出雲伊波比神社流鏑馬祭 夕的(ゆうまとう) 乗り子は、町内の小中学生。平成12年には「埼玉県ふるさと自慢百選」に選ばれました。
埼玉県毛呂山町
2729号(2010年8月9日) 情報推進室 新井康之
毛呂山町(もろやままち)は、かつて関東平野の純農村でしたが、昭和38年頃から首都圏のベットタウンとして開発が始まり、人口3万7千人になりました。
西部山間地は、日本最古ともいわれるゆずの産地で、住宅地が広がる中央台地部では、流鏑馬(やぶさめ)の伝統行事が受け継がれています。東部低地は、肥沃な農地が広がっています。
埼玉医科大学病院の立地により、近年は最先端医療のまちとして、さらに発展を続けています。
このような町の行政に、ICTの波が押し寄せたのは平成6年の頃です。
「汎用機の時代が終わりパソコンの時代になる」「すべての職員は時代に遅れないように準備しなければならない」とされ、平成8年には職員全員が文書作成ソフト、表計算ソフトを研修しました。
しかし、パソコンの整備が間に合わず、300人のうちの100人の職員が、当時40万円はしていたパソコンを自前で購入、業務に使用しました。昭和50年頃、8桁の電卓が1万円で、税務担当者は申告受付に使うため自腹でそれを買い、大事に抱えていました。
それから20年、こんどはみんなでパソコンを買ったのです。
汎用機よりさらに利便性の高いコンピュータを、職員が自分で買えるようになり、「時代に遅れてはならない」という地方公務員としての気概が示される、そのような場面になりました。
私たちは「とんでもない時代が来る」と、肌に感じました。
汎用機を用いて計算や抽出を行う場合、機器やソフトが大変高額で、大量定型の事務処理を除き、職員が日常その機能を利用することはできません。
しかし、パーソナルコンピュータの登場は、職員のアイデアしだいで住民の暮らしを豊かにする利便を自治体に提供する、そう感じられました。
民間は会社の利潤を追い求め、自治体は住民の福祉を追い求めます。多額の経費を注いで職員研修を行い、機器を整備し、ネットワークを整え、そうして得られた膨大な利便性を、住民の立場から使いこなすことが求められる、それが強く意識されました。
パソコンの時代になったとはいえ情報処理機器はまだまだ高価です。住民1人1台はおろか、1世帯に1台であってもそれを維持することは簡単ではありません。
行政のICT化が、そのような住民を含むすべての人々に対して、いくらかでも暮らし易さにつながるような、行政としての方策を考えなければなりません。
毛呂山町役場
そして、毛呂山町は、映像(動画)の活用に着目しました。
映像は、一目見るだけで伝えたいところを指し示すことができる特性をもっています。
が、従来、映像資料は制作・複製・上映のそれぞれに大きな経費が必要で、これを自治体の小さな施策にいかすのは困難でした。
そして、パソコン、デジタルカメラ、DVDといった機器が登場し、これらの課題を一掃。制作・複製・上映のどの場面においても、きわめて軽費で取り組みが可能になりました。
特にアニメーションは、制作のすべてを個人が机上で行うことが可能です。
平成19年、私たちは窓口の案内や、小さな商店のコマーシャルを作製しました。その試みをくりかえすうち職員の中から、「基礎教育の場において大いに有効」と提言を受けました。
自治体業務のアニメーション化は、住民とのコミュニケーションにおいて大変有望な施策と考えられます。
施設の案内であったり、ごみの出し方などのくらしのルールであったり、アニメーションを活用したコンテンツは、情報の受け手に配慮した有望な情報伝達の手法として、行政において一定の地位をしめるべきと考えられます。
その必要性を立証し、取り組みを全国的な動きに広げ、制作の担い手の不足を乗り越え、使いやすい多様なコンテンツが全国の自治体にいきわたるようにする必要があります。そのような気持ちで、基礎教育支援のためのアニメーション制作に入っていきました。
ひらがな「あ」の筆順。画像をクリックすると起動します。
九九の練習を作りました。5つの速さで練習できるものにし、DVD化によって家庭での利用も可能にしました。そして、町内の小中学校から各家庭に貸与するかたちにしました。
各学校に50枚ずつほど提供しましたが、思うような反応はありませんでした。
漢字の読み書きや計算の基礎、歴史や英語の分野も作りました。基礎教育へのアニメーションの活用が、学習にのぞむ子どもたちの負担を軽減し、教育の改革に大きく貢献すると確信する一方、基礎学習の分野は広大で、一つひとつのアニメーションの制作には多くの時間や手間が必要なことから、試作したコンテンツを持参し、有名企業や関係団体にも協力を求めました。しかし、ご協力いただける団体はありませんでした。
