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岐阜県輪之内町/「輪之内ブランド」構築にむけて~「食」を通じた2つの取組~

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年3月3日
本戸輪中堤からの眺望の写真

本戸輪中堤からの眺望(田んぼアートが望める)


岐阜県輪之内町

2871号(2014年3月3日)  輪之内町長 木野隆之


町の概要

輪之内町は、岐阜県の南西部に位置し、長良川・揖斐川の二大河川に囲まれた低湿地の輪中地帯にあります。かつては幾多の水害に見舞われてきましたが、 先人の英知と努力で克服し、その清流にはぐくまれた豊かな自然と培われてきた風土を活かし、輪中文化を受け継ぐまちとして発展してきました。 人口は10,028人(平成22年国勢調査)で、企業の進出や宅地の増加などにより、緩やかながら増加し続けております。面積は22.36平方キロメートル、 うち約半分が農地であり、「ハツシモ」という品種のお米の産地です。 

1954年に仁木村、福束村、大藪町が合併して輪之内町が誕生して以来、町制60周年を迎える今年は、 ケーブルテレビの「輪之内スマイルチャンネル」を地域活性化や防災など多面的に活用したり、企業誘致活動を継続して推進するなど多彩な事業を行い、「住んでいて良かった、 これからもずっと住み続けたいまち」の具現化に取り組んでいます。

取組の動機

「輪之内ブランド」構築にむけた取組は、「食」をテーマに輪之内町を代表するような特産品をつくれないかという就任以来の熱い思いがきっかけでした。「輪之内らしさ」を実感していただけるもの、 輪之内のイメージができるものが少ない中で、これぞ我が町の特産品と呼べる物を作ろうということになりました。一方、農業者を中心とした町民の間でも、稲作に適した気候、 良質な水で栽培される輪之内町産品が「輪之内町産」として消費者の元に届いていないという現状をなんとか打開し、「輪之内町産」として広く流通させることができないかという思いが次第に高まっていました。 こういった共通の思いを実現するために次の2つの取り組みを行いました。

取組の経緯

輪之内スイーツの開発

輪之内産の食材を使用した商品開発を進めるため、平成20年9月に特産品開発プロジェクトチームが発足しました。町民有志で構成された2チームと町職員で構成された2チーム、 計4チームの編成で、当初は具体的なジャンルに拘らず各チームで開発を進めました。翌平成21年1月に各チームの開発品の試食会を行い、味や見た目の他、 商品化ならびに恒常的に販売できるかなどの観点から、町職員の考案したハツシモ米を混ぜ込んだ「お米アイス」と「フクユタカ」という品種の大豆の豆乳を使用した「黒ごま豆乳プリン」に絞り込み、 この2品を商品化し町のPRに活用していくことになりました。2品とも「スイーツ」であることから、この時に「輪之内スイーツ」の言葉も誕生しました。 

ハツシモのブランド化

前述したように輪之内町は「ハツシモ」という品種の米の栽培が盛んです。「ハツシモ」は流通量が少なく、ほとんどが岐阜県内で消費されるため「幻の米」と呼ばれることもありますが、 大粒でモチモチとした食感が魅力で、冷めてもおいしいといった特徴もあり、首都圏や関西では寿司米としての需要があります。しかも、 徳川幕府時代に幕府の直轄地となっていた現在の輪之内町は、「御膳籾」といわれる江戸城で食される米を供出していた歴史があります。しかし、 輪之内町産の出荷量はさほど多くないため、「輪之内町産」として他産地と区分されて市場に流通することはありませんでした。 

そこで平成25年に江戸時代には江戸城でも食べられていた良質な「輪之内町産」ハツシモを独自のブランドとして販売できないか、 という農業者からの声をきっかけにし、独自のルートで全国に通用する米としてブランド化を目指すことになりました。 

「特産品製造販売業務提携覚書締結式の様子」木野町長(左)の写真

「特産品製造販売業務提携覚書締結式の様子」木野町長(左)

取り組みの内容

輪之内スイーツの商品化と認定制度

「輪之内スイーツ」として2品を選定しましたが、商品化は簡単ではありませんでした。当初から公設公営ではなく民間の力を活用することを目指していましたが、 施設面などでのハードルが高いこともあり、なかなか取り組んでくれるところがありませんでした。 

しかしプロジェクトチームの皆さんが、開発品への誇りと町を良くしたいという強い郷土愛を持ち続けて、町内外のイベントで試食や臨時販売を地道に続けていたところ、 イベントで知り合った隣市のジェラート店が取り組んでくれることになりました。地元の厳選素材を使ったジェラートが有名なお店で、コンセプトが合致し、 情熱を評価していただけたことが決め手になり、平成23年2月に輪之内スイーツ第1弾としてハツシモ米とフクユタカ大豆を使った「豆乳リゾットジェラート」が、 さらに1年後には「贅沢黒ごま豆乳プリン」が発売されました。町と事業者が提携して特産品が発売されたとして新聞などメディアにも大きく取り上げていただきました。

豆乳リゾットジェラートの写真

輪之内スイーツ第一弾 豆乳リゾットジェラート

この「隣市のジェラート店」が町民の心を動かし、輪之内町民として負けてられないと新しい特産品を考える店が次々と現れて、 輪之内スイーツとして認定して欲しいという声が増えてきたため、これを体系化するために「輪之内スイーツ認定制度」を創設しました。

