親水公園「ひょこたん池公園」
愛媛県松前町
2904号(2015年01月12日) 松前町長 白石 勝也
松前町は、一級河川の重信川を境にして県都松山市に隣接する、人口3万人余の町です。道後平野の西南部に位置しており、西は伊予灘に面し、 南は伊予市を隔て四国山脈が望める豊かな自然環境に恵まれたところです。
町内を歩けば、豊富な水辺環境を生かした親水公園をはじめ、春には黄金色に輝く麦畑が、夏には町花であるひまわりが一面に広がり、見る人の心を癒します。その一方で、 炭素繊維の先端工業施設や大型商業施設も立地しており、豊かな自然を残しながら、近代的に発展している町です。
本町は、県内で一番小さく、車で30分もあれば町内を一周できるコンパクトな町ですが、「水きらめき 笑顔あふれる ライフタウン・まさき」のコンセプトのもと、 豊富な水と肥沃な土地を生かした農業をはじめ、工業、商業、水産業のバランスを生かし、「笑顔でいきいきと住み、働き、学び、憩い、 楽しむことができる」一歩上を目指したまちづくりに取り組んでいます。
こうして、先人たちの努力によって繁栄してきた松前町は、本年3月に町制60周年を迎えます。
60年は人生に例えると還暦にあたり、第二の人生への新たな出発を意味しています。この記念すべき節目の年を住民のみなさんと共にお祝いして、 松前町の更なる発展につなげていきたいと考えています。
平成24年4月に新たに設置された防災担当副町長を委員長として、役場の各課長と消防署長を委員とする松前町防災対策プロジェクトチーム(以下「PT」)を立ち上げました。
PTは、東日本大震災を教訓とした防災対策の充実強化のために発足。近い将来、南海トラフで発生することが予測される巨大地震について、町民の安全・安心を確保するため、 役場の危機管理体制、避難対策、津波・液状化対策などについて検討しています。
まず、「課題検討班」を設立し、防災上の課題の洗い出し作業を実施。引き続き、抽出した課題の対策を検討する「課題対策班」の活動を同年5月にスタートさせました。 さらに、具体的な課題対策を検討するにあたり、下部組織として担当者で構成するワーキンググループを設置。121項目の課題に対する対策を取りまとめました。
そして、同年9月には、住民、企業、有識者と行政が防災対策について話し合う「松前町災害に強いまちをつくる会」で、本町の実情に合った防災・減災への取り組みについて検討。 現在も、同会で協議された結果をもとに、計画的に防災・減災対策に取り組んでいます。
平成25年4月には、各種対策のさらなる推進のために「対策推進班」を設置し、防災マニュアルの作成やBCP(事業継続計画)に基づく職員体制の整備をはじめ、 その検証のための演習や訓練などを計画的に実施しています。
今後は、引き続き公助の充実を図りながら、自助と共助の機能強化を行うため、自助については、更なる意識啓発を、共助については、 その要となる自主防災組織の更なる活性化を図ります。
三者の連携による相乗効果により、災害による被害を最小限度に抑え、災害に強いまちづくりのため、官民一体となって災害への準備を行います。
松前町災害に強いまちをつくる会
松前町では、えひめバイオマスプロジェクトのモデル町として、町花であるひまわりを栽培し、種から油を採り燃料などに活用するバイオマス推進事業を実施しています。 その中で、CO2の発生を抑え、地球温暖化防止と農地保全を図り、美しい景観を守ることを目指しています。
ひまわりは町内2カ所で栽培し、収穫された種の油を町内保育所の給食や地区行事に使用。そこから出た廃食油をバイオディーゼル燃料に利活用しています。 平成25年度は、約10反の畑から1,760㎏の種を収穫。144Lの油が採れました。
また、家庭から出るせんてい枝を資源ゴミとして分別収集し、廃棄物系バイオマスとして利活用しています。収集後、町内の農業生産法人に搬入し、処理施設で微生物の力で醗酵。 堆肥として町内の農地で再利用しています。平成25年度はせんてい枝739tを回収し、505tを堆肥化しました。
学年や校区を超えて仲間と協力し、町内の環境を学ぶ「松前町子ども環境学園」。平成24年度から始まった本学園を通じ、ごみの分別や減量について、 家庭や地域のリーダーとなる人材を育てています。
また、環境に関するかるた大会や家庭のごみ調査、ごみの分別に関するクイズの作成、さらに、町内でごみの減量やリサイクルに取り組む店舗や団体などの情報をマップにするなど、 町のごみや環境について学んでいます。
さらに、「5R探検隊」と題し、町内から出るごみの量やリサイクルについて学ぶため、会社や工場を見学。同学園に参加していない子どもや保護者も合わせこれまでに157人が参加し、 ごみの行方を間近で見ることによって、環境への意識を高めています。
