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宮崎県高千穂町/地元と都会の交流で見つけた宝みがきのむらおこし~神々と共にいきいきと暮らすために~

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年5月15日
高千穂町の夜神楽体験ツアーの写真

宮崎県高千穂町

2559号(2006年5月15日号)
五ヶ村村おこしグループ 工藤正任


神話と伝説の町 高千穂町

私たちの住んでいる高千穂町は九州のほぼ中央に位置し、熊本県と大分県との県境にあります。人口約15,000人。神話伝説の多い町でもあります。町を紹介する際のシンボリック表現、或いは、後述する「街並み景観条例」の前文にも引用されているほど、わが町における「まちづくり」の原動力が、この一文に表現されていると言っても過言ではありません。

町内には56の集落があり、その中の一つが、今回地域づくり総務大臣表彰を受賞した五ヶ村村おこしグループが活動する五ヶ村地区です。総世帯数70戸、約250名が住んでいます。そのうち農家戸数は37戸で、耕地は標高340m~450mの間に散在し、一戸当たり耕地面積は40aの小規模農家集落であり、労働者のほとんどが集落外で働き生計を立てています。集落内には、町営天岩戸温泉があり、村おこしグループの拠点である「温泉茶屋」や「神楽の館」などの施設があります。

むらづくりに至った経緯

平成6年、五ヶ村地区に町営天岩戸温泉ができることになったのを契機に、集落内では地域の活性化を考えようという気運が高まってきました。そこで、公民館活動で役員会を重ね、総会を開き、何度も話し合いが行われましが、村では大正年間に溜め池づくりに失敗した例があること、事業には多額の負担が伴うことなどの要因から、公民館活動での事業は断念せざるを得ませんでした。

しかし、一度盛り上がったこの事業を簡単に諦めることは出来ず、公民館に金銭的な負担をかけないという条件で有志が集まり、9名のメンバーで「五ヶ村むらおこしグループ」を結成しました。そしてグループのメンバーが一人50万円ずつ出し合い、さらに補助金を活用し、特産品販売と地元食材を使った軽食の店「温泉茶屋」を建設することにしました。

もったいない野菜や甘藷をどうするのか?

また、温泉茶屋の軒下では、集落内の誰でも出品できる朝採れ野菜の無人販売所を設置することになり、これを目当てに様々な野菜の作付も行いました。ところが、作付した野菜の生育は順調だったものの、肝心の温泉茶屋の工事が遅れてしまい、収穫期を迎えた野菜の販売先が無くなってしまいました。そこで、その野菜をどうするか集落内で話し合った結果、天の岩戸神社の神楽公開祭に合わせて農業祭を開催することにしました。

初めてのことで、恥ずかしさから自分の出品物が売れるだろうかと遠くから見ていた出品者が、自分の品物が売れると「いらっしゃーい」と大声で客を呼べるようになっていきます。最後は、出品した野菜を完売するという実績を上げることができ、出品者にとっては生産意欲に大きくつながる催しとなりました。

この農業祭は、平成6年から5年間五ヶ村公民館の行事として開催していましたが、平成11年からは岩戸地区産業部会と共同で行うようになり、更に大きなイベントとなって現在も続けております。

平成6年11月、天岩戸温泉開業から半年遅れて、待望の温泉茶屋の開業となりました。温泉茶屋には多くの客が訪れ、直販所の農産物も順調な売れ行きだったのですが、いつも甘藷だけが売れ残っていました。この甘藷がもったいないということで、これをあんこにした小麦だんごを作り始めたところ、3年後の平成9年には小豆あんと合わせて年間7万個も売れる大ヒット商品となりました。

いろいろな苦労がありましたが、メンバーがアイデアを出し合い、工夫した結果、この頃には温泉茶屋の経営も何とか軌道に乗りました。

神楽への情熱と神楽の館への移築

温泉茶屋の経営が軌道に乗り、皆が一安心していた平成8年頃、集落内では昔から受け継がれてきた夜神楽の存続が大きな問題になっていました。時代の流れに合わせるように、若い人たちの間では神楽に対する関心が薄れ、神楽をやめて神事だけをしようという話も出始めていました。しかし、子供の頃から毎年神楽を楽しみに観て育ち、深い愛着がある私たちの世代は複雑な気持ちでした。そこで、神楽継承について公民館で意見を出し合った結果、村おこしグループのメンバーが中心となり神楽の存続に取り組んでいくことになりました。

神楽を存続していくうえで最も大きな課題が、夜神楽の舞台となる神楽宿の確保でした。夜神楽は本来民家で行ってきましたが、近年夜神楽ができる民家が少なくなったことや、神楽宿となる家庭には大きな負担が伴うことから、神楽宿の選定には大変苦労しておりました。そこで、9名のメンバーが再び30万円ずつ出し合い、温泉茶屋の売上金と補助金を利用し、神楽宿建設を計画しました。

