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鹿児島県大崎町/誇りあるまちづくり~スーパーエコタウンへの挑戦~

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年2月2日更新
鹿児島県大崎町の写真

鹿児島県大崎町

2667号(2009年2月2日)  町長 東 靖弘


町の概要

大崎町は鹿児島県本土の東南部に位置し、太平洋・志布志湾に面したまちです。温暖な気候と美しい自然 に恵まれ、7kmにも及ぶ海岸線一帯は日南海岸国定公園に指定され、日本白砂青松百選にも選定されました。

また、まちの基幹産業は農業です。早期水稲をはじめ、サツマイモ・ハウスみかん・黒毛和牛・ちりめん・焼酎など、多様な農作物や加工品が生産されています。中でも、ウナギやブロイラー(食肉用若鶏)の生産量・日本一の産地としても確立し、昨年初めて生産販売額が一億円を突破したマンゴーの県内一の産地としても知られるようになりました。

菜の花畑の様子の写真
菜の花畑

さらに、優れた人材を輩出していることも大きな特徴です。アメリカ・メジャーリーグのシカゴカブスに所属する福留孝介選手、2008年プロ野球日本シリーズで日本一の栄冠を手にした埼玉西武ライオンズの赤田将吾選手、そして2007年に広島東洋カープに入団した松山竜平選手など、人口1万5,000人のまちからこのような一流のスポーツ選手を輩出できたことは子ども達や郷土の大きな誇りとなっています。

ごみリサイクル率・日本一へのきっかけ

そして、もう一つ大きな誇りとなったものがあります。それは環境に対する取り組みです。平成20年6月、本町は環境省が発表したごみリサイクル率の調査で80.0%を記録し、全国の自治体の第1位にランキングされました。

環境問題に対する本格的な取り組みは、今から約10年前にさかのぼります。本町は従来からごみの焼却施設が存在せず、一般廃棄物の処理は一部事務組合による埋め立て処分で行われてきました。しかしながら、処分場の残余年数があと数年で満杯となるひっ迫した状況を迎えたため、ついに平成10年9月、缶・ビン・ペットボトルの分別収集と指定袋の導入に踏み切りました。

新たな制度のもとで存在感を発揮したのは、住民組織である衛生自治会でした。町内全ての収集場ごとに地域のリーダーである環境衛生協力員が配置され、ごみステーションでの立ち会いなど、率先した行動が周囲との信頼関係を築き上げてきたのです。

さらに、廃棄物の再利用を推進していくうえで重要な役割を果たしたのが、資源ごみ回収等の業務を請け負う「そおリサイクルセンター」でした。こうした住民・企業・行政の連携が今の環境政策の礎を築くことになったのです。

菜の花エコプロジェクト始動

本町は、下水道及び合併浄化槽の普及率が低く、家庭から排出される天ぷら油等が河川水質汚濁の一因となっていました。 そこで、各家庭に専用容器の配布を行い、平成12年4月から、「そおリサイクルセンター」に廃食油の回収委託を行うとになりました。

「ヤッタネー菜ッタネ!」の写真
菜の花エコプロジェクトでできた大崎産菜種油「ヤッタネー菜ッタネ!」

しかし、この取り組みを始めた当初は、この回収量が予想を大きく下回り、関係者の間でも頭を悩ませていました。 そこで、対応策を検討した結果、たどり着いたのが菜の花の栽培でした。衛生自治会と町は、菜の花から採取した油を製品化し、家庭の食卓や特産品として使用してもらうことで回収量を確保しようと考えました。まず、衛生自治会員の畑・約7haに菜の花が試験的に植えられたのです。

今日ではこれらの循環が機能し、各家庭から排出された生ごみから完熟肥料が製造され、この肥料を使った菜の花が食用油になり、その後エコ石けんや軽油代替燃料として再生されるようになりました。これが平成13年度に始まった資源循環型のまちづくりを目指す「菜の花エコプロジェクト」です。

ターニングポイント-行財政改革-

こうした背景や取り組みの成果が大きなベースとなり、廃棄物処理対策から総合的な地球温暖化対策として脱却するターニングポイントとなったものが意外にも「行財政改革」にあります。本町の行財政改革の目的は、単に財政の効率化を求めるものではなく、様々な改革を通じて、住民が誇りを持って暮らせるまち、他には見られない独自性と魅力を兼ね備えたまちを構築していくことでした。

電気ポット廃止で役場職員はマイ水筒持参している様子の写真
電気ポット廃止で役場職員はマイ水筒持参

平成16年、行財政改革を推進する「40歳未満の職員で構成する検討委員会」での提案がきっかけとなり、経常経費の削減と地球環境対策という両面から、全職員による庁舎内エコチャレンへの取り組みを決定しました。これまで、何気なく使用していた室内の照明や電気ポット、OA機器、空調機器などの使用について大幅な見直しを図り、徹底してムダの削減について検討を始めたのです。

