2687号(2009年7月20日) 総務課 中島 裕樹
日本一大楠どんと秋まつりでは韓国の華やかな伝統芸能が披露される。
蒲生町は、鹿児島県本土のほぼ中心、隣接する県都鹿児島市中心市街地から24㎞の距離にあり、姶良郡の最西部に位置し、東方は姶良町に、西北方は薩摩川内市に、南は鹿児島市に隣接しています。
昭和3年11月に町制を施行し、昨年で80周年を迎えました。県下では2番目に古い歴史を持つ町です。
清流と緑あふれる美しい自然環境を背景に、県下でも数少ない薩摩古流の兵法に基づく美しい町割りが残る歴史ある町で、町のシンボルである「日本一の巨樹蒲生の大クス」(推定樹齢1500年、根回り33.57メートル)は、大正11年3月に国天然記念物に、昭和27年3月には国特別天然記念物に指定され、昭和63年度に環境庁が実施した巨樹・巨木林調査において、日本一の巨樹であることが証明されました。
「蒲生の大クス」や美しい町割りのほかにも、鹿児島新百景に選ばれた住吉池や蒲生カントリークラブ、鹿児島高牧カントリークラブのゴルフ場など、年間を通じて楽しめるスポットがあります。
毎年11月の第3日曜日には、日本一大楠どんと秋まつりを開催し、蒲生八幡神社境内では、蒲生郷太鼓坊主による和太鼓演奏のほか、韓国の国立伝統芸術中高等学校の生徒が韓国の伝統芸能を披露。また、八幡神社に隣接する町立蒲生小学校の校庭では、蒲生の農林産物のふるまいや販売など様々な催しや出店があり、訪れた方々を魅了しています。
また、平成21年10月10日(土)~11日(日)には、「巨木を語ろう全国フォーラム鹿児島・蒲生大会」を開催し、「巨木を語ろう全国フォーラム」、「巨木めぐりツアー」などが計画されていますので、県内外から多数の皆様のご来場をお待ちしております。
蒲生町では農地のほとんどを水田が占める。
本町は、下場地区と上場地区に、2~4㎞に及ぶ山林帯で区分されています。このうち、本町の面積の約78%と大半を占める上場地区は、その約80%が山林で、集落や耕地は谷間や山間盆地に位置し、耕地は主として水田が多く、ほかに畑地や樹園地からなっています。近年は高齢化により、耕作放棄地の拡大が問題視されています。
下場地区は平坦で、比較的集団化され、土地基盤の整備された水田が大部分となっています。
本町の営農類型は水稲を基幹作物として、肉用牛・園芸などの複合経営が主で、水田裏や転作田を活用した飼料作物、有機野菜、葉たばこ、施設キュウリ・イチゴなどの栽培が行われています。
また、竹林が約287haあり、蒲生名産の早堀タケノコなどがあります。
スーパーチェーン「株式会社タイヨー」は鹿児島、宮崎に88店舗を展開。
鹿児島、宮崎にスーパー88店舗を展開するスーパーチェーン「株式会社タイヨー」が、平成21年1月23日に、自ら農業生産法人「株式会社アグリ太陽」を設立し、蒲生町と立地協定を締結しました。農地1.4haを地権者から賃借し、「アグリ太陽・蒲生ファーム」としてパプリカ、トマト、ナスを栽培し、今年12月にはタイヨーの店頭に出荷する予定で、初年度は6千万円の売上げを目指す計画です。
スーパーチェーンによる農業生産法人設立は全国でも珍しく、九州では初めて。現在、土地の造成、ハウスの建設を進めています。
「アグリ太陽・蒲生ファーム」設置のため、地権者から農地1.4haを賃借。
蒲生町の農振農用地区域に建設されるこの農場には、大きく分けて、2つの目的があるとタイヨー側は話しています。
1つは、土の代わりにロックウール(岩綿)培地に根を張らせ、植物の生長に必要な養水分を液肥として与える「養液栽培」を採用する。それにより、栽培履歴が見え、安全・安心な農産物を地元鹿児島の消費者の皆様に安定した価格で供給できること。
そしてもう1つが、地域の「農」への貢献です。
農場のアドバイザーを務める専門家が、土壌分析や植物学などの観点から、地元の農家に技術指導を行うほか、育苗棟を開放し新品種の試験栽培などに利用できるよう配慮されました。また、施設の従業員の雇用についても、地元からの優先的な雇用を考えており、当初は、従業員数8名のうち、役員3名を除く5名は現地採用を予定しています。
「自ら日本農業の担い手となるとともに、地域農業の後継者づくりに貢献できることを願っている」と、タイヨーの清川和彦社長は、調印式後の記者会見で話されました。第一次生産者の保護、農業技術の提供、後継者の育成及び雇用確保といったタイヨーの方針が、町が目指す農業振興に共通すると考え、町では、地権者や賃借人との間に立ち農地の賃貸借契約に係る調整や農地転用、農振用途変更、農振整備計画変更などの助言や指導に取り組み、地元農業者や地権者の理解を得ました。こういった農業による地域活性化に積極的な取り組み支援をしたことが、タイヨー側へも伝わり、立地協定締結の要因の1つになったと思います。
