことでした・・・。 

なんとか人口減少対策を立てようと「結婚祝い金」「誕生祝金」などの支給や「小中学校の給食費無料化」も今年度から始めるなど、 町長以下「消滅可能性都市」の汚名を返上すべく様々な振興策を考えているところです。

県内有数のみかん産地の現状

太良町は県内でも有数のみかん産地です。しかし、そのみかんの生産量も年々、減少傾向にあり、平成13年のJAみかん部会の露地みかん栽培面積は約600ha(430名)でしたが、 平成25年には約400ha(300名)と、栽培面積及びみかん農家数ともに減少しています。農業者の高齢化や後継者不足、価格低迷による廃業など、他の産地同様に深刻な問題を抱えている状況にあります。

特にみかんの価格低迷は喫緊の課題です。消費者ニーズに合った高品質・高糖度みかんを栽培する為、マルチシート(土壌への雨水の侵入は防ぐが、土壌水分の蒸散は妨げない為、 果実糖度が上昇する。更に、白色のシートは太陽光を反射させるので、果実の着色促進が期待できる。)を活用した高糖度みかん栽培は盛んに行われています。

しかし、この栽培方法は高糖度みかんの栽培が期待できる反面、マルチシートの設置作業は6~7月を中心に行われる為、高齢化が進んでいる産地としては極めて重労働となっています。 

完熟マルチみかんの写真

美味しく安全な完熟マルチみかん

歓迎できない太良みかんファン達

このようにして生産された高糖度みかんですが、収穫時期を待っているのは太良みかんのファンだけではありません。近年、太良町内のみかん園を荒らしている口の肥えたイノシシ達もです。 

10数年前まではイノシシは山にいるもので、秋頃山あいの集落の水田に出没しては足跡を残し、いたずらする程度でした。そして、猟友会との知恵比べを経て、 負けたイノシシ達はその命を珍しい山の幸として山あいの集落に捧げ、人々は山の恵みに感謝しつつ酒とともにいただくことになっていました。また、被害を受けた水田では、 早々に太良町の特産である海苔の栽培に使う海苔網を周囲に張り巡らせイノシシの侵入を防ぐ役割を担っていました。

しかし、近年では、農業者を含めた町内の人口減少により田畑やみかん園が荒廃しているためイノシシは数を増やし、人間を恐れることなく我がもの顔で出没するようになってきました。  

そうなると人間側にも様々な対策が必要となってきました。 

まずは数を減らすための駆除です。20数年前の駆除は年に4~5頭獲れるかどうかで、捕獲された場合には、捕獲者とイノシシが町の広報誌に掲載されるほどでした。 

しかし、平成14年ごろにはイノシシの被害が多々聞かれるようになり、5カ月間の駆除期間で44頭ものイノシシが捕獲されました。平成25年度からは駆除の期間を丸1年に延長。 すると12ヶ月で実に448頭ものイノシシが捕獲されるまでに増えていました。 

被害の状況も深刻で、以前は山あいの集落だけだった被害が平坦地にまで広がり、水稲では踏み倒しや畦畔の崩壊、みかん園では食害と樹木の折損等甚大な被害となってきています。 役場の農林水産課には日々被害の報告や猟友会への捕獲依頼等農家の方々の悲鳴が聞こえてきます。 

また、イノシシが山から人里へ下ってみかんなどの甘い果実の味を覚え、以前の植物の根やサワガニ・ミミズなどより栄養価の高いエサを食べることにより、 通常なら4頭程度しか生まれないウリ坊が、近年では6頭前後も生まれています。農家人口の減少によって耕作放棄地が増えているため、放任園などは格好の隠れ家や餌場になっているのです。 

こうした状況の中、平成23年に太良町伊福地区での捕獲罠の改良や地域ぐるみの取組が評価されて、鳥獣被害対策優良活動表彰として農林水産省生産局長賞を受賞しました。 この地区は今でも他の地区の模範としての活動をしています。

アライグマやアナグマ特定外来生物の出現

また、近年では特定外来生物のアライグマがよく捕獲されています。平成24年に初めて2頭捕獲され、関係者を驚かせたのもつかの間で、次の年には12頭、 昨年は25頭捕獲と爆発的な増殖が懸念される事態となっています。町民の多くは太良にアライグマがいることを信じられないようですが、実際にはほぼ町内全域から捕獲されているのが事実なのです。 

