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静岡県長泉町/「生み育てやすい町」~ニコニコのまちの子育て支援施策~

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年4月13日
放課後児童会の写真

みんな元気に外遊び(放課後児童会)


静岡県長泉町

2916号(2015年4月13日)  長泉町 こども育成課


はじめに

長泉町が子育ての町として全国的に知られるようになったのは、日本の総人口がマイナスに転じる中で、人口を増やし続けている自治体があると話題になったことがきっかけでした。 

特に、リーマンショック以降の金融不況で全国的に地価が下落する中で、平成22年3月に国土交通省が発表した公示価格において、地価公示価格が上昇したのが7地点、 そのうちの2地点が当町であったことが新聞や週刊誌、 テレビなどに取り上げられ、「少子化を克服した 奇跡の自治体」、「子育てするなら長泉」などの見出しとともに町が実施している“子育て支援策”が全国に紹介されたことで「長泉町は産み育てやすい町」との評判をいただき、 さらに多くに子育て世代の転入者増につながり現在に至っています。

長泉町の概要

長泉町は、静岡県の東部に位置し、北に世界文化遺産に登録された霊峰富士、南に駿河湾を望み沼津市、三島市、裾野市、清水町に隣接しています。町の面積は26.63k㎡と小さな町ですが、 平成26年4月1日現在の人口は42,149人、世帯数は17,228世帯と県内では最も人口が多い町です。 

予算規模は、平成26年度当初予算額で特別会計、公営企業会計を合わせた総額は222億3,848万円、うち一般会計は135億7千万円、自主財源比率は78.2%、平成26年度の財政力指数(3年平均)は、 1.23となっています。また、平成25年度決算による経常収支比率は70.9%でした。 

長泉町は、豊かな自然と広域交通網に恵まれた町です。鉄道関係では、JR御殿場線の下土狩駅と長泉なめり駅があり、また、JR東海道線や東海道新幹線の三島駅に近接、 三島駅は町の市街地から車で5分の距離に位置し、都内の品川駅までは新幹線で最速35分で行くことができます。  

道路関係では、国道1号、246号、東駿河湾環状道路や日本の大動脈である東名高速道路、新東名高速道路等が町内を通過し、特に新東名高速道路には長泉沼津ICが町内に設置され、 IC周辺を取り巻く新たなまちづくりが展開されています。このように、当町は東海道の幹線交通網が集結され交通アクセスの利便性に大変優れています。

また、豊富な地下水に恵まれ多くの企業が進出し、現在、町内には4つの工業団地があります。平成14年には、県立静岡がんセンターが開院し、 これを機に静岡県が進めるファルマバレープロジェクトの一端を担うことになり、医療関連産業の集積が進められています。 

さらに、長泉沼津IC周辺では県が進める内陸フロンティア構想の物流関連産業の集積を図り、一層の企業進出を進めています。

高い合計特殊出生率

子どもが減り地域の活力が衰退するという危機感が全国で広まる中で、当町の合計特殊出生率は、平成7年以降全国平均を上回り、平成25年の合計特殊出生率は、 全国平均の1.43を大きく上回る1.85と静岡県下で最も高い数値となっています。 

また、静岡県が発表した2040年(平成52年)の将来推計人口では、県内では当町だけが人口増となる等、今後も人口増が見込まれていますが、長泉町は、 過疎化対策や少子化対策を第一に施策を進めてきたわけではありません。安定した財政基盤を築くため、早くから企業誘致活動に取り組み、交通の利便性を活かした町づくりを進めた結果、転入者が増加し、 特に若い世代の転入者が増えることで出生数が伸び、人口増につながりました。

このように、企業進出や人口の増加により町の財政基盤はより強固なものとなり、恵まれた財政力を背景に住民目線で取り組んできた様々な子育て支援施策が町の持続的な発展につながっています。  

人口、年齢別人口、合計特殊出生率のグラフ画像

住民側に立った組織づくり、「こども育成課」の誕生

長泉町では、平成12年に行政サービスの提供を受ける住民の目線に立った機構改革を行い、“子どもをいかに健全に育てるか”に重点を置き、 こどもの誕生から中学校卒業まで子どもに関する業務を一本化させた「こども育成課」を設置しました。 

