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大分県玖珠町/新しいまちづくりへのチャレンジ~地域コミュニティ組織で個性ある町をつくる~

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年10月1日更新
大分県玖珠町 子供たちの写真

大分県玖珠町

2616号(2007年10月1日)
自治振興室 藤井 正盛


町の概要

本町は九州第一の河川、筑後川 の上流に位置し、総面積は286.44平方キロメートルに及びます。また、玖珠盆地を取り囲むように、我が国最大の二重メサ台地 の万年山、岩扇山がそびえ、豊か な山なみの懐に抱かれ、静かで落ち着いた風景をかもしだしています。

現在の人口は約18,700 人。高齢化率は28%を超え、少子・高齢化、過疎化が進んでいます。

新しいまちづくりの背景

本町には約300の自治会が存在し、地域コミュニティの基盤となっています。しかしながら近年、少子・高齢化、過疎化により10戸以下の自治会が83箇所にのぼり、うち5戸以下が17箇所と冠婚葬祭、地区の祭りなどが出来ない 状況になっています。そのため、平成17年度より自治区合併統合推進交付金要綱を設置し、自治会合併の推進に取組みました。

そのほか、国と地方の関係では、地方分権の推進、市町村合併の推進、行財政改革の推進等により簡素で効率的な行政組織が求められ、職員数も平成15年度の約200名を平成30年度には150名体制にすることを目標に行革に取組んでいます。このため、従来と同じように行政が何でもやっていける時代ではなくなってきました。

新たな公共サービス

このようなことから、地域の住民一人ひとりがお互いに助け合って、みんなで地域の課題解決に取り組んでいくため、「行政がすること」と「住民の皆さんができること」を明確にし、行政がもっている権限と財源を地域に渡し、地域と行政が対等なパートナーシップを築きながら、住民が主役のまちづくり(住民が自ら決定し、責任をもってまちづくりを行う)を進めることとしました。このため、地域コミュニティ組織を確立し、住民と行政との協働による個性的なまちづくりに取組んでいます。これが、今までの自治会単位よりももっと広い地域単位で行う、「玖珠町のコミュニティづくり」です。

組織作りの取組み

本町は昭和30年、4か町村が合併し、現在の玖珠町が発足しました。この4地区は、いずれも昔から地域内の結びつきが強く、それが地域活動の基礎となっていました。そこで、4地区それぞれに、身近な自治会・婦人会・老人会・各種地域団体などの地縁組織で構成する地域全体のコミュニティ組織づくりに取組みました。

まず、平成17年度より組織設立に向けての庁内会議を進めるとともに、自治会及び各種団体への説明会(約1年間、延べ回数50回、延人数1,500人)を開催しました。組織作りの中で重要な位置を占めていたのが、町内全域を基盤とした組織である自治委員協議会です。この組織の理解を得たことがスムーズな設立に繋がりました。

また、先進的な活動をしている福岡県・宗像市や広島県・安芸高田市川根振興協議会への視察を重ね、コミュニティ組織の活動状況を学びました。

そして、平成18年度中に全ての地区においてコミュニティ組織が設立され、翌年度当初に全体での設立記念式典及びまちづくり講演会を開催しました。

玖珠町コミュニティ記念式典
玖珠町コミュニティ記念式典

現在、全国で進められている地域組織は、合併特例法に伴う旧市町村単位での地域審議会や地域自治区・合併特例区または地方自治法に伴う地域自治区が主でありますが、当町に於いては法律に準拠した組織ではなく、「玖珠町コミュニティ推進条例」(平成18年3月制定)により、町民が自らの責任においていて行動し、互いの立場を尊重しながら自発的に交流することを基本理念に組織が設立されています。また、町内全域を網羅していることも特徴的なところであります。

コミュニティ組織の活動

①自治会単位では出来ない活動ができます。

少子・高齢化、核家族化などによって、単独の自治会ではできない活動、あるいは福祉・環境・教育など、それぞれの自治会に共通した課題や問題、さらに自治会の範囲を超えた地域全体の課題や問題に、地域コミュニティ組織で取り組むことができます。今までも地区体育大会や地区の盆踊りなど、地区で取り組んでいる事業がありますが、福祉や教育など広範囲な地区の事業に取り組むことができます。

地域コミュニティ組織の組織図の例

②地域の権限で事業を行うことができます。

町が行っている業務の中で、地域が行ったほうが効率的なものや住民サービスが向上するものは、地域コミュニティ組織で行えるようになります。そのために必要な経費なども助成します。

これにより、例えば地域の自治会館や公園などの管理・運営、自治会、子ども会、老人会等の育成といった、今まで行政を通さなければ行えなかった事業などを、地域ですばやく行うことができます。

③地域独自の事業を行うことができます。

地域によって課題や問題はそれぞれ違います。また、住民の皆さんの要望・要求にも違いがあります。そんな地域ごとの課題やニーズに応じた事業を、住民の皆さんが考えて実施することができます。事業を通じて社会貢献することを目的とした「地域を活性化する事業」です。

