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滋賀県西浅井町/地域素材を活かした元気なまちづくり~自然・歴史・文化は、まちが誇る宝

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年10月7日
滋賀県西浅井町の写真

滋賀県西浅井町

2617号(2007年10月7日)
町長 熊谷 定義


1.まちの概要

西浅井町は、昭和30年に旧永原村と旧塩津村とが合併して誕生し、昭和46年に町制施行、その後、平成での合併を模索しながら現在に至っています。

①地勢

町は滋賀県の北部、琵琶湖の最北端に位置し、東西約9㎞、南北約18㎞で、総面積は67.05平方kmを有し、そのうち約82%を山林が占めています。北は三国岳を擁し、東西に走る野坂山系の分水嶺をもって福井県と境し、東は行市山(660m)から南の賤ヶ岳(423m)に至る山地を隔てて余呉町及び木之本町に接し、西は福井県境山地から海津大崎に至る地塁山地を越えて高島市マキノ町に連なり、南は琵琶湖に面しています。

町のほぼ中央には日計山系が縦走し、大きく二谷状に区分され、塩津学区と永原学区を形成しています。東部を流れて塩津港に注ぐ大川、西部を流れて大浦港に注ぐ大浦川は、いずれも琵琶湖の水源となっています。

②気候

町北部の野坂山系を挟んで若狭湾があるため、気象は日本海型に近く、10月以降は曇天、時雨が多く、日照時間が少ないのが特徴です。冬期は日本海から吹き込む季節風の影響によって積雪が多く、1mを超えることもあり、滋賀県下有数の豪雪地帯です。

③交通

当地は歴史も深く、琵琶湖を有する滋賀県から日本海の福井県敦賀に抜ける交通の要衝として、重要な位置を占めていました。

丸子船
丸子船

今も国道8号、303号が町を縦横断。これに平行してJR北陸本線、JR湖西線が走り、それぞれに近江塩津駅、永原駅を有しています。

北陸本線の長浜駅~近江塩津駅間、湖西線の永原駅~近江塩津駅間は、以前、交流電化方式でしたが、平成18年10月21日に直流電化方式への改良工事が完了し、琵琶湖周辺を環状運行する「琵琶湖環状線構想」の第1段階が実現し、利便性が大きく向上しました。今日、より一層のJR運行ダイヤの充実とJR駅施設のバリアフリー化を目指して努力をしています。

④人口及び産業

昭和20年をピークに減少傾向にあった町の人口は、昭和45年を境として増加を続けたものの、再び昭和60年からは減少傾向にあります。

人口4,754人(平成19年7月末日住民基本台帳による)の内、約4人に1人65歳以上の高齢者となっており、今後は高齢者に向けた総合的な施策が急務となっています。町の産業構造は、社会経済構造の変化に伴い大きく変化。昭和30年に71.4%であった第1次産業従事者は、平成17年には5.7%まで減少し、逆に第2次産業及び第3次産業が昭和30年の30.4%、16.2%から平成12年にはそれぞれ17.2%、43.0%に増加しました。中でも、情報・観光といったサービスを主体とする第3次産業従事者が最も多くなっています。

2.まちづくりの施策方針

町の施策の基本である「総合計画」に掲げるテーマ「ほっとするまち西浅井」の実現を図るため、次の3つの柱を基本方針としてまちづくりに取り組んでいます。

①みんなが元気なまちづくり

生活の質的向上や心の豊かさを実感できる社会の実現が求められていることから、生活の基盤となる地域住民の自主的・主体的なコミュニティ活動を支援する制度を実施しています。この活動を通して、住民誰もが社会に参画できる共同参画社会を目指しています。

②定住を促進するまちづくり

町の人口は、ここ20年間一貫して減少傾向にあることから、定住を促進するための諸施策を展開しています。その一環として、質の高い生活環境(道路・上下水道)の整備、魅力ある住宅・宅地(町営住宅・町営分譲宅地)の開発を進めています。また、地域情報化(CATV)の推進及び起業支援により、内発的な産業おこしに取り組んでいます。

さらに、各集落集会所と駅や診療所を1乗車200円で結ぶ公共施設交通ネットワーク事業(おでかけワゴンの運行)の更なる充実を図り、通院・通学・通勤の利便性を高めるなど生活環境の向上を目指しています。

