2637号(2008年4月21日)
まちづくり政策課長 小金谷 敦
和気町は岡山県の東南部に位置し、 人口16,193人、高齢化率30.6%、世帯数6,187戸、面積144.23平方km(平成20年4月1日現在)岡山市中心部へは、JR山陽本線和気駅から30分、山陽自動車道和気インターから約20分、交通アクセスは充実しており、県東備地域の交通の要衝として栄えた中山間の町です。
日本一の「藤公園」
和気町は、52の行政区、9小学校区等を単位として町を構成し、限界集落は1集落。高齢化率40%を超える集落は、12集落、全体の23%を占めています。
歴史を振り返ると平安遷都、京の都づくりに尽力した和気清麻呂の生誕の地です。また、日本一の「藤公園」を有し、5月には全国各地から多くの来園者に優雅な藤の花を満喫していただいています。さらに、国の天然記念物、タンチョウの飼育も行われ訪れる人々に美しい姿を堪能していただいています。
現代社会は、便利で物の豊富な社会ではありますが、便利な反面人と人との繋がりは希薄になっているように思えてなりません。今日では、残念なことに教育現場においても給食費が未納になる、親子で殺人事件が起こる、高齢者を対象とする詐欺事件や孤独死など社会はすざんでおり、このような社会現象は、早期に改善しなければなりません。
このような中、和気町は、平成18年3月1日、旧和気郡佐伯町と和気町が合併し、新和気町を発足させ、助け合いのまちづくりを推進し「元気・やる気・日本一のまちづくり」を進めています。和気町では、「私たちの町の豊かな自然や歴史を伝えてゆきたい。」 「安全で住みやすい地域にしたい。」「町民が主体となって助け合うまちづくりの仕組みをつくりたい。」との願いから、平成18年8月、全22条の項目を明記した「助け合いのまちづくり条例」を定めました。
条例には、助け合いのまちづくりを進めるにあたり、町民の役割、ボラン ティア団体の役割、事業者の役割、町の役割、町職員の役割、そして、助け合いのまちづくり条例の推進機関として町内小学校区等を単位とした助け合いのまちづくり協議会を設けて進めることとしています。
和気町助け合いのまちづくり協議会の目的は、「みんなで創ろう協働社会の構築」 人と人との繋がりが薄れる中、ますます高齢化が進みこれまでの諸行事が区内だけでは出来なくなる。ますます進み行く限界集落などの対策に向けて、小学校区等へエリアを拡大し助け合う地域社会を創ること。 「みんなで考えよう地域社会の創造」 地域のみんなでできることはないかみんなで考え、地域が元気になるために何があったらいいのか考えること。 「みんなで見直そう官民の役割分担」地区の人々が望むことを行政がした方が良いのか地区でした方が良いのか考えること。
計画書づくりのためのサポート事業
以上3つの目的をもって地区住民の意識調査の実施並びに調査内容に基づく地区の課題の洗い出し、そして、課題解決のための地区協働事業の計画書づくりと協働事業の推進を担うこととしています。計画年度は、平成20年度から平成24年度の5ヵ年間とし、地区内の協働事業を展開するものです。
各地区助け合いのまちづくり協議会は、人口世帯規模31人・19戸から857人・336戸による行政区を3区から13区の集合体による小学校区等を単位とする9地区の協議会を組織しています。協議会の委員は、行政区長を始め各区から推薦された青壮年層、女性層を含め各地区15人から30人の委員により構成され総勢165人です。また、協議会には、産業建設推進班・福祉推進班・教育文化推進班の3つの班を設けて課題の整理や課題解決のための活動推進を担います。さらに、各協議会には、定数16人の議会議員にそれぞれの選出地区へ顧問として助言を受けることとしています。
各協議会への職員の役割として、担当課まちづくり政策課職員7名に加えて、部・課長級、課長補佐・係長級、主事級の3階層に分けてそれぞれ1名ずつ計3名の職員をまちづくり政策課職員として兼務辞令を発令し、協議会の協議並びに計画書づくりの事務サポートにあたっています。また、約200名の全職員をそれぞれ住居地など職員の希望制により9地区へ配置しています。 これまでの協議には、職員の専門性をフルに発揮し職員間の連携を取るなどして協議会の全体会議並びに各推進班の協議に参画し計画書づくりを進めてきました。そして、平成20年度から地域に出向き地区住民と共に、協働事業の実施を行っています。
助け合いのまちづくり協働事業アドバイザー会議