認定制度は町産農産物を使用することが条件ですが、それ以外にも味や見た目、 食感など商品のクオリティーだけではなく、「地域活性化に資するイベント等に積極的に参加できるか」「輪之内スイーツ認定店として相互に協力できるか」など、 申請者のまちおこしへの熱意ややる気も認定の審査対象となります。これらの条件を満たして「輪之内スイーツ」として認定できるかどうかを町民や有識者、 栄養士など多様な人材で構成された認定委員会で試食やヒアリングをもとに審査し、認められた店・商品だけが「輪之内スイーツ」として販売することができます。平成26年2月現在、 4店舗16品目が「輪之内スイーツ」として認定され、店舗ではもちろん、町内外のイベントで積極的に販売をし、PRに努めています。 

徳川将軍家御膳米の誕生

日本国内にはたくさんの米の品種と銘柄米があります。 その中で輪之内町産のハツシモを一つのブランドとして消費者に認めてもらうことは並大抵のことではありません。 そこで後発のブランドをより広く消費者に認知していただくために輪之内町の歴史を活用しようということで、かつて江戸時代に徳川幕府の直轄地であり、 江戸城へ米を供出していた史実に注目しました。輪之内町のある美濃地方の「美濃米」は古くから天皇の大嘗祭の米として使われていたり、 江戸市中でもおいしい物の代名詞とされたように「うまい米」として評価されていました。 その美濃地方の輪之内町内で栽培された米が「御膳籾」として江戸城で食べられていたほど良質なものであった歴史を後世にも伝え、 伝統的な米作りを引き継いでいくために「徳川将軍家御膳米」という名前でブランド化し、趣旨に賛同して「徳川将軍家御膳米」を栽培する営農組合を組合員として生産組合を設立することになりました。

「生産者・販売者・行政の三者の協力で推進」木野町長(中央)の写真

「生産者・販売者・行政の三者の協力で推進」木野町長(中央)

ブランド化するにあたり、新たな販売ルートを確保するため販売業者を探すこと、 ブランド米として高品質でしかもそのレベルを維持するという課題が浮かびあがりました。そこで、「徳川将軍家御膳米」を独占して販売することを条件に販売業者を選定し、 栽培に取り組む全ての営農組合が同じ品質で提供できるよう輪之内の良質な地下水を使用して、肥料にもこだわり、安心安全な米を提供するために、 農薬を通常より30%削減するなど厳格に定められた栽培方法を全組合員に徹底・管理することでその課題をクリアしました。 

また、生産者・行政・販売業者の3者が協定を締結し、生産組合は良い米の出荷、業者は販路の開拓、 行政はPRなど後方支援と役割を分担して、「徳川将軍家御膳米」がブランド米として認知され、流通するように取り組んでいます。 

行政としてはPRのため、田植えや稲刈り、大試食会などのイベント実施や名古屋、東京で開催される物産展等での販売支援を行っています。  

収穫したばかりの徳川将軍家御膳米大試食会の様子の写真

収穫したばかりの徳川将軍家御膳米大試食会の様子

現状と課題

輪之内スイーツのブラッシュアップと認知度向上

輪之内スイーツは前述したように4店舗16品目が認定されています。最初に輪之内スイーツが認定されてから4年が経過し、 近隣市町では認知度も上がってきました。また最近は「かわばたくん・もろこちゃん」という輪之内町のキャラクターにちなんだまんじゅうが発売されたり、 たい焼きやクッキーを開発したいという町内の事業者も出てきました。今後「輪之内スイーツ」の認定を目指しているスイーツの候補も着実に育ってきています。 

しかし、既存の認定品も含めて、認知度を更に向上させるためには、より多くの消費者に「食べたい」と思ってもらわなければなりません。 インターネットの普及でおいしいスイーツの情報はあふれていますし、遠くの場所からでも取り寄せることができます。 この中から輪之内スイーツを選んでもらえるよう商品をブラッシュアップして磨き上げることが課題です。そしてカテゴリーとして「輪之内スイーツ」を認知してもらえるよう、 レベルの高い認定品目数を増やしていくことも必要です。  

認定店舗だけが使用できる輪之内スイーツロゴマークの写真

認定店舗だけが使用できる輪之内スイーツロゴマーク

「ハツシモ」の浸透と用途の拡大

「徳川将軍家御膳米」は平成25年度産は町内の水稲作付面積の5%程度の作付面積しかありませんでした。しかし、 食べた方からは、「モチモチしておいしい」「通常のハツシモと比べてもうまい」といった声があがっており、 ハツシモにはなじみのない名古屋や東京でも試食を行いながら販売したところ、非常によい反応でした。しかし、全体的には「ハツシモ」の知名度は低く、 一般的に食べられているコシヒカリに比べ粘り気が少ないなどの特徴から、まだまだ広く受け入れられているとは言えません。平成26年度は作付面積を3倍に増やすとともに、 粘り気が少なく、モチモチしている食感や粒が大きい特徴を活かし、寿司やチャーハン、 丼にも最適であることをアピールしたり、「徳川将軍家御膳酒」という日本酒のような加工品を作るなど、用途の拡大も課題です。 

徳川将軍家御膳米パッケージの写真

徳川将軍家御膳米パッケージ

両方について言えることですが、輪之内らしい特産品を「輪之内ブランド」として認知してもらうためには、行政だけではなく、意欲ある町民、 事業者が主体となって取り組んでもらわなければなりません。そのために輪之内町としては今後とも「仕掛けづくり」に取り組まなければと考えています。 

輪之内町キャラクターかわばたくんともろこちゃんの写真

輪之内町キャラクターかわばたくんともろこちゃん