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宮崎県西米良村/ワーキングホリデービレッジ構想で自立の村づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年11月24日
宮崎県西米良村の写真

宮崎県西米良村

2658号(2008年11月24日)
総務企画課長 黒木義光


西米良村の概要

宮崎県西米良村は、九州のほぼ中央にある宮崎県の中央部、熊本県との県境に位置し、総人口は1,246人(平成20年10月1日現在現住人口)、総面積は271.56平方kmの村です。

西米良三山遠景
西米良三山遠景

東西約16㎞、南北約20㎞で、九州中央山地国定公園に編入されている名峰市房山、石堂山をはじめとした山々を源とする一ッ瀬川の最上流域を占めており、県都宮崎市からは、北西へ約50㎞に位置し、車で約2時間、また、宮崎県西都市、熊本県人吉市までは車で約1時間のところにあります。村の96%が山林で、食糧の確保が困難であったため、古くから代表的な焼き畑耕作の地域でもありました。

特産の乾椎茸の写真
特産の乾椎茸

文亀元年(1501年)熊本県隈城主であった菊池氏が、嫡子重為を米良山中に落ちのびさせ、その後約400年にわたって西米良村を含む米良一帯(西米良村、旧東米良村、旧三財村寒川)が菊池氏によって治められておりました。明治維新後の版籍奉還に際し、菊池氏は自分の所有山林を全て領民に分配して、その貧しい生活を助けております。

明治22年の町村制施行により、現在の西米良村となっても、菊池氏の教えである、貧しくても文武を怠らず、礼節を重んじ、世の魁となれという「菊池精神」は現在も村民の心に受け継がれております。

西米良村の村づくり構想

平成7年度に策定しました「第3次の西米良村長期総合計画」では、交流人口の促進を図り、村に新たな活力を導入するための施策として「ワーキングホリデー制度」や「8つの庄建設プロジェクト」といった戦略的施策を展開してきたところです。

西米良サーモン
西米良サーモン

これらの取り組みは、個性的な村づくりとして、各方面から注目を集めることとなり、更には、年間5万人程度であった入り込み客が西米良温泉オープンとともに年間11万3千人にまで増加するなど、一定の成果をおさめております。

第4次西米良村長期総合計画・前期計画(平成13年度から17年度)では、西米良村の交流人口増加の起爆剤となった「西米良型ワーキングホリデー制度」を1つの柱として「8つの庄建設プロジェクト」の再構築を図り、より魅力的で個性的な西米良村の将来像の実現を目指していく上で、各分野共通の戦略的な視点となり、相互が意識的に取り組んでいく構想としてワーキングホリデービレッジ構想を設定したところです。

西米良型ワーキングホリデー制度の仕組みについて

交流人口の促進を図り、村に新たな活力を導入するための施策として、都市と山村、お互いのニーズを満足させる交流の制度です。

ワーキングホリデー制度の利用者は、季節的に労働力が不足する農家等の簡単な作業を手伝い、いくらかの報酬を得るとともに、残りの日数はゆっくりと村に滞在して、村民との交流や自然探索などリフレッシュを行うもので、体験型のグリーンツーリズムとは異なり「役務に対して報酬が支払われる」という点が特徴です。

仕事内容は初心者でもできる軽作業で、花の苗の鉢上げ、手入れ、出荷、ゆずの選別、加工、カラーピーマンの栽培等で作業内容等については、受け入れ農家と調整の上決定します。

受け入れ期間は、原則として休暇を含み3日から1週間としております。例えば、1週間の内4日間は仕事を手伝い、残りの3日間は西米良の豊かな自然の中でゆっくり休暇を楽しんでいただくというものです。これはあくまでも原則で、受け入れ農家との話し合いで延長される方もあります。

ほおずきアート
ほおづきアート

勤務時間は、午前8時から午後4時30分(実労7時間)。報酬等は、時給620円(宮崎県最低賃金に設定)で、1日あたり4,340円となり、労災保険の適用もあります。

宿泊施設は、公設のコテージを1日1棟3,000円で準備し、民泊は行わないこととしております。食事も原則自炊となっています。この制度は遊びではなく、仕事を手伝ってもらうのが原則ですから、受け入れ側が食事や泊まりの気をつかっていると本来の仕事が出来なくなります、特に農家の働き手である女性に負担がかからないようにしています。

申し込み方法は、第三セクター(株)米良の庄を窓口としております。ただし仕事の斡旋ではありません。案内のみで、基本的には農家と申込者の契約となります。

カリコボーズ橋

現在の参加の状況は、全体の7割近くが女性で、中でも20歳代の若者の参加が多く、地域別では、宮崎県内及び九州各県が多く、関東や東北・北海道まで全国各地に拡がっています。参加者の内、約2割がリピーターで、米良の庄(第三セクター)を通さず直接受け入れ農家と連絡を取りあって来村されるケースも少なくありません。また、作業が農作業で季節的なものであるため仕事がなく断る例もあります。

定住への発展については、ワーキングホリデー参加者の独身女性の中には、定住したいという人も時にはあり、今までに村内の男性と結婚されたケースも2例あります。交流人口が増え、村内の各施設の活性化が図られることにより若年者の雇用の場(第三セクター関連施設等)も増えております。

