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群馬県上野村/UIターン対策事業で、 自立する村づくりを目指す

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年7月19日更新
上野村の写真

人口1,379人の上野村。13%強にあたる187人がUIターン者です。上野村は、定住者の方々を積極的に支援しています。


群馬県上野村

2727号(2010年7月19日)  上野村長 神田 強平


はじめに

上野村は、群馬県の最西南端に位置し、西は長野県、南は埼玉県に接しています。その境界は秩父、荒船、御荷鉾連山等のいずれも急峻な1,000~1,500mを超える山々が連なり、その支脈が複雑に入りくんで、平坦地は極めて少ない典型的な山村です。山々は、原生林を始めとして深い森林に覆われ、森林面積は村の総面積181.86平方mの96%を占めていますが、広葉樹が多く四季のうつろいは鮮やかで、たいへんに美しい景色を形成しています。村の中央には、西から東に向かって村に源を発する神流川が貫流して渓谷をつくり、その本支流の河岸段丘を利用して、標高400~800mの位置に小集落が散在しており、人口は1,379人(平成22年6月1日現在)と群馬県で最も人口が少ない自治体です。

本村は、東京から100㎞圏内に位置していますが、上信越自動車道平成16年3月の湯の沢トンネル開通に伴い、都心から2~3時間程度のアクセスで雄大な山岳美や親しみやすい渓流など「大自然の癒しの力」にあふれる環境を満喫できるようになりました。

また、観光資源についても、群馬県指定天然記念物であり関東一の規模を誇る鍾乳洞「不二洞」を中心とした川和自然公園、天空回廊(まほーばの森・上野スカイブリッジ)、国指定重要文化財の「旧黒澤家住宅」、平成17年12月に1号発電機が運転を開始した東京電力の神流川発電所、また、平成の名水百選に選定されるとともに5年連続で関東一きれいな川に選出された神流川もあり、入り込み客数は増加しています。

上野村の風景の写真

大自然あふれる上野村の風景

上野スカイブリッジの写真

川和自然公園とまほーばの森を結ぶ、高さ90m、長さ225mの上野スカイブリッジ。吊り橋を渡れば空中散歩気分。4月から11月は、1日3回シャボン玉の舞う風景が見られます!

神流川の写真

神流川(かんながわ)は、イワナやヤマメ、鮎などの多くの渓流魚を育み、大勢の釣り人に愛されています。

UIターン対策事業におけるこれまでの取り組み

観光客の増加とともに、本村が総力をあげて取り組んでいるのが定住対策です。過疎から脱却するためには、何より若い世代を中心とした人口の増加が必要であり、そのことが高齢化問題及び少子化問題の解決にも繋がっていきます。

そこで、本村は、平成元年度よりUIターン者を積極的に受け入れており、現在は人口の13%強の187人(平成22年5月現在)が定住し生活をしています。総人口に占めるUIターン者の割合は全国的にみても大変高く、各種の定住化対策事業の成果によるものと考えられます。具体的な対策事業としては、就業の場の確保(木工事業の振興、特産品開発・製造販売事業等の産業振興及び観光事業の振興)、村営住宅の整備及び後継者定住促進条例による生活支援をこれまで強力に推進してきました。

就業の場の確保

本村には企業が少ないため村が中心となり、就業の場の創出に努めています。UIターン者の主な従事先は、木工業、農林業、特産品製造販売業(上野村きのこセンター・十石みそ工場・森の菓子工房等)及び観光事業(第三セクター㈱上野振興公社等)となっています。木工業については、昭和51から52年度にかけて建設した現在の銘木工芸センターを中心に村の森林資源を利用した挽物製品(茶盆、菓子器、茶托等)の加工施設や展示販売施設を整備しています。現在、Iターン者を含めて十数名の木の工人達が木工家協会を設立する等、村の貴重な地場産業として定着しています。森林整備事業についても木工業同様UIターン者の就業の場として現在も就職率の高い職種です。

また、特産品製造販売業では、平成18年度農林水産省総合食料局長賞を受賞した上野村農協の十石みそ工場、村内の木材を使用したオガの菌床で椎茸や舞茸を生産する村直営のきのこ工場及び村の素材を活用した菓子の開発を手がけている村直営の森の菓子工房がUIターン者の主な就業の場となっています。

