ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取り組み > 茨城県大洗町/アニメ「ガールズ&パンツァー」と大洗町の軌跡~まちおこしではなく、町全体を舞台としたまち遊び~

茨城県大洗町/アニメ「ガールズ&パンツァー」と大洗町の軌跡~まちおこしではなく、町全体を舞台としたまち遊び~

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年8月24日
2014年11月大洗あんこう祭の写真

2014年11月大洗あんこう祭


茨城県大洗町

2930号(2015年8月24日)  大洗町 商工観光課


大洗町の概要

大洗町は、茨城県の太平洋側のほぼ中心にあり、首都東京からは約100㎞の距離に位置しています。大洗港は関東地方と北海道とを結ぶ唯一の定期旅客航路であり、 フェリー「さんふらわあ」が北海道・苫小牧港との間を運行しています。また、北関東自動車道や常磐道の全線開通により、群馬・栃木・宮城・福島などとダイレクトに結ばれ、 茨城空港とあわせニューゲートウェイとしての発展が期待されています。 

穏やかな気候に恵まれた観光・保養の地であり、日本三大民謡のひとつ「磯節」でも謳われる白砂青松の景勝地です。豊かな自然を始め、 アクアワールド大洗水族館や大洗のシンボルタワーであるマリンタワーなどの近代的な観光施設とレトロな雰囲気が残る商店街がひとつの街に融合しており、老若男女問わず楽しんで頂ける観光地として知られています。 

年間約560万人もの観光客数を誇ってきた大洗町ですが、東日本大震災による津波などの実被害に加え、福島第一原子力発電所事故による風評被害などもあり、県内トップから陥落しましたが、 わずか1年での奪還にはこれからご紹介する「ガールズ&パンツァー(以下ガルパン)」が大いに貢献してくれました。

ガルパンと大洗町の出会い

東日本大震災の影響が色濃く残っていた2011年秋。アニメ製作会社であるバンダイビジュアル様より大洗町を舞台としたアニメを制作させてほしいというお話しを頂いたことが、 ガルパンに関する取り組みが始まるきっかけでした。 

大洗町商工会の一部メンバーが中心となり、制作にあたってのロケハンや様々な企画の調整、関連商品やツアーなど各種企画・運営を行ってきました。もちろん、 アニメに関する取り組みなどは初めての経験であったため、不安や葛藤、そして本当に成功するかといった懸念は多々ありました。 

しかし、その初めての経験が新鮮さを与え、少人数ではありましたが楽しみながら取り組んできました。  

東日本大震災でのフェリーターミナル津波被害状況の写真

東日本大震災でのフェリーターミナル津波被害状況

ガルパンとは

ガルパンことアニメ「ガールズ&パンツァー」は2012年秋に放送されたアニメ番組です。 

現代の日本でいう華道や茶道と同じように、戦車を使った武道である「戦車道」を女性のたしなみとして学ぶ高校生達の物語という荒唐無稽な設定ながら、実在した戦車が緻密に表現され、 主人公の人間的な成長や友情、家族との絆を描いており、ファンの間で高い評価を得ています。 

主人公たちが学ぶ「大洗女子学園」は架空の高校ですが、作中に描かれている大洗の街並みは忠実に再現されており、そのために現地を訪れた多くのファンは、アニメの中で見た風景が目の前に、 現実に広がるという体験をします。逆に茨城県で育った人は、見覚えのある建物が多数登場するため、愛着を感じずにはいられない作品です。  

忠実に再現された大洗の街並みの画像

忠実に再現された大洗の街並み

ターニングポイントとなった あんこう祭

ガルパンがアニメ放送後、すぐに住民に認知され、市民権を得たのか。答えはNOです。なぜならば、TOKYO MXなどを中心に放送されていたため、 茨城県では視聴する手段が限られていました。そのため、放送が開始しても、大洗町が舞台になっているアニメが放送されているという認知度は高かったとは言えません。 

そこで、ターニングポイントとなったイベントが大洗町の冬の風物詩であるあんこうをPRするイベント「大洗あんこう祭」と春に行われている「海楽フェスタ」でした。 

大洗町を舞台にしているガルパンのことを、住民を始め、多くの人に知ってもらうことはできないか。ガルパンを見て町に遊びに来てくれるファンに喜んでもらうことができないか。 という想いから様々な取り組みが始まりました。  

各関係機関の協力により、鉄道車輌やバス車輌、レンタサイクルのラッピングに始まり、ガルパンとコラボしたご当地商品の開発などを、町の一大イベントであるあんこう祭に合わせて準備を進め、 イベント当日に一斉にリリースすることでインパクトと話題性を創出しました。 

ステージでもガルパンの声優陣を招いてトークショーを開催することができ、結果は前年比2倍の約6万人という過去最高の来場者数を記録。 同日にタイアップにて車輌のラッピングを行った鹿島臨海鉄道においても、2,000名を超えるファンが大洗駅に押し寄せ、同駅開所以来初となる入場制限がかけられるなど、誰も想像しえなかった結果となりました。 

2012年11月大洗あんこう祭の写真

2012年11月大洗あんこう祭

商店街にファンが溢れる

大盛況で終わった「大洗あんこう祭」が話題となり、その後も多くのファンの方たちにお越しいただきました。そして2013年3月に行われた「大洗春まつり海楽フェスタ」。 このイベントにおいても様々なタイアップを行いました。 

