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青森県平内町/行政改革は人づくりから ~職員の資質向上が町発展のカギに~

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年9月18日
ほたての祭典の写真

ほたての祭典


青森県平内町

2574号(2006年9月18日)  総務課副指導監 加藤 隆弘


平内町は、青森県のほぼ中央に位置し、東に野辺地町、西は県都青森市に隣接し総面積216.92平方kmを有する町です。北方は陸奥湾に夏泊半島が突出し、南北に山岳地帯、中央部が平坦地という景観のうち、林野が77.8%を占め全域が振興山村及び特定農山村地域に指定されています。山海の豊かな自然資源に恵まれ、農林漁業を主体とした人口は14,173人(H18.3月末)に上ります。

気候条件としては、6月から7月にかけて東から吹いてくる冷たい風(ヤマセ)の影響で低温が続くなど太平洋側の特徴が見られる一方、冬場は積雪も多く、日本海側からの湿った冷たい風の影響も受ける地域です。

厳しい自然環境ではありますが、美しい景観に恵まれ、浅虫・夏泊県立自然公園の指定を受けています。特別天然記念物白鳥の渡来地で知られる浅所海岸、ヤブツバキ自生北限地帯として天然記念物に指定されている椿山のほか、昭和38年昭和天皇・皇后両陛下をお迎えした第14回全国植樹祭を契機として、サボテン園、スキー場、よごしやま温泉、ケビンハウス、オートキャンプ場、パークゴルフ場などを中心とした夜越山森林公園を整備し、県内外の観光客にその魅力を提供しています。

また、津軽三味線名人位、初代高橋竹山生誕の地としても全国に知られており、更に、冬季オリンピック選手であるアルペンの千葉信哉、ノルディックの佐々木一成の両氏を輩出していることも誇りの一つとなっています。

サボテン園入口の写真

サボテン園入口

ホタテの町ひらない

平内町と言って頭に浮かべて頂きたいのは「ホタテ」です。生産量では北海道にかないませんが、味の良さでは日本一です。青森ホタテとして全国に流通していますが、その47%が平内町産です。生産額も青森県全体の48%、約70億円(平成17年)を占め、まさに町の景気を左右する一大産業となっています。

ここに至るまでには、自然繁殖に頼っていたホタテ漁を、養殖技術を開発して漁師の収入安定につなげた先人の苦労があります。今では出稼ぎも減少し、「ホタテ養殖発祥の地」、「単一漁協養殖ホタテ日本一」として全国に発信しているところです。また、近年の健康志向から、ホタテはヘルシー食材として注目されており、今後の需要増加も期待しています。

漁業体験の写真

漁業体験

平内町のめざすもの

平内町のまちづくりのめざすものは、自然や歴史・文化など当町の特性を生かしながら、良好な人間関係のもとに全ての町民が地域の活動に主体的に参加し、行動することによって、健康で心豊かな生活を営むことにあります。このため、「明るい町、豊かな町、心のふれあう町」を基本姿勢に、人と環境にやさしい住み心地のよいまちづくりを推進するため、平成13年3月に「新たな平内町長期振興計画」を策定し施策を展開してきました。

しかし、地方では一向に回復しない景気、国・地方税財政の三位一体改革による地方交付税の削減など、わずか4年の間に国内情勢は激変し、地方を取り巻く環境は、ますます厳しさを増しております。このような状況に対応するため、行財政運営の基本指針である長期振興計画についても達成度の評価と見直しが必要であり、平成17年度に役場中堅職員によるチームを結成。見直しに着手いたしました。

検証では、現状の分析、問題点の洗い出し、今後の施策の方向性を明らかにするため策定時と同じ設問の町民アンケートを実施し、町民の生活実感、町政への満足度の把握を行うと同時に、計画の基本施策に沿って各課で実施している事務事業の達成度を評価し、今後5年間の方向性を示しながら、まちづくりの実践に役立てていくこととしました。

合併アンケート

長期振興計画の見直しと、後述の行政改革大綱の前倒し実施の背景には合併問題が大きく関わっています。

平成13年、市町村合併特例法に基づき青森県が示した県都青森市との合併への模索が始まりました。同年3月、職員によるプロジェクトチームを立ち上げ合併についての学習、合併しない場合の将来の町の姿の検討を行い、また並行して両市町職員による合同勉強会を継続的に実施し、合併の可否両面での検討を行っていきました。その間、住民に情報を提供し、不安を解消するため平成13年11月から14年1月にかけて町内地区で「合併問題に係る住民勉強会」、同年11月には各産業団体との座談会を実施しました。更に広報で「市町村合併を考える」特集記事を8回掲載し合併問題への住民の理解を深め、考えを聴取しました。しかし、住民本位の判断をするにはまだ不十分として、平成14年10月に43ページからなる「合併問題広報特集号」を発行し、同月3地区において再度「住民研修会」を開催いたしました。