神楽の館
神楽の館

また、ちょうどこの頃、隣町の日之影町で130年前に建てられた民家が取り壊されるという話を聞き、その民家を譲り受け、解体して移築することにしました。資金が不足しておりましたので、メンバー自らがジャッキ、バールなどの道具を使い、この民家を丁寧に解体して持ち帰り、町有地を借りて約4年の歳月をかけて移築しました。大変苦労して移築しただけに、完成したときには本当に嬉しかったことを覚えております。この神楽宿に「神楽の館」という名称をつけ、平成12年からは集落の神楽を毎年ここで行っております。

地元の資源を活用したツーリズム

神楽の館を建設した当初の目的は、夜神楽を存続させることでしたが、年に1回だけの夜神楽に使うのではもったいないということになり、平成13年には神楽ツーリズムを企画し、平成14年からは2階部分を改築し、民宿の営業も行うようになりました。神楽ツーリズムを始めた頃は、素人ばかりで客集めに大変苦労しましたが、町内の旅館に協力してもらい参加者の募集を始めました。夕食は神楽料理でもてなし、その後代表的な神楽8番を観てもらい、その中の1番には男性参加者なら誰でも舞うことが出来る「七貴人」神楽を取り入れるということで募集を始めたところ、福岡、鹿児島など全国から予想以上に参加者が集まりました。

農家民泊体験での食事の様子
農家民泊体験での食事の様子

その後このイベントは毎年回数を増して企画しており、多くのツアー客を集落内に呼び込めるようになり、一方でほしゃにとっては技術の向上と後継者の育成にも大きな役割を果たしております。またその他にも竹の子掘り、山野菜摘みと料理体験、刈干し切り体験、神楽面掘り教室なども行うようになりました。これらの企画に参加された多くの方々からは、「神秘の山間にすばらしい村があることを知りました」、「一度来たらまた行きたくなる、心暖かい元気と笑顔の村」、「私も村おこしの手伝いがしたいです」など、たくさんの励ましのお便りを頂いております。

生きがい保険

古代生活体験
古代生活体験

イベントを通して都会の人たちと交流することにより、楽しい時間を過ごしながら多くのことを学び、田舎と思っていた我が村に多くの宝があることを知りました。また、自家生産の安心・安全の農産物を持ち寄り、料理を作ることによって給料をもらい、人に喜ばれるという、大変やりがいと張り合いのある忙しい日々になりました。通常は9人のメンバーとその家族がローテーションで働き、手の足りないときには集落の人達にも協力してもらい、時給で給料を払っています。温泉茶屋を始めた当初は多額の出資と借金に心配もありましたが、温泉茶屋や神楽の館建設に年金まで貯めて9人で出し合ったあの時の出資金は、今になってみると自分たちの「生き甲斐保険」の様な気がしています。

平均年齢60才のメンバーで始めたこの取り組みも10年経ち、後継者の確保が気がかりなところです。しかし、初めは多額の借金を心配して顔を出さなかった出資者の後継者たちが積極的に協力しはじめ、村おこしの基盤がだんだん整い始めたような気がしています。現在では年間二千万円を越す売上となり、借金返済にも目途がたち、年に1回、会員の1泊研修に行けるようにもなりました。体調が悪く仕事に出られない人もいますが、旅行には全員参加で和をつくり、年一回の楽しみにしております。

村おこしの成果

温泉茶屋や神楽の館では、年間二千万円以上を売上げるようになり、またこれらの施設を中心に年間一万人以上の人が集落を訪れるようになり、年間延べ千人以上の雇用の場ができました。また、一時は2名まで減った神楽の奉仕者も、現在は中学生を含め5名になり、存続の危機に直面していた夜神楽を復活させることができました。今では、年1回の夜神楽の日だけでなく、イベントのたびに神楽太鼓と笛の音が鳴り響き、たくさんの人でにぎわうようになり、集落に活気が出たと思っております。

竹の子掘り体験の様子
竹の子掘り体験

このにぎわいにつられて、温泉茶屋や神楽の館では地元産の農産物の消費が増えてきました。加えて、中山間地域等直接支払制度事業で農地の整備を進めていった結果、裏作の作付が増え、若い農業後継者が積極的に規模拡大を行うようになりました。刈り干し切り体験ツアー現在、集落には専業農家の後継者が2名おり、それぞれ完熟キンカン栽培と繁殖牛で頑張っております。 その他大阪や広島から3家族がUターンするなど、貧乏村だと思いこんでいた集落住民が、村づくり活動の必要性を強くじ感じ始めていると思っております。

刈り干し切り体験ツアー
刈り干し切り体験ツアー

村おこしのこれから

これからは、これまでの活動実績を活かし、村に幾つかある工芸品づくりを活かしたむらづくりや、都会の人達と共に心癒せるグリーンツーリズムなどを企画してみたいと思います。そして公民館活動の各部会が互いに切磋琢磨してむらづくりへの意識高揚に努め、過疎にならない、楽しく暮らせる集落の将来について真剣に話し合っていきたいと思っております。そして、今日の受賞を励みに集落全体で総力を結集して、やりがいのある無駄のないむらづくり活動を目指し頑張りたいと思っております。