ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 長野県上松町/森林セラピー基地認定とまちづくりの夢~「森林(もり)と健康のまちづくり」を目指して~

長野県上松町/森林セラピー基地認定とまちづくりの夢~「森林(もり)と健康のまちづくり」を目指して~

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年2月5日更新
長野県上松町の風景の写真

長野県上松町

2588号(2007年2月5日)  上松町長 田上 正男


町の概要

上松町は、長野県の南西部にある木曽郡(6町村)のほぼ中央部に位置し、総面積が168.47平方キロメートルで、町の東には中央アルプスの木曽駒ヶ岳(標高2,956メートル)がそびえ、西には卒塔婆山(標高1,541メートル)などの山々が連なり、町の中央部をJR中央西線と国道19号が走ると共に、一級河川の木曽川が名古屋港に向かって流れています。

1922年(大正11年)9月から町制をしき現在に至っていますが、平成の市町村合併については、木曽郡11町村の一本化を目指す木曽市構想の動きから始まり、紆余曲折を重ねながら近隣6町村との合併を模索して参りました。

しかし、関係町村で2004年9月26日に住民意向調査を行った結果、合併ではなく自立の道を選択致しました。

当町は、総面積の94パーセントが森林であり、その内69パーセントと大半を国有林が占めており、耕地や宅地は合わせても3パーセントに満たず、標高550メートルから1,100メートルにかけて住居や耕地が点在しています。

依然として過疎化と少子高齢化が進行しており、1965年の国勢調査人口10,083人をピークに年々減少しており2005年の同調査では世帯数2,111世帯、人口5,767人の小規模な町であります。

2006年度一般会計当初予算額は30億3千6百万円で、2005年度における財政力指数は0.314、経常収支比率は83.6%と厳しい財政運営を駆使しながらまちづくりを模索しています。

樹齢300年を超える、木曽ヒノキ天然林の写真
樹齢300年を超える、木曽ヒノキ天然林。先達の多大な苦労で保護されてきた。

木曽五木について

当町は、木曽ヒノキの産地でもあり、木曽の山林は江戸時代に尾張藩の領地として「ひのき一本首ひとつ」と言われた厳しい管理が行われてきた歴史があります。「木曽ヒノキ」に加えて、「あすなろ」「さわら」「ねずこ」「こうやまき」を「木曽の五木」と称して伐採を禁じ貴重な森林資源の保護施策がとられてきました。

気候風土が厳しく、険しい山岳地帯が形成した地質に育まれた木曽ヒノキは、木目が細かく材質も超一級品と言われ、国内各地の伝統的建造物に使われています。

2005年6月には、20年に1度催行される第62回伊勢神宮式年遷宮に伴う御杣始祭並びに御神木祭が当町の赤沢国有林で行われたところであり、1300年もの歴史を有する神宮の御用材として奉納できたことも地域の誇りとするところです。

杣による、伊勢神宮遷宮の御営材伐採の様子の写真
杣による、伊勢神宮遷宮の御営材伐採。伝統の伐採技術「三ツ紐伐り」を用いる。

地域産業の変遷

このように木材生産が盛んであったことから、林業を始め木材関連産業が盛んに営まれて、古くから森林文化が栄え人々に引き継がれて参りました。林業の伐採法では「杣人」と呼ばれる林業従事者による「木曽式伐木運材法」が継承され、木材加工技術では製材業を始め、桶職人、建具職人、家具職人並びにへぎ板職人などの伝統的技術を有する職業が栄えた町でもありました。

しかし、昨今の木材需要の激減や価格の低迷などによって、関係事業の縮小や廃業を余儀なくされている実情もあり厳しい状況に直面しております。

現在では、自動車関連産業や電子部品製造業などの誘致企業も数社が堅実に創業中であり、地域の活性化に大きく貢献しています。

観光資源と現況

長野県木曽郡は、自然環境には恵まれた地域であり、かつては中仙道沿いに宿場町が連なり、行き交う旅人の心を癒した「木曽八景」と称する名所が各地に点在しますが、その中でも当町は「木曽の桟」「木曽駒ヶ岳」「寝覚ノ床」「風越山の青嵐」「小野の滝」の五景を有しています。

