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青森県鶴田町/朝ごはん条例で健康長寿のまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年4月3日
鶴の舞橋

青森県鶴田町

2555号(2006年4月3日号)
企画課長 八木橋連長


風光明媚な田園地帯

鶴田町は、津軽平野のほぼ中央に位置し、県都青森市へは40km、桜で有名な学都弘前市街地までは25kmの距離にあります。

丹頂鶴自然公園
丹頂鶴自然公園

町の中央部を世界遺産で有名な白神山地を源流とする1級河川岩木川が流れ、南西には津軽富士といわれている岩木山(1,625m)が当町を見守っている風光明媚な田園地帯です。総面積46.4平方キロメートル、人口1万6千人の農業産業とする町です。

町の基幹作物は、米とりんごで総面積の約5割を占めています。また、昭和45年頃からスチューベンぶどうへ転作する農家が増え、今では、作付面積がおよそ80haと、生産面積、生産量共に日本一となっています。年間販売額は、およそ6億円と今や鶴田町の特産品として全国的に定着しつつあります。

みんなでつくる鶴田のロマン

鶴田町は、気候風土、地理的特徴などを生かした町の総合計画「みんなでつくる鶴田のロマン」を平成2年に策定し、愛の翔・風の翔・土の翔の3本柱を中心に町づくりが進められてきました。

「愛」は心を、「風」は文化を、「土」は力を表現し、「翔」は町の名前にちなみ鶴が羽ばたくことに願いを込めています。

現在、平成13年度を初年度とし、平成22年度を目標年度とした第4次鶴田町総合計画『鶴の里ロマン21』に掲げた基本計画に基づきまちづくりを推進してます。

鶴田町には、美しい景観や豊かな緑が多くあります。これらと調和し住む人の息吹が感じられるような潤いとやすらぎのあるまちづくりのため、町民と協調しながら諸施策を展開しています。

「まちづくり」は「ひとづくり」

21世紀に対応できる「ひとづくり」が急務と1977年(昭和52年)にアメリカ合衆国オレゴン州フッドリバー市と姉妹都市を締結以来、29年になります。姉妹都市を締結した当時は、国際化ということばをあまり聞くことはできませんでした。しかし、社会環境の進展によって、国際化時代が必ず到来するものと信じて国際交流事業を展開させ現在に至っています。その間には、中学生大使や留学生の派遣、国際交流員の招致事業など様々な事業を展開しながら、強い絆と友情を育んできました。

特に、1984年(昭和59年)から始まった中学生大使の派遣事業も21回目を数え、延べ418名が太平洋を渡り1万km離れたフッドリバー市を訪問しています。

また、町民のボランティアによるホームスティバンクや通訳バンクなど様々な施策を展開しながら21世紀を担う人材の育成と国際化への対応に積極的に取り組んでいます。

このような、積極的な活動が認められ、平成8年に世界に開かれたまち総合的な地域国際化推進のまち部門で「自治大臣表彰」を受賞しました。

平成18年度からは、管内全小学校でのカリキュラムに英語を取り入れる英語教育推進特区の認定を受け、国際社会に貢献できるひとづくりを推進します。

鶴へのこだわり

まちづくりにおいては、福祉と国際交流に配慮しながら徹底して鶴にこだわり、町の施設の至るところに鶴のデザインを使用し、「個性あるまちづくり」を推進してきました。
鶴へのこだわりは、鶴田郷土誌をひもとくと、江戸時代には鶴田町に鶴がたくさん飛来し、「鶴田命名の起源」は文字通り「鶴」にちなんだものであろうと書かれていることから、「鶴」にこだわるまちづくりの気運が高まったものです。

湖上の龍神船
湖上の龍神船

ある保育園を訪れたとき、鶴の絵を見ながら園児に鶴の絵を描かせている場面に出会い、その時、生きた鶴がいたら子供たちがどんなに喜ぶか、鶴に関わりのある町だから丹頂を飼育しようと決心しました。是非生きた鶴を町によみがえらせたいという切なる願いを込め、通産省(現経済産業省)など関係機関へ働きかけ、平成5年に中国国龍江省チチハル市から鶴を譲り受けることに成功しました。平成6年には、「丹頂鶴自然公園」を建設し、さらに、平成9年にはロシア・ヒガンスキーからつがいの鶴を譲り受けたことや雛誕生などで現在10羽の丹頂を飼育しています。この丹頂鶴自然公園は、子供たちが生きた鶴を通じて、命の尊さを学びながら、優しい心を育み、大きな志をもって鶴のように世界へ羽ばたいてほしいという願いを込めて建設したものです。

伝説に満ちた津軽富士見湖

当町には、人造湖では日本有数の大きさ(満水面積281ha、周囲11km)を誇る廻堰大溜池、通称津軽富士見湖があります。この津軽富士見湖は、万治3年(1660年)に4代藩主津軽信政公が、この地方一帯に灌漑用水を供給するために堤防を築き用水池にしたといわれています。

春には、全国へら鮒釣り大会を開催しており、今年で21回目になりますが、遠くは関東地方からもたくさんの参加者があり、毎年約300人の太公望がへら鮒釣りを満喫しています。

8月中旬には、つるたまつりが行われ、津軽富士見湖では全国でも珍しいといわれている龍神ねぶたの湖上運行と花火大会を開催しています。龍神ねぶたの湖上運行のは、今からおよそ600年前のこと、白上姫が清水城主との恋に破れ、大溜池に身を投じて白龍となったという悲恋伝説に基づいたもので、夕日を浴びた全長30mの役場職員の手づくりによる龍神舟は、津軽富士見湖伝説に彩りを添えるロマンチックなイベントとなっています。

