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石川県川北町/キラリとかがやく“ふるさと川北”を目指して~充実した少子化対策への取り組み~

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年9月15日更新
石川県川北町 児童の診察風景の写真

石川県川北町

2653号(2008年9月15日)
総務課長 前 哲雄


はじめに

川北町は加賀平野のほぼ中央部に位置し、霊峰白山を源とする手取川の右岸に沿って拓かれた、面積14.76平方km、人口約6,100人の町です。手取川のもたらす豊富な水と肥沃な土壌により、県内有数の穀倉地帯として発展してきましたが、近年は松下電器産業㈱(現:東芝松下ディスプレイテクノロジー㈱)石川工場をはじめ企業誘致により、農・工・商のバランスのとれた町づくりを進めています。

川北町の特徴は、手厚い福祉施策にあります。後述する少子化に係る各種施策の他、人間ドック・脳ドック・PET検診に対する9割の助成制度、在宅介護者に対する福祉手当の支給、高齢者に対するインフルエンザ予防接種の無料化など、一人ひとりにあったきめ細かい福祉サービスの充実を図っています。また、保育料や上下水道料など公共料金の低廉化にも力を入れております。そして、それらの施策の充実が呼び水となり、町の人口は、飛躍的な増加傾向にあります。

霊峰白山と手取川
霊峰白山と手取川

毎年、8月の第1土曜日に開催され、今年、23回目を数えた「川北まつり」は、今では北陸の夏の風物詩として定着しております。夕やみ迫る頃、会場の手取川簡易グラウンドには約2,000人を超える住民の「送り火」が照らし出され、メインの高さ45mの「大かがり火」に火が点火されると、天をも焦がさんばかりに赤々と燃え上がり、それとともに打ち鳴らされる町内17地区の「虫送り太鼓」の華麗なる競演でまつりは最高潮を迎えます。もう一つの目玉は北陸最大級の大花火大会。2尺玉や超ウルトラスターマインなど1万8千発の花火が打ち上げられ、30万人の観客を魅了しています。

川北まつりの「大かがり火」
川北まつりの「大かがり火」

また、大人ひとり200円で入浴できる「ふれあい健康センター」は、1日平均1,000人以上が訪れ、県内でも有名な温泉施設です。

特産品としては、1789年から漉かれている「加賀雁皮紙」や、豊かな大地に育まれた「いちじく」、「地ビール」、「かきもち」などがあり、とても好評です。

そして、常陸の剣豪塚原卜伝と槍で仕合をして勝ったと伝えられている戦国時代の剣聖「草深甚四郎」を生んだ剣豪の里としても知られています。

少子化への取り組み

社会環境の変化や晩婚化などで全国的に少子化が進む中、当町においても、児童・生徒数の減少が見られました。このような情況の中、当町では、他市町村に先がけて、子育て環境の整備と負担の軽減を柱とする少子化対策に取り組みました。

乳幼児・児童・生徒医療給与金

子どもの医療費にかかる負担の軽減を図るため、平成9年4月から、自己負担分を町が全額助成する「医療給与金制度」を創設しました。創設当初の対象は就学前までの子どもでしたが、平成11年4月からは小学校卒業時まで、平成12年4月から中学校卒業時までに対象範囲を拡大しました。

出産育児一時金

出産に対する負担の軽減を図るために平成12年4月より支給しています。支給額は、社会保険加入者が、第2子10万円、第3子20万円、第4子以降が30万円(社会保険庁からの支給を除く)で、国民健康保険加入者は、第1子35万円、第2子45万円、第3子55万円、第4子以降65万円となっています。

不妊症治療費給与金

さらに、平成12年4月より、全国で初めてとなる不妊症治療費に係る助成制度を創設しました。不妊治療は医療保険が適用されないケースが多く、費用も高額のため、治療を途中で断念する夫婦も少なくありませんでした。 この制度では、第一子が生まれるまでの間の不妊症治療費が助成対象で、助成額は年間治療費100万円を限度として、その7割となっています。この制度により子宝を授かった夫婦もあり、創設当初は全国各地からの問い合わせが数多く寄せられました。

チャイルドシート購入助成
チャイルドシート購入を助成

チャイルドシート購入助成金

平成12年4月のチャイルドシート使用の義務化に伴い、チャイルドシートの購入に対する助成制度を導入しました。助成額は就学前乳幼児1人に対し、1台で上限が2万円となっています。

人口の増加と施設の整備

さらに、若者の定住化と人口増加、地域の活性化対策として、平成10年3月に「サンハイム川北」、平成13年3月に「サンハイム橘」、平成17年3月に「サンハイム中島」の3つの町営住宅、合せて120戸を建設しました。また、民間による新興住宅地の造成も進み、町の人口は飛躍的に増加しました。

これにより、既存の施設では、乳幼児、児童の受け入れが困難になったため、新たな施設の整備を進めました。平成14年2月に川北保育所・児童館、平成17年1月に川北小学校増築、平成18年2月に橘保育所増築、平成19年1月に中島保育所がそれぞれ建設されました。