コミュニティ組織の運営

運営は、自治会・婦人会等を中心に、多いところでは30団体が参加し、地域の中で役員等が決定されています。なお、地域が必要な事業などの企画、立案、実行までを地元住民で行っています。基本的には、町からの助成と組織する住民の会費から運営されます。また、町からの助成金の中で、自分たちのボランティアなどにより余剰が出た金額は事業費に当てることもできます。

コミュニティ活動の拠点

当町には旧町村を範囲として、社会教育法に定められた地区公民館が設置されていましたが、平成18年3月に公民館としての機能を廃止し、地域住民が自主的に活動でき、コミュニティ組織の拠点となるよう自治会館として位置づけました。また、その組織をそれぞれの自治会館の指定管理者に指定し、平成19年度より管理を委託しています。館長の賃金や、会館の維持管理費、例えば、事務費の一部や電気料・水道料の基本額等は、町から助成します。また、建物の大きな補修等は町の持ち物ですので、町が行います。なお、住民の皆さんが自治会館を利用したときに支払った利用料金はすべて、地域のコミュニティ組織の収入となり、活動のために利用されています。そのほか各種講座の開催など生涯学習の場として活用されるとともに、本庁舎との光ケーブルの接続により、行政情報の地域窓口となっています。

コミュニティ活動の拠点の図

具体的な組織活動

本年度より本格的にスタートしましたので、特長的な活動を紹介します。

①自主防犯パトロール隊の結成

犯罪が増加の一途をたどり治安の悪化が憂慮される中で「子どもの見守り活動」を主体に、地域が「自らのまちは自らの手で守る」ことを理念に地域に密着した自主防犯活動を展開し、犯罪を未然に防止するとともに、安全で安心して過ごせる町を目指して、地域コミュニティ組織が自主防犯パトロール隊を結成しました。

地域コミュニティによる防犯パトロール隊
地域コミュニティによる防犯パトロール隊

登録者数はコミュニティ組織を構成している自治会・PTA組織を中心に150名にのぼり、週1回の巡回パトロールや散歩をしながらの声賭け運動などを実施しています。

②高齢者の生きがいの場づくり

「地域づくりに参加し、生活に生きがいを求めてみませんか」をキャッチフレーズに65歳以上を対象としたシルバーセンターをコミュニティ組織が設立しました。庭の手入れや農耕地の除草などといった簡易作業の受託や、青空市場の開設に伴い、家庭で作った新鮮野菜の直販等により「助け合い、協力し合って明るい地域を作る」を目標に活動しています。

青空市場
青空市場

③交流事業の継続

玖珠町が森藩の統治下にあった頃、県内の日出町豊岡地区もまた同藩の領地となっていました。藩主は参勤交代のために江戸へ旅立つ際、この豊岡地区より船に乗った史実があります。本町では、これを偲ぶため、昭和51年から山の子・海の子の交流として、夏休み期間中に交歓キャンプを開催してきました。しかしながら、少子・高齢化により児童数が減少し、子どもの活動も多様化する中で、事業継続が危ぶまれる状況となりましたが、地域コミュニティ組織が事務局を引継ぎ、本年度も豊かな自然と触れ合う体験活動や集団生活を送るなかでの仲間作りを目的に交歓キャンプが実施されることになりました。

コミュニティ基金の造成

本年度より4地区のコミュニティ組織にまちづくりの活動助成金として各地区均等に50万円を交付しています。その他、地域コミュニティ組織の組織力・求心力を強めると共に、組織が実施するコミュニティ活動の自主的かつ継続的な発展を図ることを目的に、コミュニティ組織に参加する住民自らの積立金と町からの助成金を基本財源とする基金を創設しました。

町からの助成金は全体で4千万円を限度とし、均等割の外、世帯数や人口に応じて4地区に助成しています。この基金の活用については、各地区コミュニティ基金管理委員会を設置し、助成対象事業の選定を行い活用するものとしています。

今後の課題

当町における地域コミュニティ組織は、今まさに誕生したばかりで、各地区とも手探り状態で活動しているのが現状です。また、地区によっても活動にばらつきがあり、毎月1回の事務局長会議の開催により、情報交換やネットワークづくりを行っています。

自治会館での講座
自治会館での講座

今後の課題として、

  1. 地域住民の主体的な参画を促すと同時に、コミュニティ組織が地域を代表する組織であることを認識する活動結果が求められます。また、コミュニティ活動は画一的なものではないため、先進地研修を重ねながら、組織の活性化を図らなければなりません。
  2. 行政事務は普遍的なものではありません。コミュニティ組織において処理する方が効率的なもの、あるいは地域の人材や資源を活かすことができる事務については引続き見直しを行い、地域内分権を推進することが求められます。また、個別団体の補助金統合も今後の課題となります。
  3. コミュニティ組織と行政の連携が強まってくると、議会軽視ではないかという批判が出るようになる恐れがあります。しかしながら、議員もコミュニティ組織の一役を担い、地域に入って一緒に活動をし、地域の中から提言をあげることで、コミュニティ組織との連携が深まると考えられます。

このように多くの課題を抱えながらスタートした地域コミュニティ組織を発展させるためには組織による「地域住民の意見集約」と「集約された意見の的確な施策反映」ができるシステムの構築が今後の重要な課題となります。