代表する観光資源としては、赤沢自然休養林や寝覚ノ床などの豊富な自然と風光明媚な観光地がありますが、特に赤沢自然休養林は標高1,080mから1,558mに位置する、総面積約728ヘクタール300年以上と言われる木曽ヒノキの天然木を有する休養林であります。林野庁から1969年(昭和44年)に全国初の自然休養林に指定され、1982年(昭和57年)には第1回森林浴大会が行われ「森林浴発祥の地」として、全国各地から多くのお客様に森林浴を楽しんでいただいております。 林内には、自然が満喫できる総延長20.1キロメートルに及ぶ8つの散策コースがあり、延長1.1キロメートルの軌道を往復する森林鉄道が乗客を乗せて走っています。昨年の観光シーズンにおける来訪客は11万5,673人で開園以来2番目の好記録を達成することができました。

このことは、本年2月4日に開通した国道361号権兵衛トンネルによって、交通事情が飛躍的に向上した効果も大きかったことを申し添えます。

25年目を迎える森林浴の様子の写真
25年目を迎える森林浴イベント。美林を満喫でき、リピート率も高い。

森林セラピー基地の認定

また、本年4月18日には同休養林が「森林セラピー基地」として全国6カ所のうちの1つに認定をいただくことができました。

このことは、森林総合研究所の実験を担当された宮崎良文先生以下チームスタッフによって、2005年7月に被験者12名(健康な20代男性)の協力を得ながら行われた、生理・心理・物理・化学実験の結果によって森林セラピーコース内における歩行や座観といった活動が、リラックス効果やストレス緩和効果をもたらすことが立証され認定につながったものです。

森林の持っている特性が、医学的な実験データによって人間の疾病予防効果を促進し、心身のリフレッシュ効果を高める働きがあることが判明し、森林療法や疾病予防などの分野において新たな効能と展望が開けたものであり大きな感動と期待を寄せているところです。

雄大な木曽ヒノキの天然林に、このような宝物が存在していたことと、林野庁を始め先人達が大切に守り育ててきた歴史とご労苦に「お陰様です!」と改めて感謝の気持ちでいっぱいであります。

森林セラピー協議会を設置

当町においては、森林セラピー基地認定に備えて2005年度から積極的に取り組んで参りましたが、赤沢自然休養林というブランドがありながらもその自然や特性をいかに活かしていくのか、お客様の受け入れ態勢の構築などのソフト対策や住民サイドの意識の醸成が課題でもありました。そのため、平成18年3月15日には上松町森林セラピー協議会設立準備会を発足させ、本事業に関わる医療、保健福祉、観光事業、国有林、森林林業、観光ガイドNPO、町議会関係者など多数の参加をいただいて準備作業に取り組んできました。認定後の7月と12月にも協議会を開催し、関係者の広範な意見を承りながら協議会規約などに修正を加え、専門性を持った細部の検討組織として3部門の委員会を設けて、特性のある部門ごとに研究と議論を深めて森林セラピー事業を形成するため、ピラミッド型の協議会組織としたところです。

委員会構成としては、医療スタッフ及び観光ガイドスタッフで構成する「森林療法研究委員会」、施設整備、地域振興並びにまちづくりを進める「地域振興委員会」そして来訪者を始め地域住民の健康増進、保健予防若しくは癒し効果を上げるための「健康増進委員会」を設置して、関係者の英知と協力体制を取りながら木曽ヒノキの天然林である赤沢自然休養林の特性を尊重した「オンリーワン」を目指す森林セラピー基地のグランドオープンに備えて本格的な企画調整を進めています。

