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大阪府熊取町/子育てしやすいまちづくり~子育てを応援する人がたくさん暮らすまち~

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年12月17日
熊取町の町並みの様子の写真

熊取町の町並み


大阪府熊取町

2823号(2012年12月17日)  熊取町長 中西 誠


都会の利便性と豊かな自然、両方の良さを持つ暮らしやすい町

熊取町は、大阪都心部から電車で約30分、関西国際空港からは電車で約15分の距離で、利便性が高く大阪南部に位置する、人口44,597人 (平成24年10月末現在)のまちです。

自然環境や歴史にも恵まれ、「大阪みどりの百選」「全国水源の森百選」にも選ばれた「奥山雨山自然公園」、「全国ため池百選」に選ばれた憩いの親水空間 「長池オアシス」、重要文化財「中家住宅」「来迎寺本堂」「降井家書院」など見どころもたくさんあります。気候も温暖で、1970年代より宅地開発が進み、郊外の良好な 住宅都市として発展してきました。

快適で暮らしやすい風土に、大阪体育大学、大阪観光大学、関西医療大学、京都大学原子炉実験所の4つの大学、全国町村ではトップクラスの35万冊の蔵書を 誇る図書館等「学園文化都市」としての特徴も有しています。

協働による子育て支援の礎

もともと農業と織物業を主産業とした熊取町は、女性が働くことが日常的であったことから、保育行政に力を入れてきました。現在も保育所の待機児童は 「ゼロ」で、保育所が子育て支援の中心的役割を担っています。また、地域では「だんじり祭り」「太極拳フェスティバル」等様々な行事が盛んで、地域コミュニティが 子ども達を育む役割を担ってきました。

加えて、宅地開発により人口が増加する中、新しい土地で頼れる知り合いがいない状況下で子育てを支え合うために、転入された親たちを中心に「文庫活動」 「共同保育所」「学童保育所」等多くの住民活動が生まれました。「孤立による子育て不安」や「長時間保育の必要性」等子育て支援における新たな課題やニーズは、 これら住民活動と協働することで発展を遂げてきました。

「新たな公共」として「協働」という概念が注目されるずっと前に、住民と行政が協力し、子育てを支援していたというのが本町の子育て支援の始まりです。 主体的な住民と柔軟な行政、先人の方々の努力による「協働」が本町の子育て支援の礎であるといっても過言ではないでしょう。

現在は、午後10時までの延長保育や、小学校1年生から6年生対象の学童保育、保育所の送迎や一時預かりなどに対する会員制の子育て援助システムである 「ファミリー・サポート・センター事業」、未就園親子の居場所として「つどいの広場事業」など、多様な子育て支援が、行政とNPO等との協働で実施されています。特に 「ファミリー・サポート・センター事業」においては、他自治体において育児をサポートする「協力会員」が不足する中、本町においては十分な会員数を確保しており、 年間200件を超えるサポートが行われています。

図書館の外観写真

「学園文化都市」35万冊の蔵書を誇る図書館

重要文化財「中家住宅」の外観写真

重要文化財「中家住宅」

昨今の子育て事情と「ホームスタート事業」の実施

(1)「待つ支援」から「届ける支援」へ

主体的な住民活動と柔軟な行政との「協働」で発展してきた子育て支援ですが、1990年代に盛んであった「子育てサークル活動」を最後に、若い世代の 主体的な地域活動は縮小傾向にあります。つながることが苦手な若い世代は、次第に地域活動から遠のき、最近では、「つどいの広場」や「子育てサロン」等の子育て 支援事業にさえも、足の向かない親子が少しずつ増加しています。

子どもの育ちにとって「地域社会」は重要な意味があると言われています。「地域」には「家庭」と異なる役割があり、子ども達が人間関係や社会性を 身につける場として大きな意味があるのです。社会と隔絶された家庭の中だけでは、子どもは育たないのです。そこで、引きこもりがちな親子を対象に、悩みや不安を傾聴し、 その成長を見守りながら、親子と社会をつなげていく子育て支援活動が必要となってきました。

「待つ支援」から「届ける支援」へ、本町の大切にしてきた「協働」を活かした新たな取り組みとして「ホームスタート事業」を実施することになりました。

つどいの広場の様子の写真

つどいの広場

(2)ホームスタート事業の実際

「ホームスタート」は、イギリスで発祥したボランティアによる「訪問型子育て支援」です。本町では平成24年8月よりNPO法人に委託し実施しています。 関西では初めての取り組みであるとともに、行政の保健・福祉分野とNPO法人の協働により、乳幼児健診や乳児家庭全戸訪問事業との連携を図り、要支援ケースについては 子ども家庭相談へつなげるなど、重層的かつ継続的支援が行えている点に大きな特徴があります。