お助け会設立にあたっては、白男地区の農業者と町職員らで協議をかさねた。
蒲生だけの問題ではありませんが、全国的に今、農業者の高齢化が進み、体力的にも農業を続けていくのが難しい局面を迎えています。大型農業機械を導入して効率化を図ろうとしても、高額な上に故障したときの修理代がかかることに加え、現在の農作物の売値・収入を考えると、機械代の返済に何年もかかってしまうことから購入に踏み切れないなど、農業は大変難しい状況にあります。そのため、耕作放棄する農地も年々増えているのが現状です。
ご近所や友人に手伝いをしてもらい、農業をしている農家も多いですが、このような状況が続けば、今はどうにかやれていても、数年後はやはり厳しい状態になっていくと思われます。
そんな中、今年1月に本町の白男地区で、農作業受託組合「白男田園お助け会」を設立しました。
今まで、個々でやりくりしていた農作業を、集落営農という取り組みの中で、農作業の受委託を組織化し、頼む方、頼まれる方のお互いが、時間的にも体力的にも無理せず助け合えること。また、機械も共同で使うことにより、安上がりになり、現在起きている問題を少しずつ解決しながら、集落の農業の向上を図ることが目的です。
白男田園お助け会では県の奨励品種米「あきほなみ」の栽培にも挑戦。
これは、平成18年から、集落営農組織の立ち上げを推進し、地域の農業の活性化と担い手の確保を目的とする集落営農育成活動支援事業としてはじめたものです。
県・町職員やJA職員で、町集落営農推進指導チームを編成し、現況説明や意見交換、集落営農の説明・アンケート調査など2年間に渡り取り組んできました。平成20年2月には、大分県豊後高田市の集落営農組織「ふき活性化協議会」や同県宇佐市「(農)よりもの郷」の先進地研修を行い、白男地区の農業者と行政とで議論を重ね、この集落営農受託組合「白男田園お助け会」が設立されました。
現在、委託の申請方法や委託料など分かりやすく説明したチラシの配布をしながら、受託作業を進めています。
また、農作業の受委託のほかにも、県内5カ所で行われるモデル地区の1つとして、白男地区の圃場を使い、鹿児島県の米の奨励品種「あきほなみ」の栽培を行う栽培技術モデル事業を、白男田園お助け会で行うなど、新しい試みにも挑戦しています。
白男地区は「町制80周年記念泥んこバレー大会」を開催するなど地域の活性化にも積極的。
もともと白男地区では、昨年行われた町制施行80周年記念事業の「泥んこバレーボール大会」の開催をはじめ、消防団活動、集落の交流会など、地域の1人1人が、地域を盛り上げるために積極的に取り組んでいる地域であります。
こういった地域の体制が整っていたことが、このお助け会の設立までの原動力となりました。考えを変えれば、農業を通じて、地域のみんなが語り合い、協力し合う中で、心のつながり、地域のつながりを深めていくことができる。また、これこそが、集落営農の大切な要素だと感じます。
まだ始まったばかりの「白男田園お助け会」ですが、これをモデルに、こういった動きが、少しずつ町内のほかの地域にも広がり、蒲生の地域や農業の未来が明るいものになればと期待しています。
平成15年4月に蒲生町物産館「くすくす館」が設立されました。これを機に高齢者の方々が自家消費用作物の余剰分の販売ルートができ、農業を通じた生きがいづくりになっています。年間販売額も1億数千万円で推移しており、開業6年目の今年4月でレジ通過者百万人を達成しました。今日、「安全・安心なもの」を求める意識が高まり、そういったものを求める購買客が増えていることが実感できます。
町の物産館「くすくす館」では高齢者の自家消費用作物なども販売。年間1億数千万円の売上げを記録する。
農業就業者の高齢化、耕作放棄地の拡大と農業の維持が危惧される状況の中、担い手農家の育成や集落営農組織の推進などの「農」を維持するための対策と同時に、1等米比率の向上や鹿児島県奨励品種「あきほなみ」の栽培技術の定着とブランド米生産、また、有機農業などの特徴ある農産物の面積拡大や販売ルートの開拓・拡大など、新たな「農」の風を吹き込む農業振興対策を推進していくことが、これからの「農」文化を豊かに育むための歩みとなっていくと考えます。
最後に、農業企業立地協定や集落営農組織の取り組みなど、ご紹介してまいりましたが、まだまだ、取り組むべき課題は山積みです。しかし、今、農家と町職員、関係機関が太いパイプでつながり、提携関係が強まっています。「農」を育み、「結」を深める地域づくりを目指し、これからも取り組んで参りたいと思います。