自力での対応を覚悟した私たちは、小学生が習う漢字1,006字のアニメーション化に取り組みます。
漢字1字のアニメーションが50秒として、1秒間にセル画10枚を使う場合、セル画1枚を200円と計算すれば、従来のアニメーション制作の手法では、漢字1,006字を仕上げて1億円以上が必要になります。
そのような作品を、全国に向けて無償で提供できることになれば、自治体におけるアニメーション活用に大きな前進がもたらされると考えました。
教育委員会からヒントをいただいて教科書体のフォントを使用、毛筆特有のしなりや勢い、撥ねや留めを、できるだけ損なうことがないように心がけました。
1字目からはじめて1,006字目まで行くと、その間に作製技術が大きく向上するため再度、1字目から取り組むことになりました。
このようなことを4回ほど繰り返して、平成20年3月に完成しました。
漢字「愛」の筆順。1字ずつ5回学びます。
「尊敬」ほか熟語の筆順を2回学びます。
「のはら」をテーマにことばの筆順を学びます。
ひつじの画像で数の数え方を学びます。
そのほかにも数多くの作品を仕上げ、取り組みを多くの方に知っていただくため、ユーチューブを利用しました。
パワーポイントを動画ファイルに変換する適切なソフトがないので、パソコンの画像データをテレビ信号に変換して録画、これをDVD化してそのディスクから動画ファイルを抽出する方法で、平成20年5月までに概ね600点の動画をアップしました。
なめらかなアニメーションで漢字の筆順1,006字を提供する動画サイトは前例のないものとなりました。
私たちは、この試みが無償であることも含め、先進のものである確信を持ちました。
数えましょう。1から10まで。
英語。曜日を書いて覚えます。
地理。日本のおもな漁港を地図で覚えます。
このような経過を経て、平成21年6月、国の平成21年度補正予算の地域情報通信技術利活用推進事業の採択を受け、町独自の公開サーバを設置する機会が与えられました。
公開サーバの活用により、私たちのこれまでの取り組みを、全国に向けて公開し、取り組みの真価を確かめることになったのです。私たちのアニメーションは、すべてマイクロソフト社のパワーポイントを使って制作されています。これをDVD化したりインターネット公開したりするためには、どうしてもパワーポイントからスムースに動画ファイルに変換するツールが必要です。
平成21年12月、eラーニングを専門に行う企業から変換ソフトを入手できました。その後は、すでに作製されていたコンテンツの再構成を行い、2ヶ月で10,000点のファイルを動画に変換、そこからさらに2ヶ月をかけ、その動画ファイルをインターネット公開可能な形式へと、7,000点を変換しました。
インターネット公開が行われると読売新聞、朝日新聞、東京新聞などに取り上げられ、ネット上でも話題となり、5月には多くの方々がサイトを訪れるようになりました。
しかし、そのような利用は一過性のもので、話題にはなったものの物珍しさによるアクセスが多く、「親子で学ぶ基礎学習」の本来の趣旨に沿う利用が、納得のいく広がりを見せている状況ではありません。
そして、「傑出し、画期的な取り組みである」との評価が寄せられる一方、「作品が単調で魅力に乏しい」とする評価もあり、今後の展開が重要です。
インターネットは、仕事、趣味、経済活動のいずれにしろ、未だその利用のほとんどが個人中心で、ひとつのパソコンの画面を親子がのぞきこみ時間を共有する、そのような文化は未熟です。
さらに、デジタルテレビとインターネットがブロードバンド接続され、茶の間で家族全員がインターネットコンテンツを利用する、そのような時代までまだしばらく時間が必要です。
親子でひとつの画面に集中。共有する時間は親にとっても、子どもにとっても貴重な時間です。
しかし、私たちはこの取り組みの有用性について、さらに訴えを拡大させていかなければなりません。
インターネットが、いまだ個人レベルでの利用を脱しないツールであるなら、インターネットを盛んに利用している人々が、こぞって「役立つ」と認めてくださるような取り組みを、具体的に進めていくことが必要です。
英単語や英文基礎、その習得の場にアニメーションを展開し、このサイトの主張と有用性を明らかにして利用者の増加を図り、さらにはインターネットで結ばれる全国の小学校、中学校の教室においても利用が進むよう、訴えていきたいと考えています。
町内においては、生涯学習課を中心に、家庭教育の改革を目標に、取り組みを進めています。
当サイトは、各検索サイトから「親子で学ぶ基礎学習」と入力してアクセスすることができます。
皆さまのご利用とご支援を、宜しくお願いいたします。