上松町森林セラピー協議会を設立した様子の写真
上松町森林セラピー協議会を設立。各種の研究・活動を推進する。

医療機関の支援

また、この事業推進に当たっては、木曽郡内唯一の総合病院である長野県立木曽病院スタッフと町内の開業医2名の全面的な協力を頂いていることも心強い限りであります。 

本年度では、木曽病院の久米田茂喜院長を先頭に町内の無医地区の巡回診療に取り組んで頂いたほか、5月11日からは休養林において毎週木曜日に巡回医療相談室を開設して、来園者のメディカルチェックや健康相談などを行い、森林セラピーの啓蒙などに協力頂いたことは町にとっても最も頼りになる存在でもあり、感謝に堪えないところであります。

今後は小さくても環境にマッチした森の診療相談室(仮称)となるような施設整備も視野に入れて、森林の中で「心身共に癒され、憩い、元気の出る」森林医学の発信基地となるよう期待に胸をふくらませています。

県立木曽病院の医師による健康相談の様子の写真
県立木曽病院の医師による健康相談。2006年は延べ100名が活用

森林セラピーを学ぶ

観光地でもあり森林セラピー基地がより多くのお客様にご利用頂くためには、案内を担当するガイドや住民がこの事業に対する理解を深めて、おもてなしの心を持って温かくお迎えすることが最も重要です。

そのため今年1月には、森林セラピー特別講演会を開催し、この夏に当該休養林において、森林がもたらす健康増進効果に関する調査研究をされた日本医科大学の李卿(り けい)医学博士より「森林浴がヒト免疫機能を高める」と題して講演を拝聴しました。また、事例紹介として、木曽病院の外科医長小山佳紀先生より「ドイツ・バートウェーリスホーフェンの先進事例」の視察研修結果について報告を頂きました。

地元にいながら、赤沢自然休養林についてなじみの薄い方が多いのが実情で、この講演会を通じて同休養林のすばらしさや健康増進、予防効果に対する有益性などについて理解を深め、気運を盛り上げることができたのではないかと考えています。

また森林セラピー基地が、他のすばらしい観光資源を有する木曽郡内の町村と連携を図りながら、滞在型観光の受け皿となって共に地域振興を推進することができれば幸いであります。

地域住民向けの「赤沢を知る講座」の様子の写真
地域住民向けの「赤沢を知る講座」。地元のすばらしい森林資源を再確認

森林と健康のまちづくりを目指します

車椅子でも散策が可能な「ふれあいの道」の様子の写真
車椅子でも散策が可能な「ふれあいの道」。福祉ツアーも多い

国も地方も厳しい財政難、人口減少社会の到来、地方分権が推進される近年にあって小規模町村の運営は厳しいものがあります。

また中山間地域は、高齢化や担い手不足、有害鳥獣による被害の増大などにより森林と農地の荒廃や遊休農地の増大が進んでいますが、「国土と自然景観の保全、水資源の涵養、地球温暖化防止などの一翼を担っている山里」のこれ以上の荒廃は阻止しなくてはなりません。

その意味において、地域の観光資源を活かした誘客対策は地域振興の鍵を握っていると言っても過言ではありません。

人間は、古代から自然と共生しつつ、長い歴史と文化を育みながら進化を遂げてきました。しかし、近年は工業化、化学化そして高度情報化(IT)が急速に進み、都市部への人口過密現象も重なって、効率化と巨大化のみが優先される世相となってきました。その中で、格差社会、ストレス社会さらには子どものいじめ問題など、様々な社会問題が多発しており、それらの対策が必須となっています。

日本に培われてきた独特の歴史と文化を再認識し、自然を敬愛しながら美しいものに感動し、たとえ不合理、非効率であっても穏やかな心で健康に暮らせる社会を再生したいと願う次第です。

この度の森林セラピー基地認定を受けて、役場総務課内のまちづくり推進室に専任担当者を配置すると共に、同室を中心に準備作業を進めています。

グランドオープンを契機に、赤沢自然休養林を地域再生の核に据えてその他の観光資源やサービス産業との連携を図りながら、老若男女を問わず「森林と健康のまちづくり」を推進することが夢でもあり、実現を目指して町民と共に邁進する決意を新たにしています。