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群馬県大泉町/秩序ある多文化共生のまちづくりを目指して~外国人集住率が16%を超えた町~

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年11月5日更新
群馬県大泉町の写真

群馬県大泉町

2620号(2007年11月5日)
広報国際課
加藤 博恵


大泉町の概要

外国人集住率16%の町

群馬県内の子どもたちに親しまれている郷土カルタ「上毛カルタ」の中で、「鶴舞う形の群馬県」と読まれている群馬県。その舞う鶴の細い首部分に位置しているのが大泉町です。町内には日本を代表する数々の企業が進出しており、北関東でも屈指の「工業の町」として発展してきたところです。

ポルトガル語資料
町作成のポルトガル語資料

総面積17.93平方kmという、県内で最も小さな本町には、総人口42,179人のうち約16%に当たる6,769人の外国人が登録しており(平成19年8月19日現在)、その割合は日本で最も高いといわれています。国籍別では第1位がブラジル、第2位がペルーで、その他アルゼンチンやチリなどを含めると、外国人登録者の約8割以上を南米の国が占めていることになります。

出稼ぎから「定住」へ

本町のみならず製造業を中心とした全国各地に日系ブラジル人が増加し始めた背景には、1990年6月の「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の改正があります。この入管法の大きな改正点は、日系二世・三世及びその家族に対し、就労活動の制限がない在留資格である「日本人の配偶者等」「定住者」査証の発給を認めるというものでした。

「デカセギ」というブラジル国内でも定着した名称のとおり、当初は2~3年の短期就労を目的として来日し、数年で帰国するとされていた日系人たち。しかし、母国から家族を呼び寄せたり、日本で新たな家庭を築く人たちも増え、年々その滞在期間は伸びています。また、帰国後の就職難などの理由により、再来日するケースも少なくありません。

近年では、永住権取得希望者や一戸建てを求める外国人も増えてきました。ブラジル人経営者によるレストランや食料品店、スーパーマーケット、中古車屋、美容院、外国人学校、人材派遣業、教会など、数々の店舗・事業所も町内外に開店開所している状況からも、定住化傾向は今後も高まり続けていくと考えられます。

秩序ある共生を目指した取り組み

日本語がわからない人たちのために

大泉町では、言葉や習慣が異なる国の人たちと、秩序を持って共生するために、全国に先駆けてさまざまな事業を展開してきました。その一つが公立小中学校への「日本語学級」設置です。

日本語学級での授業風景
日本語学級での授業風景

本町には、小学校4校と中学校3校の計7校の公立小中学校がありますが、入管法改正の平成2年、小中学校に外国籍の児童が増加してきたことから、その年の10月、小学校2校に「日本語学級」を設置しました。日本語学級は、担当教員とポルトガル語などで指導する日本語指導助手が、日本語に不慣れな子どもたちに日本語や生活習慣の指導、授業の補修をするというもので、現在すべての小中学校に開設しています。

また、外国人に対し正しい情報を 伝えるために、役場窓口に通訳を配置するとともに、ポルトガル語版の広報紙「ガラッパ」を毎月発行しています。紙面には保健センターでの予防接種や健診事業、休日の当番医など、町の広報紙『広報おおいずみ』の記事から抜粋したものや、特に外国人に知らせたい内容を掲載。毎月約3,500部を作成し、公共機関の窓口、企業やブラジル関係の商店、小中学校の外国籍児童生徒に配布しています。さらに、年に数回、「ガラッパ特集号」で日本の文化や習慣、各種制度、交通ルールや防災などをできるだけわかりやすく紹介しています。

防災訓練を受けるブラジル人学校の生徒達
防災訓練を受けるブラジル人学校の生徒達

そのほか、ごみの分別方法や出し方等をイラストで紹介した「ごみカレンダー」や「大泉町に住むために知っておくこと」「防災マップ」をはじめ、行政からのさまざまなお知らせを日本語とポルトガル語の二か国語で作成しているところです。

地域コミュニティの一員として

防災訓練

町内には地域コミュニティの柱となる31の行政区(町内会)があり、ごみステーションの管理や環境の整備、地域公民館活動や子どもの健全育成活動などを行っています。

町ではそれぞれの地域の活動やルールを居住外国人に知らせ、仲良く生活してもらうことを目的に、地域の役員、居住外国人、行政担当者による「多文化共生地区別懇談会」を実施してきました。正しいごみの出し方や、地域で開催される行事を紹介するほか、外国人からの生活する上での疑問や要望などの声も聞き、意見を交換しています。

しかし、残念ながら外国人居住者の参加は進まず、地域コミュニティの一員としてどのように意識を高めてもらうか、また彼らの目をいかに地域や行政に向けるかが大きな課題となっています。

情報発信の拠点「多文化共生コミュニティセンター」

今年4月、秩序ある多文化共生のために必要な情報を発信する町の新たな拠点として、西小泉駅前通りに「大泉町多文化共生コミュニティセンター」をオープンさせました。

多文化コミュニティセンター
多文化コミュニティセンター

センターにはポルトガル語と日本語の話せる臨時職員を配置し、月曜日から金曜日までの午前8時30分から午後5時30分まで、各種生活情報の提供や相談、日本語学習講座の紹介などを行っています。特に、転入者に対しては、群馬県と共同で作成したDVD「ニッポンでの暮らし方」を観てもらい、地域で暮らすための基本的なルールや心がまえなどを紹介しているところです。

生活相談の様子
コミュニティセンターでの生活相談

日本に長く住んでいても、日本語や日本の習慣が理解できない人たちはたくさんいます。そこで、新たな試みとして「文化の通訳」登録制度を始めました。これは、日本の文化や習慣などを、職場や知人に"母国語で伝えてもらおう"という事業で現在、外国人学校の従事者や店舗経営者など、約20人の外国人が「文化の通訳」として登録しています。今後は、より多くの人たちに呼びかけ、協働のまちづくりの一員として活躍してほしいと考えています。

自治体としての限界

外国人集住都市会議

全国に先駆けて、多文化共生のための事業を展開してきた本町ですが、外国人住民に係わる諸課題は広範かつ多岐にわたるとともに、就労、教育、医療、社会保障など、どんなに努力しても一自治体では超えられない「法律」や「制度」といった壁があります。

外国人に関する施策や活動状況に関する情報交換を行うとともに、共通の課題について研究し、国や関係機関に提言や連携した取り組みを検討していこうと、平成13年(2001年)に静岡県浜松市の呼び掛けにより「外国人集住都市会議」が設立されました。当初は本町のほか、浜松市、豊田市、四日市市、美濃加茂市、太田市など13都市が加盟していたこの組織も、現在では23都市に増え、規制改革要望や提言につなげるための活発な研究、議論を重ねています。なお、本年11月28日には、岐阜県美濃加茂市において関係省庁と会員都市首長の意見交換の場となる「外国人集住都市会議みのかも2007」開催を予定しています。

参考:外国人集住都市会議会員都市データ(全体)(PDFファイル/56KB)

秩序ある多文化共生社会を目指して

母国での暮らしよりも日本での滞在期間のほうが長くなっている外国人や、外国籍であっても日本の生活しか知らない子どもたち…。その数は、今後ますます増え続けるでしょう。

日本の将来、子どもたちの将来を考えたとき、彼らを一時的な滞在者や単なる労働者としてではなく、「地域住民」あるいは「生活者」として捉え、それぞれの能力をまちづくりに生かして頂くにはどうしたら良いか、だれもが安心して暮らせる「秩序ある多文化共生社会」を築くためには何が必要かを、すべての自治体が真剣に考える時期に来ているのではないでしょうか。

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