村営住宅の整備

UIターン者の主な住居である村営住宅については、様々な制約のある公営住宅の補助金を使用せず、UIターン者が少ない負担で入居できるように村単独で整備しています。現在までに92世帯分の整備を行いましたが、依然供給不足の状況です。

生活支援

UIターン者への生活支援については、村の後継者定住促進条例に基づき、生活補給金、結婚祝金、仲人報奨金及び住宅資金利子補給を行っています。当村に移住してきた場合、移住前に比べ所得が減少する場合も多く、安定した所得が得られるまでの支援として最長36ヶ月を限度に生活補給金を月5万円支給しています。その他、誕生祝金、養育手当(3人目から月額1万円、最長15年間支給)、子供の福祉医療(中学校卒業までの医療費無料)及び低額での保育の提供(月額2、000円)などを実施しており、UIターン者が村に定住しやすい環境の整備に努めています。

上野村の木工品の写真

上野村の木工品。食器・おもちゃから世界で一点の特注家具まで、職人たちが心をこめてつくります。

上野村の特産品の写真

上野村の特産品。自慢の肉厚のきのこと十石みそ。加工品もたくさんあります。

UIターン対策事業の今後の取り組み

林業における新たな可能性の模索による雇用の拡大

本村は、交通条件や地形的な条件から企業誘致による雇用の拡大は難しい状況です。今後も既存の就業の場を充実させ雇用の拡大に繋げると同時に、林業における新しい可能性も模索していきたいと考えています。森林面積が村の総面積の96%を占める本村では、一層のUIターン対策を推進していくために林業分野における雇用拡大は強く求められることです。

林業については、現在、搬出間伐(伐採から林内搬出まで)の採算がとれるように村独自の財政的な支援を林業事業者に対して行っていますが、今後、伐採の際に生じる「林地残材」について森に放置して森林荒廃の一要因とするのではなく、有効的に活用する仕組みづくりを行います。具体的には、村にペレット工場を建設し、「林地残材」は当該工場でペレット化して村内の施設や住民に供給し、将来的には村外にも販売したいと考えています。村による財政的支援等も行い、ペレットの原料調達、製造及び流通の各段階における雇用の創出をねらいます。林業全体として、良材は市場に搬出、「林地残材」はペレット化することにより、村の森林資源を余すことなく活用する「村内循環型経済社会」を構築することにより、雇用の大きな受け皿にしていきたいと考えています。

伐採作業の写真

現在、伐採から林内搬出まで、林業で採算が採れるよう村独自の財政支援を行っています。今後は、林業における新たな可能性も模索します。

村営住宅の更なる充実

現在、村営住宅では満室状態が続いています。定住希望者への安定的な住宅供給のため、今後も積極的に村営住宅の整備を進めていきます。整備にあたっては、1ヶ所に住宅を集中させるのではなく、各集落の実情等を勘案しつつ、村の各集落に住宅を分散配置して限界集落の解消にも結びつけていきます。その上で、UIターン者と村民の様々な交流により、集落全体の活性化をはかっていきます。実際、地元の人からも「赤ちゃんの声が聞こえる集落になりよかった」というような喜びの声も聞こえてきています。

また、住宅を新設するだけでなく、使用していない既存古民家を改修し住宅として活用するなど、定住希望者の様々なニーズを満たす取り組みも行っていきます。

村営住宅の写真

定住を促進し、活力ある村づくりをはかるため、積極的に村営住宅の整備を進めています。

PRの充実

全国的なUIターンイベントであるIターンUターンフェアなどに以前にも増して積極的に参加し、村の魅力や就業先、これまで村が実施してきた各種施策を説明し、UIターン者受け入れのきっかけづくりを充実させていきます。

おわりに

群馬県は、現在35市町村で構成されています。本村は群馬県で最も人口が少ない自治体ですが、UIターン対策を通じて村民の年齢構成は変化をみせ(UIターン者はほとんどが40歳以下の子育て世代)、高齢化及び少子化問題へ一定の効果があらわれ、村の活性化に繋がっていると考えられます。これまでの取り組みが評価され、平成20年度には「地域づくり総務大臣表彰」も受賞したところです。UIターン対策事業の推進には様々な課題もありますが、歩みを止めず、小さくても活気にあふれ、自立する村の代表モデルとなれるように今後も施策を展開していきます。