また、近年ではアナグマがよく目撃され、その被害も度々報告されています。以前から、アナグマはいましたが、実際に見た人は少なく、罠にかかることも殆どなかったため、 目撃情報は極めて少ないものでした。しかし、人口が減り荒れた田畑はこれらの野生動物が住みやすい環境となってしまったのです。とは言っても、近隣の耕作地は対策に追われることになります。 アライグマやアナグマは中型獣とはいえ、増殖に伴い被害は確実に増えているのです。

ワイヤーメッシュの設置状況(早垣地区)の写真

ワイヤーメッシュの設置状況(早垣地区)

様々な有害鳥獣の被害対策(WM)

これらの有害鳥獣の被害対策として有効なのは、もはや海苔網ではなく電気牧柵やワイヤーメッシュ(WM)などの資材です。これらは、 国庫補助事業や太良町独自の補助(購入資材額の1/2を補助)を活用して導入がされていますが、近年の被害増加に対策が追い付いていないのが実情です。 

特に近年被害が目立っているみかん園への被害対策が遅れています。このような状況を受け、より補助率のよい国庫補助事業の周知徹底を図ったことで、平成25年から、 ワイヤーメッシュ(WM)の導入が進みつつあります。 

このような中、町内の早垣地区では平成26年度に1集落で総延長27㎞、受益者35名にも上るWMの設置をしました。この取組が町内の他の集落のモデルとなり、 更にこの事業活用の推進となるように周知をしていきたいと考えています。

牛の放牧による被害対策

また数年前から、耕作放棄地対策として、牛の放牧による緩衝帯設置に取り組んでいます。これは牛を放牧し、雑草を食べさせることで有害鳥獣たちの隠れ家や住み処を除去し、 山林と農地の間に緩衝帯をつくることによって、農地への侵入を防ぐ効果があります。雑草を取り払った土地に景観作物や荒れ地でも生産できる作物を栽培することで耕作放棄地の再生につながることを期待しています。 

放牧により有害鳥獣の繁殖を抑制している写真

放牧により有害鳥獣の繁殖を抑制

その中でも先進的な事例として、オレンジ海道(広域農道の名称)を活かす会での取組が挙げられます。牛の放牧により雑草を除去したオレンジ街道沿いの土地に菜の花や芝桜を植えることで、 景観作物とする取組です。芝桜が一面を覆うのには3年ほどかかる見込みですが、その後はほとんど手がかからないとのことなので、今から一面に草花が咲き誇る日が楽しみです。 

オレンジ街道沿いの菜の花の写真

オレンジ街道沿いの菜の花

悪循環を乗り越え 有害鳥獣との共存へ向けて

本町の「人口減少」が「有害鳥獣の増殖」を助長しており、「有害鳥獣の増殖」により更に農地は荒れていく。 現在の太良町は、「農業人口の減少」と「有害鳥獣の増殖」が悪循環を起こしている状況にあります。この農業人口の減少を食い止めることと、 耕作放棄地や遊休農地の活用を積極的に図っていくことは太良町にとって喫緊の課題なのです。 

耕作放棄地をこれ以上増やさないことも大事なことで、本町ではモデルケースと言える取組事例があります。それは、標高300メートル付近の棚田で稲作を行う中尾地区です。当地区は、 米の価格が下落傾向にある中で、「中尾地区棚田保存会」を結成し、付加価値のある棚田米を生産販売することで耕作放棄地を出さない取組を行っています。

具体的には、町外の幼稚園や都市部の消費者を招いて田植えや稲刈り体験、試食会などを通して中尾地区棚田米のファンをつくり、そして販売につなげることに力を入れています。  

現在、有害鳥獣の被害と捕獲頭数が増えているのは、太良町の農地が荒れていることを象徴しており、自然界から警鐘を鳴らされていることととらえ、今後は、 有害鳥獣とバランスを保つことで共存できる環境づくりを目指していきたいと考えています。 

中尾地区棚田保存会と秋の棚田を彩るかかし達の写真

中尾地区棚田保存会と秋の棚田を彩るかかし達