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北海道剣淵町/「心のふるさと」絵本の里づくり 「人・夢・大地」やさしさ奏でる絵本の里けんぶちの25年

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年12月10日
絵本の館の外観写真

絵本の館


北海道剣淵町

2822号(2012年12月10日)  総務課長 早坂 純夫


剣淵町って何処にある町?

剣淵町は明治32年に屯田兵が入植し、昼なお暗い原生林を切り開き、多くの苦難を乗り越え築かれた北海道開拓の町であります。

北海道の中央、旭川市から国道40号線を約50㎞北上した位置にあり、総面積は131.20k㎡の面積を有し、名寄盆地の南部に属しています。

町の中央部を天塩川の支流である剣淵川が流れ、それに沿って広がる平坦低湿地帯と、それを囲む東部丘陵地並びに西部の小山脈となしており標高は最高440m、 最低129mの典型的な盆地であります。

気候は、内陸性気候に属し夏はプラス30℃、冬はマイナス30℃をそれぞれ超える寒暖の差が激しい、人口3,552人の純農村であります。

農産物は、水稲、小麦、ジャガイモ、大豆等を中心に北海道で生産される野菜は何でも育ち、流通環境や農業政策に作付けが左右される状況にあります。

絵本で町おこしができるの!?

ここで、なぜ、剣淵が絵本で町おこしをするようになったのか少しふれたいと思います。

頃は、昭和63年2月、世の中はバブル絶頂期でありました。

札幌ススキノのとある場所で、「どちらから来られたの?」と尋ねられた時に「剣淵」と話すと「酒蔵のある町ですか、剣菱ですか?」などと会話が 弾むことがあり悔しい思いがありました。けして若くはない仲間たちは、町づくりに思いを巡らしているときでありました。当時、北海道では、一村一品運動が提唱されており、 各市町村が運動を通じて活性化を模索しているときでもありました。

剣淵は、一般農産物は何でも栽培できるのと、寒暖の差が大きい事から良質の野菜が収穫できる気候でもあります。このことは、特産品として的を絞るまでの 状況にありませんでした。

このようなとき、商工青年部主催の講演会があり、パリから帰国して隣市に住む版画家から一つの言葉がありました。「あなたたちは、お金を儲けることしか 考えていない。日本人は、パリに旅行しても、ブティックでは熱心に買い物をするが、美術館や博物館をじっくりと鑑賞することなく帰ってしまう。商売をされている貴方達は お金のことしか考えていない。日本人は金と物を大事にするが、人と心、芸術を忘れていては世界に通用しない。」とバッサリでした。

講演でガツンと言われたことがきっかけで発奮、芸術について学ぶことになっていくのでした。その後、出版社の編集長を紹介されることになり、絵本に関する 講演会を企画することになったのでした。

講演後の懇親会で「このような田園風景はフランスの農村風景に似ている。フランスでは、芸術家が離農後の農家住宅に移り住み、自給自足の生活をしながら 創作活動に励んでいる。時間のゆったりした流れや空気の爽やかさの中に絵本原画の美術館などがあると良いですね。」と教えられたことがオジサン達と絵本との接点に なるのでした。

原画は、絵本を出版してしまうと編集者の机の横とか棚の上等に保管され、日の目を見ない事になってしまいます。中には、芸術的に優れている作品もあること からヨーロッパでは保存も兼ねて美術館に所蔵されている作品もあり、絵本というものの奥の深さを知ることになっていくのでした。

自然環境・時の流れ・フランスの田園風景に似ていることなど、絵本で町おこしをやらない手はないと考えたのでした。

絵本を題材とした町おこしは、すすきので有名になるかもしれないし、絵本は若い女性、原画は芸術的絵画、美術館はたくさんの訪問客が町にやってくるなどと 勝手な発想をひろげ、突き進むことになるのでした。

初代絵本の館の外観写真

初代絵本の館

原画展の様子の写真1

原画展

原画展の様子の写真2

原画展

絵本で飯が喰えるか?

文化での町おこしなんてできるはずがないと言われ、資金もなく、町からの補助も難しいときでした。ところが昭和63年は、竹下内閣の政策として「ふるさと 創生資金」1億円事業が全国で始まることになったのでした。これに目をつけた仲間の一人は、早速、当時の町長に掛け合うのでした。町長は、「君たちの考えは 理解しないわけではないが、突然言われても「ハイ」とは答えられない。どのような活動ができるか仲間を増やし、町民の理解を得て欲しい」というものでした。

確かにそのとおりであった。1億円を海のものとも山のものともわからないプロジェクトに対して注ぎ込むことは、町として困惑するのが当然でした。

結果、300人ほどの会員を募り、「けんぶち絵本の里を創ろう会」を設立し、再度、町に申し入れを行うことになったのでした。

町は、地域づくりとして、この1億円の約半分を使うことで英断し、活動の拠点整備として、昭和19年建設の旧役場庁舎を改装、日本一の絵本図書館を目指して 絵本1万冊を購入し、初代の「絵本の館」を平成3年にオープンすることになったのでした。

