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福島県西郷村/こだわり産品と異業種人“財”活用で活性化~「にしごう村夢プロジェクト」の取組み~

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年9月30日
西郷村航空写真の写真

西郷村航空写真


福島県西郷村

2855号(2013年9月30日)


福島県西郷村は、東北の玄関口として、東北新幹線新白河駅、東北自動車道白河インターチェンジがある交通の要衝に位置しています。人口2万人を擁し、 地の利の良さなどから企業立地も相次ぎ、地方の人口減少が問題となる中でも新しい住民が増え発展してきました。しかし、2011年3月の東日本大震災と、 続く東京電力福島第一原子力発電所の事故により、西郷村でも深刻な実被害と共に風評被害とそこから生じる二次的被害に直面しました。その影響が今も地元商工業者や農業関係者等に影を落としています。

これまで全国の皆様から温かいご支援と避難者を受け入れていただいておりますこと厚くお礼申し上げます。

風評被害に負けない!

このような中、復旧から復興への飛躍を期して、西郷村商工会が中心となり、地域経済の活性化に向けた新たな取組みを開始しました。 企業組合「にしごう村夢プロジェクト」の設立です。主な事業内容は、①特産品の製造及び販売、②観光交流イベントの企画及び販売、 ③公益事業の企画・管理運営の事務受託事業等です。“城下町白河の西の郷 楽翁老中(松平定信)が愛した癒しの都さとづくり”をコンセプトに、 西郷村に多く生育している発汗作用のある山椒と、目の視力向上などの効果が、ブルーベリーの数倍ある夏ハゼ、そして恵まれた温泉資源等を生かして、 県南地域(西郷村、白河市)独自の観光ツアーや体験プログラムの企画及び、特産品開発を行い、パッケージで提案できる仕組み作りに取組んでいます。 

当地域の原発事故後の放射線量は、当初からほとんど問題ないレベルでしたが、福島県産を使えば消費者に敬遠されると考えた企業が、 当地域での野菜の生産基地を閉鎖する動きもありました。「我社では福島県産の食材は使っていません」といった発表が追い打ちをかけました。

大震災から2年が過ぎ、こうした風評被害に負けない!との意気込みで発足させたのが企業組合「にしごう村夢プロジェクト」です。この企業への期待は大きく、 観光客が減っている東北観光のけん引役にもならなければなりません。中小企業が異業種間で連携し、知恵とアイデアを出し合い、地域住民や避難民の方々にも積極的にアプローチを行い、 新しい仕事作り=雇用創出も目指しています。 

雪割橋の写真

「雪割橋」 阿武隈川上流の雪割渓谷に架かるアーチ式の鉄橋

「にしごう村夢プロジェクト」創立総会の様子の写真

「にしごう村夢プロジェクト」創立総会の様子

観光振興への取組み

最近、旅行社が企画する従来型の団体観光、極端に言うと名所旧跡めぐりか宴会が目的の「マスツーリズム」に対して、 地域住民がプロデュースする体験・交流・学習型の観光スタイルである「着地型観光」が注目されています。西郷村では昨年秋、「着地型観光」の試行として、 「外国人モニターツアー」を実施しました。これからの国際観光交流を想定して、外国人の意見も聞いてみたいとの思いもありました。約20人の参加者へのアンケート調査の結果、 地元の人との交流が楽しかった、田舎生活の体験が良かった、自然の中での散策に癒されたなど地元のきめ細かいプロデュースに対する評価が高く、 「着地型観光」の取組みの重要性が改めて認識されました。又、地元の幕末秘話を掘り起こした「西の郷 戊辰挽歌.森要蔵 羽太に散る!」の野外劇が今年の夏の商工祭で開催され、 大変な好評を博したことも「着地型観光」への期待の現われと感じています。 

企業組合では、この「着地型観光」の視点から更に徹底した地域資源の見直しと企業組合の役割を検討しました。その結果、地域に持続的に人を集め、 最終的に2地域居住化・定住化に繋げるキモは、西郷村の豊かな自然と優れた歴史風土を生かして、“癒し”、“健康”に、 “生き甲斐”を加えた“本源的ウオンツ”を提供できるか否かにかかっているとの認識で一致しました。そして“生き甲斐”創出には、マイクロビジネスを多数創出し、 地域住民はもとより首都圏人(退職した団塊世代など)とも分かち合う仕組みを確立する事が有効であると考えました。即ち、“癒し”と“特産品”だけでは企業組合の持続的発展は難しく、 “生き甲斐”を感じてもらう為の“ほどほどのビジネス作り”の仕掛けが必要であると考えました。更に、観光交流だけにフォーカスした取組みとせず、観光交流を更に発展させ、2地域居住、 定住化までを見据えたシナリオが必要であると考え、今後の活動指針となる「企業組合の持続的発展とマイクロビジネス創出に向けて」のタタキ台をまとめ、共有しました。

