ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 長野県高森町/高森町の「PRIDE」「FUN」「LOVE」をデザインする ~タウンプロモーションの取組~

長野県高森町/高森町の「PRIDE」「FUN」「LOVE」をデザインする ~タウンプロモーションの取組~

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年7月2日
市田柿の写真

「市田柿」は、平成18年に地域ブランドとして登録された南信州を代表する特産品


長野県高森町

2805号(2012年7月2日)  経営企画室 清水 衆


長野県の南部、南アルプスと中央アルプスに囲まれた「伊那谷」の中にたたずむ私たちの町、高森町。昭和32年に市田村と 山吹村が合併し、今年7月には町制施行55周年を迎えます。面積45.26K㎡の中に約13,500人の人が住み、天竜川をはじめとした豊かな自然と 歴史文化に恵まれ、そして隣接する飯田市をはじめとした市町村を結ぶ幹線道路を中心に商業施設や工業団地も立ち並ぶ「自然と都市が調和した」 町です。この恵まれた環境に囲まれた当町は、各種農産物の南限・北限の境界に位置し、一年中おいしい果物や野菜を収穫することができます。

「市田柿」発祥の里

その中でも当町の一番の特産品は「市田柿」です。平成18年に長野県で初めて地域団体商標登録(地域ブランド)を受けました。 旧村名の「市田」を冠するこの干し柿の発祥の地は、ここ高森町なのです。10月下旬から11月にかけて綺麗に色づいた市田柿の収穫が始まり、 皮むき・柿つるしが始まります。以前は手作業であり本棟づくりの民家の軒先につるされた「柿すだれ」の風景はこの飯田下伊那地方の初冬の 風物詩でしたが、今では食品衛生上の問題でその姿は減りつつあります。加工技術は機械化されても先人たちの精神や知恵は受け継がれ、農家の 皆さんの丁寧な仕事で、美しくおいしい市田柿が出来上がります。天竜川からの「朝霧」による適度な湿度、そして日中の温暖な気候の「乾湿の 繰り返し」で、本来持つ糖分が白く表面に浮かび上がります。これが市田柿のおいしさの秘密です。

飯田下伊那地方(南信州)を取り巻く状況

わたしたちの高森町を取り巻く状況は大きく変化しています。高森町があるこの飯田下伊那地域は人口17万、面積は香川県に 匹敵する地域です。この地域は、少子高齢化や人口流出などの影響で1年間で約1,200人減少しており(平成22年度国勢調査結果より)課題の一つ となっています。平成17年には飯田下伊那14市町村で「南信州定住自立圏」協定を締結し、この課題解決に向けて一丸となって取り組んでいます。 この人口減少のような内部環境の変化に加え、2027年に開通予定の「リニア中央新幹線」、また愛知県、静岡県、そしてこの南信州地域を結ぶ 「三遠南信道」の動きなど、外部環境の面でも大きく変化しています。

高森町のCI(コミュニティ・アイデンティティ)を創ろう!

高森町では平成19年度より「たかもり★みらい議会(町内の小中学生による模擬議会)」を開催しています。担当職員の間で 「高森町に住んでるって素晴らしい!ってみんなが思えるものを、何か作り出せないか」と悩んでいたところ、平成22年度に開催されたこの 「たかもり★みらい議会」で「高森町を元気にするためには、キャラクターを作って、たくさんの人たちと交流したらどうですか?」と小学生議員 から提案を頂きました。

全国の自治体キャラクターを見ると有名なデザイナーや漫画家に依頼する事例は多く見られますが、高森町のアイデンティティの 確立や誇りや自信を生み出すには「住民の皆さんに作ってもらわらなくては意味がない」と考え、あえて町内在住・通勤・通学、そして出身者の方に 限定し、約1か月かけてキャラクターとキャッチフレーズを募集しました。また選考の際にも町民の皆さんを中心に委員になっていただきました。 その後は町内の主要施設にて投票所を設置し、今度は町外から買い物等に来てくれる他市町村の方々も含め投票を行いました。実はこの投票を行った のにも狙いがあります。住民の皆さんから応募された作品のどれもが、高森町の自慢できるところや良いところ、また歴史や風土を背景にデザイン されたものばかりだったからです。そのため投票というプロセスを設けることが高森町をPRできる一つの場となると考えたわけです。最終的には 総数3000を超える投票をしていただき、その投票結果を判断材料に高森町のキャラクターとキャッチフレーズが決定しました。誕生した高森町の キャラクターは「柿丸くん」。高森町の特産品である市田柿をモチーフにして、山と川をイメージした衣装を着ている元気な男の子です。 キャッチフレーズは「元気もりもり あったかもり」。いつまでも元気であったかい心を持った高森町の人々をイメージしています。6月末には 着ぐるみも完成予定。町内外を問わず、高森町をPRしていこうと計画しています。 

柿丸くんの画像

柿丸くん

AKY48!?

