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兵庫県佐用町/「絆」を大切にした支えあい、助けあうまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年3月26日
ひまわり畑の写真

年間150万人が訪れるひまわり畑


兵庫県佐用町

2794号(2012年3月26日)  総務課広報室 福本 純也


住民と行政の「協働のまちづくり」を推進

兵庫県の南西部に位置する佐用町は、平成17年10月に佐用郡の旧佐用町、旧上月町、旧南光町、 旧三日月町が合併し、総面積307・51平方㎞、人口21、012人(平成17年国勢調査)の町として誕生しました。

佐用町には世界一の施設が二つ存在します。その一つである播磨科学公園都市の大型放射光施設 「SPring―8」は、世界最高性能の放射光実験施設として、国内外の多くの科学者や研究者の注目を集め、 ナノテクノロジーなどの最先端の研究が進められています。

また、平成24年3月から、同施設に併設するX線自由電子レーザー施設「SACLA」(さくら) の供用運転が開始。世界に2つしかないこの施設で、原子や分子の動きを観察し、様々な分野での研究が進むことが期待されています。

もう一つは、県立西はりま天文台公園にある公開望遠鏡「なゆた望遠鏡」。口径が2メートルと一般の 人が利用できる望遠鏡としては世界最大で、多くの天体ファンや研究者たちが集まります。

そのほかにも佐用町には、たくさんの「宝物」があります。豊かな緑と清流、四季折々の自然の恵み、 伝統ある多彩な歴史資源、また人と人とのふれあいなど、先人たちが守り、引き継いできた財産です。

これらを守り、育てるために、佐用町では住民と行政の「協働のまちづくり」を推進しています。

南光子ども歌舞伎の写真

地域の伝統芸能を守る南光子ども歌舞伎

1.住民が主人公のまちづくり

住民が主人公のまちづくり。これは、だれもが望む永遠のテーマです。これまでも、 このテーマに取り組んできましたが、実際には行政の責務として行う必要があった道路や上下水道などの生活基盤整備が急務でした。    

それら生活基盤が、ある程度整備が進んできた今、佐用町では、 そのテーマに本格的な取り組みを始めました。それが「協働のまちづくり」です。

2.「協働」を推進する新しい自治組織『地域づくり協議会』

住民の暮らしに、最も身近な自治組織として、自治会があります。自治会では、農業や環境美化、 防犯、防災、またはお祭りなどの行事など、身近な事項を話し合い、その地の歴史や風土にあった住民自治が行われています。 しかし、過疎化や少子高齢化が進みつつあるなか、今後、そのような自治会機能の維持が、とても困難になることが懸念されています。    

それらの将来的な不安材料を解決し、さらに住民相互、そして住民と行政の「協働」を推進する 新しい住民自治組織として、平成18年3 月の「地域づくり協議会」を設立しました。

この協議会は、面識社会と言われるおおむね小学校区単位で組織し、複数の自治会を包括し構成 されています。そして低下が懸念される自治会機能を、地域全体で補い、支えあう体制を築き、地域の特性を生かした 地域づくりを推進しています。それら一つひとつの取り組みが「協働のまちづくり」につながっています。

こうして、地域の力をはぐくみ、新しいコミュニティを構築すること。 これが「協働のまちづくり」の大きな目的です。

3.一歩一歩着実に進む『協働』

各地域づくり協議会は、防災訓練を通じた安全で安心な地域づくりや、ワークショップなどによる 地域資源の再発掘、「人が集まる」ことを目的とした交流事業など、あらゆる分野で集落間を越えた地域づくりが進められています。    

さまざまなふれあいや交流、そして地域課題への取り組みのなかで、地域の人たちが集い、話し合い、 学習し、 気づき、さらに実践を繰り返す。一連のプロセスを踏みながら、一歩一歩、着実に成長を遂げています。

ふれあい喫茶の写真

地域のコミュニティをはぐくむ「ふれあい喫茶」

災害に強いまちをつくる―絆からはじまるふるさとの復興

平成21年8月に発生した台風第9号による大水害。時間最大雨量89.0㎜、24時間最大雨量326.5㎜ という記録的な集中豪雨によって、佐用町は多くの尊い人命まで失う被害に見舞われ、私たちに大きな衝撃と深い悲しみをもたらしました。

しかし、災害発生直後から、全国から駆けつけてくださったボランティアによる支援活動や 多くのかたからお寄せいただいた義援金など、心温まる支援によって今日まで復旧・復興してきました。

佐用町では、このつらく悲しい経験を生かし、安全で安心な地域をつくるため、 『絆からはじまるふるさとの復興』をスローガンに自助・共助・公助が連携した「災害に強いまちづくり」を進めています。

1.災害を検証し教訓を生かす

台風9号の豪雨は、人的被害をはじめ、広範囲におよぶ浸水や、家屋、河川、 道路、農地、農業用水施設などの損壊、農作物、山林などに甚大な被害をもたらしました。

佐用町は、県や他市町などの応援を得ながら、全庁体制で応急対策に取り組みましたが、 様々な課題も判明しました。そこで、台風9号の災害への町の対応を検証し、その結果を町地域防災計画 (風水害等応急対策計画)に反映させるなど、今後の防災対策の充実強化を目指すため、町災害検証委員会を発足。 30回を超える分析会議や現地調査などを経て、「町の防災体制、町の関係機関との連携に関すること」 「災害情報の伝達、避難の実施に関すること」「災害救援ボランティア活動の支援体制に関すること」など、 あらゆる分野から90項目にのぼる提言がまとめられました。提言の中には、取り組みに一定の期間を必要とする ものもありますが、直ちに改善できるものは早急に着手し、さらなる防災体制の強化を目指しています。

