ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 和歌山県白浜町/地域ぐるみの子育て支援を推進~全国に先駆け“幼保一元化”に取り組む~

和歌山県白浜町/地域ぐるみの子育て支援を推進~全国に先駆け“幼保一元化”に取り組む~

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年11月27日更新
白良浜全景

和歌山県白浜町

2581号(2006年11月27日号)
白浜町長 立谷 誠一


町の概要

白浜温泉は、愛媛県の道後温泉・兵庫県の有馬温泉と並ぶ日本の三古湯として、また西の別府・東の熱海と並ぶ日本の三大温泉地として知られる名湯です。その歴史は古く、今からさかのぼること1300年以上前の飛鳥・奈良朝の昔から、「牟婁の温湯」「紀の温湯」の名で知られ、斉明・天智・持統・文武天皇をはじめ、多くの宮人たちが来泉されました。そして、今日では年間330万人以上が訪れる、日本でも有数の温泉観光地に発展してまいりました。

本町は、平成18年3月1日に隣町の日置川町と合併、新白浜町としてスタートいたしました。平成17年国勢調査の人口は、23,642人。世帯数は、9,613世帯です。

和歌山県の南部、紀伊水道につき出した半島地域と富田川下流域および日置川流域からなる本町の面積は201.02(県全体の約4.3%)で、町域の81%が森林におおわれています。北西の半島部には市街地が形成され、南部では海岸線まで山地がせまり、海岸、河川流域、谷間部に集落が点在しています。

また、年間平均気温は17.2度、年間降水量は1,638mm年間日照時間は2,047時間となっており、年間を通して温暖で過ごしやすく、海や山・川の幸にも恵まれているのも大きな特徴です。

幼保一元化に取り組んだ背景

当町は、観光の町であり、観光の町特有の生活スタイル・町民のニーズが、幼保一元化への動きの始まりであったと考えています。

昭和50年代後半ごろより、白浜町においても児童数の減少と共働き家庭が増えてまいりました。

例えば旅館勤務において、勤務実態としては「朝番」「昼番」「夜番」とあり、朝から晩まで家族の誰かが労働のため外に出ているという状態であり、子育てと仕事を両立させなければならず、従って、少しでも早く園に送り出し、働きに出たいという需要がありました。

当町でも「4歳までは保育園、5歳になれば幼稚園」という保育園、幼稚園の「棲み分け」をおこなってきましたが、保護者の強い要望もあり、昭和59年度より保育園でも5歳児の受け入れを開始しました。それにより幼稚園へ通う子どもがさらに減少してまいりました。

こうした状況は近隣町村でも進み、幼稚園を統廃合する方針が打ち出されてまいりましたが、当町では、3園の内、1園を休園とし、観光地区と農村地区で各1園ずつ計2園を存続させることとなりました。

その後、昭和63年には町長の諮問機関として設置した幼児教育研究委員会の答申が提出されました。その答申の内容は、「幼児が受ける幼児教育に差があってはならないとする基本理念に立って、幼保の一元化を目指すべきである」「すべての幼児に等しく心身ともに健やかな生活と発達、福祉と教育を保障するため、幼保双方の機能をたくみに生かし、より弾力的な運用をすることで幼児教育の振興発展を図るべきである」 というものでした。

この答申を踏まえて、幼保一元化への方向性を確定することになりました。

幼保一元化へのあゆみ

子どもを取り巻く社会環境は、核家族化、少子化の進行等大きく変化していますが、幼児期の子供達が成長していく過程において、最も大切な集団活動や異年齢児との交流や基本的な生活習慣を養う必要性、そして生涯にわたる人間形成の基礎を培う大切な時期であること、さらには、先述しました幼児教育研究委員会の「就学前教育体制のありかた」の趣旨をふまえ、以下のような取り組みを積み重ねてまいりました。

平成7年度
 幼稚園と保育園の行政窓口を一本化(幼児対策室を設置)し、町内の保育園、幼稚園の事務を一括して担当。園長会の統合。

平成8年度
 幼保の枠を超えて職員配置の実施。(保育士が幼稚園教諭に、幼稚園長が保育園長に就任。)就学前教育(保育)内容の統合(主任保育士クラスで構成する「保育(教育)内容検討委員会」において、乳児から5歳児までの一貫した保育計画を作成。
 また、各園の園児の交流や公開保育も実施、障害児保育については、幼保職員(私立含む)、保健士などからなる「障害児保育担当者会」を設置し、保育内容の向上に取り組む。