③出会いと交流のまちづくり

当地は、かつて琵琶湖水運の主役丸子船による交流で栄えた歴史があり、人、物、文化の交流点としての役割を果たしていました。今日でも、森と湖に恵まれた自然的条件と近畿圏・北陸圏の結節点であり、また、中部圏に近接する地理的条件を生かした取り組みにより集客を図るとともに、交流の基盤(宿泊施設・交流施設・特産品販売施設)を整えて地域の活性化を進めています。

また、昼間交流人口の拡大を図るため、奥琵琶湖シーカヤック、山門水源の森ハイキング、深坂古道ハイキング、歴史の里菅浦散策など当地独自の体験プランを組み入れた体験型観光を積極的に進めています。

さらに、国際交流支援事業(中高生国際交流補助)の推進やフィンランド共和国トフマヤルビ町との国際交流活動を通して、21世紀に求められる国際感覚豊かな人材を育成しています。

3.まちの見所

町には、自然環境・歴史遺産・生活文化などで、全国に誇れる地域の宝があります。

①山門水源の森(やまかどすいげんのもり)

「日本の重要湿地500」「水源の森100選」町の北部に広葉樹を主体とする面積63.5平方kmの県有林があります。昭和30年代までは薪炭林として村人に利用され、生活と密接に結びついていた里山で、コナラやアカガシの林に炭窯の跡が見られます。

山門水源の森
山門水源の森

寒い所を好むブナが、暖かい所を好むアカガシと一緒に生育するなど、寒冷地と温帯地の植物が混在する不思議な森です。

森には、湿原と四季の森を巡る四季の森コース(全長4.3㎞)とブナやミズナラの森に至るブナの森コース(全長5.0㎞)が整備されています。

森の特徴は、起源が約3万年前にさかのぼる高層湿原を有していることです。ミズゴケなどの湿地植物が厚く堆積し、永い時間をかけて6mを超える泥炭層を形成しています。

この泥炭層には、周囲の山々から流れ落ちた風化花崗岩、九州から飛んできた姶良(あいら)火山灰、アカホヤ火山灰などが含まれています。形成された時期は新生代最後の氷河期に当たり、氷河期の生き残りと考えられるミツガシワの群落をはじめ、多くの寒冷地の植物が、この湿原に生き続けています。

②塩津海道と深坂峠

平安初期の延喜式(えんぎしき)にも「敦賀津より塩津に運ぶ」とあるように、西浅井町は古くから北陸と京都・大阪を結ぶ交通の要衝でした。北国から運ばれる数多くの海産物は、まず敦賀から入って深坂峠を越え、塩津浜に運ばれ、そこからさらに丸子船で大津に荷揚げされて都に送られました。その塩津海道と呼ばれる道筋のなかで、もっとも通行が困難だったのが深坂峠でした。この峠は、平安末期に平清盛が琵琶湖と日本海を結ぶ運河計画を進めて以来、江戸、明治、昭和にも計画されましたが、いずれも実現することなく今日に至っています。

今でも、深坂峠の付近には、問屋跡の大きな石積みと道中の安全を祈願した深坂地蔵尊が残され、往時を偲ぶことができます。

③歴史の里菅浦(すがうら)

菅浦は、琵琶湖に突き出た葛籠尾半島の懐に抱かれた静かな湖畔の集落です。山と湖に囲まれた佇まいは、どこか神秘的な雰囲気が漂っています。住民の祖先は、平安時代以前の天皇に納める食料を調達する「贄人(にえびと)」であり、漁労と水運に従事しながら、平安時代には供御人(くごにん)として自立したと伝えられています。

菅浦・四足門
菅浦・四足門

ここ菅浦は全国に先駆けて、惣(そう)が発達した地域で、鎌倉時代から明治に至るまでの集落の出来事を記録した「菅浦文書」が残されています。この古文書は、わが国の中世における自治組織の歴史文化を解明するうえで重要な史料とされ、国の重要文化財に指定されています。この古文書によると、中世には、惣といわれる自治的村落が形成され、住民自らによる自治が行われたと記されています。集落入口には、惣のなかで重要な役目を果たした「四足門」が今も残されています。

