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北海道長沼町/高度情報化利用状況と今後の方向について

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年6月26日
長沼町の風景

北海道長沼町

2565号(2006年6月26日号)
総務制作課主査 青野直樹


まおいネットの構築

長沼町は、北海道の中央、石狩平野の南東部に位置しており、札幌市と新千歳空港のどちらからもほぼ30キロメートルという、比較的地の利に恵まれた町です。面積は約168平方キロメートル、人口は1万2千人余り、世帯数は約4,800で、その約3分の1の世帯が農業を生計の手段としており、農業が主要産業となっております。  

当町では、平成13年から15年にかけて町内情報ネットワーク網「まおいネット」の構築を行いました。「まおいネット」とは、公共機関、町民宅などを光ファイバと無線LANで結ぶ高速情報ネットワークの名称で、町内全域をカバーしています。  

「まおいネット」は、役場と公共施設の間を結ぶ行政系と、町民宅・事業所等を結ぶ町民系の二系統に物理的に分離しています。いずれも幹線は光ファイバで結び、支線については町中心部は光ファイバ(FTTH)により最大100メガビット毎秒、郊外では無線LAN(FWA)により、最大3メガビット毎秒のブロードバンド環境を実現しています。  

長沼町高度情報化推進事業全体イメージ図
図-1

なお、インターネットなどへの接続サービスについては、回線をIRU(破棄できない長期安定的契約)により電気通信事業者に貸し出しており、事業者が専門的なノウハウを生かして効率的な運営を行っています。【図-1】

平成16年度の取り組み

当町における住基カードの独自利用の取り組みは、平成16年度の(財)地方自治情報センターが実施する「住民基本台帳カードパイロット団体等支援事業」による助成金の交付を受けて、町がこれまで町民の方々に交付していた各種カードや券を統合する形でスタートしました。具体的には、図書館利用カード、パークゴルフ場シーズン利用券、健康づくり推進事業助成券の3種類を住基カードで利用していくというものです。  

実証実験の内容は、独自利用メニューとして、「健康づくり推進事業助成券」「図書館利用者カード」の二つの機能を住民基本台帳カードの独自領域に記録し、統一機能カードとして活用するというものでした。  

健康ポイントカードサービス システムイメージ
図-2

システム構成としては、役場情報センター内に、健康づくり推進事業助成券及び図書館利用者カードの機能を集中管理するための管理用サーバを設置するとともに、ながぬま温泉及びりふれ(健康づくり推進事業)並びに図書館(図書館利用者カード)の計3箇所にまおいネットを活用したカード読取装置を設置。 利用環境設定システム独自利用領域に必要な情報を搭載するためのシステムや、オペレータ認証システム等各業務システムへログインするための認証を行うシステム、独自システム健康ポイントシステム、図書館サービスを構築して、住基ICカードサービスシステムの導入を図ることとしました。  

実験は平成17年3月に終了し、4月から統合カードという新たな機能を搭載した住基カードの受け付けを開始したところです。【図-2】

平成17年度の取り組み

平成17年度では、他の市町村で導入している各種証明書等の自動交付機の導入について検討を行いました。その結果、自動交付率の高い市町村では費用に対して約2倍程度の効果を上げていることや、時間外や休日における証明書交付により住民及び行政にとって大きな効果が得られていること等を勘案し、(財)地方自治情報センターが実施する「ICカード標準システム実証実験事業」を活用して導入を図っていくことにしました。

ただし当町では、現在市販され、既に多くの自治体で使用している大型の自動交付機を導入する意図はなく、平成18年度の実用化を見据えて現在NECが開発中の「簡易型自動交付機」を導入することとしました。「簡易型」とした背景には、平成17年3月に、従来の証明書自動交付機の設置場所の選定や安全対策に関する規制が緩和されたことがあります。  

実験のためのシステム構成としては、住基システムから住基等の情報を受け取る証明発行サーバを設置し、ここから住基データを簡易型自動交付機に送り込むこととし、簡易自動交付やカード管理、情報監視の各システムを構築することとしました。  