例えば、照明は徹底的に節電に努め、電気ポットは原則廃止し、職員はそれぞれ自前の水筒を持参するようになりました。さらに、待機消費電力を削減するため、パソコンやプリンターなどは退庁時に主電源オフを必ず確認する、などのこまめな行動を取り入れるようになりました。こうした姿勢が、町全体を挙げての地球温暖化対策へとステップアップするきっかけとなったのです。

施策の集中、そして全面展開へ

一方、ごみの分別収集や「菜の花エコプロジェクト」は試行錯誤を重ねつつも順調に推移してまいりましたが、ある一つの思いが芽生えていました。それは、これらの取り組みが全国的に誇れるものであるにも拘らず、果たして個々の住民の間に、トップクラスの取り組みを実践しているという意識や誇りといったものが十分に浸透しているのだろうか、という思いでした。なぜなら、私達にとって、28品目のごみの分別というのは、決して特別なものではなく、あまりにもごく普通の生活の一部として定着していたからです。

そこで考えたのが、平成19年度、環境省が初めて実施した『ストップ温暖化「一村一品」大作戦』への応募でした。この応募によって、本町の取り組みが高い評価を得られれば、住民一人ひとりがその素晴らしさに気付くのではないか、あるいは誇りの醸成につながるのではないかと考えたのです。

そして、積み上げてきた成果と関係機関との連携などを融合させ、新たなコンセプトのもとに全面的に打ち出したものが「知恵の環(わ)ひとの環(わ)資源の環(わ)ストップ温暖化プロジェクト」なのです。言い換えると、これまでの10年という歳月の結晶でもあります。

『知恵の環 ひとの環 資源の環 ストップ温暖化プロジェクト』とは

環境施策イメージの画像
環境施策イメージ

本プロジェクトは、ストップ温暖化をキーワードに「ひと」と「ひと」とのつながり、本町の特色ある自然と資源、そして、住民・企業・行政のアイデアが融合された総合的な地球温暖化対策のことです。

町民が協力している様子の写真
まちのイベントでも「ごみの分別にご協力を」

①住民(衛生自治会)
全住民による28品目のごみ分別活動に加え、ごみステーションでの立会い、環境情報誌の発行による啓発活動、会員による「菜の花エコプロジェクト」の展開などです。ごみの排出量は、ごみ分別開始の平成10年度と比較してマイナス85%を達成しました。

ごみ収集車の写真
家庭から出された廃食油を精製した軽油代替燃料で走るごみ収集車

②行政
「チーム・マイナス6%」をスローガンに、地球温暖化防止活動実行計画に基くエコチャレンジを実施しています。行政活動における温室効果ガス排出量は年々減り続け、平成20年度現在マイナス8%を達成中です。こまめな行動で削減できた光熱水費は、取り組み開始後の3年間で1,200万円に上りました。

③リサイクル事業者
住民や行政と連携した資源ごみの収集業務などを行っています。収集車の燃料は、「菜の花エコプロジェクト」から生まれた軽油代替燃料を使用。また、家庭から排出された生ごみから完熟肥料を製造し、無農薬野菜の生産販売も手掛け地産地消を推進。その他、住民や視察団体等へ環境学習プログラムを提供し、人材の育成も後押ししています。

埋め立て処分量の推移を表したグラフの画像

埋め立て処分量の推移

④商工会
行政と連携し、住民参加型の温暖化防止対策事業「省エネ家族・応援プラン」を実施。3世帯1組で家庭の節電にチャレンジし、電気使用量前年度比マイナス6%以上の達成グループに、商工会加盟店で使用できる商品券を贈呈するもの。なお、商品券の財源としては、町のリサイクル事業から得られた益金を充てており、施策としての循環も図っています。

⑤学校・農家
学校給食では「菜の花エコプロジェクト」から製品化された菜種油を使用し、地産地消を推進しています。また、本町の取り組みについて学ぶ環境学習も積極的に取り入れています。

また農家は、畜産廃棄物からバイオガスを製造し、ビニールハウス用の暖房用燃料としての活用を研究しています。

10年間を振り返って-スーパーエコタウンへの挑戦-

ごみ収集車の写真
家庭から出された廃食油を精製した軽油代替燃料で走るごみ収集車

ごみリサイクル率・全国第1位の達成と『ストップ温暖化「一村一品」大作戦』全国大会における地域循環賞の受賞は、わがふるさとにとって大きな誇りとなりました。このルーツは、第一に、まちの将来を見据えた地域リーダーと強い信念を持つ職員の存在にあったと確信しています。当時は廃棄物処理対策の大幅な転換という難題に直面し、住民一人ひとりの不安を払拭できるかという課題がありました。これを克服するためには、何事にも屈せず、目標を最後までやり遂げる職員がどうしても必要だったのです。そして、町内全域での昼夜不問の説明会の実施や、全職員を地域リーダーのサポート役としてボランティア配置したこと、こういった地道な対応が周囲との信頼を築いた原点であっただろうと思います。

最後に、環境というテーマを通じて、誇りあるまちへという一つの目標が達成できました。今後も常に精進を忘れず、さらに進化したスーパーエコタウンへと飛躍できるよう挑戦してまいります。