就学前の乳幼児を抱え、子育てに不安やストレスを感じている人なら誰でも申し込むことができます。

訪問は、7日間の研修を修了した「ホームビジター」と言われるボランティアが行います。平成24年10月末現在、12名のホームビジターが登録、 新たに7名の方が研修を受講中です。

訪問は、子育ての悩みを聞いたり、一緒に家事や育児を行いながら、子育ての意欲や技術の向上を図ります。ホームビジターが週に1回、2時間程度、 合計5回を目途に訪問を行います。

また、事業全体の運営、「ホームビジター養成講座」の実施、訪問を希望する親とホームビジターとの調整などは、NPO法人ホームスタート・ジャパンに おいて子育ての専門知識に関する研修を受講し認証を受けている「オーガナイザー」が行います。

平成24年10月末までに8名の申込みが有り、オーガナイザーとビジターによる訪問延べ件数は98回に上っています。

ホームビジター養成講座の様子の写真

「ホームスタート事業」ホームビジター養成講座の様子

安全パトロールの様子の写真

ボランティアによる安全パトロール

(3)利用者やホームビジターの声

始まって間もない事業ですが、利用者からは「子どもと2人きりでずっと家にいるのはしんどかった。一番つらい時期に訪問してもらって支えてもらった。」 「子どもとの遊び方がわからなかったが、ビジターさんが一緒に遊んでくれたことで、子どもとの関わり方を学ぶことができた。」「下の子が生まれ、上の子に関わってやれなく なっていた。ビジターさんに下の子を看てもらい、思い切り上の子と遊ぶことができた。上の子どもの気持ちが安定したので本当にほっとしている。」「子育てが落ち着いたら、 自分もホームビジターとしてお手伝いしたいと思った。」など、喜びの声がたくさん届いています。

また、ホームビジターからは「お母さんの気持ちに寄り添うことの大切さを実感。特別なことをしなくても話を聞くことで問題解決になることを学んだ。」 「人との出会いを実感できる活動、自分も子育てを支えてもらったので、少しでも役に立てることがとても嬉しい。」など、活動する喜びの声がたくさん届いています。

利用者やホームビジターさんの声から、想いは必ず響き合うことを実感しています。そして「ホームスタート」から「つどいの広場」や「子育てサロン」の 利用など「地域社会」との橋渡しをすることは、親と子どもが共に育ちあうことを応援することであり、将来の子育てを応援してくれる人材を育てることでもあると考えています。

野鳥観察をする子ども達の様子の写真

ボランティアと野鳥観察する子ども達

主体性の喚起、「お母さん、お父さんによる子育て応援DVDの作成」

その他、子育ての当事者である親が、楽しく地域を学び、その主体性を喚起する取り組みとして、子育て応援DVDを作成しました。 撮影ボランティアスタッフの指導の下、お母さん、お父さんが様々な子育て支援事業を取材し、30分のDVDを作成、現在本町ホームページで公開しています。議論と取材を 繰り返し、子育て当事者の目線でわかりやすい作品に仕上がっていますので是非ご覧ください。

熊取町ホームページ

最後に、子育てしやすいまちとは

「まち」は、そこに暮らす人々によってつくられます。

「子育てを助けてもらった経験」から「助ける経験」が世代を超えて循環し、子育てに優しい眼差しを向けられるまちであって欲しいと思います。

子育てしやすいまちとは、地域の優しい眼差しの中で、自分らしく子育てができるまちであると考えています。

また、子どもの自立の根っこは、自己肯定感と言われています。自己肯定感とは「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在だ」と思える心の状態を 言い、その獲得には、幼少期に「ありのままの自分」を受け入れられた体験が重要であると考えられています。自己肯定感は受容と共感の中から生まれるものなのです。

熊取町には受容と共感の心で子育てを応援する人々がたくさん暮らしています。今後も住民と行政の協働により「自立した人育ち」をにらみながら、 地道な子育て支援活動を続けていきます。

「祝Facebookページ開設」の横断幕を持つジャンプ君(左)とメジーナちゃん(右)の写真

「熊取町公式facebook」平成24年11月開設 ジャンプ君(左)とメジーナちゃん(右)