イベント前日には近隣の映画館にご協力いただいてのオールナイト上映会を筆頭に、当日は自衛隊に協力を得て、実物の戦車などの展示やガルパン一色にラッピングされた車(通称:痛車)の展示、 声優さんを始めとしたキャスト陣にもお越しいただき、イベントに花を添えて頂きました。 

そして同イベントでお披露目となったもう一つの取り組みがキャラクターの等身大パネル。様々なタイアップの中心となっている商工会のメンバーは商店街の皆さんでもあります。  

そこで、お越しになって頂いたファンの方々に、どうやって商店街に足を運んでもらえるか考えた結果、ガルパンに登場するキャラクターの等身大パネルを制作し、各店舗に設置をしました。 等身大パネルの制作はもちろん、キャラクターとそれぞれのお店の繋がりを考え、配置店舗などを決めたのも商工会青年部を中心としたメンバーでした。 

例えば作中で串カツを食べているキャラクターは精肉店に。紅茶をよく飲んでいるキャラクターはお茶屋さんになど、様々なストーリーが生まれました。 そうして商店街にファンの方々が訪れるようになり、商店街の方たちはファンの方たちに大洗町のことを、ファンの方たちは大洗町の人にガルパンのことを教え合うことで、「ガルパン」という共通言語ができ、 徐々に町民にも広がり、今ではおじいちゃんやおばあちゃんからも「ガルパン」という言葉を聞くほど、町に馴染んでいます。そうした取り組みの成果もあり、 商店街の人々との交流を楽しんでいただけるようになりました。 

商店街に訪れるガルパンファンの写真

商店街に訪れるガルパンファン

ガルパンキャラ・商店主等身大パネルの写真

ガルパンキャラ・商店主等身大パネル

ガルパンファンから大洗町のファンへ

海楽フェスタ以降、様々なメディアに取り上げて頂き、「大洗町=ガルパン」という認知が広がり、週末には商店街に人が溢れる光景が続きました。 

ガルパン目的で大洗に訪れて頂いた方々に大洗町のことをもっと知ってもらうため、主要観光施設などを巡るスタンプラリーを開始しました。 その後も様々なスタンプラリーなどを行いましたが、大きな枠から徐々に小さな枠へ。マスからニッチへシフトしての展開で、町全体から商店街のお店に至るまで多くの方々にお越しいただく機会を創造できました。 

そうした中でファンと触れ合い、常連客になり、いつの間にか「あのおじちゃん、おばちゃんに会いに大洗へ行く」と人に会いに訪れて頂く方が増えました。 商店街の一番の長所は人との触れ合いであると思います。価格や便利さでいえば大型ショッピングモールやコンビニエンスストアなどに勝てませんが、「あの人がいる!」あの人に話せば色々と教えてくれるなど、 お店・人のファンになって頂き、リピーターを生むのが商店街の本来のあり方なのだと思います。  

スタンプラリーの写真

スタンプラリー

そして奇跡の展開が続く

そうした取り組みが評価され、観光庁主催第1回「今しかできない旅がある」若者旅行を応援する取り組み表彰では奨励賞として観光庁長官表彰を受けたのを皮切りに、 地域の一体感が評価された「いばらきイメージアップ大賞」や経済産業省「がんばる商店街30選」にも大洗町商店街として選定されるなど、誰も想定しえなかった評価を得ることが出来ました。 

アニメ放映から2年以上たった今でも、様々な取り組みが続き、大洗あんこう祭では2年連続で約10万人、海楽フェスタや商工感謝祭では約5万人という多くのお客様に来場いただいております。 

観光庁長官表敬訪問の写真

観光庁長官表敬訪問

大洗流のおもてなしとまち遊びは続く

経済効果はどのくらいですか。よく聞かれる質問ですが、ガルパンに関わる取り組みではあえて経済効果を算出していません。 多くの方に来ていただき「商売繁盛させよう!まちおこしにアニメを活用しよう!」などと思って取り組んでいないからです。 

ガルパンに関する取り組みの企画立案グループのメンバーも宿泊施設の方や商店主、行政や観光協会の職員など所属も立場もバラバラです。 共通している認識は来ていただいた方々にどうしたら楽しんでもらえるか。楽しんで頂き、また大洗に来たいと思ってもらえるか。 そして町全体を使ってどう楽しめるかを常に考えているため、「まちおこし」でなく「まちあそび」をしている感覚です。 

商店の方々もファンと一緒になって楽しみながら、ファンの方々と交流しており、「おかえりなさい」、「また遊びに来てね」などの会話がどこからともなく聞こえてくるなど、 大洗町ならではのおもてなしが受け入れられ、実家のような街と言って頂いています。  

2015年11月にはガルパンの劇場版公開が控えていますが、このムーブメントはいつまで続くかわかりません。当然いつかはガルパン人気が終焉に向かい、 今のような賑わいはなくなるのは誰もが感じているはずです。「ガルパンが私たちに与えてくれたもの」。それは経済効果でもなければ一時の賑わいでもありません。 それは訪れた方々の喜びや人と人との交流の大切さ。そして地元の人間の笑顔とやる気なのだと思います。商売や観光に関する原点ともいえるお客様にどう喜んでもらい、また来たいと思ってもらえるか。 

この気持ちを忘れずにいれば、ガルパン終了後も、自発的な色々な取り組みが続くことでしょう。ガルパンがもたらしてくれた奇跡と軌跡を忘れずに・・・ 

アニメの画像