町営住宅「サンハイム中島」の写真
町営住宅「サンハイム中島」

子育て支援の充実

施設整備に伴い、子育て支援に対する様々な施策の充実が図られました。平成14年4月から、新しくなった保育所で、乳児保育(0歳児保育)及び一時保育が始まりました。同時に川北町児童館では、小学校1年生から3年生を対象に放課後児童クラブ(学童保育)がスタートし、共働き夫婦を支援する体制が充実しました。乳児保育と一時保育は、保育所の整備により、全保育所で実施されるようになり、放課後児童クラブは、年々加入者が増加し、1箇所では対応しきれない状況となったため、今年度、新たに西部地区児童館を建設しています。

また、川北保育所にある子育て支援センターでの子育て相談、子育てサークル、乳幼児健診、これから子どもが生まれる方を対象とした母親教室や両親学級、子育て教室などを実施すると共に、機会の拡大や内容の充実を図っています。

保育料の軽減化

当町の保育料は、保護者の所得に関係なく、月額保育料が0歳児20,000円、1・2歳児が16,000円、3歳児以上が14,000円と他市町村と比べて低く設定しています。さらに平成19年4月から、第3子以降の保育料を無料とし、育児費用の軽減化に努めています。

少子化対策推進の財政的な裏付け

中島保育所
中島保育所

前述のような少子化対策の継続的な推進には、多額の経費が必要となります。当町は、農業が中心の純農村地帯で、財政基盤も脆弱でした。

しかし昭和58年以降、それまでの農業中心の施策から、町の将来の為、方針を転換しました。昭和59年10月に松下電器産業㈱石川工場(現:東芝松下ディスプレイテクノロジー㈱)を誘致したのを皮切りに、数多くの企業誘致が実現しました。さらに大型ショッピングセンターも誘致し、昭和58年当時、町内の企業は54社でしたが現在は161社の企業があり、農業の町から農・工・商のバランスのとれた町へと大きく変貌しました。そして、これらの企業からの税収により、町の財政力も飛躍的に向上しました。

町税の決算額は昭和58年度の約2億7,900万円から平成19年度には約14億6,900万円と約5.3倍となり、財政力指数も昭和58年度の0.298から平成19年度には、0.647と大幅に上昇しました。そして、この財政力が大胆な少子化対策の各種事業を実現できる要因となっております。

少子化対策の効果

これら少子化対策の各種施策などが大きな呼び水となり、人口はもとより、子どもの数が飛躍的に増加しました。人口増加の直接的な理由は、町営住宅の建設や民間による新興住宅地の開発ですが、町外からの転入者に理由を尋ねると「子育てや福祉が充実しているから」という理由が一番多く聞かれます。

出生率は、平成19年10月現在で1.93と県内一で、各種少子化施策により、子どもを産み、育てる環境が整備されたことが大きな要因に挙げられると考えられます。

人口の推移については、国勢調査による統計では、昭和55年の町制施行時は4,256人だった人口は、平成7年は4,514人、平成12年は4,912人、平成17年は5,677人となり、平成12年から17年の人口増加率は15.3Rで、全国でも9番目となっています。

そして、最新の平成20年8月1日現在の人口は6,103人となり、平成17年国勢調査以降も人口が増え続けています。

また、平成19年10月1日現在の年齢別推計人口では、年少人口割合(0~14)が20.0%と石川県全体の14.0%を大きく上回って県内一であり、10年前の平成9年(10.7%)に比べても、県内で唯一増加しています。

そして、保育所児童数や小学校児童数も年々増加しており、それに伴う、施設の整備が進められ、町内では子どもたちの歓声が溢れ、活気に満ちています。

終わりに

子どもたちの歓声が溢れる保育所活動
子どもたちの歓声が溢れる保育所活動

当町は、明治40年8月に中島村、草深村、砂川村の3村が合併し、川北村が誕生し、昭和55年に町制を施行しております。その間の昭和の大合併や、今回の平成の大合併においても、単独町政を貫き、現在では、少子化対策や福祉施策では他の市町村が羨むほどの充実が図られています。

人口減少社会、自治体間競争の激化、地方分権の進展、財政運営のひっ迫など、各地方公共団体が抱える課題に対応し、将来にわたり、持続可能な「まちづくり」を進めるためには、さらに財政基盤を強化し、「川北町に生まれて良かった、住んで良かった」と住民が思えるような各種施策を継続的に実施すると共に、町民の行政に対するニーズの的確な把握が大切です。そして、他市町村にはない「オンリーワン」なまちづくりを進める必要があると考えています。

平成18年3月に策定した川北町新基本構想では、まちづくりのテーマを「小さいからこそキラリと輝く“ふるさと川北”」と定めました。そして、このテーマの実現に向かって鋭意努力していきたいと考えています。