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北海道東神楽町/みんなで築く活力あるまちづくりへ~『知のネットワークづくり』と『地区別まちづくり計画』~

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年2月17日更新
ひじり野公園の写真

四季折々の花が植栽されたひじり野公園


北海道東神楽町

2870号(2014年2月17日)  東神楽町長 山本 進


町の概要

人口約35万人を擁する道北の中心都市旭川市に接し好立地環境にある東神楽町は、先端医療をはじめ高等教育、金融経済、道路交通など様々な都市的機能を享受できる利便性の高い町です。 面積は68.64平方キロメートルと小さな町ですが、人口は10,050人(平成25年12月末)で、旭川市のベッドタウン化が進んでいると言えます。本町を含めたこの上川盆地一帯は、 良質で食味の良いお米が作られる屈指の米どころとしても広く知られています。また、施設園芸作物と組み合わせた複合型農業も盛んです。 

東神楽町は、平成元年から本格的な大規模宅地開発に着手し、今日まで飛躍的に人口を伸ばして来ました。約5,700人だった平成2年の人口が、平成12年には8,000人台、 平成15年には9,000人を超え、明治27年の開拓から数え120年を迎えた昨年10月には初めて、1万人に到達しました。また町内には、昭和41年に開港した道北の空の玄関である旭川空港が所在しており、 首都圏はもとより台湾などアジア圏とつながる国際路線も通年運航しています。 

このほか、本町は『花のまち』として全国的に知られています。平成12年の「全国花のまちづくりコンクール」では国内最優秀賞に輝き、それまでも幾多の成果を収めてきました。翌年には、 カナダで開催された国際コンクールに日本を代表する自治体として参加するなど、昭和30年代後半から半世紀をかけ、暮らしや生活環境に花を取り入れた運動の成果が大きく開花、結実した瞬間でした。現在も、 町のシンボルまた価値ある財産として、潤いある景観づくりに活かされ来訪者の心を捉えています。

旭川大学との連携による包括協定『知のネットワークづくり』

近年、行政や地域の課題は複雑化・多様化しており、その課題解決に向けた一つの方策として、貴重な知的・人的・物的資源や機能を有した大学との連携による地域の活性化が期待されています。 

一方、大学においても少子化による学生数の減少のほか、大学改革をめぐる動きの中で厳しい競争と経営環境におかれ、積極的な地域貢献や地域と連携・協力した大学運営が求められています。 

東神楽町では大学や研究機関等と連携して「知のネットワークづくり」という新たな活力や知恵を取り入れたまちづくりを進めるため、旭川大学との調整を進め、 お互いのさまざまな資源や機能を活用する中で、教育・産業・福祉などの分野において協定を締結し、連携・協力していくこととしました。  

①連携・協力の経緯

東神楽町が最初の連携・協力の相手として旭川大学を選定した理由は、以前から学長とのあいだに親交があり信頼関係が結ばれていたこともありますが、 旭川大学は隣市の旭川市に所在する地元の大学ということで、本町はもとより、圏域の現状や課題を充分把握し、理解していることなどによります。また、距離的に「近い」ということは、 連携・協力を進めるにあたり、人的・物的な資源の移動など、時間やコストの面から考えて大きなメリットがあります。 

旭川大学には2学部(経済学部、保健福祉学部)3学科のほか、大学院、短期大学部、地域研究所等があり、広範な分野での連携・協力が可能ということもあり、協定締結に先立ち、 連携・協力が想定できる具体的な事業案について、職員からアイディアを募集するとともに、庁内に関係7課によるプロジェクトチームを立ち上げ、事業案や協定内容について調整・推進することとしました。 

プロジェクトチームでは、当面実施可能な事業の5つの柱として、(1)大学の教授等を町の事業の講師として招聘する。(2)大学の教授等を町の各種審議会・アドバイザー等として委嘱する。 (3)大学の学生との連携・交流を進める。(4)大学の学生の実習等の受け入れ及び学習の場を提供する。(5)大学の研究活動への協力及び連携を図ることを掲げ、旭川大学と協議を進める中で基本合意に達しました。 

協定書調印式は、平成24年8月21日に町関係者や旭川大学関係者が出席する中で厳粛に執り行われました。協定内容については、協力・連携項目が広範多岐にわたることから包括協定とし、 (1)まちづくりに関すること。(2)人材の育成に関すること。(3)教育、文化及びスポーツの振興に関すること。(4)地域活動の活性化に関すること。(5)健康及び福祉の向上並びに子育ての支援に関することの5項目を協定書に盛り込んでいます。 

「協定書調印式」山本進町長(右)山内亮史旭川大学長(左)の写真

「協定書調印式」山本進町長(右)山内亮史旭川大学長(左)

②具体的な取り組み事例

現在、連携・協力事業を推進するにあたり、東神楽町と旭川大学それぞれに連絡窓口を設置し、相互の連絡調整を行っています。プロジェクトチームで当面実施可能な事業として掲げた柱のうち、 今年度の具体的な取り組み内容は、次のとおりです。 