簡易型自動交付機の構成イメージは、プリンタがセットされた自動交付機(イメージ的にはキヨスク端末に類似)と貨幣ボックス、警報表示装置の3点。自動交付機はタッチパネル画面で画面指示に従って操作が可能で、音声案内による分かりやすさを重視しています。プリンタは交付機に固定されており、用紙重送検知や証明書取り忘れ検知等の機能が付いています。 貨幣ボックスは、コンビニにあるコピー機に備え付けられているものと同じで、千円紙幣、500円、100円、50円、10円硬貨に対応。警報表示装置は、用紙重送が発生した場合や、硬貨・紙幣が詰まった場合、証明書を取り忘れた場合などにランプが点灯する仕組みとなっており、職員による目視監視の補助として活用することとしています。  

簡易型証明書児童交付システム
図-3

実験は動作確認を中心に行い、本年3月上旬に終了しました。

現在、町では、平成18年8月からの運用開始に向け、設置場所の検討を行っているところです。簡易型自動交付機はこれまでの交付機に比べると安価であるというメリットがある半面、有人監視の下で活用する必要があるために設置場所が限定され、24時間、365日の運用は難しい状況です。本年4月に大幅な機構改革があり、役場内の組織体制が大きく変わるため、新しく改変された組織全体を見たうえで結論を出していきたいと考えています。【図-3】

住基カードの交付状況

当町における住基カードの交付枚数は、健康づくり推進事業助成券や図書館利用カード等を住基カードに統合したことにより申請者が急増、平成18年3月末現在で4,058件に上りました。人口に対する交付率では30%超と、全国的には高水準の交付率(全国第2位)となっています。

簡易型証明書自動交付システム
図-4

住基カードによる多目的利用を開始する経緯は平成16年度の取り組みにて説明しましたが、その推進にあたり住基カードの交付を受けられない外国人の方や、住基カードに対する不信感をもっておられる方々の取扱いをどうするか、という問題がありました。

この問題解決のために制度構築したのが、長沼町民カードでした。これは機能的には住基カードと同じICカードで、町が実施する独自サービスを受けることができるというものです。住基カードとの違いは、住民票の広域交付ができないことや、公的個人認証サービスの格納媒体としての機能を持たないことなどがありますが、2つのカードを用意することで、円滑な交付申請につながると考えました。実際、交付は平成17年6月17日から本格的に実施しましたが、特に混乱もなく、スムースに行われました。【図-4】

これからの取り組み

今後は、これらのカードが、町民生活を豊かにするうえで欠かせない情報化社会のパスポートとして利用されることを目標として、様々なサービスを展開して参りたいと思います。

具体的には、証明書等自動発行機(住民票・印鑑登録証明書)の開始や、国レベルで普及促進を図っている電子申請を効果的に利活用していく方策を考えています。

特に電子申請については、申請等手続に係る手数料の支払いや交付文書の受け取りに関し電子的な手続方法が確立されていないことなど、まだ多くの課題が残されています。したがって、このままの状態で行っても従来の紙による申請がほとんどで、オンラインでの申請は全く普及しないのではないかと危惧しているところです。

そこで、より利便性の高いサービスの実現を目指すため、電子申請と同様、24時間365日の交付サービスの実施が可能となる電子ロッカーを導入して、電子申請を行いやすい環境を整えていきたいと考えております。

これらのサービスの充実を図り、町民はもとより、長沼町に訪れた方々へのPRも積極的に展開していくことで、本町の取組みを評価していただき、定住していただければ幸いと思います。

今後とも、引き続き、住基カードを活用した住民サービスの向上に努めるとともに、町に対する申請や届出を、自宅やオフィスのパソコンからインターネット経由で行うことができる電子申請を早期に実施するなど、電子自治体の構築に向けた流れを加速していきたいと考えております。