ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 長野県原村/原村 米粉元年~商品開発で消費拡大にも挑戦~

長野県原村/原村 米粉元年~商品開発で消費拡大にも挑戦~

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年7月6日更新
米粉栽培に取り組む農家の写真

米粉栽培に取り組む農家。省力化と低コスト化を実現する疎植栽培にも挑戦。


長野県原村

2685号(2009年7月6日)  農政係長 小林 正雄


自給率の向上を目指して米粉の栽培に着手

日本の食料自給率はカロリーベースで40%程度と低く、国民に食料を安定供給するためには、特に自給率の低い、麦、大豆、米粉、飼料用米等の生産拡大が重要になります。

反面主食用の米の自給率は100%に近く、現在約100万トンが備蓄され、引き続き政府が買い入れることは困難な状況となってきています。そのような中、単純に休耕するのではなく、自給率の低い作物を水田に作付ける取り組みとして、水田等有効活用促進対策事業がスタートしました。

該当作物は、小麦や大豆などですが、お米の新しい利用方法である米粉用米、飼料米なども対象となっています。 原村は、小麦や大豆を育てるのに適した環境にないため、米粉の栽培に取り組むことといたしました。

また米粉の栽培は転作カウントになります。原村の水稲栽培は、県より配分される作付枠を大幅に上回っているため、他地区より200tあまり作付けの枠を譲り受けています。枠を譲り受けるのもただというわけには行かず、購入分は産地づくり交付金よりまかなわれています。生産調整に取り組まない農家のペナルティーを、生産調整農家が負担するといった不公平感を何とか是正したい。このことも原村が米粉に取り組む要因となりました。

新規需要米の販売へ農協、製粉会社など7者が結束

毎年3月には水稲作付面積を農家にお聞きする「水稲作付け実施計画書」の配布を行なっておりますが、今年は、それと併せて「米粉栽培農家の募集」を配布しました。

主食用水稲は124,000円(諏訪管内 あきたこまち)ほどになりますが、米粉は一反歩あたり48,000円程度の収入にしかなりません。水田等有効活用促進交付金を加えても米粉の収入は100,000円程度です。取り組みを募集した当時は、誰も申し込まないだろうと思ったのですが、4名の方から応募がありました。応募された皆さんは、「生産調整を達成しておらず済まない思いをしていた。米で転作できるなら是非取り組みたい。」「金額は問題ではない。少しでも米の消費が拡大するなら、協力したい。」と話してくださいました。

5月18日、新規需要米(米粉)栽培調印式を原村役場で開催いたしました。当日は、米粉用水稲の栽培に取り組む4軒の農家、米粉を集荷するJA信州諏訪農協、米粉を製造する高山製粉、長野農政事務所、長野県、原村水田農業推進協議会、信州諏訪農協女性グループが出席しました。調印式では水田等有効活用促進対策事業を実施する際、要件となっている新規需要米の販売等に関する契約書を作成致しました。最後に新規需要米(米粉)栽培調印式の横断幕の下で、固い握手を交わしました。

その後補正予算で需要即応型水田農業確立事業が国会を通過し、さらに25,000円が米粉栽培農家に交付されることになりました。米粉の栽培により受け取れる金額は、主食用米並みになったわけです。生産調整に取り組む農家が、やってよかったと思える時が来たのです。水田協事務局としても、うれしい気持ちでそのことを栽培農家に伝えました。

4軒の農家が作付ける米粉用水稲の面積は約3.6ha、予定収量は21tとなります。製粉業者の需要は50tですので、まだ30tは受け入れが可能ということになります。

新規需要米(米粉)栽培調印式の様子の写真

米粉の生産、販売に向けて関係者が結束

消費拡大に向けて農協女性部が商品開発に挑戦

ところで、米粉用の水稲も需要が無ければ生産しても価格は維持できません。栽培に併せて、米粉の需要の拡大に取り組む必要があります。6月11日には米粉の普及推進を図るJA信州諏訪農協女性部原ブロックの会員と関係者19人が、加工業者である高山製粉を視察しました。

高山製粉の高山猛英社長には昨年導入した製粉機について説明いただくと共に、米粉を使った味噌パンの試食を行ないました。米粉パンはモチモチした食感でこれから商品開発に挑戦する女性部にも好評でした。米粉は小麦に比べアレルギーが少ないこと、他の食材との相性もよく、パンだけではなくうどんやそうめん、ほうとうの原料にもなることも説明いただきました。女性部の会員からは、米粉の製粉機が野菜や果物の製粉にも利用できることを知り、原村の特産であるセロリの葉を粉にして麺に入れれば面白いのではないかとの意見も出されました。

21年度は産地確立交付金特別枠を利用して、米粉の消費拡大にも挑戦します。

平成21年は、原村にとって米粉栽培を始めた記念すべき年です。全国的に見ても前年度の18倍の作付けとなり、まさに米粉元年です。日本の風土は稲作に適しています。

米粉は日本の食料自給率を向上させ、生産調整を推進する新たな商品として注目を集めています。

米粉パンを試食する農協女性部の様子の写真

もちもちした触感の米粉パンは農協女性部にも好評

田園風景の写真

原村の米粉生産は生産調整の救世主となるか