  1. 大学の教授等を町の事業の講師として招聘 
    まちづくりの講演会、幼稚園の保護者研修、高齢者大学の健康づくり学習、企業や団体の職員研修の講師等として招聘し、地域住民の高度化・多様化する学習ニーズに応えています。
  1. 大学の教授等を町の各種審議会・アドバイザー等として委嘱 
    情報公開・個人情報審査会委員、食育推進会議委員、子ども・子育て支援行動計画策定委員会委員、マスコットキャラクター選考委員会委員等への就任を依頼し、 専門的な見地から意見をいただいています。
  1. 大学の学生との連携・交流 
    大学や短大の各ゼミの学生が、子育て研修会において幼児向けにパネルシアターを実演するほか、福祉施設において高齢者のサロン活動に参加する中で交流を深めるなど、 子どもから高齢者まで幅広い住民から喜ばれています。

このほか、学生の保育実習の受け入れやゼミの研究活動の一環として、東神楽町の魅力のある地域や特色のある飲食店などを紹介する地域マップを作成するといった取り組みも始まっています。

健康づくり学習の様子の写真

健康づくり学習の様子

高齢者のサロン活動に参加する学生の写真

高齢者のサロン活動に参加する学生

③今後の課題

今後の事業展開としては、大学の人的な資源のみの活用ではなく、大学が持つ物的な資源や機能を有効に活用していくことが考えられます。 

例えば、自治体と大学間における施設の相互利用の可能性も検討する余地があります。さらには、自治体だけではなく、町内の産業団体や企業、地域団体などの多様な主体との連携を誘導することで、 町の特産品や企業の商品開発に参画するなど、大学の研究活動を地域にフィードバックしていくことも可能であると思われます。 

現在、東神楽町と旭川大学との連携・協力は始まったばかりであり、今後、広範な分野における事業が展開されていくことになりますが、さらに活動を深化させるためには、 その有用性をお互いが認識できることが重要です。

初の試み「地区別まちづくり計画」策定

①町内7地区ごとの計画を本年度中に

東神楽町では今年度、道内自治体の行政計画ではあまり類例の見られない「地区別まちづくり計画」の策定に取りかかりました。選挙公約の一つでもあり、同時に、 平成25年度から始まった第8次東神楽町総合計画の実行に際し、町の自主自立に係る戦略的施策の一翼を担います。住む人の数はもとより、 地域活動の手法や抱える課題が異なる町内7地区公民館単位に協議検討の母体を設け、住民と役場職員が対等な立場で議論を交え協働して計画を立てようとの試みです。 

これを基盤に、住民自治や協働の視点の理解の上に立ってまちづくりが推進されることが期待されるとともに、 総合計画が掲げる主要目標の一つである「連携と協働で築く自主自立のまち」の実効が図られ、狙い通りまちづくりの目指す姿が浮き彫りになることを希望しています。昨年10月に開かれた地区公民館長会議で、 7つの地区に初めてその全容が下ろされ理解と協力を求めました。  

「地区別まちづくり計画」住民と役場職員が議論を交わす様子の写真

「地区別まちづくり計画」住民と役場職員が議論を交わす様子

②ボトムアップ方式で論議を深め「協働」理念を実践化 

自治体運営の基本となる総合計画の策定では、町内各界の代表や団体各層から選ばれた検討委員会が設けられ、事務局から示された基本方針や論議の基礎となる素案を土台に意見の交換を重ね、 住民の声を反映していく仕組みが一般的です。総合計画は、各種計画書が従属する形の行政計画の要で、民主的なルールに則った計画と位置付けられていますが、 依然として官主導の様態から脱却できていないのも実情である意味、岐路に立たされています。 

しかし、今回の「地区別まちづくり計画」の策定では、行政ペースとは逆の流れのボトムアップ方式を採り入れ、総合計画のビジュアル化と実践化を図ることを重視しました。 

同じ自治体でも、地区ごとで成り立ちや歴史が異なり抱える問題も当然違うことから、地域の実状を熟知した住民と中堅町職員が一体となって本音で討議し、総合計画基本構想との整合に配慮しつつ、 課題の解決方法や役割分担、目指すべき目標を双方の理解を前提に創りあげていき、教本的性格の総合計画を動かし補完する実践集的な効果の発揮を求めていきます。また、 計画の策定作業を通じて住民と行政が相互の役割や責任を分担、確認し、まちづくりに有益なことであれば自ら進んで取り組んでいくという具体的行動段階の内容も盛り込んでいきます。

「ワークショップ」の様子の写真

「ワークショップ」の様子

「ワークショップ」ひじり野地区の写真

「ワークショップ」ひじり野地区

おわりに

東神楽町と大学との連携は、大学の教授等の知識や大学の機能はもとより、学生の若いエネルギーや斬新なアイディアは、地域の活性化に大きく役立つものと考えています。 現在は旭川大学との包括協定を先行させていますが、今後はさらに他の大学や研究機関、民間企業等との連携・協力を視野に入れていきたいと考えています。 

また、自治体では昨今、「住民と行政の協働(パートナーシップ)によるまちづくり」という手法が多用されますが掛け声倒れに陥りやすく、職員、 住民それぞれがそうした「協働」の理念の具現化を図っていくための導きと仕掛けは非常に重要で、今回の地区別まちづくり計画にも、その役割を期待しています。

東神楽町マスコットキャラクター『かぐらっきー』の写真

東神楽町マスコットキャラクター『かぐらっきー』