また、伝説に満ちた津軽富士見湖の優美な湖面に架かる日本一長いきの橋「龍の舞橋」が、平成6年に感性hしました。自然に配慮し、樹齢150年以上の県産ヒバ1等材を用いて造られた三連太鼓橋は全長300mで、岩木山を背景に鶴の舞橋を湖面に映す眺望は、県内でも屈指の観光スポットとなっています。鶴の舞橋は、木橋としては日本一長く、また、この橋を渡ると日本一長生きが出来ると町ではピーアールしています。

朝ごはん運動の動機

鶴田町が「朝ごはん運動」に取り組んだきっかけは、町の平均寿命が男性74.5歳と全国ワースト10で、女性が全国平均0.5歳低い84.1歳であることから、この平均寿命を全国平均まで引き上げることをねらいとして、平成12年に「鶴の里 健康長寿の町」を宣言し、町民総参加の健康づくり運動を展開しました。

検診率の向上や、子供を生活習慣病から守るための食生活の改善など様々な施策を食生活改善推進員をはじめ保健協力員、各小・中学校のPTAの協力で実施をしました。

学校給食応援が食材を提供
学校給食応援が食材を提供

平成13年には、3歳から14歳までの全児童約1,900人を対象に食生活状況調査を実施した結果、11.4%の子供が朝食をとっておらず、また、7割以上が夜食を食べ肥満など身体不調原因となっていることや、夜10時以降に就寝する子供が28.2%と食と生活習慣が乱れている実態が浮き彫りとなりました。

今日、少子高齢時代に突入し、「日本の未来を担う子供たちがこのような状況ではいけない。日本が世界の長寿国となったのはお爺さん、お婆さんたちのようにご飯を中心とした食生活の中で育ってきたからであり、何とか子供たちの健康を守り、日々正しい食習慣を身につけさせたい。」と取り組んだのが朝ごはん運動です。

この運動を進めるため、平成14年に「子どもの健康は朝ごはんから」推進実行委員会を発足させ、正しい食習慣や朝ごはんの大切さを知ってもらうための様々な運動を展開しています。

朝ごはん条例施行

町民総参加の運動を展開していこうと、平成16年4月に朝食からはじめる生活習慣の見直しを基本に『朝ごはん条例』を施行しました。基本方針は、

  1. ごはんを中心とした食生活の改善
  2. 早寝・早起き運動の推進
  3. 安全・安心な農産物の供給
  4. 地産地消
  5. 食育推進の強化
  6. 米文化の継承

の6項目を定め、ガイドラインと実施計画を設け、これまで縦割りの行政体制からそれぞれの関係各課が横断的に連携して取り組む形態としました。各事業ごとの実績については、評価制を導入して公表することにしています。朝ごはん条例制定に至るまで、実に3年の歳月を費やし、関係各課において検討をしてきました。

朝ごはん条例施行と同時に、全国的に朝ごはん運動を推進するため、全国町村会長、各都道府県町村会長をはじめ、農林水産省、文部科学省、全国農協中央会などに呼びかけをしております。

保温ジャーで炊きたてごはん
保温ジャーで炊きたてごはん 

この運動で特に力を入れた点は、各家庭での朝ごはんの励行はもとより、週5日の給食をすべて米飯給食とし、町内全小・中学校に保温ジャーを配置しました。毎日の給食を温かいごはんに切り換え、子供たちが自ら茶碗によそってもらうことと地元の野菜、りんごを取り入れたことや子供たちによる「和食」の料理教室の開催、規則正しい生活習慣をみにつける為の通学合宿などがあります。

新たな施策の展開

始めは、親御さんに朝ごはん条例の趣旨がなかなか理解を得られませんでした。「町は朝ごはんを強制するのか。」「好きな物を食べてはいけないのか。」特に若いお母さん方には、「共働きで時間に余裕がない。」など様々な声が聞かれました。そこで、朝ごはん運動の趣旨を理解していただくために、保育所から小・中学校に至るまで、あらゆる機会を通じて、朝ごはんが脳の活性化を促し、学習能力を高めることや、和食から得られる主な栄養素が肥満をはじめとした生活習慣病予防にも有効とされているなどを掲載された日本教育新聞などの記事を配布しました。

また、講演会等の開催により、徐々にその効果が出始め、さらには、学校給食に安全・安心な地元の食材を提供したいと農家のお母さん方による「学校給食応援隊」が結成されたほか、みどりの会(農業後継者団体)や各農家などからりんごが無償で提供されるなど家庭、学校、地域が連携して朝ごはん運動に取り組んでいただいています。

これら、朝ごはん条例を施行して以来、食生活の改善や早寝・早起き運動等を推進した健康長寿のまちづくりが認められ、去る1月18日平成17年度地域づくり総務大臣表彰を受賞しました。

今後の取り組み

条例施行後の調査では、子供たちの生活リズムの定着に伴い、早寝・早起きも増えつつあり、肥満減少も徐々に効果が出始めています。国においても、昨年食育基本法が制定されており、全国的に朝ごはん運動が推進されますことを願っております。

今後は、朝ごはん条例に基づき食育等諸施策を推進するとともに生活習慣病の予防のため、各種検診に一層努力し、健康長寿のまちづくりを目指していきたいと思います。