島根県斐川町
2596号(2006年4月9日付号) 斐川町長 本田 恭一
斐川町は、島根県東部に位置し、南・西・北の三方を斐伊川に よって囲まれ、東はラムサール条約にも登録された宍道湖に面する町です。東西11km、南北9km、総面積は約80.64平方km。南部は中国山脈系の丘陵地帯、北部は斐伊川に よって形成された肥沃な沖積平野となっており、28,268人の町民(平成19年3月末日現在)が 恵まれた自然の中で暮らしていま す。
古から船通山を源とする斐伊川により、長い年月をかけてその源流から運ばれた流砂は、豊穣な斐 川平野をつくりだし、そこに住む私たちに農業を基幹とする豊かな暮らしを与えてきました。しかし 時には、荒ぶる神として周辺に住 む人々に災害と危害をもたらす災いの川として、また人々の信仰の対象として「やまたのオロチ伝説」 とともに語り継がれています。
荒神谷遺跡
日本海型の気候の影響で、特に冬は絶え間なく流れる雲に覆われ強い北からの季節風が吹き荒れます。また春から夏にかけては、山陰独特の湿った暑い日が続くこと があります。このような気候風土が、水害や冬期の季節風から家屋を守るために、この地方特有の「築地松」を 備えた散居住宅を生み出し、その田園景観が四季折々の風物詩を醸し出しています。また、荒神谷遺跡から出土した銅剣、銅矛は国宝に指定されるなど多くの文化財や史跡、伝統芸能が古くから引き継がれ、歴史、景観、文化などの風情を残しています。
築地松
島根の穀倉地帯として発展してきた斐川町は、その基幹産業として農業を中心に据えてきました が、昭和50年代後半からは企業の誘致、育成にも重点を置いています。ハイテク産業を中心とする企業誘致を行った結果、平成7年度以降は島根県内の市町村別製造品出荷額トップを保ち、県内の先端産業の中心地として発展していま す。
町内を走る国道9号線、JR山陰本線のほか、島根の空の玄関口・県営出雲空港、また、平成18年11月に開通した山陰自動車道斐川インターチェン ジなど、交通の利便は一層充実してきています。
山陰自動車道開通後の航空写真
斐川町は、昭和30年に旧6ケ村が合併し、斐川村として誕生、昭和40年に町制を施行後、昨年、合併50周年を迎えまし た。そして、この ような経済的、地理的条件により周辺自治体と広域 的なつながりを保ちながら、町民の総意により単独町政を行なっています。文化と伝統、そして先端 技術が生きる町として、また島根県にあっては数少ない人口増加の町となっています。
私は、平成11年に斐川町長に就任、平成12年の機構改革において、当時、健康福祉部門の一つの係であった環境係を環境政策課として立ち上げました。そして、平成13年には「環境基本条例」を制定し、町民、事業者、行政がそれぞれの役割分担や責務を明記し、町における環境保全に関する施策の総合的且つ計画的な展開を行なうこととしました。さらに、この条例に基づき、平成14年3月に地域環境総合計画を策定し、より具体的な展開を図っています。
斐川町は、地球環境の大切さを訴える漫画「地球の秘密」の作者で、12歳で急逝した坪田愛華さんの生まれ育った地であります。地球の将来に向け警鐘を鳴らした坪田愛華さんの意思を後世に継い で、様々な環境に関する取組みの推進を図るとともに、環境教育・ 学習の機会の充実と拠点整備を図るため、平成14年度に旧出西小学校を「斐川町環境学習センター(愛称アース館:環境省の地域調和型エコハウス事業により)」として整備しました。
斐川町環境学習センター
この施設は、地球環境に関するパネル展示や自然エネルギー展示 室など施設内に多様な地球温暖化対策の技術が生かされています。 毎月、布ぞうりや裂き織り、エコクッキングなどのいろいろな教室や講座が定期的に開かれており、 町民のみならず広く環境教育の普及に貢献しています。
平成12年度から、町内の中学生を対象に環境先進国のドイツで研修する事業「中学生ドイツ環境の旅」を実施しています。
この事業は、これから将来を担ってくれる中学生の人たちが、環境先進国の政策に直接触れ、ド イツでさまざまな体験を通して環境に対する意識を持つことを促そうとするものです。今年度までに 100名余りの中学生が参加し、 帰国後に報告と提言を受け、それ を町の環境行政に反映させていま す。
町内各地域においては、地区公民館の環境部会、地元の美化推進員、JA、エコクラブその他各団体が参画して、平成12 年に「環境ネットワークひかわ」を組織化し、 ゴミの減量化・水質保全な どの環境保全活動の活性化に努めてきました。また中学生の有志が集まり「花ボランティア」の活動を行ったり、各企業が独自に工場周辺の美化推進活動を実施するなど、地域における美化活動も自主的に行われています。
田園
毎月、各地区公民館等では、古紙(ダンボール、雑誌、牛乳パック等含む)、古布、廃食用油等を収集して います。特に家庭から出された廃食用油はBDF化 し、現在、小中学生の通学用の3台の公用バスに使用されて います。
宍道湖・中海は、平成17年11月にラムサール条約登録湿地となり、斐川町は宍道湖沿岸の自治体 の一つとして、湿地保全に積極的に関わってきています。特に毎年小学校4年生を中心に、1年を通じて環境学習に取り組み、その一環として宍道湖の浄化作用を促すヨシ再生にも積極的に取り組んで います。(平成18年度は10月23日になぎさ公園にて実施:約1,0000人余参加)。
このように、多くの町民の皆様や企業との協働が、今回の「循環・ 共生・参加まちづくり表彰」に繋がってきたものと思います。これらの確実な取組みに向け、自治会、NPO、企業各種団体の協働により地域資源を活用した魅力ある地域づくりを、現在展開しているところです。
斐川町では、第4次総合基本計 画(後期計画:平成18年度から22年度)を策定し、「5つのまちづく りの柱」の重点政策の1つとして 環境問題を位置づけ、その問題解決のために住民と連携・協働を図 り、特に各種環境保全団体への支援、拡充を図るとともに、町民の皆様や企業と協働しながら循環型社会に向けた取組みの拡充を図っていきたいと考えています。
出雲空港
斐川町は豊かな自然と過去から の貴重な文化遺産に恵まれてお り、多くの企業も立地してきてい ます。今回の受賞を期に、町の キャッチフレーズ「花のまちひかわ」を基に、花いっぱい運動や町をきれいにする運動を促進しつつ、このような古代と未来が響き あう「住みよい斐川」「住みたい斐 川」の構築に向けて更に取り組ん でいきたいと考えています。