片添ヶ浜海水浴場
山口県周防大島町
2758号(2011年4月25日) 周防大島町長 椎木 巧
周防大島町は、平成16年10月1日に大島郡の久賀町、大島町、東和町、橘町の4町が合併して誕生しました。財政の健全化を第一に掲げ、合併の効果を町民の皆様に感じてもらうことを念頭に「賑わいの創出-観光交流人口100万人」を目標に掲げ取り組んでおり、ここでその一端を紹介させていただきます。
我が町は山口県の東南部にあり、瀬戸内海に浮かぶ島では淡路島、小豆島に次ぐ3番目の面積を有し、島と本土とは大畠瀬戸を渡る大島大橋によって連結しています。年間平均気温15.5℃と、温暖な青く澄みわたる瀬戸内の海と四季の彩り豊かな美しい自然を有する町で、瀬戸内のハワイと呼ばれる所以は、明治20年代の官約移民として4,000人がハワイに渡った歴史から昭和38年(1963年)6月22日にハワイ州カウアイ島と姉妹島縁組を締結して50年近くになることからです。文字通りハワイ移民の島で、120年に及ぶ交流の歴史に裏打ちされた我が町は、6月22日から8月末まで役所も銀行も郵便局も病院も地域の方々もアロハシャツが公用着となります。クールビズならぬアロハビズです。「アロハ!マハロ!」は、おはよう、こんにちは、ありがとう、よくいらっしゃいました、などの意味で、おもてなしの心で皆様を歓迎します。余談ながら、ハワイのアロハシャツは大島の渡航者が着用していた浴衣を短く切って着やすくしたものが、そもそものルーツといわれています。この季節フラダンスがとても人気です。お年を召された方も華やかなフラドレス、フラTシャツなどフラダンス衣装に身を包むとアロハな気分になり「周防大島町で輝いて生きよう100歳に挑戦」を実践中です。高齢者だけでなく保育園児のケイキフラ(子供フラダンス)も本当にかわいく、夏場の毎週土曜日にホテルや温浴施設で開催されるサタデーフラダンスこと「サタフラ」が大人気で、遠く県外からの出場チームも多くあり幸せな笑顔であふれます。
島と本土を結ぶ大島大橋
瀬戸内のハワイ 大人気のフラダンス
戦後、海外各地からの引き揚げ者によって人口は一気に増加し、島には人が満ち溢れる一方、生活は困窮しました。昭和22年頃65,000人を数えた島の人口は、ミカン栽培と漁業に支えられてきましたが、ミカンの過剰生産と価格の暴落によって高度成長期に一気に人口流出がはじまり、更に昭和51年島民の悲願であった大島大橋が架かって本州とつながったことも皮肉なことに島の人口流出に拍車をかける結果となりました。
その後人口は年々減り続け約2万人となり、加えて高齢化率は47%と全国トップクラスですが、誠に元気な高齢者が多く生涯現役の島を自認しています。60 歳で定年を迎えた息子が、80歳でなお現役で農家や漁師として働いている親の元にUターンすることも度々あります。よくできたドラマの筋書きのような現実の話です。
気候温暖で年間を通してほとんど雪のない冬の季節、昭和23年の第1回から64回を数える12月の大島一周駅伝(77チーム参加)、2月のサザン・セト大島ロードレース大会は27回(今年は招待選手に大阪国際女子マラソンで優勝の赤羽有紀子選手ほか3,000名参加)、15回を数える3月のサザン・セト大島少年サッカー大会(全国から48チーム1,000名参加)、4月のウオーキング大会(今年は365歩のマーチの水前寺清子さんを迎えて)など多くのアスリートが周防大島町に集う賑やかなスポーツイベントが目白押しです。加えて、陸連公認の陸上競技場や合宿施設も充実しており、中国電力、中電工、JFE、天満屋、デオデオ、ユニクロや興譲館高校などの名門駅伝チームをはじめ、社会人・大学生の陸上競技、テニスやサッカーなどのスポーツ合宿でも賑わっています。
サザンセト・大島少年サッカー大会
サザン・セト大島ロードレース
更に、周防大島町がここにきてにわかに活気づいてきたのは修学旅行のおかげです。これまで島に修学旅行生が訪れることなど全く無かったのですが、広島、山口の瀬戸内海沿岸の7市3町と商工会議所、商工会で作る広島湾ベイエリア海生都市圏研究協議会が体験型修学旅行の誘致に乗り出したのを受けて、2008年、初めて神奈川県の私立中学校の修学旅行生を受け入れました。その後、毎年、埼玉県や神奈川県の中学校、高校が数校ずつ訪れていましたが、今年は青森、埼玉、岐阜、滋賀、京都、奈良、大阪などの予約が次々と舞い込み、なんと中学高校合わせて20校3,400人の修学旅行の予約で、4月から12月まで満杯のスケジュールとなっています。体験型修学旅行は民家に3~4人宿泊(ホームスティ)する民泊と民泊家庭の農業や漁業などの家の業、家業体験をするものです。ネックは受け入れ家庭の開拓であり、私自身も民泊を受け入れてくれるよう住民に呼びかけて回っている状態で、現在200軒の民泊家庭の登録があります。海生都市圏研究協議会が関東、中部、関西の旅行会社へアプローチをし、受け入れ家庭向けのインストラクター研修やシンポジウムなどを何度も行なってきたことが多くの予約に繋がった要因ですが、広島での平和学習や原爆ドーム、宮島の世界遺産に加え、この町には自然に根ざした漁業や農業があり素朴で温かい人情のある生活があります。ここでは当たり前のことが都会の子供たちには新鮮な感動となり貴重な体験となると信じています。