保育園は厚生省(現:厚生労働省)、幼稚園は文部省(現:文部科学省)と、国の縦割り行政の規制を取り払い、事務を一本化した結果、①窓口の一本化に伴う利便性の向上、②児童福祉と幼児教育、 学校教育などの子育てに関する課題の共有化、③幼児教育の充実、④幼稚園教諭、保育園保育士の適正配置など職員の有効活用、⑤効率的な施設整備などが図られるようになりました。 

今でこそ珍しいことではありませんが、当時としては先進的な取組みであり、町民からの期待も大きく、町の子育て支援への取組みが評価されました。  

子育て支援体制の画像

長泉町の子育て支援策

現在、町内には私立園を含め認可保育園、幼稚園がともに6園、町立小学校3校、町立中学校が2校あります。また、児童館のほか子育て支援センターは3箇所、 放課後児童クラブは各小学校に2施設の計6箇所あります。10年前と比較した平成26年度の人口と15歳未満の子どもの増減比率は、人口が112.0%に対し、15歳未満のこどもの数は116.2%となっており、 総人口よりも子どもの増加率が高いことが伺えます。 

町では、様々な子育て支援策を実施してきましたが、その中で、子育て世帯に好評な施策についていくつかご紹介します。 

保育園運動会風景の写真

保育園運動会風景(町立竹原幼稚園)

中学3年生までの医療費を無料化

長泉町では、平成3年度からこども医療費の一部助成に取り組み、平成19年度に小学校3年生まで、平成21年度には中学校3年生まで医療費を完全無料化し、現在に至っています。 

県内の医療機関にかかった場合、受給者証を窓口で提出すれば自己負担が無くなる「現物給付」方式を導入し、保護者の経済的負担の軽減を図りました。 県外の医療機関や受給者証の提示を忘れてしまった場合は、窓口で自己負担分を一旦負担し、後日、こども育成課に申請することにより、医療費が無料になります。 

医療費の無料化を実施している自治体は珍しくありませんが、窓口での支払いを必要としない方式を導入したことで保護者から好評を得ています。 

子育て支援センター

平成11年度に未就園の子育て家庭を支えることを目的とした子育て支援センターを町立保育園に併設して以来、現在までに町内3箇所に子育て支援センターを設置しています。 未就園児の遊び場や保護者の情報交換の場として多くの利用があり、また3箇所の支援センターの周知を兼ねた「子育てフェスティバル」を毎年開催しており、子育てママ等の交流の場として大いに賑わいを博しています。 

「みかんちゃん」子育て支援センターの写真

「みかんちゃん」子育て支援センター(町立竹原保険内)

子育てフェスティバル2014の様子の写真

子育てフェスティバル2014の様子

第3子以降保育料の無料化、第2子同時通園に係る幼稚園保育料の無料化

多子世帯の経済的負担を軽減し、子育てしやすい環境づくりの推進を図るため、平成22年度から保育園や幼稚園に通園する第3子以降の保育料を無料化又は助成しています。さらに、 平成26年度から幼稚園に同時通園する第2子の保育料についても町立幼稚園については無料とし、私立幼稚園については町立幼稚園保育料相当額を助成しています。 

待機児童を生じさせないために

保育需要の増大から、以前より保育園定員数の拡充を図ってきましたが、近年の更なる児童数と就労世帯数の増加に伴い、平成25年度に町内で4園目となる私立保育園を開園しました。 

しかしながら、認可保育園の受け入れ可能人数以上に保育ニーズが増加しているため、町では町内に3箇所ある認可外保育施設の利用者に対しても、 町で定める保育料との差額を補助する制度を平成22年度から実施し、待機児童を生じさせないよう努めています。 

