2642号(2008年6月9日)
村長 久野 時男
飛島村は、愛知県の西南部に位置し、三方を伊勢湾、日光川、筏川に囲まれたデルタ地帯で、村の東部で名古屋市に隣接しています。約310年前の元禄6年に大宝新田が開拓されて以降、伊勢湾を埋め立て、新田開発を繰り返して築き上げられてきました。昭和46年(1971)には名古屋港の一部である西部臨海工業地帯が編入され、現在の面積は約22.5平方km、人口は約4,500人の小さな村です。
村の産業として、北部の農村地帯は水稲・麦・露地野菜・温室野菜等の栽培が盛んで、南部の臨海工業地帯は、倉庫、木材、鉄鋼関連などの事業所が立地しており、国際貿易港である名古屋港を支える物流の重要な地域となっています。昔ながらの農業を中心とした田園風景と、名古屋港の中心となる広大なコンテナ埠頭を持つ港湾機能が共存している村です。
このような状況の中、急速に進行している少子高齢化社会に対する福祉、子育て、教育支援の充実をめざした行政運営を心がけ、これまで先進的な諸施策を行ってきました。
村民の心と体の健康づくりを推進するために、平成5年から取り組んでいる「日本一の健康長寿村づくり」の核として、平成8年に保健センター・温水プール・図書館・児童館からなる複合施設「すこやかセンター」を開館し、村の主要な事業の1つとして、各種事業を展開しています。
名古屋港の中心となるコンテナ埠頭
村民に対する生涯教育事業の一環として、平成3年度から国際的な視野を持った人材育成を目的に、中学2年生全員を対象とした海外派遣事業を行っています。これは、異文化交流体験を通して子供たちの視を広げるとともに、ホームステイ等の交流研修を活用し、実践的なコミュニケーション能力を培うことを目標とし、毎年アメリカ西海岸へ1週間程度派遣しています(全額村負担)。
この海外派遣事業をさらに実り多いものにするために、平成14年度から小学校へALT(外国人英語指導助手)を派遣し、英語や外国の文化に慣れ親しませるための英語活動を始めました。また、子供たちの学力向上の支援策として、平成13年度から村独自で非常勤講師を採用し、TT(ティーム・ティーチング)や少人数指導を通して、個に応じたきめ細やかな指導の充実を図っています。
これらの実績を基にして、平成17年度に小学校「英語科」の新設を中心とする教育特区申請が認定され、平成18年度から特区を取り入れた小中一貫教育を始めました。小学校の英語授業については、今回の学習指導要領の改訂で全国展開されることになりますが、村ではそれに先駆けて取り組みを始めたことになります。
全国的に少子高齢化が進む中、本村においても出生数の減少や若者の村外転出が目立つようになりました。児童生徒数も減少傾向にあり、小学校212名、中学校116名(平成20年4月現在)の各学年ほとんどが1学級の小規模校となっています。
健康づくりの核となる「すこやかセンター」
一方、「平成の大合併」の流れの中、平成15年に町村合併について村民対象のアンケートを行ったところ、合併反対が74%と高く、「小さくてもキラリと光るむらづくり」を目標に掲げ、村民総意のもとに自立した行政をめざすこととなりました。
このような状況の中、小・中学校を運営していくために、以下のような課題が明らかになりました。
アメリカ合衆国オビスタ市との草の根交流
これらの課題を解決するために、小中一貫教育を導入するとともに、小中一貫校の建設に向けて、「小中一貫教育及び教育特区研究会」や「小中一貫校建設委員会」等を立ち上げ、村民代表や学校の関係者と議論を重ねるとともに、村教育委員会と小・中学校の教職員による合同の研究組織をもとに、一貫教育の研究を推進しています。
本村の小中一貫教育の目標は「児童生徒の知(知識)・徳(道徳)・体(健康)の健全育成と全体的な学力向上を図るための教育環境づくり」です。具体的には「小・中学校の教員が一体となり、小・中学校の9年間を一貫した教育理念に基づいて指導を進め、子供たちの個性、能力をさらに伸ばす」「小・中学生が同一校舎で、防犯対策等の整った安心で安全な環境のもと、きめ細やかな充実した教育ができるような環境整備を進める」「飛島村の活性化を図るとともに、本村出身であることを誇りとし、社会の発展に貢献できる若者を育てる」ことが重要だと考えています。
本村の小中一貫教育の目標は「児童生徒の知(知識)・徳(道徳)・体(健康)の健全育成と全体的な学力向上を図るための教育環境づくり」です。具体的には「小・中学校の教員が一体となり、小・中学校の9年間を一貫した教育理念に基づいて指導を進め、子供たちの個性、能力をさらに伸ばす」「小・中学生が同一校舎で、防犯対策等の整った安心で安全な環境のもと、きめ細やかな充実した教育ができるような環境整備を進める」「飛島村の活性化を図るとともに、本村出身であることを誇りとし、社会の発展に貢献できる若者を育てる」ことが重要だと考えています。
小・中学校9年間を見通した系統的・計画的な教育活動を展開するため、「発達段階を考慮した指導」「基礎学力の充実・発展」「英語教育の充実」の3つを柱とし、創意工夫による特色のある教育課程を編成し実施しています。
小中学生の合同合唱会
児童生徒の神的・身体的な発達段階の特性を考慮して、小・中学校の9年間を、初等部4年(小1~小4)・中等部3年(小5~中1)・高等部2年(中2~中3)の3段階に区分し、9年間を通した系統的・計画的な教育活動を展開する。特に中等部では、小・中学校間の指導体制の違いによる子供たちの戸惑いを軽減するために、小学校と中学校の円滑な接続を図る工夫をする。主な実践内容は以下の通り(詳細は飛島小・中学校及び飛島村役場の各HP参照)。
基礎学力の充実・発展を図るために、国語、算数・数学といった教科を重点的に指導する。また、村費により非常勤講師を採用し、TTや少人数指導による効果的な指導方法を検討・実施していく。
中3・小1の交流活動(白玉パーティ)
小学校1年生から「英語科」を新設し、英語教育の早期導入を図る。また、中学校では英語の授業時数を増やし、国際人としての資質を高めることを視野に入れた英語教育を行う。小・中学校ともにALTを1人ずつ配当し、TTの形で授業を行う。
リオビスタの中学生に英語でインタビュー
小・中学校の交流や中学校体験入学等の実践を通して、新中1生徒は中学校生活へスムーズに適応することができおり、不登校の生徒はいません。また、小・中学校教員の連携も強まり、1~9年生を皆で育てる意識に変わりつつあります。平成22年4月に開校予定の小中一貫教育校「飛島学園」における学園経営をどのようなものにしていくのかが今後の検討課題です。
新校舎の建築については、平成22年開校をめざして、校舎の設計と造成工事を進めています。これまで「地区懇談会」「村づくりサロン」「学校での保護者説明会」「公開ワークショップ」などの機会をとらえて事業内容を説明するとともに、「小中一貫教育だより」を村広報紙とともに配布し、村民への周知を図ってきました。村民の更なる理解と協力を得るために、今後も細かい点まで検討しながら小中一貫教育を推進していきたいと考えています。
飛島村の将来を担う子供たちが、夢をもって安心して生活できるよう、村を挙げて支援し、これまで以上に「飛島村に住んでよかった」と言ってもらえるような「安全・安心・安定」のむらづくりを進めていきたいと思っています。