 これまで住民への情報、資料の内容はどちらかに偏ることのないよう常に心がけてきましたが、合併の是非の判断にはより多くの住民の意向を伺う必要があると考え、平成15年2月に18歳以上の住民12,579人を対象として合併の是非を問うアンケート調査を実施いたしました。行政協力委員の協力により各家庭に調査票を配布、後日封書を回収するという方法で行い、93.5%という高い回収率を得ることができました。これも、小さな町のなせるところでしょうか。この結果、合併反対が6割を超えたことから、当町は当面は合併をせず、単独で歩むことと決定し、町の決意として、人材育成の強化、更なる行財政改革及びシステムの変革、一層の経費節減と町民の協力を掲げ、15年度より検討、実施することとしました。

行政改革・集中改革はひとづくりから

合併特例法の期限内の合併を見送った当町は、独自に歩んでいく方策となる新たな行政改革大綱を策定するため、平成15年5月に中堅職員25人からなるプロジェクトチーム(PT)、管理職28人からなる推進本部、一般町民10人と産業団体5人の15人で構成する行政改革推進委員会を結成しました。

PTと推進委員会は個別に調査、検討を行い、PTの報告を本部に上げ、本部は推進委員会の意見とあわせ審議しPTに下ろす。あるいは、本部から推進委員会に素案が報告され推進委員会が審議した後、再度PTに戻され再検討するという方法がとられました。

与えられた僅か5ヶ月の期間、討議資料の作成は急を要しました。事業の抽出、現状の把握、最少の歳入見込み等、各課担当者が残業して作成しました。

PTでは各部会が月2~3回、あるいは毎週の討議・検討を重ね報告書の作成に追われました。特に、自身にも関わってくる課の統合・再編、管理職の削減は対外的には成果として見えるものですが、議論は多々ありました。また、町内各種団体への補助金等の大幅削減には、その説明、理解を得るに各課担当の苦労がありました。

こうして作成されたPTの報告書は推進委員会に上がり審議を経た後、10月に推進委員会が本部長である町長に最終意見を提出。さらに同意見を本部で審議、修正の後10月21日に18年度までの行政改革大綱が策定されました。

行政改革の実施計画は16年度予算編成に直ちに反映されることとなり、また毎年の行革進捗状況を推進委員に報告するという形で進められてきました。

16・17年度の主な見直しとして、町補助金の廃止・統合が105項目中36項目、削減が52項目で2ヵ年の削減総額は55,174千円に上ります。また、公共施設の指定管理者制度の導入が2ヶ所、各種委員会等の委員数削減・報酬引下げに加え、生活路線バスを100円、200円の町民バスとして公営から民間に委託先を変更し、43,000千円の委託料を削減。スクールバスの民間委託運行に伴う経費削減、機構改革として19課・部署を11課・部署に統合、さらに町4役の給与カット等を実行してきたところです。

平成17年3月、国の新地方行革指針策定を受け、新たな行革プランの策定と公表が求められました。町では、策定にあたり町民の参加を検討いたしましたが、推進委員により審議された行革大綱の目標が18年度までであること、大綱実施計画の進捗が計画を上回って推移していることなどから、庁内行政改革本部において行革大綱をベースに追加、検討し「集中改革プラン」として策定いたしました。

プランの重点事項には、①事務事業の見直し②組織・機構の見直し③定員管理及び給与の適正化の推進④職員の能力開発と効果的な行政運営の推進の4つの柱があります。

このうち事務事業の見直しについては、行革大綱に引き続き18年度においても事業の廃止・統合17件、削減35件で11,570千円の削減を見込んでいます。また、少子化、老朽校舎の解消に地域住民の理解が得られ、18年度末に小学校2校の廃校を決定しています。町議会においても議員自ら、町存続のため議員定数を4人削減し次期選挙は14人の定数で行うこととしました。定員管理については、負担を住民のみに求めないという町長の方針により、17年度から一般職の新規採用を行っていません。このため、現定数164人を24人減じ140人とする目標は、当初平成21年度を期限としていましたが、定年退職分のみで19年度末で達成される予定です。今後職員一人一人の資質の向上が益々求められることとなります。町一の企業である役場職員の資質向上は町発展に不可欠であるという町長の考えから、10年前の就任当初から現在まで職員を毎年自治大学校、県庁及び市町村アカデミーに順次派遣研修させ、研修成果の発表会を行っています。また、10年度から若手職員10名前後からなる「政策推進調査研究会」を組織させ、毎年違った政策研究テーマを討議。成果を施策に反映させることにより政策実行力が培われてきています。庁内LANシステムの構築においては、会員がパソコンの苦手な職員を指導するという立場を担ったり、生活路線バスの運行についても研究会の調査研究により運行委託先を替え、年間43,000千円の委託費縮減が実現しています。18年度においては職員の発案により町有施設の有効利用(将来像)について研究中で、集中改革プランにうたう公の施設の管理のあり方の検討に大いに資するものと考えています。

町民バスの写真

町民バス

ほたて広場の写真

ほたて広場

今後の取組み

交付税算定方法の変更などにより、地方財政は益々厳しさを増している中、町民と行政が協働しながらホタテを中心とした地場産業を活性化させ、町民が住みたい、住んでよかったと思える町とするため、町民が町職員に寄せる期待は大きなものがあります。職員自らが改革を進め、自らが住んでよかったと思うまちづくりを目指していきたいと思います。