外国人モニターツアー記念撮影の写真

外国人モニターツアー記念撮影 大高商工会会長(1列目中央)佐藤村長(2列目中央)

組合員の得意技

このような中で企業組合は、マイクロビジネスの創出支援も大きな役割の一つとし、改めて組合員メンバーの得意技を吟味してみますと、自然保護のプロ、伝統的またぎのプロ、 植物学のプロ、森の案内のプロ、癒し・もてなしのプロ、木工技術のプロ、ソバ打ちプロ、豆腐作りプロ、6次産業化プロ、水耕栽培のプロ、加えて、ITのプロ、センサ応用のプロ、 経営指導のプロ等広範囲の異業種プロの人財バンクであることが判明しました。西郷村は、昔から志に燃え自分を信じて事を起こす開拓者として入村した人が多い地域であり、改めて、 多様な中小企業群の塊であることが認識されました。これらの異業種プロの技術を組み合わせることで特産品ビジネスをはじめとして、エコ・癒しビジネス、スマートアグリビジネス、 小規模再生エネルギービジネス、センサ活用ビジネス等の、地域ニーズに合致した住民参加型先進マイクロビジネス創出の実現性が高まりました。

特産品開発

観光客に西郷村に来てもらうには、なんと言っても魅力的な特産品が欠かせません。企業組合では特産品として、 当地に沢山見られる「山椒」や「夏ハゼ」をコンセプトにした産品の開発に乗り出し、山椒ラーメン、山椒ドレッシングを開発しました。 最近NHKの番組〝ためしてがってん"で山椒の薬膳効能が放映され、山椒料理に対する人気が高まったことも功を奏して、今年夏開催された西郷村商工祭に出店し売り出したところ、 とても評判が良く、将来が楽しみな商品に育ってくれることを願っています。 

特産品開発の写真1特産品開発の写真2特産品開発の写真3

特産品開発の写真4

山椒を核に特産品開発に取り組んでいる

今後の課題

基本的には、観光交流・特産品開発を更に発展させ、2地域居住、 定住化までを見据えたシナリオ「企業組合の持続的発展とマイクロビジネス創出に向けて」の着実な実践と見直しを繰返しながら企業組合活動を推進していきます。発足してまだ6ヶ月であり、 十分な実績を積むことは出来ていませんが、行政との連携も含めて、下記の課題を克服しながら一歩一歩着実に歩んで行きたいと考えています。 

  1. 「着地型観光」を地についたものにする為の人材養成とコンテンツ充実
    • 人材養成―地域の語り部、もてなし実践地元民、得意技連携を促進する異業種メンバー
    • 体験型コンテンツの充実―田舎暮らし、エコ生活、モノ作り、野菜作り他
    • 村内観光ルート及び循環交通手段の確立・整備
    • エコ体験施設及びエコビレッジの整備 
  2. 山椒ラーメン・ドレッシングに続く地元固有こだわり産品開発
    • 山椒応用商品―山椒餅、山椒スイーツ他 
    • 山椒以外のこだわり産品―夏ハゼ応用産品他 
  3. 異業種メンバーの組合せによる新しいマイクロビジネス創出の促進
    • IT活用―スマートアグリビジネス、小規模エネルギビジネス、センサ活用ビジネス他
    • モノ作り―木工活用こだわり産品ビジネス他
    • 特産品の六次産業化ビジネス 
  4. ITを活用した本格的販促体制の構築
    • ホームページ、フェイスブック他

独自の地域活性化モデルの確立

“本源的ウオンツ”を提供する活性化方策として、「地域に触れてもらう」→「地域を体験してもらう」→「地域に定住してもらう」の3つのステップを設定し、 手段として、「特産品・観光交流」→「キャンプサイト・クラインガルテン開設」→「エコビレッジ(又は分譲地)への定住」の3つのステップを、 放置山林を中心とした地域資源をフルに活用して実現し、且つ、 各ステップで顧客(首都圏人等)のアイデアも活用しつつマイクロビジネスを立ち上げ、“癒し”と“生き甲斐確保”を車の両輪で同時進行することを狙いとする新しい地域活性化モデルの確立を目指したいと思います。 

そして、これらの推進には、西郷村の歴史・伝統である開拓者魂、進取の精神を拠り所として進めていく所存です。

自然活用新しい地域活性化モデル(案)の図