環境学園「5R探検隊」の様子
※5R
Reduce(ゴミを減らす)
Reuse (再利用する)
Recycle(再び資源として利用する)
Refuse(不要なものは買わない)
Repair (修理して長く使い続ける)
瀬戸内海の豊富な漁場に面した当町は、ちりめんやいりこなどを使った小魚珍味の生産が盛んです。現在、その加工生産量は日本一。全国シェアの大半を占めています。 近年では、味付きのいりこが売り出されるなど、小さな子どもから大人まで親しんでもらえるように、さまざまな種類の商品が販売されています。
「まつまえちょう?」県外で名刺を差し出すとほとんど「まさきちょう」とは読んでもらえません。
県都松山市に隣接し交通の便も良く、炭素繊維の先端工業施設や大型商業施設が立地している環境の中で、ベッドタウンとしても発展してきた松前町ですが、 あまり積極的なPR活動を行ってこなかったため、知名度は低く、まちのイメージが希薄であるなど、情報発信力に欠けている状態でした。
その中で、初めて県外で単独物産展を開催するという機会に恵まれ、県外の人に読みにくい町名を分かりやすく伝えるために生まれたのがロゴマークです。
平仮名で「まさき」という文字が入った三つの円は、1955年に3つのまちが合併してできた町であることを表し、 それぞれの色は、町の特徴である「芽吹きの麦と季節の緑」の緑、「豊かな水と恵みの海」の青、「実りの麦と町花ひまわり」の黄色となっています。
物産展ではこのロゴマークを使用したのれんや腰巻などでレイアウトを行い、全ての商品にもロゴシールを貼って販売。インパクト抜群のブースには「まさきちょう?」と、 多くのお客さんが足を止めました。
松前町のロゴマーク
その後も、各地の物産展などに積極的に参加し、統一されたレイアウトのブースは、来場者の注目を浴びています。
今では、職員が名刺に印刷したり、ロゴマークの入ったポロシャツを着用したりするほか、各種グッズの作製もしています。また、 使用許可を得た業者が商品パッケージとして活用するなど、官民一体となってまちのPRに取り組んでいます。
名古屋での物産展の様子
平成20年4月に中四国一の規模を誇る大型商業施設が出店して以来、町外から松前を訪れる車が大幅に増え、町内における交通事情は大きく変化しました。特に、 徒歩や自転車に乗った高齢者や児童・生徒に対する安全の確保が課題となりました。そこで、地域住民と関係団体等が知恵を出し合って、交通弱者に配慮した、 誰もが安心して暮らせる安全なまちづくりを目指し、とてもユニークなオリジナルポスターを3種類作成しました。
高齢者用のポスターは、我が身を犠牲にして後世に麦種を残した町の偉人「義農作兵衛」に町長自らが扮し、 頭の上に桶を乗せて魚の行商をする女性「おたたさん」に住民のみなさんが扮して、交通におけるヒヤッと感を表現しました。
町の象徴をモデルにし、“おったまげ~!”(びっくりした)という方言が親しみを増して、交通安全への関心がとても高くなっています。
交通安全ポスター(高齢者用)
大人用のポスターは、日本一の生産量を誇り、酒のツマミとしても親しまれている本町特産の小魚珍味を囲み、 宴会をしている様子を撮影しました。“珍味はうまいが のんだら のられん”(飲酒をしたら乗るな)という会話風に仕上げたことにより、明るくにぎやかなイメージの中で飲酒運転をしないように訴えています。
交通安全ポスター(大人用)
子ども用のポスターは、当町の夏の風物詩、はんぎり競漕です。はんぎり競漕とは、「はんぎり桶」に乗って、海上を体一つで漕ぎ進みその速さを競うイベントです。
はんぎり競漕ではスピードを競っても、自動車・自転車は安全運転。子どもたちの真剣なまなざしが、ポスターを見る人の心をつかみます。
交通安全ポスター(子ども用)
住民のみなさんが企画・出演した斬新でユニークなポスターは、町内のみにとどまらず、町外からの人気も非常に高く、各種施設や店舗など、様々な方面から引っ張りだこで、 増刷して啓発に努めています。
本町は、交通の利便性が良く、地下水も豊富であることから、産業を行うにも、居住して生活するにも恵まれており、 子どもから高齢者の方まで町内で衣食住が完結する「ライフタウン」であります。
今年、町制施行60周年を迎えた事を契機に、本町の特性・資源を最大限に生かし、生活から健康・福祉、教育・文化、産業に至るまで、すべての環境のさらなるレベルアップを進め、 未来に向けて全国に誇りうるまちづくりを進めます。
今後も、高齢者の皆さんが安心して暮らし、子どもたちがこの町をふるさととして大事に思い、町民の皆さんがいつまでも愛し続けてくれる、 そんな「水きらめき笑顔あふれるライフタウン」を目指して、町民の皆さんと共に歩んで参りたいと思っています。