高森町に住みたい、という方々には「空き家情報バンク」制度を展開。通称「AKY48(空き家使用;あきやしよう)プロジェクト」です。 町内から情報提供があった空き家と高森町に住みたいという人をつなげるプロジェクトです。ただし役場が行うのは主にWEBによる情報収集や 情報提供のみ。実際の契約などの業務は町内の不動産業者の皆さんにお任せしています。行政と企業のそれぞれの長所を活かし、高森町に住みたい人 を支援します。またこの空き家情報については、近日中に高森町を含む下伊那北部5町村でそれぞれの空き家情報のページを通じて相互リンクを行う 予定です。

SNSを活用した情報発信

また最近ではSNS(Social Network System)を活用した情報発信にも力を入れています。140文字までのミニブログ「Twitter」 は飯田下伊那地方でも自治体の公式Twitterとしては一番初めに導入。WEBページの更新情報を中心に、町の最新情報をお知らせしています。 桜の時期には開花状況を逐一報告。今年も多くの皆さんが高森町に来て下さいました。またYouTubeやUSTREAMなど、動画配信もスタート。 先ほどの桜の状況をYouTubeにて公開したところ、おそらく出身者と思われる方から「本当に懐かしい!」とのコメントをいただきました。 その他にも、天竜川でカヌーに親しむ様子や景観情報などを公開しています。平成24年4月からは町長をはじめ、各課の担当課長による予算説明の 動画を公開し、町CATVのアーカイブ的な側面も持たせながら、町の動きをPRしています。 

SNSを活用した情報発信の写真

SNSを活用した情報発信

「こんないいとこ(景観)あったかもり」

もちろん町民のみなさんによるPRも活発です。リニア到来を見据えて、町内有志のみなさんによる「こんないいとこ(景観) 見つけ隊」という団体が発足しました。高森町の「守りたい、残したい景観」を考え、後世に伝えていきたい景観や建築物、そして作業風景までを 写真におさめ、データベース化したものを広報やWEBに掲載しています。また隊員以外の町民の方々からも情報を頂いています。これを 「こんないいとこ(景観)あったかもり」というプロジェクトとして、展開しています。今後は集めた景観情報をもとにマッピング作業や カテゴリー分けを行い、リニア到来時代の高森町の土地利用、そしてあるべき姿につなげていきたいと考えています。前述の町YouTubeでも 「こんないいとこ(景観)見つけ隊」のみなさんの景観情報を動画にてアップしています。 

高森アルプスサーモン丼

「美味しい高森町を創ろう!」を合言葉に、高森町のご当地グルメを創ろうとする動きも出ています。町内の飲食店の皆さんに よって「高森町ご当地グルメ検討委員会」が発足。ニジマスを掛け合わせたアルプスサーモンの切り身の色が、高森町の特産品「市田柿」の色と 似ていることから、このアルプスサーモンを使った「高森アルプスサーモン丼」を開発。今では町内の7店舗にて、色も鮮やかで味も最高な丼を 堪能することができます。町の収穫祭のみならず、近隣のイベントにも積極的に参加し、高森町の新しいご当地グルメを広めてくれています。 今では「アルプスサーモン・バーガー」「アルプスサーモン・ライスコロッケ」も発案!?これからの動きが楽しみです。

TAKART(タカート)=TAKAMORI(高森)+START(新しい出発)+ART(創造)

若い世代によるタウンプロモーションも活発です。平成20年に発足した町内の30歳代~40歳代の異業種のメンバーによる 「TAKART」。若さゆえの大胆な発想や行動力を活かしながら、町内の小学校の桜をライトアップする「日本一の学校桜INキャンドルナイト」、 天竜川をタイヤチューブで流れる「Water Tube Adventure」、昔ながらの市田柿の皮むきや柿つるしを子どもたちに体験させる取組などの活動を 行っています。平成23年には高森町のまちづくりやリニア時代の未来戦略、高森町の中心を調査するなど、独自の切り口で高森町をPRする フリーペーパーを発刊。今後も何かを起こしてくれるような予感がしています。

アルプスサーモン丼の写真

高森町の新しいご当地グルメ「アルプスサーモン丼」

フリーペーパー「TAKART」の写真

フリーペーパー「TAKART」

課題

このようなタウンプロモーションを展開しながら、多くの課題もあります。今までの高森町は、ある意味恵まれた環境にあったと 言えます。自然と都市がうまく調和しているため、人口に関しては南信州全体で減少の中にありながら微増となっていました。そのような理由も あってか、自分の町の特産品や景観などを積極的にPRする土壌や風土が育ってこなかったと言えます。また行政側も、効果的な情報発信の手法や 外部人材や民間企業とのコラボレーションを可能とする組織体制や意識・スキル等が整っていないという課題があります。タウンプロモーションは 決して行政だけではできない分野です。行政の強みと民間企業や外部人材の強みを組み合わせ、それぞれの責任と役割の中で相乗効果を 生み出しながらタウンプロモーションを行うことが重要です。そのために町内の民間企業との連携や外部から専門家をお招きするなど、 町内外の異業種・異文化の人たちとのつながりが解決方法になると考えています。高森町でも平成24年度より南信州広域連合の事業を通じて 愛知大学とタウンプロモーションに関して連携を行う計画です。大学や学生が持つ「学術的視点」「外部的視点」「若者的視点」の3つから、 高森町にある、または埋もれている地域資源を発掘し、一緒に磨いていければと考えています。 

タウンプロモーションは気を付けていないと目先の派手さや利益を求めるあまりに、町としての本当に大切なものを失ってしまう 危険性があります。タウンプロモーションの基本は「自分たちの足元にある『光』を『観』る」こと。それらを通じて 「高森町に住むことを誇りに持ち(PRIDE)」、「高森町のファンになり(FUN)」、「高森町を愛してくれる(LOVE)」人たちを 増やすことがタウンプロモーションだと考えています。だからこそ行政のみならず、民間企業、外部人材、近隣市町村や時には全く違う地域との 自治体や団体ともつながり、多様な価値観や視点を「自分の町の写し鏡」として活かし、行政はその触媒としての機能やスキル等を習得しながら 常に動いていくことが重要です。高森町の宝を見つけ磨き、「PRIDE」、「FUN」、「LOVE」をデザインする、そんな意識を持って、 今後も高森町のタウンプロモーションを進めていこうと思っています。