平成9年度
 幼保職員の研究研修組織の統合(保育研究会と幼稚園教育研究会を「幼児教育研究会」に。園長部会、乳幼児の年齢別部会、調理師部会など部会組織の設置)白浜保育園と白浜第一幼稚園を統合してひとつの「白浜幼児園」として運営開始。

平成10年度
 白浜第一幼稚園・白浜保育園両園舎の耐力度調査を実施

平成11年度
 幼稚園における2年保育再開 育児の実態と保育ニーズアンケートの実施

平成12年度
 新しく白浜幼児園舎が竣工。白浜幼児園で開所時間延長事業の開始。

平成13年度
 白浜幼児園で乳児保育開始

平成15年度
 幼保一元化特区を申請し認定される。

しかし、幼稚園と保育園の法的な位置づけが現状のままのため、原則的にはクラス編成や職員配置は幼稚園と保育園別々になっており、よりよい効率的な取り組みが課題となっていました。

そうした課題の抜本的な解決をはかるため、国の「構造改革特区」に申請いたしました。

許可を頂きましたので、平成16年3月よりクラスやカリキュラム編成に幼稚園と保育園の区別をつける必要がなくなり、幼稚園児と保育園児の合同活動事業がより積極的に取り組めることとなりました。これにより「幼児一人ひとりのよさ」をみつけ出し「幼児自らが成長しようとする力を伸ばす」環境づくりができるようになりました。加えて、平成17年度には総合施設モデル事業の取り組みも実施することとなりました。

幼保一元化で苦心した点

白浜町の場合、保育園舎と幼稚園舎が隣接していましたが、幼稚園教諭と保育士が同じ観点で幼児教育(保育)を進めるということは、いろいろ難しいことが多かったと、当時の現場担当者から伺っています。

例えば事業を実施していくに当たって、まず前年度から人事交流(幼稚園から保育園、保育園から幼稚園)を重ね、主任保育士で構成する保育内容検討会においては、一貫した保育計画を樹立する努力を積み重ねました。

そして今日では、幼稚園教諭の辞令をもらっている職員全員が、保育所勤務の経験ももつこととなりました。

幼保一元化の効果

幼保一元化を実施した効果としては、まず同じ地域に暮らす子ども達が、親の事情にかかわりなく、一緒に遊んだり、生活したりするのが可能になったことがあげられます。

近年では、核家族化がさらに進み、地域に戻っても隣近所との関係は一昔前のような状況ではありませんが、幼児園において子ども達が一緒に遊んだりする環境が整ったことにより、園児が、地域活動を通して、地域の様々な人々との交流や、出会いや、ふれあいが発生し、子ども達にとっても通園を通して日々の生活がより豊かなものになってきたように感じられます。

また幼稚園は、幼保一元化前において5歳児1クラス、10数名のみでしたが、一元化後は友達も増え、異年齢交流が出来るようになりました。また、幼稚園では給食は実施されていませんでしたが、保育園には給食制度が整っており、5歳児にも給食が実施されることになりました。

なお、小学校に入学してからはクラス作りがスムーズにいき、保護者同士の交流も進みやすくなり、幼児園と小学校との連携も取りやすくなりました。

0歳から5歳まで系統だった、一貫した保育が受けられ、経験活動(おやつ作り、集団活動等)の幅が広がりました。

そして、何より、観光の町で勤務する中で、年度途中で親の就労事情がかわっても(働き始める、仕事をかわるなど)、子どもの環境(クラス、担任など)は変わらず、保護者の方からは、安心して幼児園に預けることができるようになったと、大変喜んでいただいています。

今後の課題

今後の課題としては、園児同士の保育時間の違いからくる問題があります。例えば短時間部の園児は保育時間が短く、また夏休み等があるため夏の時季には保育時間の長い園児と一緒に活動ができず、水遊び(プール)等に差がつくことが考えられます。

三段壁
三段壁

また、保護者の仕事の都合などにも臨機応変に対応できるよう時間外保育の取り組みを進めるとともに、新しい時代のニーズに応えていけるよう、より良い態勢をととのえていかなくてはならないと考えています。

就学前のすべての子どもと親がいつでも気軽に利用できる施設であることに加え、保護者が気軽に子育てに必要な相談、助言、支援がうけられるよう地域の子育て支援センターの役割を一層充実していくことも必要となってきます。

最後に次代を担う子ども達を、社会の宝として園はもちろんのこと、地域社会全体で支援し見守り、子ども達が心身ともに健やかに成長するための環境を整え、さらに児童虐待や、犯罪などの被害に遭わないよう、行政や町内の各種団体などの社会資源と連携を密にした取り組みを今後も進めたいと考えています。