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石川県能登町/地域に埋もれた資源に光を当て、地域主導型の公民館活動の展開~能登町公民館特色ある活動事業を通じて~

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年7月1日
九十九湾の写真

九十九湾(能登半島国定公園)


石川県能登町

2845号(2013年7月01日)  能登町教育委員会事務局長 小坂 智


はじめに

当町は、平成17年3月1日、能都町・柳田村・内浦町が合併して誕生しました。能登半島の北東部に位置し、北は珠洲市と輪島市、南西は穴水町に隣接し、東と南は富山湾に面して海岸線が続き、 海岸線の大半は能登半島国定公園に含まれています。現在合併8年目であり、多種多様な文化・行事・神事などの地域間交流、または世代間交流やネットワークを活かした取り組みなど、 町の融和を図った施策が求められています。

立山連峰の写真

宇出津港から望める立山連峰

公民館活動について

当町には公民館が15館あり、それぞれ非常勤の館長1名、常勤の公民館主事1名が配置されています。この15館は、概ね小学校区ごと(閉校した小学校を含む)に公民館が配置されています。 閉校した旧小学校舎をそのまま利用している公民館も少なくありません。また旧校舎の内5施設は、県内では珍しい公民館の「分館」として残されています。 

各公民館では、文化・芸能・スポーツなどの各種教室やサークルのほか、地区の運動会や納涼まつり、敬老会の開催等、さまざまな活動を行っています。更に平成24年度から 「公民館特色ある活動事業」がスタートしました。これは各公民館が「地域の資源」を活かした活動を行うもので、奥能登に伝わる、「あえのこと」や「アマメハギ」などの伝承に関わる活動、 環境や食をテーマにした活動、世界農業遺産を活用した活動など、すべての公民館で取り組んでいます。今後も全公民館で、特色ある活動事業を発展させ、活動の幅を広げたいと考えています。

公民館への支援

町からの支援は主に、予算と情報発信(広報誌、ホームページ、有線テレビ、メディアへの情報提供等)の2種類を行っています。特に前者については、 平成24年度から公民館特色ある活動事業を新規に予算化しました。この事業は、1公民館当たりおよそ10万円を目安に、地域の文化や神事、行事など、地域の特色を活かした活動を公民館で行うものです。 

平成24年度は、全15公民館19事業1,273千円を、平成25年度は、全15公民館19事業1,665千円を予算化しました。

公民館の事例紹介

公民館は、活動や交流の場だけではなく、地域の学びの場でもあります。町内15公民館下には、それぞれ特徴的な文化・神事・行事などがあります。これを地域づくりに活かすために、 町は平成24年度から「公民館特色ある活動事業」を実施しています。その取り組みを通して、改めて公民館の意義や役割を伝えるため、ここでは、3つの公民館の事例についてリポートしましたのでご紹介いたします。 

①秋吉公民館
(事業名:アマメハギ交流伝承事業)

「秋吉公民館の自慢は、地域の皆さんが公民館活動にとても協力的なことです」と語る竹中省三館長。今年度、特色ある活動事業に取りかかった。

蓑作りでも「原料となるわらの提供やねいご(稲の穂が付いていた部分)抜きの協力を呼びかけたところ、予想以上の協力が得られて本当に感謝しています」と目を細める。

毎年2月3日、鬼の面を付けた子どもたちが蓑をまとって家々を回るアマメハギは、秋吉公民館地区だけに伝わる伝統行事で国指定重要無形民俗文化財。しかし、蓑の文化が今も残るこの地域でも、 編み方を知る人は途絶え、現存する蓑は年々傷みが激しくなっていたという。「指導してくれる人がいるうちに、蓑作りを伝承しようと、アマメハギ保存会と話し合いました」 竹中さんは町内で数少ない蓑編み技術を持つ堂下久子さん(78)に指導を依頼。住民18人が集まって協力しながら5着の蓑を新調した。「やってみると非常に難しかったですが、 参加者は熱心に協力的に取り組んでくれました。活動しながら、地域の文化を伝承していきたいという思いもさらに強くなりました」。秋吉公民館は今年度、地域との『協働』を掲げて活動している。 蓑作りも保存会との協働で取り組んだ。「公民館だけでできないことは、地域の皆さんと一緒にやります。公民館活動には住民の理解と協力が不可欠です。活動を通して意識をいかに変えていくか。 その過程を大切にして、これからも活動を積み重ねていきたい」。長い年月で培われた住民と公民館の協力関係が、域に活力を生んでいる。