4.指定管理者による公共施設管理

町では、平成18年度から指定管理者制度に基づいて、町内の国民宿舎をはじめとする産業関連の公共施設の管理を一括して有限会社西浅井総合サービスに任せています。

この会社は、平成13年に町が500万円を出資して設立した町出資法人です。

会社の特徴は、登録制日々雇用と年間雇用で労働力を確保していることです。町内に住所を有し、地域に貢献する意欲をもち、現在ゆとりの時間をもって生活されている方を、本人の申し出により人材リストに登録し、必要に応じて本人と雇用契約のうえ、業務に従事していただくものです。

水の駅外観
水の駅外観

契約期間を選べることから、会社に拘束されることなく、余剰時間を活かして働く機会を得ることができます。住民の力を借りて公共施設や公共サービスを維持していくためのシステムとして会社に取り入れたもので、現在140人が登録し、関わっています。

ねらい

指定管理者に施設を任せた一つ目のねらいは、従来行政が迅速、柔軟に対応することが困難であった領域においても積極的に取り組み、本町ならではの新しい住民サービスを提供することです。

二つ目のねらいは、町が行財政改革を進める中で、人件費を抑えるために、職員を減らして小さな役場を目指す必要があり、これまでの行政サービスを低下させずに改革を進める工夫として、アウトソーシングで住民の力を借りることです。

指定管理施設

  1. 国民宿舎つづらお荘
  2. 体験宿泊施設レントラ
  3. 体験交流施設ランタの館
  4. レストランつづら尾崎
  5. つづら尾崎売店
  6. 永原駅コティ(駅舎)
  7. 近江塩津駅あぢかまの宿(駅舎)
  8. 農産物加工販売施設
  9. 北淡海・丸子船の館(資料館)
  10. 奥びわ湖水の駅(特産品販売所)

効果

町内の公共施設は、この会社を介して住民の手によって健全に運営されています。

指定管理者が一括して施設管理を行うことによって、それぞれの施設に繋がりができ、PRを一緒にすることや、従業員を適材適所に配置することが効率よくできるようになりました。

施設・設備は、年々充実しており、サービスも良いと評価されています。また、住民にとっても現金収入の機会が増えて喜ばれています。

特に大きな効果は、身近となった公共施設を大切に活用したいという思いが住民の中に広がっていることです。

5.まちの特産品販売システムの構築

町では、平成17年10月に特産品販売所・お食事処「奥びわ湖水の駅」を山村振興法に基づく国庫補助を受けて開設し、有限会社西浅井総合サービスの施設管理で運営を続けています。平成18年度の実績では、販売額が1億8,600万円を超えて、計画額を上回ったことから、240人を超える町内農家の登録出荷者・出店者は活気に溢れています。

水の駅店内
水の駅店内

特産品は、野菜、果物、米、漬物、和菓子、鴨肉、ふな寿司、手作り米パンなど数多く、土曜日や日曜日には、1日千人近い買物客が訪れています。

ねらい

この施設開設の一つ目のねらい は、地域の農林漁業に活力を与えるために、市場で誇れるこだわりの特産品をつくりだす支援をすることです。二つ目のねらいは、四季を通して安全・安心な商品づくりに取り組み、地産地消を進めることです。三つ目のねらいは、丹誠込めてつくった商品の販売で、社会に参加し、消費者との交流を図ることで生き甲斐を感じる場をつくることです。

販売組織

有限会社西浅井総合サービスは「奥びわ湖水の駅」の販売部門を4つに分けて運営しています。

  1. 軽食販売部門=地域の食材を使って、独自のメニューで軽食を販売しています。
  2. 実演販売部門=地域の食材をその場で実演調理したものをテナント方式で販売しています。
  3. 生産販売部門=町内で生産されたものに限定してテナント方式とPOSレジ委託販売方式で販売しています。
  4. 加工販売部門=町内で加工されたものに限定してテナント方式とPOSレジ委託販売方式で販売しています。

また、生産販売部門には、農林水産物出荷組合を組織して、自主的に農林水産物の品質向上の取り組みを進めていただいております。

効果

当施設は、周辺のまちの生活者だけでなく国道8号沿いという好立地から、多くの観光立ち寄り客を迎えることができています。店頭では、毎日、こだわりの西浅井町産が数多く販売され、町のイメージづくりと元気なまちづくりに大いに役立っています。

地域の素材を活かしたまちづくりの取り組みは、この施設を核とし、今後、大きな広がりを見せるものと期待しています。