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山梨県市川三郷町/「おらが町のPR下手」解消への第一歩

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年10月25日
神明の花火大会の写真

毎年8月7日(はなびのひ)に開催される神明の花火大会。
2万発の花火が上がります。恒例の「メッセージ花火」では、今年も3人の男女がプロポーズ。
成功率100%を誇っています。


山梨県市川三郷町

2737号(2010年10月25日)  総務課広聴広報係


はじめに

市川三郷町は、平成17年10月1日に三珠町、市川大門町、六郷町が合併して誕生しました。甲府盆地の南西に位置し、南アルプスを源流とする釜無川と秩父山系を源流とする笛吹川が合流し、富士川となる左岸に位置しています。四季折々の自然が楽しめる四尾連湖や芦川渓谷、ぼたん回廊や桜の名所、花火や和紙、はんこなどの地場産業、大塚人参やとうもろこしの「甘々娘」に代表される農産物、市川の百祭りなど、町には誇れる資源が多々あります。

PR不足の指摘

そんな誇れる資源を幾つも持ちながら、「町内外に向けてPRすることが不足している。苦手としている。」と町民の目には映っていたようです。町民からは、「町をPRするような何かが欲しい。例えばPRシールを作成し、不特定多数の人に町の名前を売り込んではどうだろうか?」との提案も頂きました。

町ではこの提案を元に、幾度となく企画調整会議を行い、動く広告塔として公用車などに貼るPRシール、またどなたにでも気軽に貼っていだだけるプリクラのようなシールを作成することに決定しました。

高校生の思い描く市川三郷

そこで問題になったのが「町のPRを目的とするシールなので、町を元気にするような明るく楽しいデザインをどのように表現するか?」ということでした。町民を対象に公募で決定しようという案もありましたが、「これからの町を担う若い方に柔軟な考えでデザインしてもらおう」というコンセプトを固め、ついては、町内に在り、町とは緊密で良好な関係にある県立市川高等学校に作成を依頼しました。自由な発想で高校生たちの思い描く「市川三郷町」をイメージしてもらうため、あえて条件や要望は何も付しませんでした。更に加えるなら、市川高等学校に作成を依頼した理由には、今まで以上に「地域のパートナー」としての関係を構築したいというもう一つの目的もありました。

町の担当(広聴広報係)と市川高等学校とで数回の打ち合わせを行い、美術部においてデザインの作成に対応していただくことになりました。部員の中には町外の生徒もおり、合併したばかりの本町のことを知らない状況でしたが、町の広報紙などから市川三郷町の知識や情報も参考にしてくれたようです。

山梨県立市川高等学校の写真

山梨県立市川高等学校

デザイン作成中の市川高校美術部の写真

デザイン作成中の市川高校美術部

PRキャラクター市川三郷レンジャーの誕生

そして誕生したのが、町のPRキャラクター「市川三郷レンジャー」でした。部員達によると「園児や小中高生の若者層にウケルのはやっぱりヒーローもの。そこにさらに流行りのゆるキャラ風味を加味しました」とのこと。このPRキャラクター「市川三郷レンジャー」は3人で構成されていますが、それぞれの顔の正面には「大塚人参」「花火」「はんこ」がデザインされており、それらは全て合併前旧三町の特産品です。ひと目で町の特産品がわかるこのキャラクターは、市川三郷をなんとかPRしようとする若い感性が感じられ、職員にも好評を得ました。作成を依頼したこの時期は、高校の定期試験などがあり進捗には思いのほか時間がかかりましたが、結果的には、その間のやり取りで高校との信頼関係も構築でき、地域的な連携も深めることができるなど、予想以上に大きな成果を得ることができました。

市川三郷レンジャーの写真

市川三郷レンジャー誕生

PRキャラクターを最大限生かすために

このような経過を経てPRキャラクターは作成出来たわけですが、このPRキャラクターを一時の流行で終わらせないためには、上手に活用しなければなりません。私達はこのキャラクターを大々的に紹介する方法を考えました。まずは広報紙の表紙で華々しく登場させ、「PRキャラクターが誕生したこと」と、「誕生までの経過」を報告しました。広報紙をめくらなくてもわかる表紙での発表は、私達の思惑どおり、町民には大きなインパクトを与えたようでした。賛否も含め多くの感想をお寄せ頂き、まずまずの好スタートを切れました。

次に、このキャラクターを少しでも町民に親しみを持ってもらうためには、「どんな展開を行えば良いか」を考え、係内で様々に思いを巡らした結果、このキャラクターは市川高校生によって作られたため、「この段階まで、住民の意思は何も反映されていないこと」、「この時点では三人の総称が市川三郷レンジャーと決まっていただけで、一人ひとりの名前は決まっていないこと」に意を留めました。そこで、一人ひとりの名前を町民対象に募集をかけることとしました。しかし、漠然と公募しただけではアピールに乏しいため、子ども達に馴染みの深いキャラクターのデザインであったことを活かし、子ども達を中心になるべく多くの方に考えていただこうと、管内小中学校にも呼掛けをして協力していただいた結果、実に400通もの応募がありました。