2.集落単位で防災マップづくり

佐用町では、自治会を中心とした集落単位で、防災マップを作成し、自らの地域を自らが知り、 地域の課題や特徴、災害への対応などを地域で認識し、共有する取り組みを進めています。

この防災マップの作成にあたって重要視していることは、防災マップを作ることではなく、 いかに多くの地域住民がマップづくりに携わるかということ。各地域づくり協議会で防災マップづくりの必要性や 手法を学ぶ講習会を開催し、防災マップが絵に描いた餅にならないように、地域住民が主体的にマップづくりに 取り組むことを認識するところから、マップづくりがスタートしました。現在は、作成プロセスに力点を置きながら、 各自治会で防災マップづくりが実践されています。

マップづくりをしている写真

地域で取り組むマップづくり

3.災害時要援護者を地域で避難支援

昨年3月に発生した東日本大震災。その犠牲者や行方不明者の多くは高齢者でした。 高齢者や障がい者など、避難に支援が必要な災害時要援護者については、地域で避難支援体制を整えておくことが必要です。 

昨年4月に創設した災害時要援護者支援制度は、災害時要援護者に対して、ご近所のかたをはじめ、 自治会、自主防災組織、民生委員・児童委員など地域で連携して要援護者を支援する仕組みです。

現在、各自治会でこの取り組みが行われており、事前に災害時要援護者に同意を得て、個々の 避難支援計画である「個別計画」を作成。その情報を避難支援するかたや自治会などと共有し、日ごろの見守りや 災害時に避難支援に役立てています。  

4.千種川水系の大規模河川改修

台風9号水害では、雨量、被害とともに過去最大を記録しました。兵庫県は、佐用町と連携し、 平成22年11月から千種川水系の大規模河川改修に着手。総延長54.59㌔で総事業費は459億円にのぼります。 平成26年3月の完成を目指し、順調に工事が進められています。

また、町内の河川に河川監視カメラを13カ所設置し、増水時に河川の状況をケーブルテレビ 「佐用チャンネル」やインターネットで確認できるようになりました。佐用チャンネルでは、豪雨によって 河川増水が予想される場合、通常の放送を切り替えて河川カメラの映像を放送し、町の防災情報として有効に活用されています。 

河川監視カメラの映像の画像

河川監視カメラの映像

5.防災訓練で地域防災力を向上

河川改修や防災マップの作成などによって、必ず災害から身を守れるわけではありません。特に災害 が大きくなると、初動期に行政の救助が期待できません。被害を最小限に抑えるためには、自分の身は自分で守る という意識で災害に対する備えを進めるとともに、自治会や自主防災組織が中心となり、地域で日頃から防災訓練を積み重ね、 地域防災力の向上に努めることが必要です。 

町内の各地域では、様々な災害を想定し、消防署や消防団などと連携した防災訓練が行われています。 訓練では、地域住民や要援護者が参加し、避難情報などの伝達や避難経路の確認などを行って、地域全体の防災意識を高めています。

防災訓練の写真

防災訓練で地域防災力を高める

水害で浮き彫りになった「買い物弱者」問題に取り組む―暮らしを支える新たな絆

台風9号水害で大きな痛手を受けた佐用町ですが、その際、移動販売をされていた商店が閉店。 町内の山間部に住み、移動手段を持たない多くの高齢者が、「買い物」という日常にすら困窮する状態となりました。 水害が、佐用町が抱える生活課題を浮き彫りにさせたのです。 

佐用町では、買い物に困る人たち、いわゆる「買い物弱者」問題への取り組みを開始。 平成22年10月に山間地域と商店(街)を結び、「買い物弱者」支援と商店(街)の活性化を目指す 「さようまち・むら両立プロジェクト協議会」を発足。これまで、視察研修や買い物環境に関するアンケート、研修会などを通じて 「買い物弱者」と「商店(街)」の両者が共栄する仕組みを模索してきました。 

2年前から復興に向け商工会や地域づくり協議会などで組織する『町防災に強い地域づくり推進協議会』が、 国の補助を受け、町内で移動販売に関する社会実験を行ってきました。 

こうした取り組みを通じ、町商工会が町の補助を受け、移動販売車購入の半額を助成する事業を実施。 このほど事業者が決定し、平成24年1月から商工会が指定した地域で移動販売が始まりました。 

「買い物弱者」の問題は、私たちの暮らしに直結する課題です。この課題を解決していくためには、 移動販売や商店(街)と地域がお互いに支えあい、共栄していくことが必要です。そして、それは私たちの暮らしを支え、 豊かにすることにつながっています。

移動販売車の写真

高齢者など「買い物弱者」の暮らしを支える移動販売車

おわりに

平成17年10月に、佐用郡4町が合併して誕生した佐用町。合併前からそれぞれの町で抱えていた 少子高齢化・過疎化の問題は、合併後も決定的な解決策はなく、変わりませんでした。さらに年月は流れ、 その状況は深刻化。いわゆる限界集落も散見しはじめ、産業、地域経済など、何をとっても町の将来に「夢」 を見ることが困難な状況になっていました。

そこに発生した平成21年8月の台風9号水害。その影響は、いまだに佐用町に大きく爪あとを残しています。

しかし、佐用町には、そんな逆境をばねにし、地域を愛し、自ら行動し、佐用町の復興に向けて、 また地域の暮らしを守ろうと頑張る人たちがいます。「買い物弱者」問題の取り組みは、その一例に過ぎません。

これからも、先人たちから受け継いだ「人と人とのつながり」や温かい地域コミュニティ「絆」 を大切にしながら、共に支え合い、助け合うことで、佐用町のまちづくりを進めていきたいと考えています。