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青森県大間町/「大間まぐろ」でまちおこしへ

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年9月22日更新
青森県大間町 マグロ漁の写真

青森県大間町

2654号(2008年9月22日)
産業振興課課長補佐 古畑 龍泉


はじめに

大間町は、青森県北部の本州最北端に位置し、東部及び南部には標高100~600m程の山々が連なり、北部及び西部は津軽海峡に面する南北に長い町です。

北海道函館市とは、津軽海峡を挟んで最短約17.5kmと近く、北海道と本州を結ぶ海上交通の玄関口となっています。

年間の平均気温は10℃程で1年を通じて冷涼な気候であり、年間降雨量は約1,300mmと比較的少ない気象条件にあります。

基幹産業は漁業、国勢調査による平成17年の総人口は6,212人、減少傾向が続いています。

幹線道路は、国道279号と338号の2路線があり、下北半島における経済・文化の中心となっているむつ市と連絡する主要幹線道路となっています。

また、「函館-大間」間を1時間40分で結ぶフェリー航路が運行されており、本州と北海道を結ぶ海上輸送と地域住民の広域移動を担う手段として重要な役割を担っています。

当町は、ブランド化された「大間まぐろ」をはじめ、本州最北端の地として有名な大間崎や弁天島に立つ本州最北の灯台、北海道南部の連山や函館の灯りを望める景勝地やマグロ漁を観光資源とした、夏から秋にかけての観光が中心となっています。観光入れ込み客数は、年間30万人弱です。

まちづくりへの歩み「大間まぐろのブランド化」

もともと昭和40年代より、大間町は「まぐろ一本釣り」が有名であり、東京の有名料亭、寿司屋では「大間まぐろ」はネタの中でも、別格の扱いでしたが、一般の人々へはなかなか行き渡りませんでした。そういった中で、平成13年1月5日の初競りで、「大間まぐろ」の独特の黒みを帯びた濃厚な赤みが1kg、10万円、1本2,020万円の高値がついたことから一躍有名になり、それ依頼「大間まぐろ」を求めて観光客や卸売業者が急激に増加するようになりました。

昭和50年代、対岸である津軽半島と北海道南部をつなぐ「青函トンネル」の工事の影響なのかよくわかりませんが、マグロがさっぱり来なくなった時期があり、大間のまぐろ一本釣り漁師にも不遇の時代がありました。出漁しても、カラで戻る時も多く、燃料代等経費だけがかさむこともあったようです。

マグロ一本釣りモニュメント
マグロ一本釣りモニュメント

しかしながら、潮流の関係か海水温の関係か、平成5年頃、大間まぐろが戻ってきました。大間の漁師は喜びました。

大間町マグロ祭り・やるど会

「大間まぐろ」の漁期は、これまで7月から10月頃でしたが、地球温暖化などの影響で水温が上昇し、近年9月頃から12月頃となりました。特に厳寒期(12月~1月)に漁獲される「大間まぐろ」は、脂がのり最高級品とされています。

しかし、冬の津軽海峡という厳しい環境の中でのマグロの一本釣りは危険を伴い、文字通り「(板子)一枚下は地獄」の世界です。その漁師の生き様が物語になるということから、昭和57年、緒方拳・夏目雅子出演の映画「魚影の群れ」、平成12年NHK朝の連続テレビ小説「私の青空」をはじめとして、大間の漁師を題材としたドキュメンタリー番組が近年何本も収録されています。

こうした中で大間町商工会では、観光産業の活性化や町全体の活性化を図るための「観光ビジョン」を策定した際、策定に関わったメンバーの中から、ビジョンを行動に移さなければ意味がないとの声があり、町の商店・企業・個人等、有志が集まり「大間活性化委員会(通称:やるど会)」が平成13年に結成されました。

「やるど会」の基本方針は、行政に頼らず、独自でボランティア活動を行うことでした。きっかけは、観光客に「せっかく大間に来ても、マグロが食べられないのなら、何もダメじゃないのか!」と文句を言われたことでした。なぜなら、「大間まぐろ」のほとんどは、水揚げされると漁港で、その内蔵を取り、すぐに氷づけにされて東京築地へ発送されます。マグロは、海からあがるとすぐに東京へのルートにのっていったのです。 「あなた達は、やるど会じゃなくて、やねど会じゃないのか。」といった批判も多くいただきました。そういったクレーム他、諸々の意見を拝聴した上で、「とにかく大間に来た人々に最高のマグロをたべさせようじゃないか。」といった、みんなの強い思いから大間漁業協同組合をはじめとする多くの関係機関の協力を得て、「大間超マグロ祭り」の第1回目が、平成13年10月24日~28日、大間港で開催されました。