ワーキングホリデーの受け入れ側である村民も、人出不足を補いながら、交流を楽しんでおり、リフレッシュにもつながっています。また、都会から来た人が西米良村の自然、風土、人々にふれ、また来たい、住んでみたいという声を多くいただき、リピーターも多いことから、村民が改めて我が村の良さを見直し、誇りを持てるようになってきたことは大きな成果であります。

双子キャンプ場コテージの写真
双子キャンプ場コテージ

ワーキングホリデー制度は、受け入れ事業者側の需要が前提となっておりまして、参加者の希望と合致した場合のみ成立となります。したがって、季節や仕事によっては断る場合もありますが、参加者側の希望を叶え、受け入れ側が無理のないよう制度を継続するためには、まず受け入れ態勢の強化が必要かと思っております。

また、ワーキングホリデー参加者の要望を取り入れた、村のイベントや歴史文化、伝統等を生かした体験事業や、青年会等の団体等との交流会を企画するなどして交流の輪を広げ、村の交流事業が更に発展することを期待しているところです。

「身の丈にあった取り組み」・「普段着の西米良の姿を見てもらえればいい」を合い言葉に、取り組みを続けていきたいと考えています。

8つの庄建設プロジェクトについて

前にも述べたように、より魅力的で、個性的な西米良村の将来像の実現を目指す上で各分野共通の戦略的な視点となり、相互が意識的に取り組んでいく構想として8つの庄建設プロジェクトを設定致しました。

その概要は次のとおりです。

ワーキングホリデー参加者のこんにゃく作り体験の写真
ワーキングホリデー参加者のこんにゃく作り体験

①街づくりの庄
村づくりの基本は、そこに住む村民が、誇りを持っていきいきと暮らしていくことであり、その姿や取り巻く環境が人を惹きつける魅力の根元となります。その意味で、「街づくりの庄」は、本村のむらづくりの中心的な事業として位置づけをしています。

②健康作りの庄
生涯を健康で暮らすことは、人間の根元的な喜びの1つであり、肉体面にも精神面にも健康が望まれます。本村の基本コンセプトである「生涯現役元気村」の実現は、西米良温泉を 「健康づくり庄」の核として、村民の健康づくりを推進することにしています。

③語り部の庄
旧米良領主菊池氏が約200年間居城した小川地区には「イワナガ姫」伝説や「うるし兄弟」など数多くの民話等があることから、小川城址公園を中心に「語り部の庄」として整備をすすめ、更に周囲ののどかな風景を生かし小川地区全体を「平成の桃源郷」として振興を図ることにしています。

④花づくりの庄
夏季冷涼・昼夜の温度差といった本村特有の気候条件を活かした花卉・野菜(カラーピーマン)栽培は、標高約900メートルの高原(天包高原)に整備された花卉団地を中心に苗物等の産地形成を目指し、着実に実績をのばしており、今後もこの天包高原一帯を中核として「花作りの庄」としての整備を進め、西米良特産品生産の奨励と需要の拡大、基盤の整備に取り組むとしております。

⑤湖遊びの庄
一ッ瀬ダム湖は、観光・レジャーの場として、また新たな産業の基盤として重要かつ貴重な資源の1つです。
現在は米良街道の休憩所として、また、特産品販売所として湖畔に「湖の駅」が整備されていますが「湖の駅」の拡充ともに湖水面の活用についての検討をしております。

⑥川遊びの庄
西米良村の大きな魅力の1つである「きれいな川(水)」をテーマに豊富な魚族や・安全な河川などを「川遊びの庄」として体系的に整備を進め、交流人口の促進に取り組んでいくとしております。

⑦匠の庄
本村にとっての新たな産業おこし、また新たな文化の風を運び、全村的な文化の振興を図っていくため、自ら進んで本村での創作活動を希望する木工芸家や陶芸家などの誘致や受け皿づくりを行う等の施策展開をはかるとしております。

⑧交流・滞在の庄
西米良村に、滞在しながら、より多くの交流を可能にすると同時に、高齢者同士の交流、生きがい作りなどを図るための、宿泊施設等の整備を行うとしております。

最後に~合併はせず、自立の道を~

西米良村を取り巻く情勢は、過疎、少子高齢化、高度情報化の急速な進展や環境問題等の顕在的課題に加え、依然として続く林業不振、市町村合併や地方分権の進展など急速な変化をしております。

こうした中での、平成の大合併(合併特例法による合併)においては、「長い歴史を経て先人達により営々と築かれてきた村を、未来永劫に存続したい」という村民総意に基づき西米良村は、合併はしないということで自立の道を選択しております。

鮎で有名な清流一ツ瀬川の写真
鮎で有名な清流一ツ瀬川

また、平成18年3月に策定しました「第4次西米良村長期総合計画・後期計画」(平成18年度~平成22年度)では、村の現状、将来を見据え、背伸びをせずに適正規模、且つ独自性のある施策を掲げ、自立・自走を目指すとしております。

本村が、自立・自走を確立するためには村民と行政の協働が不可欠であり、それぞれの「地域の自立」が重要と考えており、ワーキングホリデービレッジ構想のもと、村内にある8つの地区が、それぞれ地域の特色を活かした村づくりを行うことによる「村民総参加の確立」に取り組んでいるところです。