体験プログラムには、山から薪を、海から藻や海水を、川から菖蒲を集め長老らに教えてもらいながら自ら薪を焚き、床に菖蒲や藻を敷き詰めて江戸時代から残る石風呂に入る古代サウナ体験のほか、みかんもぎや芋ほりなどの農業体験、牡蠣打ちや建て網、磯釣りなどの漁業体験、カヌーヨット体験など50もの体験メニューが用意されています。ある家庭での芋ほり体験では何度注意しても芋を放り投げるため「投げたら芋が傷つくじゃないか!」と一喝。子供らはびっくり。大声で他人から叱られることさえ初めての経験だったようです。私たちも初めての経験。子や孫が帰ってきたような自然体での受け入れができたらと思っています。工業化の産業形態からは取り残された周防大島町。観光客数は年間80万人台で夏場の海水浴客が中心でしたが、新たな体験交流型観光で町の基幹産業である農業や漁業などの1次産業と観光交流を結びつけた新たな産業につなげ、観光交流人口100万を目標に21世紀にはばたく先進の島を目指しています。
体験型修学旅行で家業体験
体験型修学旅行で民泊体験
気候に恵まれた周防大島。青い海、青い空、心癒される景観です。農漁業者とふれあいながら楽しく、おいしく、心温まる交流、「島の暮らしおすそわけ」として地域資源を生かした人と人とをつなぐ20もの体験メニューをそろえ、周防大島町のご婦人方が島での体験交流をお待ちしています。ミカンのシフォンケーキ、ミカンパンとミカンピザ、山菜料理、サザエご飯、ラッキョウ漬、シソジュース、柏餅と桜餅づくり、たけのこ堀、玉ねぎの収穫、ウニ割体験、などなどおいしそうなものばかりです。自分で作ったものは格別の味、いろいろのコースにたびたび参加される方も増えています。
「島のくらしをおすそわけ」
大島商船高等専門学校は明治30年創立の大島郡立大島海員学校を前身とする全国に5校しかない歴史と伝統ある我が町の誇りとする商船高等専門学校です。この大島商船高専で2008年から開講した企業家養成塾「島スクエア」。国から5年間の補助を受けて運営し3年間で115人が受講し、11人が新たに起業しています。年齢層も若者だけでなく定年後Uターンした方や女性も多く、町も新たな起業家養成に大きな期待を寄せており、起業家を支援するためのチャレンジショップを道の駅周辺に5店舗設置しました。地元のミカンやイチゴを使ったジェラート、地元産の蜂蜜商品、地元食材で作ったスイーツ、地元産サツマイモの芋焼酎、移民が縁で交流しているハワイ雑貨やアロハシャツなど新たな取り組みが始まり、島の恵みを発信し賑わいの創出拠点となることを目指しています。
チャレンジショップで起業家支援
超高齢社会を迎えた周防大島町の大きな課題は保健、医療、介護、福祉の問題です。平成16年の合併時に経営形態を公営企業法全部適用として公営企業管理者を置き、3病院(東和131床、橘36床、大島99床)、2老人保健施設(さざなみ苑80床、やすらぎ苑50床)、看護専門学校(1学年35人)、訪問看護ステーション、4居宅介護支援事業所を運営しています。
採算性の面から民間医療機関の立地が困難な過疎地域における一般医療の提供、町の東から西まで車で約1時間かかることや独居老人や老々介護が多い地域性を考えれば3病院を堅持することが最も必要であり、それぞれの病院に独自性を持たせながら3病院での総合病院化を目指しています。又、公共交通機関が少なく不便なため患者の方々の利便性を図る上で町内のいたるところに無料の患者輸送バスを運行しています。しかしながら近年の公立病院を取り巻く経営環境や医療提供体制はますます厳しくなってきております。地域医療を確保するためには保健、医療、介護、福祉の連携が不可欠であり町立の関連施設の健全な運営が町民の安心と健康を守る最重要課題となっています。
改築した大島病院
財政の健全化は、「住民サービスをいかに安定的に維持向上させていくか」という目的のための手段であります。さらなる行政改革を推進し、財政の健全化に全力で取り組んでまいります。行政改革により生み出された財源により、身近な生活関連施設の整備や、子育て支援等を充実させると共に、オートキャンプ場やスポーツ施設の一層の活用を図り、これまでの観光交流に加え、体験型修学旅行の促進や、スポーツイベント、高校、大学、実業団のテニス、駅伝、陸上競技などのスポーツ合宿の誘致と周防大島町の貴重な地域資源を活用し、「賑わいの創出」を進め、交流人口100万人を目指してまいります。
本年秋にはいよいよ山口国体。本町でもアーチェリー大会の本番を迎えます。全国各地から、数多くの方々がこの大島に訪れます。おもてなしの心や花いっぱい運動、クリーンアップ運動などを積極的に進め、国体で訪れた方々に周防大島町との絆を深めていただけるよう精いっぱいのおもてなしでお迎えしたいと思います。
全国の皆様もぜひ一度瀬戸内のハワイ・周防大島町へ!!
私たちを取り巻く環境は、大変厳しいものがありますが、五城目町では、小規模高齢化集落における集落機能の強化、朝市を核とした中心市街地活性化事業による更なる地域経済の活性化、町民生活に密着した福祉の充実や生活基盤の整備、産業・教育の振興など、各種事業を展開し、地域の資源を活かしながら「豊かで暮らしやすい地域の形成」に向けて、当面する課題に積極的に取り組み、安心・安全に暮らせるまちづくりを進めたいと思います。