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群馬県川場村/都市との協働による森づくりを推進

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年4月17日
川場村の全景写真

群馬県川場村

2557号(2006年4月17日号)
むらづくり振興課 桑原仲雄


川場村の概要

川場村は、北緯36度43分、東経139度06分、群馬県利根地域の中心沼田市の北へ約10km武尊山の南麓に位置しています。村域の北側は、武尊山(2,158m)をはじめ。日光連山、谷川岳等の山々が連なっています。

村の面積は85.29平方キロメートル、山間部に位置する為に村の85%は山林原野で、うち60%は国有林で占められており、耕地はわずかに、7%にとどまります。村には、薄根川、桜川、溝又川、田沢川と四本の一級河川があり、そのすべてが本村より源を発し利根川へとそそいでいます。清流が流れる地に集落が開けたのが始まりとされ、川の多いところから川場の地名にもなったと言われています。

古い歴史と文化に支えられた川場村には、明治22年町村制の施行にともなって、門前組、天神組、谷地村、川場湯原村、中野村、萩室村、立岩村、生品村、太田川村、小田川村の2組8村が合併によって誕生したもので、これら組や村のうち8つの組や村が現在の大字として残っております。

本村の位置は、太平洋側と日本海側の教境界に位置することから、気象上も双方の特徴をもっており、村の中心分いおける年平均気温は約12度、年平均降水量は約1,300mm、山岳部の積雪量は多い年で2mに達し、根雪期間も通常100日前後あります。

人口は、昭和30年の5,376人をピークに、50年の3,822人までの減少が進み、この間過疎地域の指定も受けることとなりました。しかし、平成7年の国勢調査人口が、4.273人と回復し、平成12年度に過疎地域からの脱却を果たしました。平成17年の国勢調査人口は4,186人でした。

産業の中心は農業で、主要産品はこんにゃく、牛乳、果樹(りんご・ブルーベリー・ぶどう)、米等であります。

交通は、昭和57年に上越新幹線、昭和60年の関越自動車道の開通により首都圏との時間距離が大幅に改善され、人的、物的交流が増加し、経済活動も活発化しております。村内の道路整備も積極的に取り組み主要路線については、数ヶ所を残し計画どおり改良等も実施することができました。また、利根沼田地域で一体的に整備された大規模農道「通称 望郷ライン」が平成16年度に全線整備され、東西への連絡がスムーズになり、観光客の増加に大きな期待を寄せているところです。

都市との交流

東京都世田谷区との交流については、昭和55年、当時の村長が世田谷区が健康村立地に適した自治体を探しているという情報をキャッチし、本村も立候補しました。手を挙げた自治体は52市町村ありました。その中で世田谷区がなぜ川場村を評価してくれたのか、その当時はわかりませんでした。後に聞いた話では、「川場村は何にもないから良いんですよ。」とのこと。つまり、唱歌に歌われているような自然が残っていたのが選ばれた理由でした。

自然教室での下草刈り体験の様子
自然教室(文章後半参照)での下草刈り体験

群馬県・東京都両知事立ち会いにより「健康村づくり相互協力協定」(通称 縁組協定)を昭和56年に締結して、都市と農村の交流を積極的に展開しております。

健康村づくりの活動は既に25年を迎え、来村した区民は120万人を数えるまでになりました。区立小学校の移動教室では12万人の児童が川場村を訪れて様々な体験学習を行っております。最初の頃参加した児童はすでに結婚し、今度は我が子と訪れるようになりました。

縁組協定以来、開設に向けて山村留学や区内でのホームステイ、手作り食品づくり、キャンプ交流等の呼び活動が行われ、健康村施設の設置後には、自然環境、農林業、教育、文化、スポーツ等を通じた本格的な相互交流へと発展しております。阪神淡路大震災を教訓として、災害時の相互協力協定や村有スポーツ施設の区民利用の協定等も締結されました。これらの交流は、川場村のむらづくりに多大な影響を与えております。

交流事業の一つである「レンタルアップル」についてご紹介させていただきます。「レンタルアップル」は1年間リンゴの木のオーナーになってもらう制度です。オーナーになられた方は春先の5月に花摘みに来ていただき、その後、希望により収穫されるまで何度でも川場村を訪れ、リンゴの生育の状況を確認しながら農作業の一端に触れていただきます。この事業は、農家と区民が直接触れ合うことにより行政の手を放れ、村民と区民の交流へと広がりを見せております。

