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長崎県小値賀町/神様から授かった資源の恵みを活かして~小値賀アイランドツーリズムの推進~

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年1月22日
小値賀町の全景写真

長崎県小値賀町

2586号(2007年1月22日)  長崎県小値賀町長 山田 憲道


小値賀町の概要

小値賀町は、九州の西にある五島列島の北部に位置する大小17(内無人島10島)の海底火山群島で、ほぼ全域が西海国立公園に指定され、その特異な景観は、「海の火山博物館」「東洋のガラパゴス」とも言われています。

小値賀町には、旧石器時代(2万5千年前)から現在まで連綿と人々の営みがなされてきたという、五島列島では他に類を見ない悠久の歴史と、それらを支えてきた豊かな自然があります。その住み良さは、五島列島で唯一、時の権力者のものであったとされる古墳が2基発見されたこと、当時朝鮮半島との交易を示す鉄製の斧が発掘されたことからもうかがえます。

本町は、平成の大合併には、今は合併をすべき時ではないという、行政・議会・住民の意思により、自立(自律)の道を選択しました。町の財政は税収や交付税の減収により、逼迫しております。しかし行政改革の推進を図り歳出の削減に努め、より細やかな住民の立場に立ったサービスの向上を図りたいと考えております。

本町の人口は、平成18年12月1日で3,288人、世帯数1,391世帯で、高齢化率は39.9%と非常に高く、少子化を含め大きな行政課題となっています。

交流人口の拡大を目指して

エコミュージアム構想とアイランドツーリズム

1.小値賀町のツーリズムの現状

写真1:野崎島でのシーカヤック体験
野崎島でのシーカヤック体験(アイランドツーリズム)

小値賀町にも過疎の嵐が吹き、前述のとおり、全国を先駆ける超高齢化率、少子化問題等や一次産業の低迷等がその要因をなしています。

そうした現状を打破すべく、この町の文化や歴史資源、人的資源の魅力を再発見し、次世代へつなげて行こうと、8年程前から人材育成事業を立ち上げ進めてまいりました。その過程で、国土庁(現国土交通省)の「歴史・伝統を活用した地域づくりと都市・農村交流の促進による地域活性化支援調査事業~歴史ロマンあふれるむらづくり~」調査のモデル地区としての分析結果を受けて『自然との共生(エコミュージアム)型産業振興基本構想策定事業』を展開してまいりました。

また自然の恵み豊かな小値賀町において『島暮らし体験したいツーリスト』と住民との交流の推進と、小値賀の自然を後世に引き継ぐことなどを目的とした、新しい形のまちづくりの核として「ながさき島の自然学校」を開港しました。環境保全と地域振興のバランスのとれた発展を目指す「環境地域づくり」の一環としての事業で、行政・住民が一体となって進めてまいりました。

また、小値賀町の自然と文化をテーマに、町内外の参加を得て野崎島ワイルドパークの「自然学塾村」を施設の核とした「ながさき島の自然学校事業」をこれまで運営してきています。

2.立ち上げ前における問題点

  1. 画事業が個々に設定されていて、統一性がない。
  2. 各事業に関わる住民が、まだ少数で偏りがある。
  3. 画事業に対する住民の理解度が薄く、参加者数が少ない。
  4. 交流人口増大策がとられても、その受け皿(民泊)作りが進んでいない。
  5. ツーリストと、当町の基幹産業である農漁業の活性化が結びついていない。

これらを踏まえ次のステップへと移行しました。

3.対応策

これらを解決すべく行政と民間とで、研究会を発足し連携を深めニューツーリズムへのアプローチを始めました。

先ず次頁の図式のようなイメージでの既存機関の連携・融合化による新しい組織の編成について検討に入りました。

それを受けて、今回のアイランドツーリズム推進研究会が発足しました。

一般的に農業では「グリーン・ツーリズム」、漁業では「ブルー・ツーリズム」、また観光では「エコ・ツーリズム」等の自然体験型の事業が脚光を浴び、環境保全の思想がメジャー化している現状で、小値賀町では、それらを一体化した小値賀オリジナルの「アイランド・ツーリズム」を目指すこととしました。

写真2:野崎島ワイルドパーク
野崎島ワイルドパーク

先の課題を解決するためには各事業をつなぐ統一的目標を定め、連携を強化することによって、住民に提示することで理解と参加を促すことが可能であると考えました。また、事業の連携の強化、またはコンパクトで機能的な組織の再編成をも視野に入れながら進めることも必要であると考えました。

そのことによって、先の課題を解決するための一手段として位置付け、より具体的に、費用対効果があらわれ、産業の活性化へ導き、地域住民はもちろんのこと、当町を訪れるツーリストに癒しと夢を与え、皆が郷愁をおぼえてくれるような町づくりを進めていく上での一つのステップとして、推進していくこととしました。

次いで一昨年、環境省ふれあい推進室や日本交通公社、町内の関係機関の協力を得て、小値賀アイランドツーリズム協議会を立上げました。その中で、アイランドツーリズムをどう進めていくのか、将来の組織はどうあるべきかと検討をすすめ、その結果「ながさき島の自然学校」、「観光協会」、「民泊の実践組織」を一体化し、機能性のある組織により、経費の合理化、事業のスムーズな運営につながる、NPOを立ち上げることとなりました。

写真3:アメリカ人高校教師を迎えての民泊
民泊(アメリカ人高校教師を迎えて)

そしてついに、NPOおぢかアイランド協会を次のとおりスタートしました。

この法人は、小値賀町の特色を生かしたアイランドツーリズム(島暮らし体験)の推進を目指し、地域活動の主体となる実践者と各支援者が相互の連携を図りながら多様な農村漁村の島体験や地域の情報発信の事業を展開するために、体験型観光の担い手の養成、地域に伝わる食文化や生活文化の伝承並びに自然環境保全や島の魅力再発見の形成とともに、企業や行政とのパートナーシップを促進し、地域振興並びに外国や都市と島の交流に寄与することを目的としました。

写真4:野首天主堂での教会コンサート
野首天主堂での教会コンサート(長崎おぢか国際音楽祭)

昨年アメリカの高校の教師20名を受け入れて、各種ツアーを商品化し、交流人口拡大に努めております。また、本年はアメリカの高校生300名を受け入れ予定の『島のくらしライフ』の企画が順調に進みつつあります。春にはヨーロッパの一流の演奏家を招き、『感性・感動・調和』をコンセプトに教会コンサートや自然の中でのレッスン・環境教育なども実施することによって、多くの人々が町を訪れる『長崎おぢか国際音楽祭』も開催され、今年で6回目を迎えます。

このようにして、小値賀町のアイランドツーリズムは、第1次産業を巻き込みながら、交流・定住人口の増大、国際交流・協力を目指し、多くのビジターで賑わう町づくりのファクターとなるでしょう。