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京都府伊根町/日本で最も海に近い生活のあるまち 「ふなやん」の故郷から

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年1月16日
伊根湾遠景の写真

伊根湾遠景


2785号(2012年1月16日)  地域整備課観光推進室 係長 能津 和雄


京都府伊根町は京都府北部の日本海側、丹後半島に位置する小さな町です。人口は2,410人(平成22年国勢調査)、面積は62.00平方キロメートルで、南側は宮津市、西側には京丹後市と接しています。おもな産業は漁業と農業で、特に漁業は年間を通じて定置網漁を中心に水揚げがあります。町内は伊根(いね)、朝妻(あさづま)、本庄(ほんじょう)、筒川(つつかわ)の4地区から成り立っており、それぞれに大きな個性を持っているところに特徴があります。

しかしながら、伊根町でも人口減少は深刻な課題となっており、昭和55年の国勢調査時には4,021人いた人口と比較すると、半減に近い状況です。さらにその当時20%程度だった高齢化率は、平成22年では42.7%となり、京都府内でも一番高齢化が進んだ自治体となってしまいました。

このため、将来の目標人口は減少に歯止めをかけたとしても2,500人という控えめな数字を出さざるを得ないのが実情です。このため、本町では交流人口の増大を第5次伊根町総合計画の大きな目標のひとつとして掲げています。交流人口の考え方は、1人が1日伊根町に滞在した場合、単純に1人を365日で割って0.003人の効果があると考えられます。この計算をもとに、定住人口に換算して1,500人に相当する活力を期待するには、年間50万人の交流人口が必要になります。現在の交流人口、つまり観光入込客数は年間25万人程度で推移しており、これを10年間かけて倍増させることを目標としているのです。

また、伊根地区においては、国の重要伝統的建造物群保存地区の選定を受けている「伊根浦舟屋群」(いねうらふなやぐん)があります。これは、伊根湾に沿って立ち並ぶ「舟屋」と呼ばれる建物のみならず、その背後にある母屋や伊根湾そのものまで含めた形で選定されています。舟屋がどのような建物なのか、について後ほど説明しますが、観光振興については「伊根浦を核とした観光産業の育成・支援」を目指しており、この伊根浦舟屋群を観光資源として確立させ、それを町内全体へ波及させるという形を目指しています。

「舟屋」とはどんな建物なのか?

舟屋は簡単に言えば船の「ガレージ」で、母屋とは別の建物です。昔使われていた木造の船は、使わないときには陸に揚げて乾燥させないと腐ってしまいます。このため水辺から船を陸に揚げ、それを保護するために舟屋ができました。この船は漁船ですから、舟屋の中では網など漁師が使う道具類を格納する機能があるほか、網を手入れしたりするスペースなどが設けられています。つまり、舟屋は漁師の知恵がいっぱいつまった建物と言えるでしょう。

このような由来があるので、舟屋は伊根湾に直接面しており、船が入る開口部には海水が入り込んでいることも珍しくありません。海上から見ると、まるで海の上に建っているような錯覚をおこすほどです。さらに、年間の潮の干満の差は50㎝程度と小さいために、このような海岸ぎりぎりに建てることが可能となっているのです。

その後、舟屋は改良が加えられ、2階を居住スペースとして使うものが多くなりました。とはいえ、母屋は別にありますから、離れとしての機能が中心になります。食事や風呂などは母屋に行って済ませるという生活が、今でも多く残っています。

現在は漁船が大きくなり、格納できなくなってしまったことと、材質が木材でなくなり腐食の心配もなくなったことから、大半は舟屋の外に係留されています。しかし、漁師が使う道具類の格納庫としての機能は今も残っているほか、漁業をしていない舟屋では離れとして生活のための機能が中心になってきています。

伊根町には以前から民宿が営業していますが、近年は舟屋を改装した「舟屋民宿」の開業が相次いでいます。これは「農林漁業体験民宿」という形での宿泊業で、舟屋に泊まって漁師の生活の場を体験するということを目的にしています。興味のある方は是非お泊りいただければ、と思います。

お問い合わせは伊根町観光協会(電話0772-32-0277)までお願いいたします。

伊根浦舟屋群の写真

伊根浦舟屋群(いねうらふなやぐん)

伊根漁港の水揚げの写真

伊根漁港の水揚げ

伊根のブリしゃぶの写真

売り切れ御免!伊根のブリしゃぶ

「ふなやん」のデビュー!

「ふなやん」は伊根町観光協会のマスコットキャラクターです。イラストは一般公募によって集まった438件の応募作の中から、伊根町の小中学生と来訪者の人気投票によって選ばれました。また、「ふなやん」の名前も町民の投票によって決められました。

伊根町の成人式は、雪が多い冬を避けて毎年3月に行われています。平成23年3月21日に行われた成人式で、「ふなやん」の着ぐるみがデビューしました。その後は町内の行事を中心に登場していますが、5月には地元テレビ番組にも出演して知名度を上げ、10月22日・23日には滋賀県彦根市で開催された「ゆるキャラ(R)まつりin彦根」に参加、さらに「ゆるキャラ(R)グランプリ2011」では参加349体中138位という結果となりました。そして、満を持して12月3日・4日に東京国際フォーラムにて開催された「町イチ!村イチ!2011」に参加して首都圏デビューを飾り、「ゆるキャラ(R)グランプリ2011」の第1位と最下位の両方までもが揃うという大舞台でよく奮闘してくれました。

舟屋の妖精である「ふなやん」には大きなメッセージが込められています。よく見ていただくと、おなかの部分に船が入っていて、その下にさざ波が描かれていることがお分かりいただけることでしょう。そして裏側も実際の舟屋の形を忠実に表現しています。つまり、「ふなやん」は単なるマスコットではなく、自ら舟屋の構造を説明することができる、名実共に「広告塔」としての役割を担っているのです。

「ふなやん」正面の写真

「ふなやん」正面

「ふなやん」背面の写真

「ふなやん」背面

おわりに

舟屋には漁師の知恵がたくさん詰まっています。そして、今なお、生活の場として機能しています。こうした生きた文化財を守り育てることが、伊根の魅力を保ち続けるために一番必要なことと言えるでしょう。そして、海に近い生活をしている住民もまた、伊根町内でとれるお米を食べていて、町内の農業とも深く関わっています。こういったつながりが、伊根町内全体の発展に波及していくことを願ってやみません。

伊根町への交通は意外に便利です。JRでは山陰本線・福知山線の福知山駅を目指してください。ここから北近畿タンゴ鉄道(KTR)に乗り換え、宮津駅で下車してください。宮津へはJRの西舞鶴駅や豊岡駅からもKTRで来られます。その後、5系統「伊根・亀島」行き、7系統・8系統「蒲入(かまにゅう)」行き、9系統「経ヶ岬(きょうがみさき)」行きのバスに乗車して1時間ほどです。概ね1時間に1本運行しています。お車の場合は京都縦貫道と接続する宮津与謝道路の与謝天橋立インターから国道178号線で40分ほどです。皆様のお越しを心よりお待ちしています。

全力で踊るふなやんの写真

町イチ!村イチ!2011で、見事に首都圏デビュー! 全力で踊るふなやん