愛知県東郷町
2854号(2013年9月23日) 東郷町長 川瀬 雅喜
東郷町は、愛知県の尾張東部地域に位置し、明治39年に尾張の「東のふるさと」という意味で「東郷村」として誕生しました。 以来昭和45年の町制施行を経て現在に至るまで100年以上の歴史があります。
面積は18.03平方キロメートルと小さな町で、尾張と三河の境となる境川流域の豊かな水辺や緑を有する農業のまちとして栄えてきましたが、 名古屋市と豊田市の間に位置する地理的条件に恵まれ、高度成長期以降は両市の発展と共に絶好のベットタウンとして発展し、人口は4万2千人余を数えるようになり、現在も着実に増え続けています。
現在は、周辺を全て「市」に囲まれた一郡一町で、小さくてもキラリと光る「住んでよかったといえるまち」を目指し、住民と協働のまちづくりを進めています。そして、 その実現のために、公募により集まった町民と町の職員で構成する検討委員会において、約2年をかけて条例素案の検討・作成を行い、本年6月に「住民自治基本条例」を制定しました。
また、東郷町には、50年前に開通した木曽御岳を水源とする愛知用水の中間調整池で、総貯水量900万トンの愛知池があります。ここには、 愛知県では唯一の、1,000メートルコースが7レーンの公認ボート競技場があり、多くの全国規模の大会が開催されています。
東郷町はこの特色を活かして、選手寿命の長いボート競技を「町の生涯スポーツ」と位置づけ、 町民の健康づくりを図りながらレガッタ競技を開催して町民交流の場として活用しています。
まちづくりではキラリと光る三つの柱として、「子育て支援」、「健康づくり」、「賑わいづくり」を掲げて取り組んでいます。とりわけ、 まちの将来を担う子どもたちが健やかに成長できるよう「子育てするなら東郷町」をキーワードに、子育て支援ナンバーワンのまちを目指して、様々な施策を展開してまちづくりを進めていますので、 その代表的な取り組みをレポートします。
毎年8月に愛知池で開催される「町民レガッタ」
愛知池全景
小学校に通う児童に、放課後の安全・安心な居場所を提供するため、子どもにとって最も身近な学校施設を利用した「放課後子ども教室」を平成20年10月に開設、 その後3教室を開設し現在6小学校のうち4校で実施していますが、将来は全校で実施する計画です。
この放課後子ども教室は学校の余裕教室を利用し、授業のある日は授業後から午後5時30分まで、授業のない日は午前9時から午後5時まで、お盆、年末年始、 学校行事などでの閉所を除いて平日はほぼ開所しており、年間約220日間運営しています。
運営は学校とは全く切り離し、生涯学習課の指導員と地域のボランティアの方々で行われています。活動は「学び・遊び・体験・ふれあい」の四つに分類され、 「学び」の時間では、授業のある日は一日30分、授業のない日は60分の学習タイムを設け自主学習を支援しています。
「遊び」の時間では、室内遊びや校庭でドッジボールなどを行い、「体験」の時間では、主に地域の方々に講師をお願いし、 お茶の作法やクッキングを楽しむなど普段体験できない活動をしています。
また「ふれあい」の時間では、地域の方々と学校の近隣を散策して自然観察をしたり、児童館で活動している放課後児童クラブと交流を図るなど、教室外での活動も活発に行っています。
そのほか季節に合わせたイベントや遊びの大会を開催し、現場の指導員が話し合って児童の興味、関心を引き出しています。これらの活動には、主に1年生から3年生の児童が参加し、 異学年や地域の方々との交流を深めています。
教室の運営に当たる指導員は、子どもの参加票や教室だよりで保護者と情報共有を、また活動日誌を使って指導員間で子どもの情報を共有しています。学校側とは、 定期的に連絡を取り参加児童の情報を提供すると共に、学校行事や利用施設の確認などスムーズな運営に努めています。
放課後子ども教室 指導員による本の読み聞かせ
平成24年12月には、こうした地域を巻き込んだ「放課後子ども教室」の活動が特に優れていると認められ、兵庫小学校の放課後子ども教室が、 地域による学校支援活動推進にかかる文部科学大臣表彰を受賞しました。
また、諸輪中学校PTAの活動も高く評価され優秀PTAとして、文部科学大臣表彰を受賞するというダブル受賞の栄誉に浴しました。