地域の子どもは地域で育てる

当町では、地域社会が持つ教育力を高めるため、学校、家庭、 地域の連携による教育支援活動事業として、「学校支援地域本部事業」、「放課後子ども教室事業(のびのびスマイル)」、「通学合宿(わんぱく通学合宿)」を積極的に進めています。中でも、 のびのびスマイル事業は、多くの自然が残る当町においても外遊びの機会が減少し、異年齢交流の機会も減少していることもあり、毎週水曜日に3小学校で行われている放課後子ども教室を楽しみにしている児童も多く、 保護者からも好評を得ています。  

「ひなげし」放課後児童会の写真

「ひなげし」放課後児童会(長小校区)

このほかに、学校関係では、平成15年度から小学1・2年生クラスへの生活支援員の配置をはじめ、少人数指導員や特別教育支援員など小・中学校に各種支援員等を配置し、 きめ細やかな教育に取り組んでいます。また、平成23年度に小・中学校の全普通教室に空調機を設置したほか、平成26年度にはすべての町立幼稚園にも空調機を設置する等、教育・保育の環境整備を図りました。 その他にも、この6年間に町立小中学校5校の内、4校の校舎を増築し、増える児童生徒を受け入れるため教育環境の整備を図りました。

新たな情報発信

町内在住の子育てママが町の魅力を世界へ発信

タウンセールス事業として「子育てするなら長泉」というイメージを活用した、町の情報を発信する事業が始まっています。 

インターネット環境が広がる中、ブログやフェイスブックでママさんによる、ママさんのための情報を発信しようと、町内在住の子育てママさんたちが“ライター”となる、 名づけて「ママラッチ」を結成しました。ママ友、子育てサークル等の子育て世代に向けた情報の発信をはじめ、町の商工業の活性、観光推進、にぎわいの創出などに繋げていきます。

ママラッチ(ママライター)任命式の写真

ママラッチ(ママライター)任命式

ニコニコのまちづくり

長泉町では、「元気で明るい町」を目指すイメージ作りに「ニコニコ」を活用しています。これは、町内在住のデザイナーが、「長泉町はこどもが多くて若さに溢れているのが何よりもいい。 笑顔が広がる町を全国にアピールしたい」と考案した作品です。 

こどもたちをはじめ、すべての町民の笑顔(ニコニコ)があふれる町、そんなまちづくりを目指しています。(職員も率先垂範で勤務中もニコニコです!) 

ニコニコの町づくりシンボルタワーの写真

ニコニコの町づくりシンボルタワー

今後の課題

平成24年に「子ども・子育て支援法」など3つの法律が成立し、平成27年4月から「子ども・子育て支援新制度」が施行されることとなりました。新制度では“子ども子育て支援事業計画”を策定し、 質の高い幼児期の教育・保育の提供、家庭や地域での子育て力の向上、待機児童の解消等に取り組んでいくことになります。町では、 新制度が目指す子育て支援施策にこれまでも保育園の新設や小・中学校の校舎増築等、「子育て環境」の改善に積極的に取り組んできました。 

就労したくても子どもを預ける施設がない、職場に理解がなく仕事と子育ての両立が難しい、子育てに関する相談をしたいけれど身近に知り合いがいない、子どもは欲しいが経済的に難しい、 子どもが病気になったときの病院探し、公園などの遊び場など、子育ての環境と一言でいっても、その幅は広く、行政だけでなく社会全体で子育て環境の整備に取り組んでいかなければなりません。

まとめ

長泉町は、 第4次長泉町総合計画に掲げた町の将来都市像である「自然と都市の共生 人とまちの健康創出 いきいき長泉」の実現に向け、「健康づくり」「環境対策」「高齢者支援」「子育て支援」を4つの重点項目として、 誰もが暮らしやすい活力あるまちづくりに取り組んでいます。 

今後とも、町の活力や発展を支えていくために子育てしやすいまちづくりを総合的に推進していくとともに、住みたい町から住み続けたい町へ、 子育てしている保護者や関係者の方々の声を聞きながら住民目線での子育て支援策を展開し、“だれもが暮らしやすい活力のあるまち”を一層実感できる“笑顔があふれるニコニコのまちづくり”を進めてまいります。