ツツノコ、コバセ道具を使った蓑づくりの写真

ツツノコ、コバセ道具を使った蓑づくり

蓑づくり集合写真

蓑づくり集合写真

②鵜川公民館
( 事業名:親子で作ろうミニミニ にわか事業)

鵜川公民館は今年度、特色ある活動事業の予算を使って『ミニにわか』作りと鵜川地区の歴史を記したカレンダー制作に取り組んだ。「自分が住んでいる地域、 育った地域に誇りと愛情を持ってもらいたい」と話す梅田真人館長。「自分が子どものころは、自作したミニにわかを引っ張りながら町内を練り歩いていました」と振り返る。

ミニにわか作りには親子11組が参加。約3カ月かけて完成させ、にわか祭本番前の8月19日には、『ミニにわか祭』を行って町内を練り歩いた。「できるだけ本物に近い作りを教えることで、 若い親たちににわかの作りを知ってもらうようにしました。子どもたちには、祭りの言い伝えなどを教えながら一緒に町を練り歩きました」。鵜川の歴史を暦にしたカレンダーは、 公民館歴史教室のメンバーが文献を調べたり、寺への聞き取り調査などを行った。掲載する項目は、議論を重ねて120項目に絞り込んだ。「暦には、今は行っていない行事や祭礼のほか、 久田船長や原勤堂など郷土の偉人の生没日、鵜川郵便局の開局日など、鵜川にとって大切な歴史が掲載されています。知らなかった地域の歴史を知ることで、ふるさとを再発見するきっかけにしてほしい」 と地区約500世帯に配布された。地域住民には好評だという。「公民館の役割は、地域を元気にすることと文化の伝承。そのための発信場所であること。タウン誌の制作や昔遊びの復活など、 やりたいことはまだまだあります」と意気込む。地域を見つめ直す鵜川公民館の活動が、郷土愛を育んでいく。

ミニにわかの集合の写真

ミニにわかの集合

出来上がったカレンダーの写真

出来上がったカレンダー

③小間生公民館
(事業名:久田和紙の伝統文化継 承事業)

「久田和紙を守り、育てていくためには原料であるコウゾの確保が欠かせません」。小間生公民館長であり、久田和紙の製法を受け継ぐ『みわ会』の会長でもある谷内靜雄さんは、 特色ある活動事業でコウゾの移植・植栽を提案。6月8日に久田地区の休耕地200平方㍍にコウゾの苗50本の植栽と、山に自生していた若木50本の移植に取り組んだ。
作業には、今年度から里山里海交流を実施し、卒業証書用の和紙づくりを体験する柳田中学校と小木中学校の3年生が協力。みわ会メンバーや地元造園業者らと一緒に汗を流した。

「移植・植栽したコウゾはおおむね順調に育っています。安定した原料確保のためにも300本を目標にしたい」と語る谷内さん。「荒廃地を活用することで、 久田地区をコウゾの一大産地にしたい」と意気込んでいる。昭和63年に旧小間生小学校の体験学習として復活した久田和紙。小学校の閉校を控えた平成13年9月にみわ会が設立され、その技術を受け継いだ。 「久田和紙という眠っていた地域の伝統文化が発掘され、復活し、受け継がれました。地域に根差した活動に光を当てるのは、公民館しかできません。みわ会を公民館活動の中核に据えて育成していくことで、 久田和紙の保存継承をしていきます」。 

高齢化や後継者不足など、抱える課題は決して少なくない。「継承していくためには、地域の皆さんの理解と協力が欠かせません。 そのためにも公民館の規約を作るなど体制づくりも必要と考えています」。久田和紙という原石。地域を巻き込む公民館活動が原石を磨き、輝かせる。 

和紙原料のコウゾの植栽の写真

和紙原料のコウゾの植栽

世界に一つだけの卒業証書の写真

世界に一つだけの卒業証書

今後の新しい動き

今まで公民館は、どうしても高齢の方々が活動する場としての認識がありました。しかし、平成25年度の特色ある活動事業の中には、婚活事業が始まり、 若い未婚の男女も公民館活動に関わる予定です。今後は、子供や高齢者だけではなく、20代~40代といった中間層にも公民館活動に加わる工夫をしていきたいと考えています。 

この公民館特色ある活動事業を進めていく中で、地域住民のつながりが増え、町の融和が図られると共に、地域の自主的な取り組みを推進していきたいと考えています。