助け合いのまちづくり推進事業費 は、単年度町民税約15億円の1%相当額、1,500万円を基礎額として位置付け、ふるさとづくり基金を活動費の原資として運用することとしています。初年度は、1地区あたり、150万円を目処に協働事業を計画しました。平成20年度の計画事業費は、協議会事務経費を含め、総額14,890千円を予算措置しました。
旧和気郡佐伯町と和気町との合併協議の際、各地区単位における行政連絡組織の充実強化を図り、地域のコミュ二ティの醸成と地域再生を図ることとしました。合併協議会の協議において条例案並びに協議会設置の案を作成しました。
助け合いのまちづくりシンポジウム2007
助け合いのまちづくり条例(案)並びに協議会設置(案)の説明会(平成18年5月)
地域に精通した行政区長を対象に13回開催しました。
和気町議会定例会において和気町助け合いのまちづくり条例を上程し平成18年8月条例を制定しました。
条例の主旨並びに協議会の設置について説明周知し、さらにまちづくり研修会を通して職員 の互選により地区事務局担当者の選考を行いました。
町内53会場で開催しました。
町内15歳以上全員14,807人を大正に地区の課題などを調査、10,465人、回収率70.7%
各地区協議会15名から30名の委員を選出しました。
7歳から80歳までの劇団員が支える「和気・清麻呂座」
各地区協議会1、2回、延べ15回程度開催、さらに随時推進判別会議を開催し、ワークショップにより地区の課題を話し合いました。
有識者からアドバイスを受け、地区の課題をまとめ、課題解決のための協働事業計画を進めました。
助け合いのまちづくり協議会の協議経過を地区協議会だよりにまとめて発刊し住民周知を図りました。
各協議会の会長相互の連携を図りました。
3つの推進班長・副班長の相互連携を図りました。
各地区の課題解決のための協働事業(案)を作成しました。
各地区の協働事業計画(案)の内容を地区住民に説明しました。説明方法は、地区内全体説明や地区内行政区を単位とした説明会さらには、チラシ等での周知など地区様々な方法で実施しました。
各地区協議会協働事業5カ年計画書が町に提出されました。
大学教授等5名のアドバイザーにより事業提案のプレゼンテーションを実施し、平成20年度事業の審査を行いました。
平成20年3月議会定例会に関係予算を上程し、予算議決を得ました。
地区協議会ごとに平成20年度の協働事業内容を行事別にまとめ地区民の協力希望を募り、一人一役運動を実施しました。
平成20年4月から、地区協議会計画の協働事業を町民と行政と力を合わせて実施しています。
助け合いのまちづくりを進めるため、和気町では、平成19年5月、町内全域にまちづくり劇団員を募集しました。7歳から80歳までの33名の応募を受け「和気・清麻呂座」を旗揚げしました。言葉で伝えるより、劇を通して人々に助け合うまちづくりを表現するもので、台本・演出・音響・照明・裏方も自らの手で、町からの補助金は、大道具の経費に10万円のみ、当劇団を陰ながら支える支援者を集い運営を維持して来ました。5月の旗揚げから3ヵ月後の8月、助け合いのまちづくりシンポジウムで「忠恕の心」まごころと思いやりを上演、会場満席800人の人々に涙と感動を与えました。
この劇団は、助け合いのまちづくりを推進するため、各地区助け合いのまちづくり協議会の活動を支え、また、多くの町民理解者により、この劇団は支えられています。まさに、助け合いのネットワークが形成されたものです。
助け合うまちづくりを進めるにあたり、行政や他人から指示されて重たい荷物を運ぶより、自ら必要を感じて進んで運ぶ荷物は、たとえ重くても軽く感じます。また、特定の人に重荷を掛けることなく、より多くの人々に役割を分担し、負担軽減を図ることは、引いては、活動を持続させ、さらに、次代を担うリーダーを養成することに繋がるのではないでしょうか。
振り返ると助け合いのまちづくり協議会の委員は、これまで協議を進めるに当たり、目の色を変えて地区の課題を語りあってまいりました。そこには、ひたすら地域を愛し、ふるさとを尊ぶ情熱の現われでもあると感じました。地域には、素晴らしい資源と、優れた人材が豊富に存在することを実感し勇気づけられたものでもありました。まちづくりは人づくり。まちづくりを進めるための今後の課題は、あらゆる仕掛けづくりが必要不可欠です。
ますます進み行く少子高齢化社会に対応し、地域に特色と魅力を持たせた地域再生のためのまちづくりは20年・30年いや、50年先を見据え、お互い助け合い力を付けた地域社会、時代に打ち勝つ地域再生に取り組むことが今日強く求められていると考えています。