その後、諸々の困難なことや問題を解決しながら、途切れることなく着々と、第7回の同祭りを平成19年10月20日から21日に開催しています。 内容としては、①豪快!マグロの解体ショー②解体マグロ、特産品即売③マグロ漁ウォッチング!(弁天島大間灯台一般公開)④炭火で!海鮮バーベキューです。昨年は、初日・2日目ともに天候に恵まれませんでしたが、7回目を迎え新聞やテレビ等で紹介されたこともあり、飲食店や宿泊施設等も多くの観光客で賑わいました。

まるっこ大間フェア

昨年5月、「大間町産物を生かした活性化事業」について会議が開かれ、事業目的や組織構成など要綱的なものを協議し、6月には商工会による事業事務担当者会議が開催されました。 会議では当初、9月と11月に首都圏デパートの食品売り場で行われる「青森県フェア」への参加について議論しましたが、県・首都圏デパートへの食品売り場で行われる「青森県フェア」への参加について議論しましたが、県・首都圏デパートへの食品売り場担当と町商工観光担当、商工会担当が協議を重ねた結果、「まるっこ大間フェア」の名称で町の単独実施としました。

津軽海峡海鳴り太鼓
津軽海峡海鳴り太鼓

フェアには、町長をはじめ大間漁業共同組合長・県が参加し、東京で解体ショーや試食販売、マグロ以外の特産品の販売・紹介、観光PRなどを実施し、大好評のうちに終了しました。

日曜日はマグロだDAY・浜のチャレンジ市

日曜日は、大間町浜町商店会が商店街の空洞化を憂い活性化のきっかけとして、平成17年から9・10月の毎週日曜日に独自に特大マグロの解体ショーと即売を行っています。解体されたマグロがその場で安く買えて食事もできるとあって、会場では毎年マグロを買い求める人で賑わいを見せています。

マグロの解体ショーの写真
マグロの解体ショー

浜のチャレンジ市は、平成18年5月から毎週土・日曜日、大間漁協女性部のメンバーを中心に大間特産品の販売、定食・旬のものを提供しています。大間漁業共同組合直販所で開催しており、評判も上々です。

あおぞら組・おおまエスコートクラブ

大間町のまちおこしを語る上で、はずせないのは「あおぞら組」と「おおまエスコートクラブ」です。

「あおぞら組」(代表 島康子)は、平成12年2月NHK連続テレビ小説「私の青空」をきっかけに、20代~30代の地元有志が集まり結成されました。

主な活動としては、

  • 大間に来るフェリー客に向けての「旗ふりウェルカム活動」
  • アテネオリンピックで有名な「マグロ一筋」Tシャツ増殖計画
  • こいのぼりを凌駕する「ニッポン列島マグのぼ(まぐろのぼり)化計画」
  • 「オーマの休日」企画等々。 大間町からインターネットでの情報発信をしており「一流の田舎」を目指しています。

「おおまエスコートクラブ」は、若いお母さんの生活改善グループ「大間風(やませ)」(代表 蛯子良子)が、大間町に来る観光客の方々に、どうしたら楽しく大間を体験してもらえるのか、という強い意欲で大間町の観光案内をしています。

内容は、

  • 本州最北端大間崎でのウェルカム活動
  • 大間漁師とのふれあい、語らい
    大間漁業共同組合長による、一本釣りマグロ漁の説明
  • 地元物産の紹介

等々です。都会では、なかなか会えない地元漁師さんとのふれあいに感激する観光客も多々います。

今後の課題と展望

「大間まぐろ」「一本釣りまぐろ漁師」と大間町には、マグロとそれを釣る漁師がブランドとして存在しています。

しかし、津軽海峡に面した場所には、ウニ・アワビ・ブリ・ヒラメ・昆布をはじめとする海草類等、良質な海産物が獲れます。PR・販路の拡大で第二のまぐろとなれるか、です。

また、平成16年に青森県優秀賞を受賞した「大間牛」、明治38年アメリカから導入したバーモントゴールドコイン種のホクホクおいしい「オコッペいもっこ」、奥戸地区のお母さん方に伝承されてきた、金太郎飴のように美しい「ベコもち」等、大間町には全国に誇れる産物がたくさんあります。

しかし、量産ができないことと、後継者不足が悩みでもあります。

逆にいえば、希少価格とブランドとしての付加価値をつけることで、高品質な物産の提供ということになれば、というのが今後のキーポイントです。 

なかなか大変なことですが、本州最北端の、いわば他の土地よりも物流の面でも不利な部分を逆手にとって、町の発展につながればと思っています。

「大間(オーマ)は、1日にしてならず」