今後は更に活動内容を充実させ、各放課後子ども教室の特色を出すため、指導員には、子どもに対する対応力の向上を目的とした研修への参加を、 保護者には放課後子ども教室の運営に積極的な協力を求めていく予定です。
また、活動内容の改善充実を図る目的で、放課後子ども教室のコーディネーター、自治会長、学校代表、PTA代表、 町社会教育指導員を構成員とする運営連絡会で当該年度の事業検証と評価をして、次年度の事業計画への反映を図っていきます。
放課後子ども教室 自主学習風景
東郷町には、全ての小学校の近くに児童館を配置していますが、全6館で「放課後児童クラブ」を、前述の「放課後子ども教室」に先駆けて開設しています。 ここでは主に小学生の低学年(小学校3年生まで)を対象に、日曜日を除く毎日、午後7時まで遊びを中心に子どもたちを預かっていますが、当然地域の皆さんのボランティア活動の協力を得て運営しています。
子ども医療費は、平成24年1月から助成の対象を拡大し、入院・通院とも18歳まで所得制限なしで無料としています。これは、 愛知県では初めてのことで子育て中の皆さんから大変感謝されています。
そして本年3月からは、既に実施している県内トップクラスの不妊治療費助成制度に加え、不育症治療費助成制度も愛知県内で初めて実施しています。
病気や病気回復中の、生後6か月から小学校3年生までの子どもを預かる「病児・病後児保育」で、働く親を支援しています。また、 核家族化と社会環境の変化で要望の強い「一時保育」を保育園とは別に運営しています。
そのほか親子の交流、子育て相談ができる「子育て支援センター」、町内外を問わず親子で遊べる「つどいの広場」を運営しており、つどいの広場の一角では、 短時間の一時保育も行っています。また、保育園の送迎や家庭で一時的に子どもを預かる「とうごうファミリー・サポート」など、安心して子育てができる環境を整備しています。
子育て支援を進めるにあたって、財政支援や環境整備はもとより、心の通った子育て支援をより重視しています。子育て相談員として、 子育ち支援カウンセラーを子育て支援課に2名配し、子育てに不安を抱える家庭をフォローしています。主な事業としましては、「子育ち支援訪問」「子ども相談」 「5歳児すくすく発達相談」などを実施しています。
「5歳児すくすく発達相談」は、町内の保育園や幼稚園に通う5歳児を対象に、臨床心理士や発達障がい支援指導員等の発達支援スタッフと各園を回り、 保護者へのアンケート等を基に、行動観察を実施しています。発達の気になる子どもには発達検査を実施して、子どもの個性を確認し、必要な支援を保護者に提案するとともに、就学に向け、 早期に小学校との連携を図っていきます。この取り組みは東郷町独自のシステムです。
現在、町内にある8保育園では、幼児期に必要となる多様な身体の動きや体力、運動能力の基礎を楽しく習得できるよう、先進的な「運動遊び」に取り組んでいます。この運動は、 多様な動きの経験を通して、リズム感やバランス感覚など、身体の部位を調整して滑らかに効率よく動かす「コーディネーション能力」の向上に視点を置いています。
この先進的な取り組みが評価され、昨年、文部科学省が推進する「幼児期の運動促進に関する普及啓発事業」の調査研究の対象事業に採択されました。
コーディネーショントレーニング
民謡「東郷音頭」は豊かな東郷町を謡いこんだもので、盆踊りなどで多くの町民に愛されています。
子どもたちが将来、故郷東郷を誇りに思えるよう「ふるさと意識」の醸成を図るために保育園で4歳と5歳児を対象に、民謡「東郷音頭」の歌と踊りを教えています。 園児と指導している東郷音頭保存会の皆さんとのふれあいが深まるとともに、地域の盆踊り大会も大変活性化しました。
「納涼まつり」での東郷音頭
全ての子どもたちが、安全で安心して健やかに成長することができる町を実現するため「子どもの権利に関する条例」の制定に向けて準備を進めており、 今年度中の制定を目指しています。今後も子ども・子育て支援法の施行に伴う子育て環境の整備に努めつつ、子育て支援に関する住民ニーズの把握に努め、事業の拡充を図り、 「子育てするなら東郷町」のフレーズが、さらに世間で定着するよう意欲的に進めていきます。