公募により町民からの注目を集め始めた矢先でしたので、この名前の発表会も、やはり大々的に行う必要があると考えました。その当時、PRキャラクターはまだ多くは出回っておらず、山梨県内では自治体そのもののPRキャラクターはほとんどありませんでした。また、その生まれた経緯も市川高校生とコラボという独自のものだったため、マスコミの多くから興味を示していただきました。この発表会も、町内で行なわれるイベントと抱き合わせたため、新聞のカラー記事、テレビニュースなどでも大きく取り上げていただき、町内のみならず県内全域に発信することができました。

広報誌の写真

広報誌の表紙でPRキャラを発表

PRキャラ名発表会の写真

市川三郷レンジャー、PRキャラ名発表会

地元紙の写真

PRキャラの存在を知らせる地元紙

マスコミとの連携

市川三郷レンジャーの認知度を高めた方法として、マスコミの力は大きな後押しとなりました。市川三郷町では、普段から広聴広報係を中心に、地元の新聞社やテレビ局に積極的に情報提供をするなど、マスコミとは密な連携をとることを心掛けています。やはり情報発信・露出回数という点では、自治体のHPや広報紙などよりもマスコミに一日の長、新聞、テレビ、ラジオの媒体を利用しない手はありません。記者やディレクターと太いパイプを築いておくことにより、信頼の上に相互の情報提供が成立ち、このようなイベントの報道なども積極的に取り組んでいただけるのだと実感しています。

市川三郷レンジャーの新たな展開

また、市川三郷レンジャーを使ったPR活動の、大きな転機になった出来事があります。それは、町内自主グループボランティアによる着ぐるみの作成でした。

当初、町としてはキャラクターの独自の体型、予算の関係などから着ぐるみの製作は考えておらず、イラストを使ったPRグッズ以外、製作する予定はありませんでした。そんな中、地域の自主グループが主催したお祭りの中で、主催者自ら着ぐるみを製作し、参加者達とふれあいを深める活動を始めてくれたのです。しかしその着ぐるみは、自主グループゆえにあまり経費をかけられなかったのか、少し手作り感覚の出来栄えであったため、町としてはイラストとのギャップを心配しましたが、そんな危惧は最初だけでした。キャラクターが立体となり、一人の生き物として活動することで、そのキャラクターに親しみがわくのか、多くの子どもたち、親子連れが着ぐるみとの交流を求めてきました。さらに、そのグループは着ぐるみを引きつれ、町内の保育所などを訪問して下さいました。この地道な活動が、町内の子ども達への認知度を深めたことは間違いありません。

残念ながら、この自主グループの着ぐるみ活動は、老朽化や時間の制約があり、その後にストップしてしまいましたが、町から発信されたキャラクターを活用して、住民サイドがそれを地域おこしに利用するという形は、地域に市川三郷レンジャーが根付いてきた証でした。この自主グループの皆さんの想いや着ぐるみの有用性を感じていた町では、翌年度、市町村合併体制整備費補助金を利用し百四十万円をかけて三体の着ぐるみを製作しました。

自主グループによるボランティア活動の写真

保育園を訪問する自主グループによるボランティア活動

市川三郷レンジャーグッズの写真

市川三郷レンジャーグッズ

市川三郷レンジャー新着ぐるみの写真

市川三郷レンジャー新着ぐるみを制作

市川三郷レンジャーの1人の写真

子どもたちに大人気市川三郷レンジャーの1人

着ぐるみを活用することの利点

現在、着ぐるみを使用しての活動は主にイベントなどに出演し、会場で参加者と触れ合い、町のPRを行うことです。参加者は実際に市川三郷レンジャーと触れ合い、逢うたびに親しみが増しているようです。参加者らの笑顔や言動から、愛情に近い感情も生まれてきていることをヒシヒシと感じています。更に、絶えず対外との接点を持つことが容易となるめ、市川三郷町にとって、「なくてはならない存在」に育ちつつあります。

イラストだけでなく、着ぐるみというPR方法を選ぶことができたことは、私たちにとって大きな収穫でした。その体験から伝えられるとすれば、ご当地キャラクターを地域のPRに有効に活かすためには、完成したことだけに満足せず、つまりは、単なるシンボルとして終わらせないために、「キャラクターを一つの人格として扱うこと」、また「その人格を育てることが非常に有効である」ということです。

さらなるPR活動展開へ

全国的には、私達の先を進むPR活動を実施している自治体が数知れず存在することも承知していますので、私達も着ぐるみでのPR活動はもちろん、まだまだ新たな展開を計画中です。また最近は、山梨県内の自治体などの「ゆるキャラ」と共に協力し合って、PR活動を行える機会が増えてきましたので、「PR下手を解消すべく頑張っていきたい」とも思っています。