この時点で、まだ確実性のない絵本による町おこしは、行政が手を染めることなく自主的な民間活動に委ねられることになっていくのでした。

「お金は出すが、口は出さない」と行政の財源的な支援が決まり、活動拠点もでき、進めることになるわけですが、町民の中には「絵本で飯が喰えるか。」と 批判的な人達もあらわれ、このことで善し悪しは別に一躍注目を浴びることになりました。「絵本の里を創ろう会」の仲間たちはめげず、絵本原画展、絵本作家・ 編集者等の講演会、絵本関係図書館行事への参加等、矢継ぎ早に活動の場を広げていくことになっていくのでした。

絵本をキーワードに町づくり

スポット的なイベントとして原画展や講演会を開催してきましたが、町づくりを考えたとき、定期的に開催されるイベントが必要な事に気づくのでした。

展示期間中に絵本の館を訪問された方の投票数で決定するのはどうだろう。投票だけには来てもらえないから、同時に原画展を開催しよう。等々考えて読者が 投票で選ぶ絵本のコンクール、「けんぶち絵本の里大賞」を創設することになりました。今では回を重ね22回にもなります。

平成2年には、絵本の里づくりに参加していた農家の仲間達から身体に良い農産物を作付けしようと、「頭の栄養は絵本で、身体の栄養は無農薬野菜で」と 「けんぶち生命を育てる大地の会」が誕生し無農薬で安心野菜を作る組織もできました。当時としては、先駆的取り組みとして絵本の里創りとともに関心を呼ぶことになりました。

絵本原画展も例年行ってきましたが、ミニコンサート・講演会・ふるさと絵本の発刊等々、文化的なことは、臆することなく開催実施してきました。このことは、 絵本の里づくりに多様性をもたらすものであり、交流人口の拡大にもつながってくるものでした。

平成16年には、老朽化した絵本の館(絵本図書館)を新築移転することになり現在に至っています。蔵書は絵本3万5千冊、児童書等を含めた一般書1万5千冊、 収蔵絵本原画1千点にもなります。社会福祉法人が運営する軽食喫茶店もあり、知的障がい者の働く場所にもなっています。また、ギャラリーも備えており、夏の絵本原画展等 美術館的要素も兼ね備えています。

絵本の里づくりは、行動力のある男性が主体となって活動が始まっている事もあり、より前向きな活動になっていったのではないかと考えます。各家庭の 書棚には、作家のサイン入り絵本があるようになり、それぞれの家庭や子供たちが読み聞かせを通じて心豊かに育んでいます。

絵本といえば、女性や子ども達を対象に考えられますが、大人になっても読みたい本があったり、生きる力をつけるヒントがあったりと、心に響く一冊があります。

美術館的な要素も兼ね備えた絵本の館の写真

美術館的な要素も兼ね備えた絵本の館
たまご型ドームに置かれた「木の砂場」には10万個の木の玉が入っている

「けんぶち絵本の里大賞」投票の様子の写真

「けんぶち絵本の里大賞」投票の様子

絵本読み聞かせの様子の写真

絵本読み聞かせ

絵本が結ぶ子育てサイクルと絆!!

24年間の時間の流れは、当時の女子小中学生がお母さんになり、子供さんを連れてやってきます。「オジサン、覚えていますか」と、ちょっぴり高校生当時の 面影を見せながら、絵本の館で子どもさんに絵本を読んであげたり、遊ばせたりする姿がほほえましく伝わってきます。

町では、平成19年から「君の椅子」プロジェクトへの参加を進め、「生まれてくれてありがとう。君の居場所はここにあるからね。」とたくさんの思い出を 絵本とともに未来へ椅子が運んでくれます。

絵本の館では、子育の終わった大人たちが癒しの思いで時間を過ごしたり、仕事漬けの日常を離れ「ほっ」とした空間に身をおく方々もたくさん訪れています。 もちろん、お孫さんとご一緒の方もいらっしゃいます。遠くて数年に一度しか訪れる事ができない方も剣淵を〝心のふるさと.として大切に思っていただいています。

絵本の持つやさしさをキーワードにした時、剣淵に合う動物を飼いたいと“アルパカ”がやってきたり、そのアルパカが“ペルー”と交流する きっかけづくりになり、平成23年7月には、日本で初めてペルーとの自治体間で姉妹都市締結もすることになりました。今年、6月には姉妹都市でありますペルー共和国フニン県 タルマ郡パルカマヨ区を、佐々木町長他5名のペルー国訪問団が交流を深めてきました。

また、絵本の魅力と子ども達を引きつける絵本の力に圧倒され、感動した映画俳優大地康雄氏が剣淵を素材とし、企画立案した心に「じんじん」と 響く映画製作をしたいとロケ地になりました。絵本の里づくりは地域だけではなく全国からの「心のふるさと」となって絆で結ばれつつあります。

誰しも眠る前、いつも母が読んでくれる絵本にワクワクしていたころ、小さな体には、かかえきれないほどの夢や冒険のある世界が広がっていたと思います。 そんな、あの日が遠くなったと感じたら、再び剣淵へいらしてください。大人になって忘れかけていた、少年少女時代の大切な物がきっと見つかります。

アルパカ牧場の写真

スキー場跡地を活用したアルパカ牧場

アルパカの写真

アルパカ

ペルー訪問団とペルー日系人協会の皆さんの写真

ペルー訪問団(右6人)とペルー日系人協会の皆さん

※絵本が結ぶ親子の絆が映画になりました。ユーモアあり涙ありの感動する映画『じんじん』2013年4月公開予定です。必見ですよ。

お問合わせ先

Tel 0165-34-2121 (剣淵町役場)