協働による森林整備

友好の森事業

世田谷区との縁組協定10周年を迎えた平成4年、世田谷区と川場村は「友好の森事業に関する相互協力協定」を締結しました。これは縁組協定を支える川場村の自然環境の恵みを享受するだけでなく、交流事業の一環として保全育成しようとするものです。具体策として、自分たちの身近なところにある森林を自分たちで守り、育てていくことを通して環境問題の新しい取組みのあり方を追求しようと、区民健康村施設「なかのビレジ」周辺の約80haを友好の森区域に定め、ここを主な活動の舞台として森林作業や自然体験、環境に関する調査観測等を実施しております。時を同じくして、村民合意により自然環境を配慮したむらづくりを総合的に進めるため、「川場村美しいむらづくり条例」を施行し、田園風景等の保全に努めることとしました。

「やま(森林)づくり塾」は友好の森事業の一環として平成7年度にスタートいたしました。自然に親しむことから始まり、自然の仕組みを理解していただきながら森林作業の必要性を学びます。山仕事の技術を習得するためのプログラムとして「体験教室」「養成教室」「専科教室」を開催します。

やまづくり塾での下草刈りの写真
やまづくり塾での下草刈りの様子

体験教室は森林に慣れ親しむことを目的とし、森林作業の体験を中心に自然散策などを年2回実施し、家族連れや友人同士で楽しみながら参加いただいております。養成教室では、植林・下草刈り・枝打ち・間伐など森林管理に必要な基本的な技術を習得していただきます。また、年間4回のカリキュラムを修了した参加者には、塾オリジナルの「グリーンヘルメット」を卒業の証として贈呈しています。専科教室では、一般的な作業知識から更に一歩踏み込んだ専門的な知識を、毎回テーマを決めて学習します。

やまづくり塾での間伐の様子の写真
やまづくり塾での間伐の様子

さらに、養成教室を終了し、グリーンヘルメットを手にした終了者たちで「やまづくり・くらぶ」という団体が独自に組織されています。現在そのメンバーも90人を超え、そのほとんどが世田谷区の区民です。くらぶのメンバーは、休日を利用し、数人単位であるいは単独で川場村を訪れて友好の森に入り、習得した技術に磨きをかけながら山仕事に精を出しています。最近ではその活動範囲も広がりを見せ、友好の森を離れた村内の他の場所にも山仕事の場を求めたり、繰り返し川場村を訪れて、村民との個人的なつながりを持つ区民も増えております。

こうして、予備活動として森林ボランティアから発展した友好の森事業により、荒廃した山林がよみがえりました。上流下流の交流が促進されることで森林環境の保全へとつながり、住民の理解も得ています。

やまづくり塾での枝打ちの写真
やまづくり塾での枝打ちの様子

今後は、これまで村内外より一定の評価を受けている「やまづくり塾」のステップアップを目指し、従来の森林作業技術の習得は勿論のこと、新たに森林作業の「資格認定」をする制度を設け、全国に通じる森づくり技術者の養成を目指します。

自然で遊び学ぶ自然教室

夏休みと冬休みの時期、川場村と世田谷区の小学生の子どもたちが一緒になって、都会では経験できない本当の自然体験を行う自然教室が「ジュニアクラス」です。川遊びや農業体験、冬頬に突き刺さる寒さの中、預ぞらんい輝く満点の星。どれも忘れられない体験です。

都会では経験できない本当の自然体験、雪遊びの様子
雪遊び

また、中学生及び高校生対象の「シニアクラス」は、川場まるごと滞在記と題して行います。夏休み期間中、森林作業や農作業、自然観察などを実施しますが、決められたスケジュールに沿って川場村で過ごすのではなく、参加者の自発的な意思と発送で、自分でやってみたいことを基本に体験してもらいます。

今後も世田谷区とは永遠のパートナーとして交流を展開したいと考えています。美しく素晴らしい川場村を舞台に、更なる交流が花開き、川場村の豊かな自然環境を次世代に残していけるようなむらづくりを推進して行きたいと思います。